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4話「いざ迷宮へ」

昨日は、ぐっすり眠れなかった。

そりゃそうだろう。ゴルダさんが拐われたんだ。

眠れるわけがない。


外が明るくなってきたので、身体を起こし、動きやすい服装に着替える。


「…これ、持っていくか」


部屋の中にある片手剣を取り、腰に差す。

護身用に持っていた普通の剣だが、生身よりはマシだろう。


部屋の外に出ると、ちょうどセリアも出てきた。

セリアは、昨日と同じ服装だ。

杖も持っている。


「おはようアルバ」


「あぁ、おはようセリア。 …行くか」


俺とセリアは、簡単に食事を済ませ、すぐに酒場を出た。


出来るだけ早くゴルダさんを助け出したい。


迷宮は、ラミアからそう遠くない。

ラミアを出て数十分でついてしまった。


「…でけぇな…」


目の前にある建物は、俺が今まで見てきた物の中で1番大きかった。

いや、大きいというより、長いのだ。


雲に届くか届かないかくらいの高さがあり、見上げるだけで疲れてしまう。

これが迷宮…まだ、誰もクリアしていない、神器が眠る建物……


迷宮の入り口に続く階段を上り終えると、数十人のゴロツキと、奥にはジャック、そして、縄で縛られたゴルダさんがいた。


「来たかガキ共」


「馬鹿野郎アルバ!! セリアちゃんを連れて帰れ! 俺の事はほっとけ!」


ゴルダさんが叫ぶ。

残念だがゴルダさん。 それは出来ない。

俺にとってアンタは、第二の父親みたいな物なんだ。


本物の父親から貰えなかった物を、アンタから沢山貰った。


だから…


「絶対に、助けてやるからな…!」


剣を抜き、構える。

久しぶりだ。 剣を握るのは…


だが、不思議と身体は覚えている物なんだな。 

昔学んだ事を、鮮明に思い出せる。


「行くぜ、ゴロツキ共…!」


俺は、ゴロツキ達のもとへ走る。

ゴロツキ達は、各々剣を振り下ろしてくる。


まずは前にいる3人だ。


まず、右からの剣を交わした後、腹に蹴りを喰らわせる。

その勢いのまま、真ん中の男の剣を弾き飛ばし、斬撃を喰らわせる。


最後に、左の男の斬撃を交わした後に、男の身体を右上から左下に向かって斬る。


3人は血を流しながら倒れた。 だが、死んではいない。

死なない程度に加減したからな。


「…待ってろよジャック。 後悔させてやるぜ」


今度は、5人のゴロツキが襲いかかってきた。


「何人こようが、全員ぶっ倒して…!」


雷光サンダー・ストライク!!」


凄まじい速さで雷が通ったと思ったら、次の瞬間、目の前のゴロツキが、5人纏めて吹っ飛んでいった。


皆黒こげになっている。


「もうアルバ、先に行かないでよ」


セリアが文句を言いながら俺の横に来る。

そして、杖を構える。


「アイツは、2人で倒すって決めたでしょ?」


「あぁ、そうだったな…!」


俺は剣を、セリアは杖をジャックに向ける。


「…はぁ? なんで剣士と魔法使いが並んでんだ?」


ジャックが俺達を不思議そうに見る。

俺達からしたら、昔の事なんてどうでもいいんだ。


「…ゴロツキの数多いな」


「そうだね、20人は居るかも」


「左任せていいか? 俺は右をやる」


「了解…!」


俺とセリアは同時に走り出す。


相手が複数の時は…


「足場を…崩す…!」


剣を地面に叩きつけ、ゴロツキ達が立っている地面を破壊する。

ゴロツキ達はバランスを崩し、うまく立てずにいる。


その隙に近づき、全員の剣を破壊し、背中を斬りつける。

これで、完全に無力化出来た。


さて…セリアの方は…


「皆纏めて黒焦げにしてあげる!! 炎砲フレイム・バズーカ!!」


セリアの杖から凄まじい威力と範囲の炎が出て、10数人は居たゴロツキ共を纏めて飲み込んだ。


炎が消えると、ゴロツキ達は地面に倒れ、黒焦げになっていた。


…相変わらずすげぇ威力だなぁ…


「さて、あとはお前だけだぜ? ジャック!」


ゴロツキ共は、剣を持っていたが、扱い方は素人だった。

だから、ちゃんとした剣術を習っていた俺と、ラミア魔法学園で学んでいたセリアは何の苦労もなく勝つ事が出来た。


「く、くそガキ共が…! 」


ジャックは、ゴルダさんを抱えながら迷宮の入り口に走った。


まずい…! 迷宮は1度入ったらクリアするまで出られないんだぞ…!!?


