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最終話

「居場所は特定できてるんですか?」

「詳しくは特定できてないですが、目撃情報の多い場所などからある程度は割り出しています」


 なら探す手間は省けそうだ、最も探し出した後が問題なのだが。

絶対的な能力を打ち破らなければならない、破ったとしても肉体的能力も完全に負けている。

 相手の能力を封じつつこちらの能力を使わなければ勝てない。

封じて殴る。

至極単純で最も難しい。


「何か手があるんですか?」

「それが全く無い」


 目的地に向かいながら聞いてきたアリスに率直な感想を言う。

今の状態は封じて殴るではなく、正反対の封じられて殴られる状態だ。


「会長も暁も頼りにならないし、総合的に完璧に劣ってるからな」

「………わかってて逃げなかったんですね」

「まぁ、ね」

「もうすぐ着くぞ」


 前を歩いていた剣が教えてくれる。

その隣には会長が居るが、あくまで戦闘には参加せず道案内だけらしい。

後ろには暁と御影も居る。こちらは炎やら風やらを使う奴らの相手をするために来ている。

アリスと剣は他にも敵が居た場合のメンバーだ。


 少し歩いたところで会長が歩くのをやめて立ち止まった。

その真正面にはいかにも怪しい建物が建っている。


「何か、いかにも悪役ですよ見たいな感じの建物ね」

「確かにそやなぁ、でもまぁ何でもいいやん」


 話しながら御影と暁が左右に別れていく。

その先にはそれぞれ人が居た。


「どうやら誘っているらしいな」


 相手の親玉はどうやらこちらの作戦をくんでくれるらしい。


「そいつらの相手は頼んだぞ暁、御影」

「任しときなさい!」

「りょーかい」


 俺とアリスと剣は建物の内部に入っていく。

御影達はまず負けないだろう、それには自信があるが、俺が勝たなければどうしようも無い。

 建物の中は薄暗いがどうやら一直線らしく、そのまま歩いていく。


「このまま三人でいけるとベストなんだが」

「どうやら――無理なようだ」


 ヒュっという風をきるような音が聞こえたと思った次の瞬間には金属がぶつかり合う音が聞こえてきた。

前に居る剣が刀を抜いて何かを受け止めている。

 眼を凝らしてみてみると刃物――刀を受け止めている。


「――新手か」

「なかなか腕利きの者が居るようだな」


 前の方から男の声が聞こえてくる。

どうやらその男がこちらに刀を振り下ろしてきたらしい。


「コイツは私がやる、先に行け」

「おやおや? 女子おなご一人で私を抑えるとな?」

「そのつもりだが?」


 剣が切り込む、それを男は軽くいなしていくが、少しずつ俺達との距離が開いていく、

その間に俺とアリスは走ってさらに奥に向かった。

 剣のことが多少心配だが、体力を消耗させるわけには行かない。

去り際に、頼むと剣につぶやいて抜けていく。


「大丈夫でしょうか?」

「大丈夫だと信じるしかないな」


 後ろからは激しい金属音がする、幸いまだ悲鳴やらなんやらは聞こえてこないから大丈夫なのだろう。

急ぎ足で向かっていると一つの扉が目の前に立ちはだかる。


「まさにラスボス前ですね」

「ゲームだったらセーブして一気に行くところだけど、まぁセーブ無しで一気に行かないとな」


 思いっきり扉を蹴飛ばす、警戒心をマックスにしながら部屋の中に進入する。

部屋の中は先ほどとうって変わってかなり明るい。

 部屋の中央部分に男が立っている。


