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第八話

「特に何もおきそうにありませんね」

「そうだな、少しつまらん」


 俺達は適当に町を歩き回っている、人通りの多いところから少ないところまで。

腕章をつけている為、周りから注目されることが多い。そして俺は今とても苦しい。

 別に注目されることが苦になっているわけではない――なら何故か?

それは隣を歩く少女二人のせいだ。アリスさんは朝からずっと不機嫌だし、剣さんは話しかけづらい。

沈黙の中でただ黙々と歩くことがこんなにもつらいとは思わなかった。

 それに先ほどの剣さんのつまらない発言からして、この人もどうやら温和そうではなく好戦的なようだ。

ちなみに剣さんの日本刀は布に包んであって中身が見えないようになっている。



(どうせなら御影達といったほうが正解だった……)


 好戦的な人物が居てなお、居心地が悪いのなら居心地がいいほうに居た方が正解だ。


「此処も以上なさそうですね、次何処に行きます?」


 一通り歩き回ったが特に異常はない、だからと言って俺から切り上げましょうはいいづらい。


「いえ、今日はここら辺にしておきましょう」


 願ってもない要望がアリスさんの口から出た。俺はそれに同意し剣さんも素直に同意してくれた。

三人とも帰路につく。俺と剣さんはどうやら一緒の方向らしいが、アリスさんは速攻で車を呼んだため解らなかった。

 腕章を取ってパトロール中も持っていた鞄にしまい帰路につく。


 ………………………………………気まずい。

帰る方向が同じな為自然と一緒に帰る的な事になってはいるのだが、何も話すことがない。

 だからといって喋りかけて見ようとする勇気は俺にはなく、ただ事態がこれ以上悪化しないことを願うしかできない。


「そういえば聞きたいことがあったんだがよろしいか?」


 内心驚いたが剣さんの方から話しかけてきてくれた。


「何ですか?」

「いや、幸也殿の友達の御影殿の能力は入学式で把握しているのだが、幸也殿の能力がわかっていなくてな

 これから共に行動する機会が多いのだから少し知っておきたいのだがいいか?」


 いいか? と聞かれてもいきなり最も話題にされたくないワードだ。

普段だったら適当な能力を言ってはぐらかしただろう。

――でも


贋者フェイカーです」


 何故か俺は素直に言ってしまった、剣さんが質問をしている時の微笑みにやられたわけではない。

ただ何となく、嘘がつけなかった。多分それは気まぐれで馬鹿な事だろう、でも何故か素直に俺は言っていた。


「贋者? それは確か他人の能力を真似する正体不明の奴だな?」

「そういうことになってますね」

「本当か? いや………嘘ではなさそうだな、それより正体不明で通っているのに拙者に教えていいのか?

 もしダメなら忘れるよう努力するが」


 そういって近くの電柱に頭をぶつけようとする剣さんに思わず笑ってしまった、すぐさま睨まれて笑うのを止めたが、

笑いがこみ上げてきて止まらない。


 多分、何となくだけど、剣さんのそういう普通の人とは違った感覚を感じて、素直に言ってしまったんだろう。

御影ではないが本能的だと思う。


「大丈夫ですよ、剣さんが言いふらさなければですけど」

「そうか、それなら大丈夫だ、口は堅いほうだと自負している」

「それは安心しますね」


 自信ありげに言う剣さんに本心から安心する、もしもこれで口が軽いなどと言われたら、自分がとった行動を一生後悔してしまう。

剣さんは少し恥ずかしそうに俯きながら何かをいいたさそうにしている。


「どうかしましたか剣さん?」

「いや……あって間もないのに言うのも失礼かもしれないが、さん付けや敬語は止めてもらえないか?」

「え?」

「これから行動を共にする仲間によそよそしく去れるのは嫌なのだ、無論拙者も敬語等は止める」


 仲間――恥ずかしそうな表情で言っている剣さんに心が高ぶる、高ぶる心を沈めながら俺は普段を意識して喋る。


「OK、それじゃこれからは剣と呼ばせてもらう」

「急に頼みごとをして悪かったな、性分でな」

「気にしないでくれ、俺も敬語は得意じゃない」


 普段、騒いでばかりで御影達とぐらいしか接していない友達の………悲しいながら少ない俺にとって

いきなり仲間なんて優しい言葉を言ってくれる人物から頼まれたら断れないだろう。

 情に脆い性格ではないと思っていたが、案外違ったのかもしれない。


「それじゃあな、俺はこっちだから」

「あぁ、さようならだ」


 途中の分かれ道で俺と剣は別れる、最初の頃の印象とは全く違う剣に内心驚いてはいるが、その驚きが良い方なので寧ろ心地よい。


(意外と楽しかったか)


 そう思えると意外と生徒会に入ったことは良かったのかもしれない。

平和で温和な生活を普段は望んでいるくせに刺激が来るとすぐにこれだ――俺は少し優柔不断なのだろうか?


 俺は人通りの少ない帰り道とゆっくりと歩いていく。

人は進行方向から歩いてくる人物が一人のみ、携帯で話している帽子を被った青年のみだ。


「…………だ、………そ、せ……を、能力者………にするのだ」


 断片的に聞こえてくる声、別に盗み聞きがしたいわけではない、ただ何となく意識がそちらに向いている。

青年とすれ違うギリギリのところ。


「我らが主、暴君の申すがままに」


 はっきりと聞こえたのはそこまでだ、別になんてことはない、たぶんどっかの怪しい宗教団体の人間だ。

何か目が危なかった気もする。


 俺は面倒な考えを停止して家に帰った。

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