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魔神、街へ行く


 空から見る街、コートベルは、網の目のように広がっていた。


 環状の大通りを中央に道路は周囲に伸びていく。

 街を囲う壁は、弧を描き海のほうに開けている。

 幅広の川がゆったりと文明を流している。

 山から壁をくぐって街へ、そして海へ。


 港街だ。

 沿岸は長く、停泊する船の帆が並ぶ。


 拡大してモニターに映した。

 ひときわ大型の帆は貿易船だろうか。

 積み荷を下ろす荷役らが、忙しげに動いている。

 赤レンガの倉庫へ運び、入れ替わるように荷馬車が出ていく。

 石畳だろうか、通りを歩く人々に交じって進む。


 いくらか尖塔のような建築はあるが、おおよその建物は住居のようだ。

 赤レンガに加え、ハチミツ色というのか。

 高い建物同士にロープが張られ、旗が飾られている。

 洗濯物らしきものを吊ってある地区もあるが。

 ちらほらと色彩の散らばる街の情景は穏やかだ。


「人口はどれくらいだ?」

 ひとりごとを落とす。

 W.W.(ホワイトウィッチ)の背丈なら、腰から上が抜き出るくらいだろうか。

 その街並みを行き交う人々が見える。

 村とは大ちがいのにぎわいが、上空からでもわかる。

 この世界の文明レベルを知る上でも、来てよかった。


「歴史のある街なのか?」

「ごめんなさい、ボク、なにも知らなくて……」

 メナがもそもそと答える。

 訊いたわけではないのだが、村の外を知らない自分を責めていそうだ。

「いや、それを、今から見に行くんだ」


 わずかに見られたか。

 港の船員がこちらへ目を凝らしている。

 鼻を垂らした子供も空を見上げている。

 真っ白な巨人だ。

 空の色に紛れてくれているといいんだが……。


 街の山側へと滑るように回り込んだ。

 街道からやや離れた茂みの中だ。

 降りてみると、なかなかの林なのだが。


 W.W.(ホワイトウィッチ)を林に屈ませた。

 ハッチを開いて身を風に当てる。

 蹄鉄型のタラップが下まで運んでいく。


 街の外壁だ。

 ずいぶんと高くそびえている。

 こちらはW.W.(ホワイトウィッチ)の背丈くらいあるだろうか。


 メナはふわふわと足元を確かめて歩く。

 時おり振り返りながら、はにかみを見せてくれる。


 さすがに街の近くとなれば出入りは多い。

 馬車の往来や徒歩……どれも商人や旅人に見える。

 子連れはまあ、ほとんどいないか。


 なに食わぬ顔でそれらに紛れる。

 道脇からの子連れをどう思ったのだろう。

 首をかしげる者もいたが、門が近づくにつれ気に止めなくなったようだ。


 見ていると出入りに制限はないようだ。

 吸い込まれるように街へ入り、吐き出されるように街道へと出てくる。


 いちおうは門番らしき者はいる。

 馬の鞍のような鎧を胸に、詰め所前に立つ姿は退屈そうだ。


 メナはずっときょろきょろとしている。

 アーチ状の門の中、ひんやりと荷馬車の音が響く。

 はぐれないように、しっかりと手を握る。

 そして、日陰を抜けた。




 (ひずめ)の音が、土から石畳のそれへと変わった。


 草の香りに潮の香りがかぶさってくる。

 焼いた食べ物のにおい、紙のにおい、文明のにおいだ。

 人の声がにぎわいを重ねていく。


 村では決して見ることのない光景だろう。

 メナは目を丸く見開いた。

 俺も同じような表情をしていたかもしれない。


「……おっと。メナ、こっちだ」

 後ろから荷馬車の列が過ぎる。

 いや、ロバかなにかか?

 石や丸太をこれでもかとぎっしりと積み込んでいた。

 メナの肩を寄せて道の脇を歩く。


 人が集まり、交易を重ね、街は発展していく。

 それらは歴史をもって繰り返される。


 この世界で初めて見る都市。

 港街コートベルがあった。



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