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ステップガ―ルとワイバ―ンの領主  作者: 六葉翼
【エルフィン ナイトの章】
18/24

【Inviitation】

魔女のクリスマスへようこそ(*’ω’ノノ゛☆パチパチかくも長き物語ここまでおつきあい頂いている読者の皆様を魔女のクリスマスへ御招待ですヽ(・∀・)ノでは始めます!




~ようこそ魔女のクリスマスへ~




「まだだ!まだ手をつけるなよ…モート、まだ、よしよし、待てだ!」


蜂蜜と溶かしバターで仕上げた、ターキーとローストチキンは皮までぱりっとして、きつね色に焼けていた。


ターキにつけて食べるための、グレービー、ブレッド、クランベリーの3種のソース。トリミングには市場で買ったスプラウトのローストを添え。


塩漬けした豚肉を巻いて、こんがり焼いた腸詰めと、ローストしたポテトとパースパニッブ。


彩りよく散らした花びらと一緒に盛りつけられたスモークサーモン。


武骨な塊の骨付きハムは、今夜だけ特別にめかしたパイ生地にくるまれて、ナイフで切り分けされるのを待っている。


ラム酒と砂糖に漬け込んで、熟成させたドライフルーツとナッツを詰めた星型のミンスパイに、ジンジャーブレッド。


テーブルの中央の皿に置かれた、大きな白いキャンドルのまわりには、花と果物が飾付けされていた。


湯気を立てて次々台所から運ばれて来るクリスマスのごちそうたち。モートの腹はさっきから鳴りっぱなしだった。


テーブルを拳で叩いて、一刻も早くごちそうにありつきたい意思表示を彼女にしても、彼女は犬をしつけるようにひたすら待てを繰り返した。


英国のクリスマスディナーには、ローストした鳥の他にも、焼いた肉料理が多く食卓を飾る。その理由は、長い冬の間は、家畜を飼っておくための飼料を確保することが難しいからだ。


飼料節約のために家畜をしめて、肉にして食べたていたことが、クリスマス料理として習慣化したと言われている。


モートには初めて見るクリスマス料理はどれも、ごちそうの山だった。


「キル…俺はもう我慢の限界だ!」


「待てモート!クリスマスの流儀だ!」


「だからなんで、魔女のお前がクリスマスの流儀にこだわるんだ!こっちに来い!魔女なら魔女らしく、共にこれらを貪り喰うのが魔女の宴だろ!?早く!早く!酒池肉林のサバトの儀式だ!!」


モートは腹が空きすぎて何を言ってるのか自分でもよくわからなくなっていた。


「お…これは…思ったよりも重い」


台所の奥から彼女が引き摺って来たのは、うっすらと埃を被った硝子の大瓶だった。硝子の器を彼女が布巾で丁寧に拭う。中身は美しい金色の液体だった。


「酒だ」


モートが訊ねる前に彼女が言った。


「奥に黒いのがもう一つある。悪いがテーブルまで運んでくれ」


その液体は瓶の中で春の陽射しを閉じ込めたように黄金色に澄んで輝いていた。


デミジョンと呼ばれる貯蔵酒専用の瓶。しゃがみ込んだ二人は、その中身をうっとりと覗き込んでいた。


「こんな綺麗な色した酒見たことないぞ」


「ダンデライオン ワインだ」


「ダンデライオンって…春先に道端に生えてるあれか?」


ダンデライオンワインは、春に摘んだタンポポの花びらを煮出した液体に、砂糖とレモンやオレンジなどの柑橘類のジュースを混ぜて、自然発酵させた酒のことだ。


アイルランドやウェールズ地方で昔からよく作られ、味や風味の良さからイングランド全般で飲まれるようになった。


「隣の黒いのは葡萄酒か?」


「これはブラックべリーのワインだ」


ブラックべリーは夏の終わり頃から秋にイギリスの郊外で大量に実をつける。


煮出したブラックべリーにこちらはジンを入れて発酵させて作る酒だ。


「綺麗な色だな」


「仕込んで半年は濁っていたんだ。駄目かなと思ってたら、その後澄んでこの色になった…もう飲み頃だろう」


「こっちの黒いのが俺で、そっちがあんたみたいだ」


「ブラックべリーの方が濃いから、涌水かソーダ水で割れば綺麗な色になる」


「これ仕込んでから飲めるまでどのくらいかかるんだ?」


「大体1年ほどだ」


「なら、よかった」


「そうだな、もう1年前の春と秋だ」


モートは彼女がその間に、一人で森や野原に出かけて、花や木の実を摘んだとはとても思えなかった。クリスマスのごちそうだって、多分作らない。


この酒は自分が彼女に出会う前から仕込まれた物だ。その間彼女は一人ではなかった。


だからよかった。


モートはそう思った。


ダンデライオンワインの栓を開けると、瓶口から春の花の香りが溢れた。


「酒も上々。料理が冷めては台無しだ」


「もう始めていいのか?」


「ああ遠慮なくやってくれ」


彼女は右手をあげて、その日の客をテーブルに案内した。




「モート準備はいいか?」


彼女にそう言われて、モートは山高帽にしまってあった、細長い紙の筒の先を持たされた。彼女が市場で貰ったおまけの一つだが、何に使う物かわからない。


クリスマスの包装紙のような絵が書かれた筒は、三つに切れ目が入っていて、大きなキャンデイの包みにも見えた。


「モート、端を掴んでけして離すな!」


「わ、わかった!ク、クリスマス初心者だがよ、頑張るぜ!」


「私が123と言うから一緒に声を合わせて筒を引っ張るんだ!さあ123!」


「ま・・」


なぜ彼女は片方の耳に指を入れているのだろうか。なぜ目を瞑っている。


モートが聞く間もなく、目の前でクラッカーが弾けた。


クラッカーの中から出て来たのは小さい木の兵隊の玩具と、すごくつまらないクイズの書かれた紙きれが一枚。


それから紙で作られた王冠が二つ。


彼女は紙の王冠を広げて、モートの頭に被せた。


「真中の筒はお前の方に残ったから、これは全部お前の物だぞ、モート!」


モートはクラッカーの中身を大事そうに集めて、逆さまにした山高帽の中に入れた。



【クイズ】


『イギリス人のディナーにはマナーはつきものです!では、イギリス人のディナーには、けしてないものはなに?』


答え 美味しい料理



モートはその夜、おまけの紙に書かれたそのクイズの答えは嘘だとすぐに思った。

宴はこれからです(〃^ー^〃)どうかごゆりと次の料理お待ち下さい(〃^ー^〃)お読み頂きありがとうございます(六葉翼)

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