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0、虐待ってどこからどこまで?【異常な環境が当たり前の日常】

『虐待ってどこからどこまで?』


 私は50歳を過ぎる頃まで、自分が虐待されて育ったという事を全く理解していませんでした。


 私の生まれ育った昭和の時代には虐待という言葉もなく、男尊女卑がまだ当たり前で、教師に殴られることも当然にありました。

  近所では「どこどこの誰々さんが、また酔っぱらった亭主に殴られたわー」などと、平気で子供に話す大人ばかりでした。

 学校でも、「あんたんちは貧乏だから・・・」とか言っては、担任にも苛められました。


 親が子供を殴ることは躾だと言われていたので、どんなに子供が悲鳴をあげても誰も変だとは思わなかった時代です。

 

 散々殴られてぐったりしたところを腰ひもで動けないよう縛られて、雪の深く積もる夜の真っ暗な道路に捨てられたりしていました。よく死ななかったなーと自分でも思います。


【誤解を招かないよう書いておきます。 私は両親に暴力をされた訳ではありません。母の姉にあたる伯母からでした。姉は伯母の娘で、ひと回り上の従姉です。】



 

『ドラマのような人生だね』と言われ続けて・・・


 私の人生は、誰もが想像を絶すると言います、精神科医にも「ドラマ以上だよ!」と言われましたが、自分では自覚はありませんでした。異常な環境が、いつしか自分の中では【当たり前】になっていたからです。


 確かに、私自身の中でも理解に苦しむほど酷い家庭でした。そう言われれば、生い立ちも状況も全てがドラマ以上なのかも知れません。


「ただ、生まれた家が悪かっただけなのに・・・」と、いつも思います。


 家でも外でも虐げられて、小さい頃から私は、自分が生きていることに後ろめたさを抱えていました。

 だから精神的にどん底になっている自分に気付かないふりをしてやり過ごしていたのかも知れません。


 小さい頃からいつも平気な顔を装い、でも心の中では・・・「私なんかが関わっちゃ迷惑をかける」と思っていて、大好きな人や友達を次々に遠ざけてきました。

 

 母とは小学校の頃に、五年ほど同じ家に居ましたが、引き裂かれたのか? 母が引き籠ったのか? は、わかりませんが、まともに関わった事がありません。だから母の顔は写真で見ないと今でもわかりません。

 一緒に食卓を囲んで食事をした記憶もないし、伯母から聞かされた両親の悪口も、殆どが嘘の作り話でした。

 細やかでもいいから、いつかお母さんと一緒にご飯が食べたい、そんな夢を描いていたように思います。



 ただ・・・

「この人だけが私の味方だ」と、ずっと信じていた姉が、まさか一番の悪魔だとは思ってもみませんでした。私に降りかかった度重なるの不幸の殆どが、姉の仕組んだことだったのです。


 サイコな姉に生涯、洗脳支配され、交友関係も進学も就職だって自由に選べない。恋愛も結婚も自分の好きなようにできない不自由なまま、一人で息子を産み、伯母の人生まで背負わされて生きていました。



『自分で稼げるようになれば、きっと姉さんみたいに自由になれる』


 行きたい学校も選べずに高校も無理やりに進学させられ、バイトで学費を稼いで何とかつないでいましたが、また苛めにあって体が動けなくなり高校中退しました。

 まぁ、行きたかった学校でもないし、社会に出た方が自分の事を知らない人達ばかりだから気が楽になれると思っていて、やめる事は辛くはなかったです。


 早く自分でお金を稼げるようになれば、【きっと、姉さんみたいに自由になれる】そう信じていたからです。

 でも、現実はそんなに甘くはなかった。というか・・・姉はそんなに簡単に、私を自由になんてする訳がなかった。と言った方がしっくりくるかも知れません。


 まだ16歳なのに、生活費や借金を背負わされてがんじがらめにされたことが今でも納得できません。この世に居ない姉への怒りの鉾債がなくて、未だに苦しい時があります。


 寝る間も遊ぶ間もなくバイトを掛け持ちして一円でも多くお金を稼がないといけない日々が続き、気づいたら中学からの親友も離れていきました。


 働いても働いても足りなくて、バイトを三つも四つも掛け持ちしました。年齢を偽ってスナックやクラブのバニーガールもしました。それでも姉は「まだ足りない、お母さんにもっとお金を渡せ!」と言いました。姉自身も、結婚した事や子供が出来た事などをいいことにして、お金をせびるようになりました。



 必死でバイトをして、伯母と姉にお金をとられて・・・ なけなしのお小遣いで買った新しい服を「今度、遊びに行くときのために」と、大事にしまっていた時のことです。

 姉は、その服を着て、平気な顔で私のバイト先にやって来たました。

「おお、頑張ってるじゃん! これ、さすがだわー お前、センスのいい服を持ってるわー」と、涼しい顔で言うんです。


「私が大事にしまっておいた物を勝手に出して着て、まだ私が着てもいないのに、どうしてそういう酷いことをするの!?」と言うと・・・


「良い物、持ってるなーと思って。いいじゃん! 減るもんじゃないし、あんたと私の仲でしょ」と、あざけ笑ったのです。 

 この時ばかりは、私も流石に腹が立ちました。 

 自分よりも太った女が、無理やりに来た伸びた服を、誰が好んで着たいと思うんでしょうか?



