紅の剣
よろしくお願いします。
「………ガハッ!…ご無事で……良かった……」
レイアの目の前には無惨にも赤龍に腹を貫かれたベティーがいた。
「ベティー!!」
「………すいま…せん……あまり…お役に…立て…ガハッ!…まぜん……でじだ………」
言葉を紡ぐ度に吐血し、貫かれた腹から夥しい量の血が流れる。
「……なんで…なんで……」
たどたどしい言葉共にレイアは涙する。
「………もとはと…言えば……僕のせい………ですからね!…………だから………」
血を大量に流してもなお無理くりに笑顔を作るベティー。
「違う!私達があんな事を言わなければこうならなかった!」
「………フフ…レイア……さんは…優し………いですね……」
ベティーはレイアの言葉に優しく微笑む。
「すみ……ませ…ん………僕は…もうダメみたいです………どう…か……ご無事で………」
ベティーの言葉が途切れると赤龍が大きく尻尾を振り、適当な方向にベティーを投げ飛ばした。
「ベティー!!」
レイアは手を伸ばすが届く筈もなく無意味に伸ばす。
「……ごめん…ごめん……ベティー………」
ベティーを失った悲しみか泣き崩れる。
「……グゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…………」
だがそんな時間を与えまいと赤龍が低い唸り声をあげる。
「………なんで……泣いているんだ……僕は…」
泣くのを止め、拳を強く握り締め立ち上がる。
「もう………守られるだけは嫌なんだ………」
ギリッと歯軋りが鳴る。
「だから………例えこれを使っても戦う。これは僕が招いてしまったことだ……だから………僕がやったことは…………」
涙を拭い、剣を抜く。
「僕がケジメをつける!!」
そこに居たのは先程まで泣いていた少女ではなく、勇敢にも龍に挑む勇士であった。
「グゥゥゥウウウウウウオオオオオオオオオ!!!」
「全力で君を倒す!」
レイアが赤龍に剣を向け構える。
「『身体強化』……」
先程の赤龍の戦いで時間経過による影響で効果が切れていた『身体強化』をかけ直す。
そして短剣を両手に構え目を閉じ静かに詠唱を行う。
「……出でよ我が魔剣…炉に焚べられし灰燼の剣……燃やせ!………溶かせ!!………絶対零度をも滅却する我が業火の剣!!!」
詠唱を行うと短剣に熱が帯びていき刀身が赤熱化し白く発光する。
やがて剣が真っ赤になり刀身がゆっくりと熔けていく。
「………何もかも灼熱地獄と化し、その名を轟かせろ!」
そして刀身がなくなってしまい、ついに柄のみがレイアの両手に残る。
「燃やし尽くせ……我が魔剣…………」
レイアの手に持つ柄から赤い焔が吹き出す。
荒ぶる焔は剣の形に変わり、灼熱の紅剣と化す。
「………燃え上がれ……『紅の剣』………」
紅の剣が赤龍に刃を向ける。
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