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自宅警備員を甘やかすな  作者: 野島なの
2/6

卵焼きの味はその日の気分で


今日は、日曜日か。自宅警備員のののかには曜日感覚がほとんどないが、日曜日だけはすぐ分かる。


美味しそうな朝ご飯の匂い、朝の情報番組のお姉さんの声、それに混じるぐるぐると回る洗濯機の音、ーそして、何よりせっせと家事をする空太の存在。



「...空くん、おはよ。」

「おはよう。今日はのんたんの方が早かったね。」

紺色のエプロンを掛けた空太が言う。早かったというのは、私の起きる時間と空太が今日の大方の家事を終わらせるまでの時間の競走のこと。休みの日は出来るだけののかと時間を共有するため、家事などは早く終わらせてしまいたいらしい。お休みの日くらい自分を甘やかしなさい!、とののかはいつも思うし、空太にも言っている。


そういう訳で、空太の朝は仕事が休みの日も早い。ののかが起きる一時間半前には起きて、朝ご飯の準備、部屋のお掃除、ゴミ出し、お昼ご飯の準備までを終わらせている。



「のんたん。朝ご飯に卵焼きを作ろうと思うんだけど、甘いのが良い?しょっぱいのが良い?それとも、あ・た・し?♡」

どこの若奥さんだ、ののかは心の中でツッコみながら、「んじゃー、空くんにしよーかなー。」と棒読みで答える。

「あら、嬉しい♡」

棒読みなんてお構い無しで、空太はご機嫌の様子。喜んでいただけたなら何よりです。



空太は朝から元気だ。ののかが夢を追いかけて忙しくしていた頃も元気だったけど、私が家にいるようになってから、さらに明るくなった気がする。若奥さんネタの頻度も、前より増えた。


「喜んでる場合じゃなかった。卵焼き、どうする?昨日バター買ったから、バターたっぷりあまーい卵焼きにする?」

「え、美味しそう。じゃあ甘いのでお願いします。」

「かしこまりました、お嬢様。」


律儀にお辞儀をしてニヤッと笑ってから、空太はキッチンへ消えていく。何となくその後ろ姿が見えなくなるのが寂しくて、ののかはとことこと空太の後ろをついて行った。


「え!!?どうしたの、のんたん!珍しい。」

キッチンに立つ空太に、ののかはぴたっと体をくっつけた。

「...だって、 今日は空くんの気分だから。」

「...そっか。朝から幸せだな。」



ののかは思う。空太がいなければ、今頃私はどうなっていただろう。夢のためだけに生きてきたののかには、何もなかった。何も残らなかった。

空太が居てくれて、本当に良かった。触れた体に伝わるこの温もりだけは零さないようしようと、強く思う。




「私も、毎日幸せだよ。」

ぽそっと聞こえるか聞こえない声で呟いた。

目の前のフライパンではジューッとバターがいい匂いを立てて、広がっている。そこに空太が甘い甘い卵液をゆっくりと入れた。

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