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6、埃の掃除は朝イチか帰宅後に、換気は掃除後にやろう

「ウッケッケ。今日は儲かったでヤスねぇ、兄貴!」


「ヒャハハ、今日のカモは思い出すだけで笑えるでゲスな。鼻血出して『今はこれしか持ってないんでしゅ~』って、傑作だったでゲス!」


「おうおう! お前らその辺にしとけや。兄貴、今日もお疲れさんです!」


「……ウム」


 なるほど四人か。

しかも大なり小なり悪いヤツ。


 ただの浮浪者だったら言いくるめも楽だったのだが仕方ない。

もう一度侵入する手間を考えると空間転移魔法で脱出するのは避けたい所……


 ならば俺が取る行動はただ一つ。


「ウケッ!? 誰でヤスかお前っ!?」


「どぉもぉ、肝試しチャレンジャーです」


 そう、「部屋の前で仁王立ちして通せんぼ(エンカウント)作戦」である。


 って……んん? 気のせいか?

コイツらどこかで見たことあるような、無いような、無いような……?


 記憶の引き出しをこじ開けようにも、見るからにチンピラ風の男達が騒ぐせいで思考が中断されてしまった。


「お前、ここが何処だか分かってるでゲスか!?」


「いや全く。廃墟だと思ってたがシェアハウスだったのか? だとしたら正直すまんかった」


「何だコイツ舐めやがって! 兄貴、やっちまいやしょう!」


「ウム」


 狭い廊下なら囲まれる心配もないし楽に倒せる──

そう思ってた時期が俺にもありました。


「うぉぉりゃぁぁあぁ!」


 ドゴォ!


「げ」


 なんとチンピラの一人こと下っ端Aが大きな棍棒を振り回して突進してきたのだ。

嘘だろ。

廃屋とはいえ家の壁を壊す事に何の躊躇も無いのかコイツら。

不法侵入もしてるし、なんて非常識なんだ!