「待てジャック…!」


手を伸ばすが、ジャックが迷宮の扉に手をつける方が早かった。


次の瞬間、俺達を光が包んだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……は…?」


眩しさに目を閉じ、ゆっくり目を開けると、俺は全く知らない場所に居た。

周りは壁で囲まれ、一本道の薄暗い空間が続いていた。


後ろを見ると、セリアも同じように不思議そうに周りを見ていた。


「これは…転移魔法…?」


「転移…? って事は!」


「うん。 多分…ここは迷宮の中だね」


迷宮の中…つまり、俺達がここを出るには、この迷宮をクリアしないといけないわけだ。


しかし、どこを見てもジャックとゴルダさんが見当たらない。

俺達とは別の場所に転移したのだろうか?


「アルバ! 後ろ!」


セリアが叫び、俺はすぐ後ろを振り向く。


すると、危険なモンスター、ミノタウロスが斧を振り上げていた。

ミノタウロスの腕力は人間の数倍。 まともに受けたら死ぬ。


俺は、ミノタウロスの斧を回避し、素早く後ろに回る。


「くらえ…! 」


ミノタウロスの背中を斬りつけようと剣を振り下ろしたが、ミノタウロスは素早く俺の剣を避けた。


「何…!? ミノタウロスはこんなに速く動けないはずだぞ!?」


ミノタウロスは、斧を水平に振り、俺の身体を切り裂こうとしてくる。


…まずい…! 当たる…!


雷光サンダー・ストライク!!」


ミノタウロスの身体を、雷が貫いた。

ミノタウロスは痙攣して横に倒れ、塵になって消滅する。


この世界のモンスターは、倒すと塵になって消え、宝石と素材を落とす。 この宝石は高値で売れ、素材は防具や装備になる。


「助かったぜ…セリア」


「迷宮のモンスターは、外のモンスターよりも凶暴で強いらしいんだ。 気をつけて進もう」


やはり、数年間剣を触っていなかった俺よりも、セリアの方が強いな。

戦闘のメインはセリアにした方が良いかもしれない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


あの後、俺達は迷宮をひたすら進んだが、新しい物は何も無かった。

あるのは、道に落ちている人の骨と、壁に書かれた謎の文字だけ。


「迷宮って言うだけあって、どこに行けばいいか分からねぇな…」


そうぼやきながら歩いていると、右から何かの足音が聞こえた気がした。

だが、おかしい。 右はただの壁だ。

ただの聞き間違いだろう。 そう思い、歩き出そうとしたが…


「…いや…待てよ…?」


俺は、右の壁をトントンと叩いてみた。

すると、音が反響した。

壁で埋まっているなら、音は返ってこないはず。


なるほどな…分かったぜ!


「おらぁ!!」


俺は、剣で思い切り壁を斬りつける。

壁は崩れ、壁の奥には、部屋があった。

部屋の真ん中には、下の階へと続く階段があった。

ビンゴだ。


「えぇ!?」


後ろでセリアが驚く。

俺と、空いた壁の方を何回も見ている。


「さっき、右から足音が聞こえたんだ。

だから、右側にも空間があるんじゃないかと思ってな!」


「なるほど…!」


どうやら迷宮は、普通の考えではクリア出来ないようになっているらしい。


俺とセリアは、階段の前に行き、深呼吸をする。


「…あれ? さっきアルバ、足音が聞こえたって言ったよね?

この部屋、誰も居ないけど…?」


…確かにそうだ。 この部屋は、決して広くない。

なのに、さっきの足音の主は何処にもいない。


…何故だ…?


…まさか…!?


俺は、素早く顔を上にあげる。

すると…いた。


上から、トカゲ型のモンスター、リザードマンが、セリアに向かって刀を振り下ろしていた。


「くっ…! セリア…!」


俺は、セリアを突き飛ばす。

だが、そのせいでリザードマンの刀を避ける事が出来ず、背中に思い切り斬撃を喰らってしまった。


「アルバ!!?」


背中が痛い。 血が流れている。

まずいな…こんな迷宮の中じゃ、治療は出来ないってのに…!


「キヒヒヒヒ…!」


不気味なリザードマンの声が、部屋に響いた。

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