大きな灯火
宜しくお願いします。
「みんなー!!」
選定の儀式が終わり、レイアは笑顔を浮かべ元気よく手を振り、皆の元へと帰った。
「凄く長かったねレイアちゃん……何かあったの?」
「そうだぞレイア……もう終わっている時間の筈だったのに中々帰って来なかったからとても心配していたんだぞ」
笑顔を浮かべるレイアに対しギールやレイアの父達は心配そうにレイアを見るがその太陽のような明るい笑顔は消える事なく口を開く。
「みんな心配させて、ごめんなさい……でもね!でもね!僕、すっごいんだよ!!」
「……司祭様が何か仰ったの?レイア……」
レイアの元気ぶりに不思議と思ったのかレイアの母は疑問符を浮かべレイアに質問する。
「……みんな良く聞いてね!!僕…実は僕!!『加護』持ちだったんだ!!」
「「「な、なに(なんですって)!?」」」
レイアの報告に衝撃を受けたのか大人達は驚愕の表情を浮かべ、ギールはただ一人、レイアの言葉の意味が理解できずに無反応で聞いていた。
「そ、それは本当なのか!?レイアちゃん!!」
「うん!!しかも僕!『炎神フレム』様の『加護』を持っているんだ!!」
ギールの父がレイアの肩を抑え聞くとレイアは当然のように答えた。
「え、炎神!?……『加護』だけではなくそんな高名な神様の『加護』を頂けたなんて………凄い……凄すぎるぞレイア…………」
「えっへん!!凄いでしょ父さん!僕、『炎神の加護』を貰ったんだから!」
父の驚く反応を見るとレイアは胸を張りフンスと鼻息を立て自慢げに言う。
「レイアちゃん……それって凄い事なの?」
唯一、何も知らないギールだけが驚く大人達を見て不思議そうにレイアに疑問する。
「ギールくん『炎神フレム』様の事は知っているよね?」
「はい…確か……」
この地
この海
この空
この世界自体を創ったとされる古き十二の神々達
『原初の十二神柱』
その中の十二神柱の一柱
『炎神フレム』
人類に火を教え、人に身を包む温もりとさらなる進化への新たなる文明の発展の兆しを与えた原初の神
「ですよね?」
「あぁ……その通りだよ。実はその『炎神フレム』様の力の一端を今、レイアは『加護』という形として身に宿しているんだ……」
「ふん!」
「え……………ええ!!!!!?????」
レイアの父の言葉の意味がはっきりと理解したのかギールは自慢げにしたり顔をするレイアを見て驚愕の声をあげる。
「す、すごい!……すごい!!すごいよ!!!レイアちゃん!!……レイアちゃんは神様の力が使えるの!!??」
「でしょでしょ!?……まだ分からないけど、司祭様に言われてからこう……何と言うか胸の奥が温かいんだよ!!」
「もしかしたら『炎神フレム』様の力の片鱗なのかもしれないわ」
「神様の力を使えるなんて凄いよレイアちゃん!!まるで絵本に出る英雄様みたいだ!!!いいなぁ〜!!僕も欲しいなぁ!!」
「凄いでしょ!?……でも『加護』って珍しくて少ないって司祭様が言ってたからギールくんは『加護』を持てないかも………」
興奮する好奇心旺盛なギールにやや気まずそうにレイアは返事する。
「いや、分からないわよレイア。もしかしたらギールくんも『加護』得れるかもしれないわよ……」
「本当!?……そうだったらギールくんも『加護』を持てるかもしれない!!」
「本当にレイアちゃん!?そうだったら嬉しいなぁ………」
「わかんねぇよ〜?もしかしたら『村人の加護』ッ!とか貰って畑仕事をしてるかもしれぞぉ〜……」
「もう!何だよ父さん!そんなヘンテコな『加護』欲しくないよ!!」
「そうだよおじさん!」
茶化すギールの父を二人は容赦なく責める。
「おっと……悪い悪い………ただ『加護』だ『加護』だって言っても全部良い『加護』だっていう訳じゃないんだぜ」
「え、それってどういうこと?」
ギールの父の言葉にレイアが首を傾け質問した。
「そりゃあ…この世界に良い『加護』を与える良い神様もいれば……逆に悪い『加護』を与える悪い神様もいるって事だよ」
「悪い神様?……父さん、神様に悪い神様っているの?」
「まぁ……お前がよく見る絵本とかだと魔王とかモンスターとかが出てるかもしれないが……大人に成るにつれて難しい本を読むと悪い神様が出て来る本が出るんだよ………そうだなぁ……例えば『希望と勝利の女神プルケル』様の姉にあたる……『不幸と絶望の女神モルス』とかだな」
「へぇ〜…おじさん。どんな神様なの?」
「気まぐれに『加護』を与えて、与えた人にこの世で最も恐ろしい不幸と絶望を与え死に至らしめるという酷い神様だよ。有名な話だと絶世の美女と言われた古き国の王女様の美貌に嫉妬して『加護』を与えて酷いことをしたんだ」
「えぇ……嫌だなぁそんな『加護』。やっぱいらないよ」
父の話を聞くと『加護』の話で興奮していたギールは苦そうな顔をして嫌がった。
「……やっぱり僕………レイアちゃん守れる騎士みたいなスキルとかが欲しいなぁ……」
「ふん!『加護』を持ってないギールくんだったら逆に僕が守っちゃうかもしれないね!!」
「何を〜!?そんな事になる前にもっと鍛えて『加護』持ってるレイアちゃんより絶対強くなってみせるよ!!」
自慢げにするレイアに対抗するようにギールも声を挙げて答える。
「負けないよ〜!」
「僕だって!!」
「コラッ!」
「「イテッ!」」
言い争いしている二人に突如、レイアの父による拳骨が頭に落ちる。
「お互いを高め合うのは良いけど周りを見ようね?神官様が次の選定の儀式でギールくんを待っているよ?」
レイアの父が指差す方向を向いてみると神官服の女性が申し訳なさそうに立っていた。
「あ!ごめんなさい!!すぐ行きます!」
待たせてしまった事に気付いたギールは急ぎ足で神官の元へ向かいレイアの方へ振り向く。
「行ってくるよ!!」
「うん!!」
二人は手を振り言葉を交わし合った。
「ギール・ファタリテ………貴方のスキルは何も……………ありません………」
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