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2、汚れたり破けてしまったお札は銀行で交換して貰える

 翌朝。

爽やかに晴れ渡る空の下、我々はジワンエンドリー城を再訪した。

目的は勿論、報酬を貰う事と女性陣との合流である。


 どうやら昨日の大騒ぎは外部に漏れていないらしく、町は落ち着いた様子だった。

国王&ドリュー氏は良かったな。

不祥事はまだ公になってないから揉み消すなら今ですぞ。


 上がりきった跳ね橋を前に「再入城出来ないのでは?」と少しだけ不安になったが、それは杞憂に終わる。

俺とグルオの顔を見た門衛が笑顔を浮かべて橋を下ろしてくれたからだ。

顔パスとは気持ちの良いものである。


「待ち時間無しとはVIP待遇だな」


「城……ひいては国を救う一端を担ったのだから当然では?」


「なるほど。今なら年パス貰える感じ?」


 まぁGに占拠された城なんてそう何度も訪れたくないけどな。


 我々は昨日同様、武器を預けてから城の南塔に通された。

カロンとエーヒアスはすっかり元気になったらしく、救護室の中でメイドの若い女と和やかに話をしている。


「あらぁ、勇者様って思ったより庶民的なのですね。ちょっとガッカリですわ」


「でも良い人でしたよ~! ちょっと長時間は付いていける気がしなかっただけで」


「フフ、面白い人だったわよ。飽きなさそうだし、私は結構好きだったけど?」


「それはそれで残念要素ではありませんか?……あーあ、勇者様が戻られたらお近づきになって、あわよくば玉の輿を狙ってましたのに……」


 ガールズトーク怖い。

というかメイドの本音が怖い。

「あ、じゃあグルオ様は!?」とはしゃいだ声を上げる名も知らぬ娘に嫌な予感を抱く。


 俺はそっと救護室から離れると、そのまま国王がいる間へと足を運んだ。

ふぅ、危ない危ない。もう少しで劣等感に苛まれる所であった。



 無事国王への謁見を許された俺とグルオはファースィオン立ち会いの元、それはもう堅苦しい言葉で褒められた。


 簡単に言ってしまうと、「息子のワガママに付き合ってくれた上に城のピンチまで救ってくれてサンキュー」ってな話だった。

こんな迫力だらけの怖い顔なのに褒めて伸ばすスタイルなのだから、萌えないギャップも良いところである。


「さて、今は仲間が揃って居らぬようだし、正式な礼はまた後程するとしよう。……時にマオーよ」


「何か?」


「お主の話はドリューやファースィオンから聞いておる。そこで少し調べさせて貰ったのだが、貴族階級及びその周辺の人物に『マオー』という名の者は居ない事が分かった」


 ドッキーン!

……このくだり、何回目?

とはいえ流石に今回は不味いかもしれない。

庶民ならともかく、それなりの身分だと思われている以上、出生届が出てないというのは普通に怪しまれ案件だろう。


 グルオの気配がピリつくのが分かる。

その変化に国王も気付いているのかいないのか──元々の顔が怖すぎて判断がつかない。

歴戦の勇者かよ。

俺が子供だったら泣いてたわ。


「……つまり、何が仰りたいと?」


「ふむ。その臆さぬ不遜な態度……やはりそうか」


 いやそれなりに臆してますが?

国王は彫りの深い顔の眉間を更に寄せると、静かに頭を下げた。

──え!? 下げた!?(二度見)


「へ、陛下、何を!? どうかお止めください!」


 慌てて頭を上げさせようとするファースィオンは正しい。

国のトップが軽々しく頭を下げるなど、本来あってはならないのだ。

その相手がただの冒険者なら尚更である。


 まぁ俺もよく頭下げるから人の事言えないけどね。

トップといえど謙虚さは忘れちゃならないからね。


「あー……少々待たれよ。それは一体何の謝罪なのか、こちらは見当も付いてないのだが……?」


 とりあえず説明を求めると、国王は険しい顔で肘掛けに乗せた拳を握った。

それと同時に肘掛けからパキリと音が聞こえる。握力ぅ。


「出生を隠され、影に生きる事を強いられ……さぞ不遇の人生を歩まされた事であろう。貴族社会の膿を無くせぬのは私の不徳の致すところ。憎まれても仕方ない」


 あれーーやっぱ誤解されてるぅーー!?

なんか凄いシリアスな設定が付与されてる気がする!

やめて俺全然人生エンジョイしてるから!


