獣は獲物を見つける
冒険者ギルドで受付嬢が様々な冒険者から依頼を受け付けている中、異様な空気が流れていた。
「ネイリさん!帰ってきましたよ~!」
異様な空気の中、白髪の青年が沈黙を破る。
「ベティーさん……何ですか、それ……」
ネイリがベティーの手に持つ物を指で指す。
「え?ああ!これですか?」
そうベティーは言うと手に持っていたオーガの首をネイリの目の前に晒す。
ネイリ共に周りで見ていた者達が息を呑む。
異常な光景
いつも弱々しい青年が血塗れになって、野蛮にモンスターの首を持って帰ってきたのだ。
「オーガ……でしょうか?」
「はい~!いや~最初はどこを持って帰るのを悩んで考えた結果、目玉を持って帰ろうとしたんですけどね~僕、不器用なので二つ共潰しちゃったんですよね~!あははは……情けない!」
皆が異様な物を見る目でベティーを見る。
血塗れの姿で手にはオーガの首を持ち呑気に笑っている青年の姿を皆が異常に感じた。
「何故、血塗れなんですか?」
「これですか?これはですね~端的に言えば返り血ですね~」
彼は自分の体を見渡してみてはほぼ全部赤黒い血で染まっていた。
「うん!ほとんどゴブリンの血ですね~!帰る時に襲われたのでこう──ガツンッ!とやり返しってやったんですよ~!」
「そ、そうですか」
自慢気に語る血塗れの姿の彼の言葉に生返事で返すネイリ。
「それよりオーガを討伐したので早くしてくださいよ~」
「は、はい分かりました」
ネイリがベティーのオーガの討伐依頼を達成した事を受領しようとするが静止の声が掛かる。
「待て、本当にこんな奴一人がオーガを討伐したのか?」
ベティーと同じ若さの青年が怪しんだ。
「まあ、確かに一人だけで討伐したのは怪しいかなー。あまり見た事ないし……ネイリさん、その人のランクは?」
同じく青年の隣にいた少女が怪しみネイリにランクを問う。
「Eランクです」
「へー……Eランクねぇ……」
思った以上にランクが低く青年と少女だけではなく周りにいた者達もベティーを怪しむ。
「パーティーならまだしも、どうみてもソロだよね……てゆうか、何で武器持ってないの?」
次から次へと聞かれ更に怪しくなる。
「………」
ベティーは黙ったまま俯く。
「はい!僕はソロですよ~!武器はこの僕自慢の拳が武器なんですよ~」
黙ったかと思えば笑顔を浮かべながら返事をする。
「そんなに怪しいんでしたら別にいいですよ~!僕はのんびりやってランクを上げる事にするので!!」
めげずに笑顔を絶やさず話し続ける。
「ふぅん……ねぇ、ネイリさん」
少女は怪しむ目から品定めをする様な目でベティーを見る。
「はい」
「冒険者ギルドは優秀な強い冒険者が欲しいよね?」
「え?まあ、そうですけど」
ネイリは少女の質問の意図が理解できず呆けた声を上げる。
「もし、本当にこの人がオーガを一人で討伐したのならCランク以上の優秀な冒険者ってことだ」
「ええ、そうなりますね」
「じゃあさ僕とギールで彼の力を試そうと思うんだ……いいよねギール」
「ふん」
ギールと呼ばれた青年はそっぽを向く。
「僕とギールの特別試験を合格できたらAランクに昇格ってことで」
「ま、待って下さい!そんな無茶苦茶な!EランクからAランクの昇格なんて前代未聞ですよ!!」
少女の提案をネイリは慌てて止めようとする。
「大丈夫だって、ここのギルマスとは仲が良いからね。僕達が認めたのならば、あの子も認めてくれるよ」
「それでも!」
「ネイリ、黙ってろ」
止めようとするネイリにギールが静止の声を掛ける。
「大丈夫だって!ね?僕達を誰だと思ってんの?“Sランク“冒険者の『蒼炎』のギールと『紅水』レイアだよ?」
Sランク冒険者だと言う事を知り驚愕をするがすぐに収まり。
獲物が見つかった事に喜び獰猛な笑みを浮かべていた者がいた事にこの場にいた者は誰も気づかなかった。
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