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第1話 勇者パーティーを追放される

「……一体、どうしたって言うんだよ、ロベルト。話って……」


 それある日の事だった。鍛冶師である俺は勇者であるロベルトに宿屋の一室に呼び出された。


「言わなきゃわかんねーのか? 薄々感じてるだろ? なっ、ロキ」


 ロベルトは見下したような眼差しを俺に向けてくる。


「……いや、全く見当もつかないな……言いたい事があるならはっきりと言ってくれよ。時間が勿体ない」


「はぁ~……仕方ねぇな。めんどうくせぇ」

 

 ロベルトは溜息を吐き、気だるそうに語り始めた。


「単刀直入に言うぜ。お前はクビだ。ロキ。荷物をまとめて俺様のパーティーから出ていきな」


 ロベルトの口から飛び出してきた言葉は俺が予想だにしていない言葉だった。あまりに衝撃的な台詞に俺は動揺を隠せそうになかった。


「な、何を言っているんだ! ロベルト! どうして俺がクビなんだっ!」


 同郷の幼馴染であるロベルトと俺はパーティーを組み、それから俺はパーティーに貢献してきたつもりだった。


 鍛冶師として武器や防具を作るのは勿論の事、戦闘で装備がボロボロになっても一晩中修繕に明け暮れ、性能が落ちないように努めてきた。


 それだけではない。闘えない俺は料理や洗濯などの雑務を率先して行ってきた。皆がやりたくない、荷物持ち(ポーター)の役割だってやって、パーティーに貢献する為に必死にやってきたつもりだ。


 その甲斐あって、俺達のパーティーは連戦連勝を重ね、その実績を着実に積み重ねてきたのだ。


 その破竹の快進撃に、俺が僅かばかりの貢献をしていないどころか……お荷物になっているとでも思っているのか? ロベルトは。まさか、俺が鍛冶師として闘えなかった事を理由に……。


「言わなきゃわかんねぇのかよ。ロキ。それはよ、お前が戦闘に参加できない雑魚野郎だからだよ」


「た、確かに俺は戦闘に参加できなかった……だけど、ただ闘えれば偉いってわけじゃない。サポートする役目がいなければ、皆は十分な力を発揮する事ができないんだ。鍛冶師みたいな武器や防具を作ったり、修繕する役割がいなければ、立ちどころにパーティーは機能しなくなるんだぞ」


「……今までのてめぇの働きには感謝してるぜ。こうして俺様は最強の鎧……ヒヒイイロカネ製の防具と」


 ロベルトは自身の防具を指し示す。


「それからこの聖属性で最強の剣である――このエクスカリバーを手に入れる事ができたんだからな!」


 そして剣を天高く掲げた。


「……俺様はもう、完璧になったってわけよ。もうお前は用済みだ。闘えもしない鍛冶師のお荷物野郎である、てめーはもう必要ないんだよ」


「……くっ」

 

 誰がその装備を作ってやったと思っているんだ。僅かばかりの恩義も感じていないのか。流石の俺も憤りを隠せそうになかった。


「お前みたいな闘えない無能を追い出して浮いた金で、今度はもっと有能な奴をパーティーに入れるつもりなんだよ……いいから、出て行けよ、ロキ。お前の居場所はもう、ここにはないんだ。これはパーティー全体の総意なんだよ」


「パーティー全体の総意?」


 俺は耳を疑った。


「ああ……お前みたいな無能はパーティーにいるだけ迷惑だ。そう皆、口を揃えて言っていたのさ。クックック。哀れな野郎だな。他の連中に相談したら同情のひとつもされなかったぜ」


「そ、そんな……皆はそんな風に俺を思っていたのか」


 ロベルトから告げられた内容に、俺は今まで以上のショックを受ける。


「良いから出て行けよ……ロキ。さっさと荷物をまとめてな」


「くっ……ああ! わかったよ! こんなパーティーこっちから出て行ってやるよ!」


「……へっ。さっさと出て行けよ。この無能野郎……と、言いたいところだけどな。出番だぜ」


「なっ!」


 俺の周囲に、数人の男達が姿を現す。黒い衣装に身を包んだ、明らかに怪しげな男達だ。間違いない、こいつらは闇の世界の住人だ。仮にも勇者であるロベルトが関わるような男達ではない。


「……ど、どういう事だ。ロベルト……こいつらは」


「お前を野放しにしておくと、何かと不都合なんだよ……」


 俺は魔法をかけられる。眠り(スリープ)の魔法だ。


「うっ……ううっ……」


 俺の意識が段々と失われていく。その薄れゆく意識の中で、俺はロベルトと連中との会話を耳にした。


「へへへっ……旦那、どうしやすか? こいつは。殺しちまいますか?」


「……いや。そいつはまずい。殺せば血の跡が残るし、死体の処理も大変だ」


「……だったらどうしやす?」


「この街の近くにSS級の危険なダンジョンがある。そこまで運んで、それから遺棄しろ。こいつが自身の無能さを恥じて、自殺目的でそのダンジョンに踏み入った風に装ってな」


「へっ。わかりましたぜ。旦那。それじゃあ、こいつを運んでダンジョンに捨ててきますぜ」


 こうして俺は男達に運ばれていった。そして俺の意識は途切れたのだ。


 俺は男達の手によって、SS級の危険なダンジョンである『ハーデス』に捨てられる事となった。

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