こうすれば、半狂乱になってオンナは自らホックを外す ③
いったいどのあたりだ!ここは…
私は蹲っている山口くんの背中にストッキングの足をのっけながらスマホの地図を確かめる。
あ、別にプレーじゃないよ。
もう少し前から説明すれば良かった。
とにかく吐かせようと、カレを側溝に引っ張って行って自分で指を突っ込ませ、戻させた。
私はもちろんカレには毛ほども触りたくないので、できる限り“リモート指示”したが、まあ、あんまり可哀想なので、パンプスを片っぽ脱いで、足の裏で背中をさすってやっていたわけだ。
ていうか、これ、やっぱ傍目にヤバいよね。
こんなの知り合いに見られたら、『お嫁に行けない』
当ては無いけど…
少し落ち着いた様なので、私は自販機でペットボトルの水を2本買って来て、カレに投げてやった。
「そいつで手と口を漱ぎな!」
「アンタ家どこ?」
「…越谷」
「ええ、それ全然私と逆方じゃん!! こっちは多摩川越えようと思ってたのに」
くそ親父ども!!
いい加減な配車しやがって!!!
「じゃあ、ここでさよならだね、私、まだ電車あるからナビで駅まで行くわ」
コイツ!勢いよく手を挙げて
「送りま~す」とのたまう。
「いらない、アンタ足手まとい、アンタ連れて駅まで行ってたら終電乗り遅れる」
「んー 分かった おちゅかれさまでした おやすみ~」
おいおいおい
道路で寝るな
バカ!
可哀想だが、ヒールで蹴とばしてムリムリ、カレを起こす。
「寝るんなら、どっか公…」
言い掛けて言葉を飲み込む。
今は冬だし、物騒だからなあ~
思わず空を仰ぐと…
なんで、こんなネオンが目に入るかな…
ラブホのネオンが…
ネオンを頼りに行ってみると、いかにもって感じの外装ですぐに分かった。
料金は…宿泊¥6700均一かあ 高いんだか安いんだか見当つかねえ、なんせご無沙汰だからなあ…
私は思わず指を折ってしまう。
あの日、ラブホに引っ張って行かれたのは…
ヤバい!両手の指が折れてしまった。
ホント、ヤバい
そんなにも年数経ってたのか…
脳内エロ中2病のハゲ親父…何年居続けんだよ…
まあ、色々深く考えるのは今は止めよう。
私は、自分の財布から支払いして
十分みっともないのだ。
コイツを部屋に放り込んで
さっさと駅までたどり着かないと
終電間に合わない。
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部屋に入ってとにかくカレをベッドに寝かせ、コートとジャケット、バッグをテーブルの上に置いてトイレだけ借りた。
カレ宛てのメモ(¥6700の請求も含む)を書いて、立ち上がったらカレもムクリと起き上がり、よろよろと私のところへ来て頭を下げる。
「どうもありがと…ゲロゲロゲロ」
「アッー!!!!!!!」
私は思いっ切りヤツを蹴っ飛ばして
バスルームへすっ飛んだ。
アイツ胸元にゲロ吐きやがった!!!!
シャワーフルオープンしてブラウスにババシャツ、そして…ブラ…
泣きすぐる!!!!
取りあえず落ち着いた。
スカートから脱いで
可哀想な下着たちを洗ってやるしかない。
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めちゃめちゃ慌てて外したから…ホック大丈夫かしら
ラブホのバスルームで、胸も露わに…
ナニをしないでブラを洗ってる私って何??
めちゃめちゃ腹立ったけど
シャワー浴びてるうちに
段々心配になって来た。
バスタオルを頭に巻き、バスローブを羽織って
そっとカレを覗いてみる。
蹴とばされたそのままの姿勢で転がっているので、ぎょっとして近づくと
軽い寝息をたてている。
コイツ、本格的なバカだ!
私に向かって吐いたので、コイツ自身はあまり被害が無く、それがまたむかつくのだけど
このままにもして置けないかあ
私もお泊りだわ…