「よく来たな」


 嬉しそうに、そして悲しそうに男が笑う。

アリスを後ろの下がらせ、男と向き合う。


「負けるとわかっててやるのか?」

「まだ、決定事項じゃねないだろ?」

「無謀を冒すほどの馬鹿ではないと思っていたのだが、思い違いか」

「無謀かどうかはやってみないとわからないだろ?」

「テンプレートな答えだな、実につまらない」

「己を奮い立たせるのにはもってこいだろ?」

「まぁ、なん


 男が何かを言おうとしている瞬間に俺は走り出す。

能力を発動させる前に潰す、卑怯だろうと何だろうと関係ない。

 男の腹に容赦なく拳を叩き込む、すぐさま追撃で顔面に右のハイキック、勢いを殺さず左の裏拳。

俺は間合いを取るために後方に下がる。


全て確実に当てた。


 それでも男は平然と今なお立っている。


「人間の耐久力じゃねえな」

「ほめ言葉として受け取ろう」


 今度は男が即効でこちらに向かってくる、回避行動に出ようとした俺の行動を無理やり男は能力で止める。

顔面へ向けた男の右拳は見えない壁に遮られる。

 アリスがうまく能力でこちらを援護してくれている。

ガードはあちらに任せれば良い、なら俺はただひたすら攻めるだけ。


模倣イミテーション二刃)


 能力発動条件の二つ名は予め前に暁たちと決めている。

これは剣の能力だ。


 増えた二本の腕で男の腕を掴み、もう二本で男の腹を連続で殴る。

それでも男はうめき声ひとつ漏らさずに俺の腹部に蹴りを放ってくる、それをまたアリスの盾が防いでくれる。


模倣イミテーション空砲)


 これは入学式に御影に絡んできた男の能力。

二本の腕に大量の空気を圧縮させ男の腹に叩き込む、激しい衝撃を生み男は吹き飛び壁に激突する、壁は音を立てて崩れた。


 常人ならば意識など軽く飛ぶ攻撃に対しても男は平然と立ち上がってきた。

多少のダメージは与えられたかもしれないが致命傷には全く足りない。


 物理的ダメージはまず聞いていない、なら残りは炎と雷の能力があるが、それを確実に当てられるかが問題になる。

幸い今のところ相手は能力を使って行動を束縛してこないので当てられるが、こちらが起死回生の一手をうとうとしたときに

邪魔してくる可能性が高い。


「――そこの女が邪魔だな」


 男はその一言を言い終えた瞬間に走り出す。

俺を無視しアリスの下へ。


「逃げろ!」


 即座に叫ぶがアリスでは反応ができない。

瞬間的に俺は御影の能力を模倣し、アリスと男の間に入る。

 男の渾身の一撃が俺の腹部に直撃し吹き飛ばされる。

意識が飛び欠けそうになるのを唇を噛む事で押さえ、アリスの下へ向かおうとするが


「却下だ」


 ただその一言で俺の全身が動くことをやめる、即座に違う行動をし、動きを回復させるが

それが致命的な遅れとなって、アリスに男の強烈な一撃が入る。

僅かなうめき声が聞こえ、アリスは完全に沈黙する。


「まず一人」

「てめぇ……」


 即座にアリスに駆け寄り気絶しているだけだと確かめ男と向き合う。

圧倒的な威圧感をこちらに向けてくる男は笑っている。

――実に愉快そうに。


「ぶっ殺す」

「できるものならな」


 女性を殴って笑っているなど人としてどうかしている。


 能力を三つ連続で使ったが疲れなど無い、怒りでそんなものは無視だ。

こいつを倒せばいいのだ。後々疲労が襲おうが構いはしない。


 男の腹部、顔面を続けざまに殴るが全く動じない――完全に狂っている。


(痛覚が無いのかおい?)


