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第十六話

「あ〜………少しやばいかも」


 俺は全身に極度の疲労感が襲っている。短時間に連続で三回能力を発動したからだろう。

御影の能力はもともと体に負担をかけるし、他の能力も模倣するためにかなり負担をかける。

 そんな訳で、俺は風から逃げ切った直後に地面に座り込む。


「大丈夫ですか?」

「意識もあるんで何とか………とりあえず暁とか呼んでもらえます?」

「了解しました」


 携帯で連絡を取り始めるアリスさんを見ながら俺は座るのも嫌になり、汚れるのもかまわず横になる。

意識はしっかりしているため、そこまでではない。以前に4個連続で使用した際に倒れた記憶がある。


「少し時間がかかるそうです」


 連絡を終えたのかこちらに視線を向けてくるアリスさんが話しかけてくる。

僅かに怒りと戸惑いの視線が混じっている気がする。


「貴方は何故………何故こんな事をしているんですか?」

「こんな事?」

「先ほどのような危険な仕事です、貴方は別に断れる、別に…………無理してやる必要はないですよね?」

「確かにやる必要は無いですね」


 少し前に考えていたことだ。流されてやったことだ。

別に正義感なんてこれっぽっちも無い。体が勝手に動いたなんて理由にならない。


(危険を冒す必要なんて無い)


 じゃぁ何でこんな事をしている?


「じゃぁ何故?」


 自分自身に問いかけても答えなど出ないのに、他人に聞かれて答えが出るのだろうか。


「アリスさんはどうしてです?」

「え?」

「アリスさんには何かあるんですか?」


(卑怯だよな)


 自分で答えが出ないから、アリスさんに聞き返している。


「私が裕福なところで育ったのは知っていますね?」

「えぇ、まぁ」


 どこかの財閥のお嬢様、入学初日に暁に聞かされた気がする。

俺はだるい体を起こす。


「私は小さいころからそれを不公平だと思っていました」

「不公平?」

「生まれた所が良かっただけ、運だけでそれからの人生が圧倒的に変わってしまうことがです」

「でもそれは……しかたがない」

「確かにその通りです、でも私は嫌なんです

だから私はせめて誰もしないような嫌な事を進んでやりたいのです」

「償いのようなものですか?」

「そうです、ただの自己満足ですけどね」


 アリスさんは何処か遠くを見ている。

なんとも立派な理由だろう、ある人は多分笑い、ある人は感動するそんな理由だ。


 なら自分はどっち側だ?


「笑ってください、馬鹿みたいだと、ただの自己満足でしかないと」

「―――笑えねぇ……」

「――え?」

「少なくとも俺は笑えない、何も考えてない人間に笑う資格は無い

………俺はアリスさんのような理由もないし、理由を作ろうともしなかった」


 考えるのが面倒だった? ただ思いつかなかった?

どちらもただの言い訳でしかないし、そんな人間が何かに向かって行動する人間を馬鹿にしていいはずが無い。

――――でも少しだけ理由ができるかもしれない。


「でもそんなだめな人間だからこそ、アリスさん以上の馬鹿になれる」

「馬鹿になれる?」

「俺は別に裕福でも何でもないけど……アリスさんの手伝いがしたくなった」


 正義感? そんないい物じゃない、ただ俺の目の前で寂しそうな目をしている少女の近くに行ってみたいだけだ。

―――らしくない、多分普段の俺を良く知ってる御影や暁なら必ずそういうだろう。


 自分だってそう思ってる。ただ目の前の少女の為に自ら荒事に巻き込まれようとしているなんて。


「………遠まわしに好意を伝えられているみたいです」

「そ………そんなこと無いぞ!」


 ははは……と苦笑いしながら必死に否定する。でもまぁ……そんな感じに我ながら変な風にいってしまった気がする。


「馬鹿な俺だけど、多少は力になれると思うんだ…………多分」

「最後に多分を付けなければ即感謝の言葉を述べてたんですけどね」

「じゃぁ多分を取り消してください」

「嫌です―――でも、素直に感謝はします、こんなつまらない女の手伝いをしてくれることを」


 アリスさんはそっと優しく微笑んでいる。今までに見たことの無い表情で。

いつも俺が見ているアリスさん無表情か少し怒っていた、そんな表情も良かったなんて言ったら変だろう

でも、微笑んでいる姿は素直に良かったって言ってもいいと思う。


(はぁ〜……御影に怒られそうだな)


 こんな面倒なことに自ら首を突っ込むと約束したのだ。

でも、御影なら許してくれる気がする。多分暁も。


「では、今回のこの事件も精一杯頑張ってくれますよね?」

「アリスさんが頑張るのなら」

「私はいつでも頑張っています………、後……その…………

いい加減その余所余所≪よそよそ≫しいしゃべり方止めませんか?」

「そうだな、俺もあんまり仲間に敬語ってのもすかないし、このさいだからアリスと呼び捨てにさせてもらう」

「それでは私も幸也と呼ばせてもらいます」


 少し恥ずかしそうに言うアリスを見て俺も少し照れてしまう。

入学式から幾日かたったが少しは仲良く慣れただろうか?

そんなことを思っていると遠くから御影たちの姿が見える。


「げぇ! 何かあまーい感じの空間になってるんだけど名にやったのよ幸也!」


 即効で何を思ったか御影が俺にドロップキックを仕掛けてくる。

今の俺によけられるほどの体力は無く思いっきり直撃する。


「おま……こっちは倒れそうなんだぞ!」

「幸やん、何やこのあまーい空間は?」


 お前までも言うか暁………

この後俺は散々御影にボコられた後、何故か後できた剣にもしばらく睨まれていた。

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