司祭の戯言
すいません。長らく待たせてしまいました。やる気が出たのでまたちょこちょこ投稿します。
「え…炎神の加護ッ!!…そ、それは誠でございますか!?司祭様!!」
何故か神官は驚愕の表情でレイアを一度見つめ、確認するように司祭を見つめる。
「……はい……これは神の啓示………希望と勝利の女神プルケルが示した紛うことなき真実の証です………」
「…………」
ゴクリと神官は額に汗を流し喉を鳴らす。
「あ、あの……司祭様、僕変なの?」
尋常ではない反応を示した司祭と神官に自分は異常なのかと思い心配そうにレイアは聞く。
「……いえ………すみません。あまりの事なので少々乱れてしまいました。司祭としてあるまじき行い…深く謝罪します……」
「え、ええ!?い、いや!司祭様は何も悪くないよ!悪いのは僕だよ!きっと何か悪い事をしてしまったから神様のバチが当たっちゃったんだ………」
司祭がレイアに対し頭を下げたので慌ててレイアは止めようとした。
「いえ……レイアさん、貴女は神様にバチを与えられたのではなく……神様に愛されたのです……」
「愛された………?」
司祭の言葉が理解できないのかレイアは頭を傾ける。
「……そう………貴女は神に愛された証……『加護』を得ているのだから……」
「か…ご……?………それって絵本とかで見る英雄様達が持っていた力のこと?」
「ええ……この世界を脅かす魔王を打ち倒す為に現れる『勇者』『剣聖』『賢者』『聖女』にも劣らぬ力を持つ現世に現れし神々の力を持つ者」
「それが……『加護』……?」
「はい………年に……いや数十年…数百年に数人しか現れない神に愛された証『加護』……それをレイアさん………貴女が持っていたのです……」
「僕が……?」
レイアは司祭の言葉が未だに信じられないのか呆けた顔で見つめる。
「しかも!レイアさん!!貴女が持つ『加護』はただの『加護』じゃない!!」
呆けるレイアに興奮した様子で神官がレイアに言う。
「様々な神が与える『加護』の中でも別格の『加護』!……『原初の十神柱』の一柱!『炎神フレム』様の加護をレイアさんは与えられたんです!!」
「ぼ、僕がそんな凄い神様に……」
神官の落ち着かぬ挙動と偽りなき言葉が真実の事だと理解し、レイアは驚愕の表情になる。
「……三年前の選定の儀式では『原初の十神柱』の一柱、『雷神トルエノ』様の『加護』を持つ方が現れ、一年前の帝国の選定の儀式でも同じく十神柱の一柱、『冰神カプノス』様の『加護』を持つ方が現れた……」
司祭がレイアを深く見つめる。
「まさか、まだ存命の内にこうして『原初の十神柱』の『加護』を与えられた方に出会えるとは……今日という日の貴女との出会いを深く感謝致します………」
司祭は優しく両手でレイアの手を握り、涙を流す。
「え、え?なんで司祭様が泣いているの?感謝したいのは僕のほうなのに……」
「……先程からすみません………年老いたせいか少し涙脆くなってしまって……ずっと祈りを捧げていた神……ではありませんが…その神の『加護』を持つ方を間近で視る事ができ、感動のあまり涙を流してしまいました……」
流していた涙を拭き再び司祭はレイアを見つめる。
「長引かせてしまい大変申し訳ありませんでしたレイアさん……長い時間儀式をやっていたのだからご両親もお友達方も心配しているでしょう。こんな老いぼれの神官は置いて行って顔を見せてあげてください。きっと喜ぶでしょうから……」
「そんな!!司祭様は僕に特別な事を教えてくれたとっても!すっごい人だよ!僕も司祭様と神官様に会えたこの日を絶対に忘れないよ!!」
「それは……嬉しい事ですね………」
司祭ははにかむ様に笑みを浮かべる。
「……レイアさん………」
「はい?」
「貴女は決められた未来を変える事ができますか?」
「え?」
司祭の突如の言葉に理解できず思考停止してしまう。
「例えば……数秒後に貴女の大切な人が死ぬとして………貴女は救えますか?」
「そんなの……」
「できるわけありません……ですが殺される一日前、貴女は大切な人を救えますか?」
「それは……」
司祭の質問にレイアは言い淀む。
「貴女の選択次第です」
優しくレイアを見つめていた司祭の瞳が変わった。
「レイアさん……全て、貴女の選択一つで決まる………過去を越える事を…未来を変える事を………」
司祭が先程のように力強くレイアの手を握り、瞳を視る。
「余命僅かな司祭の戯言ですが忘れないで下さい………貴女の人生を決めるのは神ではなく貴女自身の選択だということを………」
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