赤龍を穿つは紅の剣
遅くなってしまってすいません!!
レイアの掛け声と共に紅の輝きを放つ剣が生まれる。
紅蓮の剣と比べるなどとおこがましい程の輝きを放ち、灼熱の熱気が剣から漏れ出るように溢れる。
「……レイア………それは………」
近くに来ていたギールが驚愕の眼差しでレイアの持つ剣をまじまじと見ていた。その表情は驚愕ではなく"何か"を恐れる怯えた瞳。
「…………大丈夫だよ……ギール………もうあの時の僕じゃないんだ………」
レイアは怯えるギールを優しく慰めるように声を掛ける。
「………本当に…レイアなのか?……」
「……ふふ………変なギール……………君の目の前にいるのは何処の誰に見えるっていうんだよ………」
レイアはギールの言葉が可笑しいのか微笑んだ。
ギールは別人になってしまったような様子のレイアに困惑が隠せず驚いた顔でレイアを見つめていた。
「グゥゥゥゥルルルルルルル…………」
和やかな雰囲気を壊すように赤龍が警戒した様子でレイアを見つめる。
「…………」
自分を見つめてくるレイアは剣を構えず凛とした表情で赤龍を見つめる。
「…………グゥアアアアアアアアア!!!」
威嚇か怒りの咆哮か赤龍が猛々しい声を挙げる。
レイアは瞳を細め、思い耽るように赤龍の前に立つ。
「…………ごめんね…」
途端に出た言葉。意味の分からない言葉にギールは混乱していた。
レイアは仲間を殺した相手に憎悪を向けるのではなく謝罪をした。目を伏せ、心の底から、深い謝罪を赤龍にしたのだ。
目を伏せるレイアの顔はギールが知っている天真爛漫な彼女とは全くイメージからかけ離れており、別人に見え。淑女のような静かな美しさを纏っていた。
「………君は悪くない………何も悪くないんだ……………ただ、神様って人はとても悪戯好きなだけなんだ……」
要領を得ない言葉をレイアは喋る。
「………本当だったら君は普通だったのかもしれない……こんな事にならずにすんだのかもしれない………」
「…………………」
赤龍はレイアの言葉に耳を傾けているのかその場からピクリともしない。
「………これはせめてもの君への謝罪………悪戯に狂わされた君への謝罪………本当にごめんなさい…………」
そう言うとレイアは深々と赤龍に向かって頭を下げる。
「なっ!?」
危険なモンスターの目の前だというのに隙だらけなレイアの行為を見て言葉を失う。誰から見ても自殺行為だと思えるその行動をレイアは平然と成したのだ。
「……もう終わらせようか………君達のお陰で僕はこれを扱えるようになった……」
哀愁漂う瞳が手に持つ紅の剣に集中する。いったい何を想い彼女は自分が持つ剣を見ているのだろうか。
やがて剣を見るのを辞め。目の前の赤龍を再び見つめ、剣を強く握り締める。
赤龍の生んだ地獄の業火とレイアの持つ紅の剣の熱気が相反し空間が歪むように見える。
1分、1秒が永遠に感じるこの一時、
燃え盛る森の中、彼女はただ当然に当たり前のように
優しく笑顔を浮かべた。
「…………ありがとう……そして…………さようなら……………」
刹那
紅の剣が赤龍の心の臓を刺し穿つ。
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