若き者の苦悩
黄金の羊亭
冒険者や旅人が利用する宿泊施設である。
だが、冒険者や旅人が泊まるには高く、ここに泊まる者は有名な冒険者やお遊びに来た貴族ぐらいだ。
そんな高級宿泊施設の中、二人の若き冒険者がいた。
「あの子、どう思うギール?」
「実力は俺達より下だろう……だが……」
二人とは王都イリーへルでは知らぬ者などいない程の有名な冒険者
Sランク冒険者『蒼炎』のギールと同じくSランク冒険者の『紅水』のレイアであった。
「だが……って?」
ギールの反応に不思議に思うレイア。
「これは俺の直感だ……奴は底知れない“何か“を持っている気がする……」
「ふーん、“何か“ねぇー……」
ギールの曖昧な表現に雑に返事をした。
「それって、スキルって事かな?」
「いや、そうかもしれないが違うかもしれない」
「えぇー!?何だよーそれー」
先程からギールの曖昧な表現に多少の苛つきをするレイア。
「明日の依頼、油断するなよレイア」
「なに、心配してくれるの?嬉しいなー!」
「違う……いや、正直心配だ」
ギールの意外の反応に驚くレイア。
普段、無口で無表情の彼がこの時ばかりは本当に心配そうにしているのだから驚かないほうが無理だ。
「この依頼、今まで受けた依頼の中で最も危険かもしれない。レイア、お前はSランク冒険者だ。だが、Sランク冒険者と言っても多少強くなった人間に変わりない。心臓が止まれば死ぬ。血が無くなれば死ぬ。体を半分に斬られたら死ぬ。歳を老いて死ぬ。俺達と同じのSランク冒険者やSS、SSSランク冒険者だって死ぬんだ。明日、何が起こるか分からない……ただ俺が言える事は奴を只の冒険者と油断するな。これは絶対だ」
「あ、ああ……」
彼の雰囲気に気圧されるレイア。
「俺の言葉を絶対に忘れるな、いいな?」
「わかったって!大丈夫だから!もう!心配しすぎなんだよギールは、慎重すぎ!!依頼はほどよい緊張感があるくらいがいいんだよ!」
そう言い楽観視するレイアであったが、ギールは眉間にシワをよせ、明日の事について苦悩するのであった。
私の事情とモチベーションにより恐らく更新速度が毎日では無くなるかもしれません!
ですが解き放たれた獣の更新はやめないので安心して待って見てくれるとありがたいです。