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第32話 キラービーの巣の駆除

「あそこが私の家です」


 しばらく歩いた所に、クラリスの家があった。木製の素朴な家だ。


「あの家に両親と三人で暮らしているんです」


 クラリスは家のドアを開ける。


「お父さん! お母さん!」


 家の中にはクラリスの両親がいた。


「もう、クラリス! 一人でどこに行っていたのよ!」


「そうだぞ! クラリス、外には今、怖い蜂が沢山飛んでいるんだ。もし襲われたらどうするんだ!」


「は、はは……」


 クラリスは苦笑を浮かべる。


 もし襲われたら、ではなく実際に襲われたのだが……。


「ん? 誰だ? お友達でも連れてきたのか?」


 クラリスの父が聞いてくる。


「お友達じゃないの……その、湖に水を汲みに行ったら、その怖い蜂に襲われて……」


「だから行っただろう! 一人で行くなって!」


「で、でも……生活していく上で水は必要だし、大丈夫かなと思って。け、けど、襲われた時、この人達が助けてくれたの! このロキ様達はすっごく強いの。あの怖い蜂をやっつけてくれたの! この人達ならきっとあの怖い蜂を皆やっつけてくれるわよ!」


 お礼を貰えるどころか、厄介事を押し付けられそうな気がする……。まあいい。気が気ではなかったし、どの道そうしようと思っていたのは確かなのだ。


「とりあえず、せっかくのお客人を立たせたままなのもあれだから、一旦お茶でも飲んで落ち着きましょう」


 クラリスの母の提案で、お茶を飲んで落ち着いて話をする事になったのだ。


 ◇


「はぁ~……おいしいです」


 メルティはおいしそうにして紅茶を飲んだ。


「あら? そう……お菓子もあるから遠慮なく食べてね」


「頂きます!」


 ガツガツガツ。メルティはお菓子——クッキーだのキャンディだのを遠慮なく口に放り込みバリバリと頬張っていく。


「ははは……よく食べるわね。この子……」


 クラリスの母は苦笑いを浮かべた。


 お茶を飲むのも程々にして、俺達はこれまでの経緯を話した。自分達が冒険者である事。そしてキラービーの退治を冒険者ギルドから依頼されて来ている事。そして、その結果としてたまたまではあるがクラリスを救った事。


「……そうか。村の方で冒険者ギルドの方にキラービーの駆除を依頼していると聞いていたが、君達がそうだったのか。ありがとう、君達のおかげで私達の娘の命は救われたよ」


「ええ、本当にありがとう。あなた達がいなかったら、うちの娘がどうなっていた事やら……想像するだけで恐ろしいわ」


 クラリスの両親は感謝の言葉を述べる。


「あなた達みたいな頼もしい冒険者が来てくれたのなら、それはもう、あの怖い蜂の被害もバッチリ解決できるわね」


 クラリスの母はそう楽観的な事を言っていた。


「それがそういうわけでもないんです」


「え? そうなの?」


「俺達はまだEランクの冒険者パーティーです。キラービーの巣まで駆除するように依頼されているわけではないのです。もっと上位の冒険者パーティーが駆除する手筈になっているのです」


「そ、そうなの……残念ね」


 手筈になっている……。そういう手筈にはなっているが、それが何時になるかなどわかっていない。一週間後なのか、一カ月後なのか。間違いなく言える事は巣を駆除しない限りはキラービーは繁殖し、もっと多くの近隣住民達が被害に合っていく、という事だけだ。


「ロキ様……このままこの人達を見捨てるのは可哀想です」


 そう、メルティは言ってきた。


「……それもそうだな。放っておく事は出来ない」


 キラービーの巣の駆除は冒険者ギルドから正式に依頼されているわけではない。故に正当な報酬が得られるわけではない。

 

 だが、このままキラービーの巣を放っておく事も憚られた。


「君達がキラービーの巣を駆除してくれるというのなら非常に助かる事だ。もし駆除をしてくれるのなら、村長の方に掛け合って、冒険者ギルドの方から正当な報酬を貰えるようにして貰うよ。だからどうかキラービーの巣を駆除してはくれないだろうか?」


「どうかお願いします。冒険者の皆様」


 クラリスの両親は俺達に頭を下げて頼み込んでくる。


 断る理由はなかった。元々正当な報酬などなかったとしても放っておけなかったのだ。勿論、相応の報いがあるに越した事はないが……。冒険者というのはあくまでも稼業である。慈善活動をしているというわけではないのだ。別に人助けの為だけにやっているわけではない。だが、結果として人が助かる分には越したことはなかった。


「わかりました。俺達でキラービーの巣の駆除に当たってみます」


「ありがとうございます……きっと近隣住民の皆、喜びます」


 こうして俺達はキラービーの巣の駆除へと向かう事になったのだ。


 



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