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オウランド紀  作者: 花火大会
1章
6/13

オウランド紀13年ー5

昨夜は酔い潰れて裸になって寝てしまったというのに、体調は快調だった。シバは何故か指示に拒否が多くなった愛馬の手綱を握りながら、腰に佩いた愛刀の位置を確認した。

体調は快調だと思うが、なぜだかしっくりこない。起こされた後にパッチに追加で飲まされた酒の量が多かったせいだろうか。足元がふらつくような感じはするが、酒はぬけたと思うが。自身の違和感に首を捻りながら、今日世話になる騎馬隊員に挨拶に向かう。

「前線基地までよろしくお願いします」

「調査団のシバ団長ですね。こちらこそよろしくお願いします」

騎馬隊を率いる隊長がにこやかに答えた。そのままシバに近付いてくると、

「昨日、港の近くで魔物を見たとのことでしたが、それは襲ってくるようなものですか?」

「ブリングルスですね。親子で行動する魔物で、幼生体に手を出さなければ、積極的な攻撃行動を取ることは少ない種ですね」

「成程。港の近くに出没したとのことで、討伐計画が立てられていますが。何か注意することはありますか?」

「幼生体に手を出さないことです。死に物狂いになります。討伐隊に参加したことがありますが、その際には五十人からなる討伐隊が半数以上死傷する結果になりました。幼生体を逃がすように追い込めば、逃げる方に集中してこちらの被害を抑えられます」

「ほう」

隊長は手にしていた資料を見ながら何度か頷いていた。シバに目を向け、

「幼生体からは何か珍しい素材は手に入りますか?」

「そうですね」

シバは顎に手を当てしばらく考えこみ、

「幼生体は体がより巨躯な為、脂肪などの量は多いですね。ただし、討伐する危険性と天秤にかけてみると、あまり有益な相手とは思えません。それよりも確実に一体討伐し、港には近付かないように追い払う位にした方が良いでしょう」

隊長は何度か感心したように頷くと、

「成程。助かりました。暫し待っていてもらってもよろしいですか?討伐隊に情報を改めて伝えてこようと思います」

シバはその言葉に頷いた。

隊長は騎馬隊員に声を掛けると、港に設けられた兵舎に走っていった。騎馬隊員は隊長が戻るまでの間に、出発に向けての準備を進めていく。シバは欠伸を噛み殺しながら、港町へと振り返った。今度此処に来るのは、早くても三か月後だ。オウランド大陸に侵攻する拠点となるこの港は、今まで何度も魔物の襲撃を受け、崩壊しては立て直されるという鼬ごっこを繰り返している。近くに巨躯な魔物が出現した、というだけではあるが、過剰な反応をしてしまうのは、仕方のない事と言えるだろう。

騎馬隊隊長は慌ただしく戻ってきた。

「いやいや。お待たせして申し訳ないですな」

「構いませんよ」

シバはそう答えながら、首を捻る。考えてみれば、先程やりとりしたブリングルスの情報は、騎馬隊隊長が手にしていた資料に書き込まれているものであり、改めてシバに尋ねるまでもない情報である。

「それでは出発しましょう。前線基地までは一日がかりでしょうから」

隊長は騎馬隊に号令をかけると、出発する前に改めて隊の陣形を確認する。シバの護衛目的の為か、中央にシバと隊長を置いた央陣だ。

シバは何か釈然としない思いを抱えたまま、港町を後にすることになった。

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