 バゴン、ドガンと左右の壁が破壊される度に細かい埃や破片が舞い上がる。


「っぐ、」


 咄嗟に口元を覆い、後退して攻撃をかわす。

室内に追い込まれてしまったのは誤算だったが避けなければ塵や埃を吸ってしまう。

そんな状況、堪えられる筈がない。


 念のために確認すると、カロンがキッチンの前で杖を握り構えているのが見えた。

レオの姿はない。

カロンなりに依頼人を守っているつもりのようだ。

偉い偉い。


 ひとまずの安全確認をした俺は再びチンピラーズの方に向き直った。


「とりあえず落ち着こうか。悪いようにはせん」


「あぁん!? 何でテメェが上から目線なんだよ! 状況分かってねーのか!?」


「おぉっと失言出現」


 これはやってしまいましたねぇ、僕の悪い癖。

ついナチュラルに上からマオーを振りかざしちゃうんだなぁ。


「ここまでコケにされたとあっちゃあ、泣く子も黙る天下の大悪党、『居座り強盗四天王団』の名が廃るでゲス!」


「「うわチーム名ダッサ!」」


 思わずカロンとハモってしまったが、そのお陰で俺の中に眠りし記憶が呼び起こされた。


 あれは数日前、王都のギルドでいつもの仕事を探していた時の事だ──



~回想~



「うーん。やっぱり皿洗いやパトロールバイトだけではお金が貯まりませんねぇ」


「だが低レベルの魔獣や害獣駆除は割りに合わんだろう」


 基本的に王都周辺の強い魔物や魔獣退治は騎士団の管轄らしいし、何よりカロンとコエダのお守りをしながらでは面倒くさい。

あまり王都中心部から離れるとグルオがうるさいというのもあるが。


「賞金首を掴まえるなんて危ない事も出来ませんしねぇ」


「出来ない理由は主にお前だけどな。……あ。この手配書みたいな三下感溢れるチンピラ退治なら何とかなりそうではないか?」


 壁に貼られた手配書を適当に指し示せば、近くに居た受付けのお姉さんに声をかけられた。


「うふふっ、その手配書の人達、見た目の割りにヤバイんですよ? ほら、懸賞金の所をよく見て下さい」


 どれどれと改めて確認してみると、そこにはとんでもない金額が記されていた。


「ほう、一人約五十万エーヌか……って五十万エーヌ!?」


「たっか!? 何でこんな絵に描いたようなチンピラさんがそんなに高額なんです!?」


 更によく見ると居場所の提供だけで十万エーヌと書いてある。

お姉さんは苦笑しながら「賞金稼ぎ初心者マニュアル」と書かれた小冊子を差し出してきた。

ウワー侮ラレテルー。


「この四人組は『居座り強盗四天王団』を名乗っている、強盗殺人の常習犯です」


「「うわ名前ダッサ!」」


「見た目はこんな『ゴロツキの国で十人は見かける三下』って感じの典型的なダサいチンピラなんですが、逃げ足が早いわ雲隠れが得意だわで中々捕まらないんですよ」


「なるほど……それでこの金額か」


「はい。あ、普通にかなり強いので、もし見掛けたとしても無理に捕まえようとせず通報して下さいね。レベル20以下だとワンパン即死させられる恐れがありますから」


 カロンのレベルが8であると知っているお姉さんの有難~い忠告である。


「まぁ品行方正な俺達が関わる事はまずない相手だな」


「そ、そうですね。私達は真面目にコツコツいきましょう!」


「うふふ、頑張って下さいね~♡」


「「「アッハッハッハ!」」」



~回想終了~



 って、こいつらが「居座り強盗四天王団」かよ!!


 なんで見掛けるどころか戦闘始まっちゃってんの?

うっかりしたらカロンがワンパンされてしまうかもしれない。


 そんな事を考えていたら、棍棒を振り回していた下っ端Aがカロンの存在に気付いてしまった。


「なんだぁ!? もう一人いやがったのか!」


「ヒィッ!?」


「ウッケッケ、女だ女だぁ!……って何だ、ションベンくせぇガキでヤスか。大外れでヤス」


「…………」


 カロン、俺には分かるぞ、お前の複雑な心境が。

ムカついたけど文句を言えない状況で怖さと苛立ちが混ざった結果、その変顔になってるんだよな、うん。

分かったからその顔早くしまって。


「つーかよぉ! テメェら、よくも兄貴の作ったチーム名をバカにしやがったな!?」


「死ぬでゲス!」


「うぉおおぉぉーー!」


 下っ端A、B、Cは各々棍棒やら片刃剣やらナイフやらを構えると、一斉に俺の方へと突っ込んできた。

親玉らしきチンピラは様子見のつもりなのか動く様子はない。


 なるほど、強そうな俺の方を確実に倒してから女の方(ションベンくせぇガキ)をどうこうしようって事か。

分かりやすい戦い方で助かる。


 一身上の都合により魔法が使えない為、避けるか受けるか一瞬迷ったものの、結局無難に避けながら沈める事にした。


※一身上の都合……室内なので火魔法厳禁。

埃が舞うので風魔法厳禁。

お水が汚水になるので水魔法厳禁。

せっかくの高額懸賞首が相手なので消去魔法(イレイサー)は論外。

他魔法も以下略。


「(よっこら)せいっ!」


 下っ端Cによるナイフの突き攻撃をギリギリで避けつつ、その後ろから続く下っ端Bの片刃剣の持ち手に自身の剣の柄をぶつけた。


 ゴッと鈍い音と共に漏れる下っ端Bの呻き声。

「あ、骨折れてたらゴメン」と同情するヒマなどなく。

俺は剣を握ったままクルリと身を翻すと、未だ体勢を崩している下っ端Cの横腹を目掛けて思いっきり薙ぎ払った。

安心しろ、峰打ち……いや、鞘打ちだ。


「ゥゲッ!?」


「ぐぉっ!」


 下っ端Cが横に吹っ飛び、ついでに俺の死角を狙って棍棒を振り下ろそうとしていた下っ端Aもろとも壁に叩きつける事が出来た。

おぉ、二撃で三人倒せるとかラッキー……ゴホン、全て計算通りである。


「さて、残るはお前一人な訳だが……」


 手を抑えて悶絶している下っ端Bと完全に伸びてしまった下っ端AC。

この場に治癒術師(ヒーラー)でも居ない限り彼らが戦闘を続ける事は不可能だろう。


 俺は剣を腰に差し直しながら、「兄貴」と呼ばれていた男の方にゆっくりと顔を向けた。

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