 本当の事を誰にも言えなくて、普通の子のように振舞っていましたが、友人にも恋人にも散々傷つけられて、気づいたら自分の感情が何処かに行ってしまいました。

 

 

 そんな私にも縁あって、二人の息子が産まれ、私は母になりました。


 「自分のような不憫な思いだけはさせたくない」と、必死になって育てたけど・・・


周囲からは「やりすぎだ」とか「もっと手を抜けなきゃだめだ」とか言われて、でも、そんなことできない。私にとって【手を抜くことは悪いことだから!】


 それに、親が子供にかける愛情に【やりすぎなんてない!】と、私は思っていました。


 私の母の様に自分の理想や夢だけを押し付けるような親にさえならなければ、それでいいと思っていました。


 自分は辛抱しても子供にはきちんと食べさせて、きちんと着させて、誕生日やクリスマスは子供の喜ぶものを買って。

 ちゃんと学校に送り出して、参観日などはちゃんと行って、でも、子供が困った時は自分が盾になって守る、どんな相手でもかかって来い!!

 私はそういう当たり前のことを一生懸命にしてきただけなんです。



 むしろ、私に手を抜けなどと言ってくる人達の方がおかしいとさえ思っていました。


 

 息子達の友達のお母さんの中には、両親共働きでお金だけ与えて子供に見向きもしない親がいたり、子供に夕飯の支度を命じて自分は「今から飲みに行くから」という人もいました。


 長男の友達のお母さんたちの殆どが、お弁当も食事の支度もしない人ばかりで、うちの家には・・・

そういう子供たちがたくさん集まってきました。


 「お前んちは良いなー ダイチの母さんの作る飯は美味いもん、弁当も上手いし・・・」と。

 そんな言葉を聞いていた私は、彼らを無下に追い返したりできなくて、自分の分のご飯を減らしてでも彼らに食べさせたこともあります。



 でも、息子達には感謝とかはなくて、私をお手伝いさんか召使いくらいにしか思っていません。何かあると直ぐに私に全部押し付けて、右の物を左に動かすこともしないんです。


 長男は親の私から見ても、生粋のマザコンだと思います。高校生になっても私の持ち物や服を貸してくれといっては借り貰いするし、参観日には廊下に並べられた父兄用の椅子に自分の友達をずらりと並べて、私をその真ん中に座らせて自慢するような変な子でした。


 それが、社会人になったら・・・ 「お前なんか!」と言って狂乱するようになり、家中の壁に穴が開きました。さすがの私も【もうだめだ】と思いました。

 恵まれた環境の中で育つと、それが当たり前で感謝なんてしないものなんでしょうか? ・・・



 そんなこんなで、50歳になる頃、やっとの思いで家族という重たい荷物を捨てて家を出ました。

 でも、子供を捨てたんじゃないか?という罪悪感と、どうして私がこんな目に遭わされないといけないんだ!という怒りが込み上げてきて、今でも自分の感情の整理が出来ていません。


 そんなだから、ずっと自分のことは一番後回しで、病気になっても寝込んでも居られず、自分にムチを打ち無理にでも奮い立たせて頑張ってきました。


 小さい頃から病気をしても見向きもされず病院なんて行った事もなかったので、今になって病気だと言われてもどうしていいのかわからない自分がいます。


 子育てしている時は必死だったし、子供の事になると何でも自分で調べてできたのですが、自分の事になると途端に出来なくなるんです。


 だから、今になって病院のかかり方やどこに相談すればいいのか? とか、どう相談すればいいのか? など、解からないことばかりで苦労をしてます。  「助けて」と、声を上げられない環境の中で育ったので、本当に助けてと言えない自分が出来上がってしまっているんです。

 

 ドラマを見ながら、よくこんなことを思っていたのを思い出します。


「あんな風に、気を失って倒れてみたいなー。そう出来たら、どんなに楽だろう、そうできたら息子達もびっくりして心配してくれるのかなあ・・・」



 ああ、歳をとると…弱気になっていかんなー・・・ と思う今日この頃です。


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