覚悟の宣言
よろしくお願いします。
「ギーールくーーん!」
「お、来たか!」
「そうだね」
「結果はどうだったのかしら?」
「さあね……でも、良い顔してるわ……」
選定の儀式を終え帰って来たギールを一番最初に見つけ、レイアは嬉しそうに手を振り、皆がギールを出迎えた。
「ただいま、みんな!」
目の下辺りが赤くなっていたギールだが、彼ははにかむ様な笑みを浮かべ返事した。
「ね!ねぇね!ギールくんは何のスキルが手に入ったの!?」
「………」
今か今かと楽しみにしているレイアだが、その言葉を聞いたギールは笑顔が若干、歪む。
まるで泣きそうになりそうな顔を耐えて無理矢理笑顔を取り繕うように。
「……えっ………とね…これは冗談とか嘘じゃないから真面目に聞いてくれないかな?」
「うん!うん!それでどんなのを貰ったの!?」
何も知らないレイアが楽しみに聞こうとする中、苦笑いをしながらギールは真実の言葉を述べた。
「……………何もなかったって………………………」
「……え?………………」
ギールの言葉が理解できなかったのか、聞こえなかったのか、レイアの反応は遅れた。
「ご、ごめん!……もう一回言って欲しいな!………」
「……うん………」
戸惑うレイアだが、ギールは先程と同じように苦笑いを浮かべ、口を開いた。
「……何もないんだ………スキルも『加護』も……本当に……………何もない……」
「……え…………嘘だよね?……ね!…ね!……もう一回、選定の儀式をやろう?……きっと司祭様が何か間違えちゃったんだよ!……そうだよ……僕が『加護』を貰ったのにギールくんが何もないなんておかしいよ……」
ギールの発言が認められないのかレイアは必死にもう一度、選定の儀式をやらそうとしてせがむ。
「………ごめん。本当なんだ…………」
「……そんな………そんな!―――――――」
「レイア………認めなさい…別にギールくんだけじゃない。何も得られなかった人は……」
「………だっでぇ!!……一緒に約束したんだもん!!……」
信じられないレイアをレイアの父は疎めるがレイアは泣きながらも口を開く。
「……一緒に約束したんだもん!!……ひっぐ………ひっぐ…ギールぐんの嘘付きッ!!……」
「…ッ!………ごめ…んなさい……」
「レイアッ!」
レイアの言葉が響いたのかギールは身震いしながら謝るが、我慢できなかったのか、レイアの父は声を挙げる。
「ギールくんすまない……うちの娘が……」
「いや、良いんです……嘘を付いてしまったの変わりないので……」
「……ひっぐ…ひっぐ………」
「……すまない…」
レイアの父が気まずそうに謝るがギールは目を伏せ、気にしないように努めていた。
だが、ギールは伏せていた目を開き、覚悟を決め、口を開いた。
「……嘘付いてごめん。レイアちゃん………嘘付いちゃった僕だけど……約束していいかな?」
「…ひっぐ………え?………」
様子が変わったギールにレイアは泣くのを止め、ギールのほうを見た。
「…待っててくれないかな?……僕を…絶対に諦めないから……」
「……諦め…ない…?…」
泣き止んだレイアはギールの言葉に耳を貸した。
「……うん…僕は諦めない……絶対に!……どんな事があろうとも!……力が無くても君を守る!……何も無くても君について行く!……僕が死んだとしても絶対に君は助ける!……君が諦めても、僕は絶対に諦めない!」
「……本当に?………」
「ああ!約束さ!僕は二度と嘘をつかない!……だから…僕を待っててくれないかな?」
「………」
ギールの宣言を聞いたレイアは涙を拭い、笑顔を浮かべ、口を開き答えた。
「…絶対だよ!……僕…僕!……絶対に君を置いてかない!…君をずっと待ち続けるから!!……」
「……うん!……ありがとう……!………レイアちゃん!!」
悔やむような泣き方ではなく、嬉しそうな泣き方をするギールは父に口を言葉を伝えた。
「父さん!」
「……うん?」
何かを分かっていたのか、ギールの父は察したような顔でギールを見つめる。
「僕、頑張る!」
「…ふん………おうよ!…男なら大切なもんを守れるぐらい強くなれ!!」
「うん!!」
ギールの言葉に満足したのか父は笑顔を浮かべ答えてくれた。
「ごめん!!…僕!用事ができたから行くよ!!」
「あいよ!母さんの事は任せな!!俺が何とかして〜………イテッ!?」
ギールの母を止めようとする父だが、容赦なく拳骨が落ちた。
「もう……私も息子の覚悟を蔑ろにする程、野暮じゃないわ………ギール…気を付けるのよ!」
「うん!!」
母の声援を受け、笑顔で返事する。
「僕らも君を応援するよ。絶対に諦めないか……カッコ良いじゃないか…ギールくん……」
「えぇ……こりゃ、大人になったら良い男になりそうだ!……レイアも取られないようにギールくんを待つんだよ!!」
「母さん!!」
レイアの父と母の声援を受け赤くなるギールとレイアだが、嬉しそうに笑う。
「じゃあ行ってきます!」
「うん……またね!!」
ギールはレイアとの別れの言葉を交わし、司祭ウィデーレが示した、運命の出会いが待つ、ライブラへと向かうのだった。
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