おもうこと、失意、哀しみ、
思考は押し寄せる波になってすべてを飲み込もうとする
夜の静かさとぬるめの感傷に浸るとき、風の通り道というのは自分の脳のどこにあるのだろう
ドアの外で喚く猫の声は波の上を滑ってどこまでも遠くへ駆けている
頸の周りには赤い線が引かれ、今すぐにでも飛び出そうとする飛沫が粘度を保ってめぐっている
痛みの流れは依然として他人事のようで白に滲む赤はどうしてこんなに映えるのか
外に出たがらないアナグマの精神はとどまるところを知らず、悪しき妄想は釜のように茹る
何ともわからない期待に、望まれることがわからない愚鈍
今度こそという思いは果たされることなく、知らずのうちに打ち捨てられる
至らないのは承知の上で、響きを与えることを恐れる
逃げの言葉を吐くのみで、好きなようにという裁量は突き放しの響きを得た
あきらめの思いが続くだけ、いつかは来ないと知っている
愛とは何か、それにこたえる言葉はなく
愛されるとはどういうことか、明確な定義はない
相手を好む気持ちとの差異、友情と恋の違いなど区別もつかぬ
好ましいという気持ちさえ、そう名付けただけの信号で
それが間違っているという確信も、正解であるという認識もなく
ただ口の端に上らせる無意味な言葉を探して惑う
期待などしていないとあきらめて、それでももしやと望みをかける
祈ったことはなく、失意という言葉だけがこだまする
どんなに心が軋むとも、笑い顔だけは保ち得る
些細なことや下らぬ悩みを話し続ければ、他人はすべてと誤解する
苦しみは誰にも言わず、悟らせず
いつか覚悟が決まるまで、日々の記録と書き留める
想う言葉は言わずして、薄氷の上で踊る
おもへども なほぞあやしき あふことの
なかりしむかし いかでへつらむ
これでいいのだと言い聞かせても、温かさを忘れられない
正しいはずの、予想したはずのことであっても
どうしてこんなに、寂しいのだろうか
これも錯覚であろう
この手で逝く日まで、生き続ける