序章
西暦二〇六八年
アメリカが所有する天文観測衛星が、アンドロメダ星雲内での超新星爆発を
観測し、その爆発による宇宙波が、約二百年後にこの太陽系を直撃すると国連
を通して全世界に通告され人々を震撼させるが、それに被る甚大な被害を予測
した人類は、宇宙波による被害を最小限に抑える対抗策を協議し、即座に実行を
開始する。
そして、約二百年後の二二六五年、その宇宙波が現実のものとなり地球を襲う。
地球自体を歪ませる強大な地震と共に、大地は割れ、世界の火山が次々に
噴火し、高層ビルを飲み込むほど巨大な津波が沿岸部の都市を瞬く間に襲い、
地球上の陸地の約五分の一が海の中へと消え、約四十億人がこの“天変地異”の
藻屑と化す。
そうした中で生き残った者達は、変わり果てた地球を見て落胆し、
そして絶望するが、命がある以上生きていかねばならない為、
いつまでも消沈している訳にも行かず、又、前へと進むべく
復興へと気持ちを切り替え、この惨劇を過去へと追いやるのである。
そう云う人間の性格は、ある意味虚しさを感じる処でもあるが・・・
だが、生き残った人類の中に不思議な現象に囚われる者が出始める。
それは一部の人々であるが、風や火、水や土、草木等の中からと、
あり得ない処から囁き語る声が聞こえ、その声の主と会話をする事が
出来る様になる。
・・・そう、その声の主と云うのは“精霊”である。
人類を襲った宇宙波は、地球に新たな進化をもたらしたのである。
そして時は進み、急速な復興を成し遂げた全世界は、この“精霊”の研究に
力を注ぎ、それを触媒とした力“魔法”を生み出す事に成功する。
そして二十四世紀初頭、精霊の力を使う“魔法士”を各国の研究成果を
纏める上で、国連総長が『精霊士』と呼称した事が由来となり、
各国家はこの『精霊士』の育成に力を傾け、自国の強化に励む様になる。
・・・そして二十六世紀
場所は国立精霊第三高校
日本が優秀な精霊士を育成する為に設立された国営の精霊士教育機関で、
全国で九校ある内の一つ、東海地区に設立された高校がこの第三高校
(略して精霊三校)である。
物語は、この精霊三校から始まるのである。