消えゆく業火
宜しくお願いします。
「……グアアアアアアアア!!!」
反応が遅れたのか赤龍はレイアの紅の剣に刺された後、少し遅れて苦痛の叫び声を挙げる。
反応が遅れたのは無理もないだろう。ほんの一瞬、レイアは姿を消し赤龍の心臓を貫いた。
動く姿をその場にいた者達は誰も捉えられず瞬間移動したように見えたのだ。
「………お願いだからこれ以上抵抗しないで………」
赤龍の心臓を刺している紅の剣を握るレイアは切なさそうに呟く。
「!!……………グゥゥゥガアアアアアアア!!!!!」
レイアの態度が感に触ったのか赤龍は怒り狂いその身を大きく揺らしレイアを振放そうとする。
だが、レイアは振放されそうな様子ではなく静かに冷静に力強く剣を握り締める。
「………ほんの少し、痛いかもしれないけど…これで君を楽にするよ…………」
レイアの魔力が高まり、剣から溢れ出る熱気が更に熱くなる。
まるで目の前に炎魔法が迫ってくるような圧迫感をギールは感じていた。
「グウウウゥゥゥゥゥゥ!!」
赤龍も負けじと魔力を高める。レイアと赤龍の濃い魔力が外気に触れ、周りは灼熱地獄と化していた。
「………」
憐れむように赤龍を見つめるレイア。紅の剣の持ち手を替える。
「………さようなら……………『赫炎』……」
レイアが呟くと紅の剣が貫いていた胸が赤く輝くように赤熱する。
「!?グゥゥゥゥアアアアアアアアアアア!!!???」
赤龍はこれまでに無いほどの咆哮を挙げ苦しむ。
「…………」
苦しむ様子を見せる赤龍を尻目に剣に更に魔力を込める。すると赤龍の胸は更に赤熱化し、刃を通して炎の柱が胸を貫通する。
「!!!!」
声にならない激痛が赤龍を襲う。
必死に抵抗しようとするが胸から溢れ出る炎の柱が赤龍の体に絡みつくようにして離れようとしない。
「………ッ!」
「ギール!」
ギールがワンテンポ遅れて赤龍に向かって手をかざし魔力を込めようとするがレイアが制止の声をかける。
「………僕が……やる………」
魔力を込めようとしたギールは赤龍に向けた手を下ろしレイアを見つめる。
「………これは僕がやらなきゃいけないんだ………せめてもの罪滅ぼし…僕が彼を楽にしてあげなきゃいけない……」
ギールの視線を受けながらもレイアは憐れむような瞳を赤龍へと向ける。
「グゥゥゥオオオオオオオ!!!」
最後の抵抗か、赤龍は口を大きく開き魔力を溜め始めた。
この地獄を生み出した。龍だけが許される最強の一撃を至近距離で自分ごと巻き込むつもりで。
「不味い!レイア!龍の息吹だ!今すぐそこから離れろ!!」
その一撃がどれほどのものかをその目に見たからこその警告。
絡みつく炎の柱をものともせず魔力の塊は先程とは比べものにならない程の膨張を繰り返す。
「……大丈夫だよ…ギール……もう終わる………」
必死に警告するギールの言葉を聞くもレイアは赤龍から離れず、紅の剣を握る。
「……ガアアアアアアアアアア………」
繰り返された魔力の膨張は止まり。口に収められない程の巨大な魔力の塊が小さく収縮していゆく。
全てを溶かし燃やし尽くす地獄の業火が今、赤龍の口から放たれようとした。
しかし、レイアはそれを前にしても怯まずそっと赤龍に触れる。
「……ごめんなさい………貴方を苦しませてしまって………もうおやすみ……」
「!?」
絡みついて炎が更に溢れ出し赤龍を覆う。
体に絡みつく炎を必死に振放そうと抵抗するが炎は更に絡みつき赤龍の体を隠すほど覆う。
やがて絡みつく炎は赤龍の体を球体状に覆うと段々と炎の球体は小さく収縮してゆく。
最初は抵抗していた赤龍だが、炎の球体に覆われると咆哮は聞こえなくなり濃厚な魔力も小さく収縮してゆく球体と共に消えていった。
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