 焦る心を抑えて確実に殴っていく、時折能力を使われ動きが止まっても即座に反応し別の行動を取る。

それを繰り返しながら殴り続ける、が。

長くは続かなかった。行動を拒否され動きが鈍った瞬間を完全に捉えられ腹部に重い一撃が入る、軽く宙に浮いた体に

さらに追撃がされる。意識が飛び次の瞬間には痛みで意識が覚醒する。それを何度か繰り返す。


「ゥグッ……ハ……ガァ……」


 全身が痛んで悶える。地面に臥した俺の背中を男は踏む。

立ち上がろうにも体に力が入らない。


「情けないものだ、威勢だけは良いが、力が圧倒的に足りてない」


 さげすむような眼で俺を見てくる。


「あの女もそうだ弱いくせにでしゃばるから痛い目に会う、対したこともできないのに

無駄だということになぜ気づかずに居るのだろうな」


 哀れむ様な眼でアリスを見る。ヤメロ、そんな眼であいつを見るんじゃねぇ。


「下らない理由でここに来て下らない理由で負けていく、弱者とはそういうものだ」


 下らないって何がだ? アイツの誰かの為になりたいってのが下らないのか?


「貴様も何だ? 無謀にも戦いを挑み哀れにも敗北し、何がしたかった?」

「人助けだ」

「勝てると思ったか?」

「……………」

「対した理由も無くここに来て大志を抱いた私に勝てるとでも?」

「黙れ……人殺し」

「無能な凡夫を消したぐらいでなぜ怒る?

