第十一話
「昨日のことで話が有るそうなので生徒会室に来てください」
「今から?」
「今からです」
ホームルームが終わってすぐのことだ、アリスさんが俺の元に集まる御影達に話しかけてきたのは。
昨日のこと? と御影と暁は何かわからない様子だが、教えてないので当然だ。
行けば解ると納得させて、俺は剣も呼んで生徒会室に向かった。
「むぅ……授業を受けなくて良いのか?」
「生徒会の仕事だと既に先生に連絡が回っているはずです」
「わーぃ、公認のサボりだなんて理想的だね!」
剣は余り良く思って居ないようだが、俺達からすれば面倒な授業を抜け出せてラッキーだ。
俺の場合は成績が心配で少しばかり後悔をしているが。
にしても、昨日の事を説明するに当たってどうやって説明するかが問題だ。
俺の失態を思いっきり知られる可能性は低いだろう、言わないでくれと念を押しておいたのだ、流石に忘れてはいないはずだ。
「連れて来ました」
生徒会室に到着して中に入る。
「お〜ご苦労さん」
杏会長はベッドで横になっている、かなり眠そうだ。
それに疲れているような感じもする。ダルそうなのは昨日の印象からしていつものことなのだろう。
「それで昨日なにがあったん?」
「早々、何も聞いてないんだけど?」
御影と暁が早速その話題を切り出す。杏会長もそれがわかっていたのかゆっくりと体を起してこちらを向く。
俺達は適当に座り、話を聞く体制を作った。
「昨日な、能力者による殺人があったんよ」
「へぇ〜」
殺人と言われても御影は興味が薄そうだ、別に能力者による殺人は悲しいが珍しいことではない。
「それだけ?」
「いんや、そこで幸也君達が偶然その場に向かっててな、その殺人犯に襲われたんよ」
「捕まえたの?」
「それが思いっきり逃げられちゃってねぇ」
――役立たず、すぐさま罵倒の声が俺にかかる。
そんなこと言われてもと弁解しようとしたが、逃げられた上に殆ど何の情報も得ていないのだ。
得た情報も曖昧だ、俺が襲われた風を操る能力であろうことしかわかっていない。まさに弁解の余地が無い。
「まぁ、幸也君が怪我してしまったし、犯人に逃げられてるから一応報告しておこうとおもうてな」
「……怪我?」
御影がこちらを向いた――瞬間、俺の腕を思いっきり握ってきた。
俺は傷口を圧迫されて、痛みに顔を歪める。
「何で隠してるの?」
「……………」
俺は答えない、罵倒されるのが嫌だったなんて言えないし、心配させるのが嫌だったなんて恥ずかしくて言えない。
御影はジーっと俺を睨んでくる、暁は何も言ってこない。
「あぁそう、何も言わないんだ?」
「言うことが無い」
「幸也のバカ!!」
その一言が失敗だった。御影は握っていた腕に更に力を込めてから離し、速攻で生徒会室から出て行った。
取り残された俺は唖然としている、暁はあ〜ぁやっちまったと俺を哀れみの目で見ている。
杏会長は何かに気づいたのかしきりに頷き、剣とアリスさんはただ呆然としている。
「追いかけへんの?」
杏会長の言葉が俺を現実に戻す。追いかけないのかと聞かれても、何処に言ったのかすら検討がつかない。
出て行くときの速度から見て能力を使っている。もう既に学園外にいる可能性も高い。
「後で謝っておきますよ……それに報告だけじゃないんでしょう呼んだ理由は?」
報告するだけだったら放課後でも構わない、でも何かしら問題が有るのなら
今呼ばれた理由が解る。
「鋭いねぇ、その鋭さがもっとほかの事に回れば良いのに」
「何を言っているんですか?」
さぁ? と杏会長ははぐらかし話に移る。
「あくまで推測の域をでないんやけど、犯人は複数名いるっぽいんよ」
「複数名ですか?」
「そや、幸也君が受けた風の傷と被害者が受けた傷じゃ全く違うンよ、どちらも切り裂かれてるけど
幸也君は重傷を負ってないのに、被害者は腹部を深く切られてるんよ」
「確かに、威力的にはおかしいですね」
殆ど直撃したのにもかかわらず浅い切り傷を残しただけだった。
もしかしたら全力ではないのかもしれないが、経験上、風を操ったりする能力は全体的に攻撃力に欠けている。
「それと、関係性が有るかはまだわからんが、近辺で昨日能力者による殺人が二件おきとる」
「――関連性が有ると?」
「推測の域をでてはないんやけどね」
確信は無い、だがもしもそうなら問題だ、何人も殺す能力者は大概、もっと大量に殺す。
一度殺して止めるか止めないかで度合いが違う。
「それでな、今からちょいと街に言って欲しいンよ」
「犯人の捜索ですか?」
そや、と杏会長は呟き、俺とアリスさんと剣は賛成する。
暁だけは御影を探してくると行って何処かに行った。
「幸也、お前も御影殿を探しに行かなくて良いのか?」
「明日にでも謝るさ」
「おぬしがそれでいいのならいいんだが………早めにした方がいいと思うぞ」
「私もそう思いますよ」
アリスさんも剣の意見に同意する、そうは言われても確かに隠していた俺にも非は有るが、
早急に謝るほどのことでもないきがする。俺が不思議そうにしていると剣とアリスさんは何か通じることが有るのか互いにため息をついた。
「それじゃ何処に向かう?」
「何処へと言われても当てが無いでしょう? 結局は適当にぶらつくしかないんですよ」
昨日と一昨日で学習したのか、すぐさま返答が返ってくる。アリスさんが行った通り、
行くあてなど何も無いため、ぶらつくしかない。俺達は適当に街を歩き回った。
結局その日は何も起きずに夕方になった。
「帰りましょうか」
「そうですね………」
アリスさんはへとへとだ、一日中歩き回っていたのだからしょうがない、剣は平然としているが。
俺も昨日の出来事のせいでまだ足が完治していない、日常生活に支障をきたすほどではないが
流石に長時間歩き回ったせいでかなり疲労がたまっている。
アリスさんはすぐさま迎えを呼んで帰っていった。
「さて、拙者たちも帰ろうか」
「そうだな」
俺と剣は帰る方向が同じな為、二人で帰る。
少し疲れているためにゆっくりと歩いているが、剣もそれにあわせてくれている。
「なぁ幸也、少しお願いが有るのだがいいか?」
「ん? 何だ?」
「いいや……ちょっとな……………」
顔を赤くして剣が俯く、……そんな動作されたらこっちも恥ずかしいじゃないか。
剣は何かを決したような顔になる。
(まさか……愛の告白か?)
…………雰囲気として有っている、まさか? まさかなのか?
俺の鼓動が早くなる、来るか? 俺に春が来るのか?!
「実は―――――手合わせして欲しいんだ」
「…………………………」
(ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉ!)
やはり世の中は甘くない、今まさにそう実感した。
剣よ、そんな心配そうな目で見ないでくれ………いいや、わかってたさ、俺がもてないことぐらい!
「OK、解った」
「良いのか? 今からだが問題はないか?」
不安そうな剣に俺は頷く、良いさ、少し動かないと悲しみでしばらくフリーズしそうだ。
だが何処でするのだろうか?
「まぁ場所はあてが有るから付いてきてくれ」
そう言う剣に俺はついて行った。




