14、キャンプ場ごとにごみ捨てルールは要確認!
さて、ほぼ一般人のカロンと戦士タイプのドールザーは低魔力コンビとも言える。
魔力探知での合流はかなり手こずるかと思われた……が、そんな事はなかったぜ。
「で、お前達ははぐれた俺を差し置いて何をしてるんだ?」
「わぁぁー! マオーざぁぁん! 良がった無゛事でぇえぇー!」
涙目で駆け寄ってくるカロンをサッと躱し、俺は目の前で焚き火をしているドールザーに向き直った。
二人の手にはそれぞれ銀製の串が握られており、その尖端には大きなマシュマロが刺さっている。
どこからどう見ても楽しいキャンプです本当にありがとうございました。
ドールザーは仏頂面を崩す事なく「貴様なら大丈夫だと言ったんだが、あまりにも落ち込んでいたのでな」と新たな串を取り出している。
「そうか。うちの子がなんかすまん」
「構わん」
どうやらカロンを宥めるためのキャンプだったらしい。
いや焼きマシュマロで落ち着かせるて。子供か!
……子供だったわ。
まぁこの焼きマシュマロの匂いのおかげで合流出来たのだから良しとしておこう。
礼として「なぜドールザーがマシュマロを携帯していたのか」については不問とする。
「ひっく、本当に心配したんですからね! ゲホッ、もぐっ」
「泣くか怒るかマシュマロ食うかどれかにしろ」
暫くの間、俺はドールザーに渡されたマシュマロを炙りながらカロンの小言を聞き流すはめになってしまった。
はいはい、次は足元に気を付けますぅ。
◇
そんなやり取りを挟みつつ、約一時間後。
さり気ない誘導の下、我々「しがない冒険者パーティー」は無事にメープルドラゴンの巣穴へと到達した。
いやぁ、地味に大変だった。
後はあの若きメープルドラゴンが上手いこと話を合わせてくれるのを期待するばかりである。
「おやぁー? なにやら甘い香りが漂っているなぁ。ハッ! さてはここがあのドラゴンのハウスね!」
「マオーさん、今日はやけに棒読みですねぇ」
誰が顔採用の大根役者だって?(前向き解釈)
呑気にお喋りする俺達をよそに、ドールザーは警戒しながら洞窟周辺を探っている。
「……静かにしろ。確かに甘い香りがする。向こうに水場も見えるし、確実にメープルドラゴンの巣穴だろう」
「ひぇっ」
大剣に手をかけるドールザーに倣い、カロンも杖を構え始める。
俺? 後方で完全に様子見モードだ。
しかし何だろう、この妙な胸騒ぎは。
「っ! 来るぞ!」
カロンを背にドールザーが剣を抜く。
勢いよく洞窟から飛び出したのは、先程打ち合わせをした若きメープルドラゴンであった。
「グハハハハ! よく来たな、しがない人間の冒険者よ! ここを我が甘味竜の根城と知った上で足を踏み入れようと言うのか!」
えぇぇぇ、なんかノリノリでキャラ作ってるー!?
さっきまでの可愛い語尾はどうしたでギャすー!?
ドールザーは至って真面目に「この魔物、喋る知能があるのか!」等と完全に臨戦態勢である。
嘘だろおい! 俺の根回しした意味は!?
頭を抱える俺に誰一人気付く事なく話は進む。
「グハハハハ、私と戦おうとするとは面白い! だが今の我輩は気分が良い! 幸運な人間共よ、今なら特別にいくらでも願いを叶えてやろうぞ!」
「……は?」
「え、え? 願い? いくらでも?」
目が点になる二人。
いや、ある意味俺も目が点だわ。
せめて一人称統一して。
メープルドラゴンはなおも高笑いしながら「高貴な俺様は血よりミツを流す事を誇りとしている」とふんぞり返っている。
お、おぉぅ? これは意外にも、中々に上手い話の持っていき方なのでは?
しかし当然ながらドールザーの警戒は解けない。
「魔物風情の話を信用しろと?」
「えと……願いを叶えてくれるっていうのは、どんな願いでもって事ですかぁ?」
困惑しきりの二人には申し訳ないが、俺は引き続き様子見タイムとさせて頂こう。
メープルドラゴンは無駄に尊大さを保ったまま「無論、いくらでもだ」と腕を組んだ。
「ボトル何本でも、何リットルでも、いくらでもこのミツをくれてやろう!」
「あ、いや、そうじゃなくてですね……」
「貴様らの願い、いくらでもこのミツをもって叶えてやろう!」
「あー、カロン。これはあれだ。ミツ関係の願いしか聞いてくれないやつだ」
そっとフォローしてやれば、メープルドラゴンは感動した様子でミツの滴る肩を震わせた。
やめてー!