何の能力も持たない人間なんぞもう要らないだろう?」

「能力者が偉いってか?」

「そうだ、我々は進化したのだよ」

「……くだらねぇ妄言だな」

「黙れ!」


 男が強く俺の背中を踏みしめてくる。


「たかだが変な能力が付いたぐらいで偉いだぁ? 馬鹿だろお前」

「ガキにはわからんさ、そこの倒れてる女もそうだ、富もあり能力もある、なのに何故、人助けなどしようとするのか」

「富があって能力があるからだ」

「そこがわからん、何故無駄な事をする?」

「無駄じゃねぇよ」


 俺は四つん這いになって立ち上がろうとする。男はより強く俺の背中を踏んでくるが関係ない。

男の足を払いのけ面と向かって対峙する。


「少なくともてめえが無駄だって言っていいことじゃねぇんだよ!」


 男の胸倉を掴んで叫ぶ。足が震える、立っているのが精一杯だ。

それでも倒れるわけにはいかない。他人を見下し助けることのできない最低な野郎に屈服するわけにはいかない。


「下らぬな、だがまぁ心意気だけは買ってやる、名乗れ小僧」

「あぁ?」

「偉大なる者に歯向かった愚者の名を覚えておいてやると言っているんだ」

「無礼な野郎だ、先に名前を言うのが礼儀だろ?」

「減らず口を、なら答えてやる、ヴォルフ・アヴェンジャー、私こそが偉大なる者であると」

「紅花 幸也だ覚えとけ、てめえを牢獄に叩き込む男の名前だ」


 言い終わった瞬間に俺とヴォルフは同時に動き出す。掴んだ胸倉を引っ張り勢いをつけて俺はヴォルフの顔面を殴り、

ヴォルフは俺の腹部を殴る。

 追撃をかけるべく動いた俺を能力で止め、ヴォルフは俺の顔面を殴る。

痛みを無視して俺は殴り返す。殴り殴られを繰り返し続ける。

 二発殴られては一発返す、圧倒的に不利な状況だが関係ない。

何発殴られようが倒れなければいいのだ、先に倒れなければいい。

 ただそれだけだ。


「しつこいぞ小僧!」

「クタバレ爺!」


 空砲、二刃、雷様、火達磨、次々に能力を連続で発動させ拒否されるのを防ぎながら攻める。

少しずつだが確実にきいている、あと少しあと少し、そう確信が持てる。

 殴り殴られ、確実にヴォルフは消耗している、ヴォルフの能力とて体力を消耗するはずだ。

それを連発しているのだから疲れていて当然なはず、なら最後はどちらが最後まで気力で立っていられるかだ。

 倒れた瞬間に防御も攻撃もできなくなる、立っていればまだ逆転はできる。

それだけ信じ切れそうな意識を無理やりつなぎとめる。


 あいつは自分の理想でアリスの信念を馬鹿にした。

下らないと、無駄だと。

 あいつの理想がどれだけ偉いのかは知らないが、アリスの信念が下らないはずは無い。


それさえ理解できぬヴォルフに負ける気などサラサラ無い。

 守ると勝手ながら誓ったのだ、なら勝たなければならない。

アリスの信念を、俺の信念で守るために。


 怒りと根性が全身に鞭を打つ。

何度も倒れかける体を無理やり起こし、傷ついた体の悲鳴を無視して動く。


 何本か骨も折れている、それでも倒れることは許されない。

確固たる信念が在るうちは負けられない。


 ヴォルフがとうとうぐらついた、俺は気合を振り絞り、渾身の一撃を顔面に叩き込む

――ハズだった。


 

 腕が途中で止まる、拒否されたそう理解する事が瞬時にできず、俺は完全に膠着する。

そんな俺にヴォルフは勝ち誇った笑みを向けて俺の顔面目掛けて拳を振り下ろした。


(……っちくしょう)


 ゲームーオーバー、そんな文字が頭に過ぎった瞬間、

男の拳は眼前で止まった。

 何かに阻まれたように。


「今です!」


 声を聴いた瞬間理解するよりも早く体が動く。

驚きを隠せないヴォルフの口を無理やり掴んで塞ぐ。


「大逆転だな」


 腕は上がらない、体は限界を迎えている、それでも最後の一撃を繰り出すために体は動いた。

上がらない腕の変わりに渾身の頭突きを食らわせる、男は白目を剥いてドサッと倒れる。

それに続き俺も全身の力が抜けて倒れる。


 今にも切れそうな意識の中で勝利を確信する。

アリスが駆け寄ってくる足音と御影達の声が聞こえた瞬間、俺の意識は途切れた。












 眼が覚めて見えたのは真っ白な天井、またか……と心の中で思い、俺は身を起こす。

周りを見てみるとどうやら前に居た病室らしい。


 そして前と同じく


「起きたんか」


 全く同じセリフを言いながら会長達が入ってきた。

前と違うのは雰囲気が明るい。


「えぇまぁ、どれくらい寝てました?」

「丸々4日くらいやな」


 前の倍か………、それでもあれだけ能力を使って無理したんだからこれぐらいですんだのはいい方だろう。


「にしても無茶しましたね」

「勝てたから万事おっけーです」

「何でそんなに無茶したのよ」


 アリスも御影も心配してくれているようだが、御影よ、バシバシと体を叩かないでくれ。

真面目に痛い……。


「まぁ、いいじゃん」

「アリスちゃんに惚れちまってカッコいいところ見せたくなったんか?」


 耳元でこっそりと暁が言ってくる、馬鹿言えと払いのける。


「剣とかも怪我は無いみたいだな」

「あぁ、全く持って何も無い」


 アリスも殴られていたようだが平然としているところを見ると大丈夫なようだ。


「これで一件落着やね」


 会長が満足げに言う、大変だったが終わってみると達成感があって悪くない。

荒事も嫌だ嫌だと思っていたがこういうのなら悪くないのかもしれない。


「こういうときに言う言葉があるよね」

「ん?」

「めでたし、めでたしってね」

「そうだな――めでたしめでたしだ」



 ――明日もまた今日のような平和な日であるとうにと少しばかり願ってみた一日だった――

最後までご愛読ありがとうございました。

中途半端な気がしたり起承転結が微妙な気がしたりと

多々反省しなければならない点がある作品ですが

最後まで読んでくださった方々に感謝の言葉を送ります。

なにとぞ未熟者なゆえ、つまらない話だったかもしれませんが、今後この経験を生かしてさらによりより作品を作れるようにしたいと思っています。

次に何か作品を投稿する場合はもっとよりよい物を

作りたいと思っています。

もしもこの先、作者の新作を見かけたら

またこいつかと思いながら慈悲深い眼でお見守りください。


それではまた読んでもらえる事を期待しながら

最後とさせていただきます。


ご愛読ありがとうございました。

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