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喪女 華恵さん  作者: 黒楓
17/24

夜明けの月

華恵さんの“恋人”の……風俗嬢のミスディオ(源氏名 紗英)さんのお話です。






 4本目の客は()()()で……

 こちらへ出張に来る時の“夜のお供”に私を呼ぶ鈴木さんだった。


 で、私は今、ラブホ備え付けの電気ケトルで彼にモーニングコーヒーを入れてあげてる。


「いつもラブホに呼んでもらえるのはありがたいんだけど……大丈夫なの? 私ならビジネスのシングルで“時間切り”でも平気だよ。そういう客もいるし、何とかなるもん」


「えっ? なんで?」


「んー 私が気にすることじゃないんだけどさ、会社で宿泊費の精算の時に困らない? ラブホだと……」


「ああ…… そういう事! ウチは宿泊費一律7000円支給だから領収書は不要なんだ」


「そっか、アハハハ つまんない事、聞いちゃったね。ハイ!コーヒー!」


 鈴木さんは手渡されたコーヒーに一礼して言ってくれる。


「ありがとう。そういう気遣いを紗英(さえ)ちゃんはしてくれるから……好きなんだ」


「ウフフフ 照れますねぇ~その言われ方は……こちらとしてはホテルじゃなく私にお金を掛けて欲しいからさ。確かにオールなら私もゆっくりできて……楽して稼げるって感じだけど、それよっか回数呼んでくれた方が私の“実入り”はいいんだ!」


 私の言葉に鈴木さんは笑いながらバスローブを脱ぎ、シャツに手を掛けた。


「あ、ちゃんと指輪しなよ!」


「指輪か……紗英ちゃんとの恋人タイムも終了だなぁ~」


「その物言いだと、私との事は“遊び”じゃなく“不倫”になっちゃうじゃん! 奥さん気の毒だよ!」


「つれないなあ~紗英ちゃんは」


「だから私の事はお金で釣って! キスしてあげるから」


 そう言って私は……鈴木さんに“ちゃんとした”ディープなキスをしてから、首に回した腕をほどいて手のひらで彼の頬を包んだ。


「また呼んでね」



 --------------------------------------------------------------------


 ホテルを出て、鈴木さんとは別の方向へ歩いて行く。


 本当は……オールは“楽”とは言えない。


 一晩中、どこかで神経を尖らせているし、当然の事ながら熟睡もできない。


 それに……

 鈴木さんはいい人だけど……イビキがうるさい。

 逆にこっちがイビキかいてもマズいしね。



 見上げると“ほぼ満月”が色を抑えた空に浮かんでいる。


 頭の中に小鉢の中で光っている生卵の黄身が浮かぶ


 そして、鼻にドスン!とした匂いの記憶が……


「ああ~牛丼食べたい!!」



 “4本”の通過の為ではない別の類の下腹部の痛みが

 いつの間にか、もんやりと居座っていて……


 私は頭の中の“カレンダー”をチェックしてみる。


 どうやら今回は


 ちょっと早いようだ。


 仕事はしばらくお休みだな……


 さて


 “役立たず”の私は

 どうすれば良いのか……


 差し当たって牛丼食べて


 ドラッグストアとコンビニを

 ハシゴしよう。




                   終わり







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― 新着の感想 ―
月で月なのですね! なんだか気が利いています(⑅•ᴗ•⑅) 風俗だと暗い雰囲気なのかかなって思っていましたが、ミスディオさんのお話しは妙に爽やかですよね(o^―^o)ニコ
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