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王立魔法学園 後編

 教室のドアを壊れないか心配になる程勢いよく開け放ち、

「シエル・フォン・ハーチェス!ミナ・レイトン!ゲイル・サルシェード!居るか!?」と、自己紹介も無く入ってきた彼は恐らく生徒会長だ。

 声自体は落ち着いていて、そこ迄の声量では無いものの、何故か耳が痛くなった。いや、もしかしたら痛いのは頭なのかもしれない

 後から入ってきた女性が、会長(仮)の頭を目掛けて分厚い書類の束を振り上げた。直後、5人しかいない広々とした教室には、重く痛々しい音だけが鳴り響いた。

 会長(仮)が痛がっているのを横目に、女性は先程会長を殴った書類を私たち3人に配った。書類を眺めていると、会長(仮)が話し始めた。

「書類の1ページ目には軽く目を通してくれたかな?僕は生徒会長のドレア・リィ・サイルだ。こっちは書記のフィーナ・シールストンだ。」

「貴方たち3人には、これから1週間掛けて能力ごとに役割を割り振るわ。」

『はい(!!)』3人の返事が重なる。

「じゃあ、会室に行きましょ。着いてきて」

 そう言うと、フィーナさんは会長を置いて教室を出て行った。それを小走りに追いかけた。


 ◆◇◆


 会室の中には、既にもう2人人がいて、書類を次々と片付けていた。確認済みで後は判を押すだけと(おぼ)しき書類が、他より1周り大きい中央の机に積み重なっていた。

「はい、一寸一旦作業ストップ。話聞いて。」フィーナさんが手を叩いた。

「ん、何?見ての通り忙しいんだけど。」

「えぇそうね、私も業務に戻りたいわ。でも、新人よ。3人とも自己紹介して。」

「シエル・フォン・ハーチェスです。よろしくお願いします。」

「ミナ・レイトンです。」「ゲイル・サルシェードです。お願いします。」

「・・・」

「無礼者でごめんなさいね、左のドア側の机にいるのが広報のシス・ライケル。で、真ん中の机の右側にいるのが一応副会長のララ・ニューウェイズよ。」

「ようこそ生徒会へ!!まずは最初に就く人を決めようか。」

「取り敢えず今空いてる書記の補佐と会計と総務をさせましょ。」

「じゃあ、其の儘シエルが補佐、ミナが会計、ゲイルが総務をするか。」

「業務の内容は一通り渡した書類に書いてあるけど、それでも分からないところは遠慮なく質問して。因みに会長は総務をしていたし、私は書記だけど、ララは会計得意だし、シスは...広報だけね、悲しい事に。ま、分からない事は聞いて、大きなミスをされるより全然いいから。」

 話を聞いていると思っていた二人は、いつの間にか業務に戻っていた。

 私は指示された通りフィーナさんの隣の席に着いた。


 する事は単純で、会議の資料を作ったり、会長挨拶の台本を作ったりと、基本机と資料との睨めっこだった。

 初日に出来る事なんて分かり切っていて、渡された書類を熟読し、業務内容、進め方を覚えることだけ。私は他の2人に比べてフィーナさんがいる分すること自体元々少なかった。

 その為ゆっくりと、だが着々と仕事を覚える事が出来た。

 他の2人は…まぁご想像にお任せしよう。だが、1つ言えるのは、学年トップは伊達では無いという事だけだ。


 初日の業務は終わり、寮へ帰ってきた。

 自室の机には、相変わらず婚約者候補の令息たちからの手紙と、両親からの見合いの催促の手紙が置かれている。

 大した量は無く、特に見る必要の有る物でも無い。けれど、少なくとも令息たちの手紙には、返事をしないのも無粋というもの。

 寮に来た翌日から毎日の様に送られてくるこの手紙は、一体どんな気持ちで書いているのだろう。

 声も知らず、私の作りものの薄っぺらい笑みしか知らない彼等は、私の事を、どんな人間だと錯覚しているのだろうか。

 まあ、私が全体的に大人びているのは自覚している。何せ30年は生きているからな。

 けれど、今の体はまだ成人していない。要するに子供な訳で、見た目もどちらかと言うと幼い方だと思う。

 きっと彼等は、写真を見て抱いた私への印象と、実際手紙を交わして見た私の印象は、相当かけ離れたものだろう。

 それはなんだか、罪悪感ではないが、申し訳なくなってしまう自分もいて、それがとても、凄く気持ち悪く感じてしまう。

 自分ではない自分がいて、それが内側から自己を書き換えようと、置き換えようとしている様に感じてしまう。

 私は私で、他の誰でもない。誰の操り人形でもなければ、誰かに心酔していて言い成りな訳ではない。そう言い聞かせ、便箋へインクを落とした。

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