砂漠の男と詐欺師と浮遊都市
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砂漠の男は夢を見ない。
論理も科学も信じない。
ただその目で、耳で、肌で感じたものだけを信じる。
人が生きるにはあまりに厳しい環境が、砂漠の男を恐るべき戦士に育て上げた。
「今夜、空からあの都市が砂漠に下りてくる」
砂漠の戦士ハシュトシュは、相棒となった孤高の詐欺師に告げる。
「十年ぶりだ。花咲き乱れ蝶舞い踊るあの多層浮遊都市エンが、この砂漠にやって来るのは」
「ああ。ずいぶんと待った」
詐欺師は知っている。
そこが己の次の仕事場だと。