「そんな境遇にありながらも力と知識を身に付け、我々に協力してくれた事は感謝に堪えぬ。なんと素晴らしい人格者か」


「いや協力しないと被害が拡大するのは時間の問題だったしな。当然の事をしたまでだ……です」


「殊勝な事だ。勇者はユートであるが、お主らも立派な英雄である。本来ならお主らの働きを大々的に取り上げるのが筋であろうが……」


「あ、そういうの良いんで、マジで」


 普通の冒険者なら売名チャンスと捉えるだろうが、生憎俺とグルオは目立ちたくない陰の者(キャ)なのだ。

国王としても今回の事件は大っぴらにしたくないだろうし、静かに終わらせたいという互いの意見は一致している。


「そうか。話が早くて助かる。代わりといっては何だが謝礼は弾もう」


「それは有難い。こちらこそ気遣い頂き感謝する」


「魔王様、敬語敬語」


 あ、やべ。つい対等目線で喋っちゃった。

複雑な視線を送るファースィオンから目を逸らして礼をすれば、とりあえずその場は下がる事となった。


 あー、緊張した。

国王の間を出るやいなや、カロンが飛び付いてきた。


「マオーさん、先生、おはようございます! 国王様と何をお話してたんですか?」


「一言で言うと『協力サンキュー』って話だったな」


「まぁ分かりやすい。その割には長いお話だったようだけどね」


「なぁに、『お前どこ校?』って話が盛り上がっただけだ」


 カロンが「それ絶対ウソですよね!?」と突っ込んでいたが、当然のようにスルーする。

こうして俺達はご褒美授与の準備が整うまでの時間を空き部屋で過ごす事にしたのだった。





「……なん……だと……!?」


「魔王様、そう言えば何でもシリアスになると思わないで下さい」


 塔の空き部屋で待機中、俺はグルオの提案に難色を示す他なかった。

と言うのも、コイツの提案が今までの意見と180度変わっていたからである。


「だがなぁ、そんないきなり『この街で金を集めよう』なんて言われても……」


 元々俺とグルオは「ドリュー氏の報酬を貰い次第トンズラかまそうぜ」という同一の考えであった。

まさかの手のひら返しにはさしもの魔王もこの表情である。

※画面の前の皆様はチベスナ顔でご想像下さい。


「勿論、これ以上王族関係と関わらないという方針は同意です。ですが王都を出てしまうとここ以上に稼げそうな街が無いのです」


「そんなの分かりきってた事ではないか」


「ええ。ですが魔王様が思いの外国王からの信頼を得てくれたので、考えが変わりました。たぶんきっと恐らく大丈夫です」


 えぇぇ、不安しかないんですがそれは。

つまり国王達の好意的解釈を傘に開き直れって事でしょ?

騙してるようで(実際騙してるんだけど)罪悪感が凄まじいのだが。


「あのぅ、どうしてマオーさん達は王都が嫌なんですか? 華やかで素敵な所じゃないですかぁ」


「我々は反シティーボーイなんだ。都会っ子に憧れる軟弱な田舎者とは違うのだよ」


「あら、はぐらかすのね」


 俺の完璧な論破に納得してくれて嬉しい限りである。

そうこう過ごしていると、準備が整ったのか使用人が呼びに来た。


 ホイホイ呼び出しに応じた俺達は本日二度目の王の間へ入室する。

今回は国王とファースィオンの他にもドリュー氏と大臣、兵士達が大集合していた。

そこで告げられたのは言わずもがな、報酬についてである。


「此度の皆さんの働きは素晴らしいものでしたな。まずはアンドリュー様からの報酬ですが……」


 大臣の目配せを合図にドリュー氏は一歩前に出て口を開いた。


「口約ではジーコローリエの乾燥の手間賃と王都までの護衛で10万エーヌだったな。そこから経費を引くという話だったが、君達は魚人の説得をしてくれた事だし、満額支払いで構わない」


「ほう、それは有り難いな」


 10万エーヌ、丸っとゲットだぜ!

だがこれを四人で割るとなると俺の手取りは2万5千エーヌか……

前金で既に10万エーヌ貰っているとはいえ、マイホームへの道は遠いなぁ……


「さて、次にG駆除の依頼についての件ですな。これは元々個人依頼としていたので、順に説明させて頂きますな」


 キタコレ。

だが俺とカロンの働きは大臣達には秘密裏に行われた物だからな。

期待しないでおこう。

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― 新着の感想 ―
ここまで読ませていただきました。悪戦苦闘の末に、ついにGを退治したマオー様たち、前エピソードでファースィオンの言葉に何度もReplayが入るのが面白かったですし、国王とのやりとりにも目が離せませんでし…
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