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第十五話


(ここまで炎を操れるやつなんて始めてみたな……)


 炎を操る能力者事態はあまり珍しくはない、ただ長時間安定した大きさでここまで操れる能力者は始めてみた。

今もギリギリのところで交わしてはいるが、だんだんと炎の速度が遅くなるのではなく加速していっている。


 尻上がりなのかはたまた遊んでいるだけなのか。


(―――前者だといいんだが)


 これ以上早くなってくると流石にきつくなってくる。

人一人抱えて避け続けるのにも限界が出てき始めている。逆転の策はない事はない。


「アリスさん、あいつ一定空間にある炎を操作してると思いますか? それとも自身で出した炎だけだと思いますか?」

「…………前者じゃないでしょうか」


 前者か後者かで圧倒的に戦略が変わってくる。

前者ならば最初に手のひらから出した炎以外も操れるが、後者なら自分で出した炎だけしか操れない。

 多分、普通の能力者なら戦う上で後者のほうが圧倒的にやりやすいだろう。


「あいつの能力に名前を付けるなら何にします?」

「………え?」


 だけど


「だから名前を付けるなら何にします?」

「今する会話ではないでしょう!」

「今する必要があるから言ってるんです!」


 俺は贋物≪フェイカー≫だ。


「早く!」

「火達磨でいいです!」

「了解!」


 模倣するなら強ければ強いほうがいい。


「おい火達磨!」

「誰が火達磨だってぇ? おーい?」


(条件は整ったはずだよ、な)


 見る限り発動条件も無さそうだ。

先ほどから火達磨使いも何も行動を起こしていない。


 

 贋物の発動条件は3つだ。

1つ、その能力を直接見ること。

2つ、能力にかかる条件があるのならば知ること。

3つ、その能力に自分以外の人間最低一人以上が名を付けること。


 二つ名ならば直接見れば2や3は自ずと情報が周りから入ってくる。


「正念場です、一気に行きます」

「火事場の間違いでしょう」


 どちらでもと呟き、一気に俺は加速する。

限界値は超えてはいけない。炎を強制的に振り切り、地面にしっかりと立つ。


(大博打だな)


 炎が方向を変えてこちらに向かってくる。


「燃え尽きろよカス☆」


 眼前に炎が迫ってくる。


(――――模倣≪イミテーション≫火達磨)




―――――――炎は………


「どーなってんだよ、おい?」


 俺無視して横を通り抜けた。火達磨使いはただ呆然としている。


「まぁいいやもういっちょぉ♪」


 再度炎を生み出し、こちらに向けてはなってくるが、やらせはしない。

俺も能力をフルに生かしこちらに向かってくる炎を静止させる。


(一定領域内の炎を操るほうでよかった)


 もしも違ったら相手の炎を止められはしなかった。


「賭け事の好きな人ですね」

「偶々です」


 火達磨使いの顔はすでに凍りついている。

俺の能力を知らなかったのだろう。完全に驚いている。


「第二ラウンドといかせてもうか」


 俺は制御の鈍くなった炎を無理やり上空にやり、相手との距離を走って詰める。


「接近戦といこうか!」


 男の顔面に渾身の拳を叩き込む。男はそれを何とか腕で防ぐと一気に距離を開く。

能力の続く約10分間は炎を受けない。

 ならその間に決めるしかないが、この男が何処までできるかが問題だ。

同時に他の能力を模倣して早期決着もあるが、戦闘不能にまで追い込めなかった場合敗亡くだ。

 最低でも逃げられるだけの体力は残しておかなければならない。


 男の右の拳が俺の顔面目掛けて放たれる。

だが圧倒的に遅い。


(接近戦慣れしてない?)


 体を横にそらし避けた瞬間、すぐさま相手の腿を右足で横薙ぎに蹴った。

相手の上体が少し沈みかけた所に、右の拳で鳩尾を殴る。強制的に前かがみになる男の背中に

俺は右足で踵落しを決めようとした瞬間――――左足を突風に持っていかれる。

 倒れる瞬間に手をつき、後方へ下がる。

そこへまたも風が襲い掛かるが、今度は後方にいるアリスさんによる盾で防がれる。


「――風使いかよ」

「そのようです、かなり察知しにくいため、私の盾は余り期待しないでください」


 そりゃ目に見えにくいものを感覚だけで防ぐなんて至難の業だ。


(逃げるしかないよなぁ……)


 先ほどまで血の上っていた頭も冷えてきている。

優勢から一気に劣勢へと変化した。

 アリスさんはまだ戦う意思があるようだが、無理やりにでもつれて逃げさせてもらう。

瞬時に俺は逃げる算段を立てる。


「形勢逆転だねぇ♪」


 男が笑った瞬間――俺は頭の中で考えた作戦を決行に移す。

炎はすでに男は操る様子がない、なら能力を瞬時に解除し


(模倣≪イミテーション≫雷神)


 電撃を一瞬だけ出力最大で迸らせる。閃光代わりの代用品だ。

発動と同時に目をつぶった俺以外――アリスさんも含め男の目をくらます。

 俺は全速力で男に駆け寄り顎に渾身の拳を叩き込んで戦闘不能にさせ、襲ってきた風を避けながら

いまだに目がくらんでいるアリスさんを抱えて逃げ出す。


「誰です!」

「俺ですから大人しくしてて下さい!」


 俺は路地裏を駆け抜けていく。幸いな事に風は長くは追ってこなかった。

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