若き者は訝しむ
俺の名はギール。
王都イリーへルを拠点に活動をしている冒険者だ。
若き身ながら高ランク冒険者の証を持つSランク冒険者だ。
依頼を達成し、次は何の依頼を受けるかを悩んでいる時だった。
「ネイリさん!帰ってきましたよ~!」
血で赤く染まっているが、血塗れの白髪の青年が巨大な首を持って現れた。
歳はあまり変わらないと思うが身体は細いせいか弱々しい印象を感じさせる青年だった。
皆が異様な目で白髪の青年を見る中、俺は何故か青年を注視してしまったのだ。
「どーしたのギール?」
同じSランク冒険者のレイアが俺の行動を見て質問をしてくる。
こいつとは何年も一緒だからだいたいの事は分かっているだろうに……
「あの冒険者が気になっただけだ」
「ん?……うわあ……なにあれ、真っ赤っ赤だ」
レイアが白髪の青年の姿を見て、口をあんぐりとさせる。
「なんであの子、首持ってんだよ。普通、耳とか希少部位とか小さい部位を持ってくるのにさぁ……まだ初心者なのかな?」
確かにレイアの言い分はわかる。
小型のモンスターなどは小柄な身の為、全身を持って帰る事ができるが、全身を持って行っても使える場所は限られているモンスターは沢山いる。
素材を集める事や作業効率を考えないでどうでもいい部位を持って来る冒険者など三流に過ぎないのだ。
だが、俺が注視した原因はそこではないのだ。
「レイア、あの首のモンスターわかるか?」
「え?んー……なんだろう……なんかぐっちゃぐっちゃでわかんないよ」
「オーガだ」
「え?」
首の姿はオーガの後がなくぐちゃぐちゃに潰されているが俺にはわかった。
「ま、まああんぐらいのデカさはあるけどさー失礼だけど……あの子には倒せそうに見えないんだけど」
「俺もそう思う」
俺やレイア以外、誰でもそう思うだろう。
なんせ白髪の青年の姿は誰かどう見ても弱々しく見えたのだから。
肌は不健康なまでに白く、身体は細い。
血塗れの軽装には剣の一本もなかった。
「おい、お前」
「ん?なんだ坊主」
「あいつの事を知っているのか?」
「ああ、まあ知っている。半年ぐらい前に冒険者になった坊主だよ。つい最近Eランクに昇進したって聞いたけどよ、あんなの討伐するとはな……」
Eランク冒険者がオーガを……考えにくいな。
「へぇ……Eランクなのにオーガを討伐したのか……」
「絶対に嘘だろう」
「いや?わかんないよ本当に討伐したかもしんないし」
「レイア……ランクは全てを決めつけないがある程度の事は絶対だ。1ランク上のモンスターならまだわかる。だが、今回は2つ上、しかもパーティー推奨でだ。それをEランクがソロだ。不可能に決まっている」
結果は決まっている、あの青年がオーガを討伐するなど不可能だ。
「でも、もしかしたら能力が覚醒して倒したかもしれないよ?」
「そんな事はありえない……」
「でも、もし本当に倒したら……どう思う、ギール?」
「……何かのスキルを得たとでも言うのか?」
「Eランクがソロでオーガを倒すなんて事は不可能だけどさ……強力なスキルだったら可能だよ。僕達みたいにね」
レイアの言い分も一理あるがそれでも。
「だが──」
「ギール、僕達があの子を試してみよう。本当に強力なスキルを持っていれば僕達のパーティーに入ってもらうんだ」
「!?何を言っているんだレイア!」
「本気だよギール、次の……SSランクへ進む為さ」
「俺達は自分の実力でここまで来たんだぞ!SSランクなんて俺達だけで行ける!」
「ああ、行けるさ。いつかね……でも僕達はもっと早くランクを上げなきゃ行けないんだ、みんなの為に……」
「………」
レイアの覚悟を決めた目に何も言い返す事ができなかった。
「分かってくれたって事でいいのかな?」
「……ああ」
「じゃあ!!──」
「だが、今回はいつもの倍以上に慎重に行くぞ……あいつがどんなスキルを持つか分からないからな……」
「ああ!」
こうして俺達は依頼を受け、王都イリーへルから離れた場所に行く事になった。
大変長らくお待たせしました!
今の環境が落ち着いてきたので今までの分の遅れを戻す為、できるだけ早めに更新したいと思います!