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プロローグ


 何もない真っ白な空間。そこに一人女性がたたずんでいた。女は目の前に横たわる“ソレ”に向かって声を掛ける。


「こgじぇbyk?■×●△?違うわね……えっとー、思い出した、日本人は起きた時おはようって言うのよね?」

「…………」

「あら?おーい?」


 ペシペシと頬を何度かはたかれて“ソレ”は目を覚ます。


「ん?なんだ?此処はどこだ。あんたが此処まで運んだのか?」

「いいえ?あなたは勝手に此処に来たのよ。死んだのだから」

「…………は?」

「だから、死んだのよあなた。覚えてないの?」

「残念ながら全く。死ぬようなことした覚えはないぞ。確か昨日は、昨日は、、えっと……」

「覚えてないのね。まぁ、あんまり気分のいいものではなかったから思い出さない方が得策よ。」


 “ソレ”の目の前にいる女は、おもむろに取り出した奇怪な形をしたオブジェを操作しながら話を続ける。


「唐突で悪いけど、今あなたには二つの道が用意されているわ。一つ、その自我を持ったまま違う世界へと転移する。二つ、自我を失い魂の大いなる流れへと帰る。個人的には前者をお勧めするわね」

「全く状況を理解できてない人間に迫る二択ではないだろ……」

「あら?異世界転移よ知らない?最近ネットで流行ってるんでしょ?」

「生憎仕事一筋でな、小説数えるほどしか読んだ事ないんだ」

「珍しいタイプね、普通なら異世界なんて言葉を聞いたら飛び跳ねながら喜ぶのに。こと21世紀の日本人は特に」


言葉を区切った女はひととき考え、また口を開く。


「あなたは不慮の事故で死んでしまったの。ここは覆らないから、この事実に関しての質問は受け付けないわ。その上で、あなたには元居た世界とは違う世界でもう一度生きなおす権利が与えられたってわけ。」

「なぜ俺にだけそんな特別待遇が?」

「別にあなただけじゃないわよ?あなたの様な強い未練を持った人間よ。今後生まれる赤ん坊にあなたの思念が混じったら嫌だもの。だから別の世界で満足するまで生きて、大いなる流れに帰って貰うって訳」

「成る程、未練か。確かにやり残したことは多いように感じる。実際何をやり残したのかは全く思い出せないが」

「皆そんなものよ。で、どうなの?向こうに行ってやりたい事とかあるならある程度の要望は通すわよ」

「そうだな……」


少し考え込んだ後


「争いに巻き込まれず暮らしたい。詳しい事は一切思い出せないが、権力を追い求めていたように思う。死んでしまっては元も子もないのだがな」

「そうね、争いのないゆったりとした生活……。わかったわ。叶えます、その願い。じゃあ少し目を閉じてね」


女がそう言って、操作していたオブジェを“ソレ”の前に持って行く。“ソレ”が目を閉じると辺りがまばゆい光に包まれ、次の瞬間にはその空間から女以外のすべてが消え失せていた。





「異常ね」


女がつぶやく


「魂が人型を保ち十全な言語能力を有したまま此処にやって来るなんて。一体どんな人生を送ったらそうなるのかしら。一回の生で洗い流せると良いけど」

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