第十話
「大丈夫ですか? 私のせいですみません……」
アリスさんが心配そうに声をかけて来る。
此処は病院だ、救急車を呼んだところ、俺まで一緒に運ばれてしまった。
腕の切り傷は大量に有るが一つ一つは軽い。どれも深くは切れていない。
「大丈夫です、それよりも足のほうが酷いくらいです」
「――それも私のせいですね」
アリスさんが俯く、すぐさまそうじゃないと否定したが聞いている様子が無い。
庇ったのは確かだ、でも俺が勝手に行動しただけでそれについて責任を負って貰おうなんて考えていない。
その意思を伝えては見たが、余り聞いている様子ではない。
「本当に気にしないでください、それに最後はアリスさんが助けてくれたんだし、それでお相子にしよう」
「ですが」
「――お相子だ」
「……………」
強制的に納得させた。我ながら強引な手段に出たとは思うが、しょうがない。
アリスさんはまだ何か言いたさそうだったが、結局は何も言わずに納得してくれたようだ。
「すまない、待たせた」
病院の入り口から剣がスタスタと歩いてくる、どうやら杏会長と連絡を取ってきたらしい。
何だか剣まで少し落ち込んでいる。
「怪我は大丈夫か?」
「全く問題なし、まぁ少し足きついから動けないけどな」
「すま」
「――謝るの無しな」
誰かに謝って欲しいつもりで怪我を負ったわけじゃないのにそう何度も謝られるのはごめんだ。
そもそも女の子に謝罪させるなど俺には気が引けて無理だ。
「そうだ、御影達への連絡はしてないよな?」
「あぁ、だが本当に良いのか?」
俺は剣が連絡をしに行くにともない、御影達への連絡を止めさせた。
無駄な心配をかけさせたくないのもあるが
「犯人を捕まえる所か姿すら見てないなんて報告したら馬鹿にされるのがオチだ」
「そうだろうか……? 普通に心配してくれると思うのだが」
「心配して仇を私が討ってやる! 何てことになると面倒なんだよ」
もしそんな風に無駄にやる気を出させると関係のない人を大量に巻き込んでまで無理やり犯人をボコるために行動するだろう。
そして結局誰が謝ったり後始末をするかというと――俺なんだ。
だいぶ利己的な理由だが、言うよりも言わない方が得策だ。
「そうか――どうやら迎えが来たみたいだな」
明らかな高級車が病院の前に止まる、そこから出てきたのは杏会長だ。
ゆっくりとこちらに向かってくる。
「お〜、元気そうやね」
「えぇ、まぁ」
「心配したんよ〜」
へらへらと締りの無い顔で言われても全く信憑性が無い。
本人も解ってていってるようにも感じる。
「さてと、長居しても無駄やし帰るか、送ってくわ」
「ありがとうございます」
普通だったら断るが、流石に今の足の状態では無理だ、御影の能力は足に膨大な負担が掛かる。
模倣しているだけの俺にはそれに耐えるほどの体も慣れも無い。
「そんじゃ、剣ちゃんたちも乗っけてくからさっさと乗り込んどくれ」
「お言葉に甘えます」
「感謝する」
俺達は車に乗り込み家まで杏会長に家まで送ってもらった。
結局その日は家に帰り明日に備えて体力の回復に努めた。
「おはよ〜」
「おう」
御影といつも通り登校する、ブレザーを着ているため腕に巻かれている包帯は何も見えない。
何か勘付かれるようなことをしなければバレないだろう。
「よぉ幸やん」
やはりいつも通り校門の近くで暁に会う、そろそろ疑っても良いだろうか?
暁が何となくじーと腕を見てくるが、すぐに視線をそらした。
「さて、さっさと教室に向かうか」
「そやな」
少しばかり危険を感じ、すぐさま俺は歩き出す。
(勘だけは異常な奴らだからな)
バレる可能性は低くない。だからといって馬鹿にされるネタをみすみすばらす様なことはしない。
会長達三人には念を押したし、大丈夫だろう。
「おはよう幸也」
玄関先で出会ったのは剣だ、目の下に隈が有るが寝不足だろうか?
剣と合流して教室に向かうが眠そうなそぶりは余り無い。
教室に着き、またもアリスさんがいない事を確認し、いつも通りホームルームが始まる。
「遅れました」
そして遅れてくるアリスさんもいつも通りだ―――アリスさんまで目の下に隈が有る。
寝不足だろうか……? いや、ほんの少し寝癖が有る――不思議だ。
アリスさんの不思議について真面目に考えている間にホームルームは颯爽と終わった。