今は魔王のファンボーイ感出さないで、繋がりがバレる。
「とりあえずドールザーは武器を下ろしたらどうだ? 戦わずしてミツが手に入るならそれに越したことは無いだろう。なぁ、カロン」
「そ、そうですね! えと、じゃあメープルドラゴンさん、このビン全部にミツを下さい!」
「グハハハハ、その程度、お安い御用よ。何ならもっと差し上げようぞ!」
恐る恐る三本の小瓶を差し出すカロンに続き、俺もマイボトルを差し出す。
ちゃっかりドールザーもボトルを二本差し出した辺り、一応は納得してくれたのだろう。
「グハハハハ! どれもこれも小瓶やボトルばかりではないか、欲のない奴らめ。何ならバケツにでも入れて持って帰るか? 確か今は使ってないやつが奥にしまってあった筈だが……」
おい急に所帯じみるな、キャラを守れ。
「バケツ、いるか?」と首を傾げるメープルドラゴンに、カロンは恐縮しきりで両手を振った。
「消費しきれないと勿体無いのでこれ以上は結構ですぅ。でもありがとうございます!」
「グハハハハ、細かい事を気にする人間め。密封容器に入れて冷暗所に保管すれば二、三年は美味しく保存可能だ!」
「……意外と保つのだな。ならもう少し貰っていくか」
「そうですねぇ。じゃあ私も……」
お前ら、ちょっと図々しくない?
一応このメープルドラゴンが好意的なのって俺の存在ありきなんだからな?
もう少し遠慮して差し上げろ。
……って思ったけど、当のメープルドラゴンが嬉しそうだから良いか。
デロデロとミツが溢れるメープルドラゴンの首にボトルや小瓶を押し当てること十数分。
依頼に必要な分以上のミツをゲットした俺達は改めてメープルドラゴンに礼を述べた。
「助かったぞ、メープルドラゴンよ」
「ギャヒャッ!?……こほん。構わぬ、しがない人間の冒険者様共よ。またミツが欲しくなったらいつでもここを訪れるがよい」
「……? 今日は貴様の機嫌が良かっただけではないのか?」
「(あっ……)いや、なに、人間も捨てたものではないと思ったまでの事よ。グハハハ!」
所々危うい所もあったが丸く収まったようで何よりである。
「で、次はいつ来る?」と期待に満ちた目を向ける彼に、俺は正直に「サイッショ大陸を目指す旅の途中故、当分立ち寄る事はないだろう」と告げた。
分かりやすく「ガーン!」とショックを受けた様子の彼には申し訳ないが、そろそろ別れを切り出すとしよう。
「では邪魔したな、メープルドラゴンよ。達者でな」
「こんなに沢山のミツ、どうもありがとうございましたぁ~」
「……礼は言っておく」
「ギャ……グハハハハ! 気を付けて帰られよ!」
涙目で高笑いする彼の役者魂に脳内で敬礼しつつ、俺達はメープルドラゴンの洞窟を後にした。
さーて、あとは王都に帰ってフュベルダ嬢……もといファースィオンにミツを渡せば依頼達成である。
一時はどうなるかと思ったが、案外何とかなるものだな。
良かった良かった。
◇
<オマケ>
ミツを入手した魔王一行が帰宅後──
「……はぁ。もっと魔王様とお話したかったギャぁ」
一気に肩の力が抜けたメープルドラゴンはトボトボと尾を垂らして洞窟へと引き返した。
「って、あギャ?」
足元をよく見ると紙の上に置かれたお玉が落ちている。
「なんでお玉が……って、これは!?」
どうやらお玉はただの文鎮代わりだったようだ。
紙を拾い上げたメープルドラゴンの手がわなわなと震える。
──名もなきメープルドラゴンへ
御協力に感謝
二代目魔王☆
「ギャひゃあぁぁ!?」
その日、コハクの森にかつてない歓喜の悲鳴が響き渡ったという。
<番外編用の質問募集のお知らせ>
魔王様(マオー)、グルオ、カロン、エーヒアスへの質問を募集させて頂きます。
質問数は最大お一人様5つまで。
その際、質問内容に添えて希望する回答者をお書き下さい。
例
・好きな色は?(全員)
・マオー様はお風呂の時、体のどこから洗う?(魔王)
・グルオの初恋は?(グルオ)
・家族はいるの?(カロン)
・旅で一番しんどかった事は?(エーヒアス)
ふざけた質問から真面目な質問まで。
集まった質問に皆が答えます。
募集期間は2024年3月末日くらいまでです。
※締切は予告なく変わる可能性があります。予めご了承下さい。
作中でお名前の公表等は一切しませんので、メッセージか活動報告欄にて気軽にお寄せ下さい。
感想欄での募集はしておりませんのでご注意を。
なんなら挨拶文も不要です。
質問の箇条書きだけでも喜んで採用します。
(センシティブな質問やモラルに反する内容等はNGです。
また、全ての質問が採用されるとは限りません)
なお質問者がゼロでも番外編は投稿させて頂きます。
代わりに質問内容が薄くなりますがご容赦下さい。




