表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/108

2、電話の受話器やボタンの掃除はエタノールスプレーして拭き取ろう

「し、信じられん。クリスタルの位置をこの距離から正確に把握出来るなんて……」


「何だこの探知能力の高さは!? ステータス上昇魔法をかけていたとしても無理があるだろ! 魔力量化け物かよ!」


 ドッキーン。

「どうも、化け物こと元魔王です☆」なーんて言える筈もない。

少しヒヤヒヤしたものの、彼らの話はエーヒアスの素朴な疑問で中断された。


「そのクリスタル? をこっち側に繋ぐのってどれくらい時間かかる作業なのかしら? ただ待つのもつまらないし、ガスマスク作ろうと思うんだけど」


 流石職人、隙間時間の有効活用とは恐れ入る。

彼女の問いに答えるべく口を開いた瞬間、頬を染めた研究者達に遮られてしまった。


「いやいやお嬢さん。これ以上は流石にどう考えても不可能です! あの数のクリスタルの魔力をここまで引き繋ぐなんて……魔法研究の()()()()職員である我々が束になったとしても無理なんですから!(前髪ファサァッ)」


「そうだそうだ! ()()()()の我々でも出来ない事を、たった一人の冒険者がどうこう出来るものか!(眼鏡クイッ)」


 ここぞとばかりにエリート強調すんな。

再度繰り広げられる、あーでもない、こーでもない、どらげない。

加速する研究者達の実りのないやり取りに痺れを切らし、俺は黙々とクリスタルの魔力を細い糸のように引きのばしていった。


 一刻も早くここから逃げたいってのも理由の一つだが、万が一にも敵を城外に出す訳にはいかないからな。

敵の繁殖力を舐めてはならない。

最悪、王都どころか世界中が巨大Gに占拠されかねないのだ。

そうなったら俺のマイホームどころの話では無くなる。

あぁなんておぞましい!

俺は一匹たりとも自宅にGを入れたくない。


 静かに歩み寄る最悪の未来に嫌な汗が背中を伝う。

俺は大臣に用意して貰ったあり合わせの鏡や水晶玉一つ一つ(×36)に自身の魔力とクリスタルの波長を合わせ繋いでいった。

イメージとしては長~い糸電話を量産する感じだ。


 うむ、よしよし。

この作業を繰り返していけば、城内の映像がリアルタイムで見られるようになる。

敵の動きが少しでも分かれば、ゴキ殺隊が突入した後もこちらから指示が出せよう。

無駄な戦闘を減らせるのはかなりデカいからな。

感謝して敬え。


 魔力のコントロールに少し手こずったものの、どうにか二時間程で全ての監視クリスタルを此方に接続(コネクト)する事が出来た。


 ちなみにその間、グルオとカロンは別室で粉砕したハーブの調合作業の手伝いを、エーヒアスはガスマスクの組み立て作業を内職していた。

しっかりした仲間達で鼻が高い。

リーダーがしっかりしてるから当然とも言えるがな。


 ここまで来れば当然、あれだけ「無理」を連呼していた研究者達の態度も一転する。

褒めて褒めてー。


「し、信じられん! こんな変な兜の奴が、こんな人間離れした奇跡を起こすなんて!」


「しかも三十六ヵ所の映像を全部同時に生中継だと!? 本来の監視部屋でも必要な場所を選択して映しだすのがやっとだったのに!」


「あんたもう冒険者辞めて映像監視の警備員になれよ!」


「あっ、ゴ……Gが映った!」


「すげー! でっけー!」


 褒め……て……


「結構居ますね。動きも早いですが、予め敵の位置情報を頂ければ対処出来る相手かと」


「そうか。頼りにしているよ、グルオ殿」


 おいコラそこの家臣と依頼人!

せめてお前らは褒めろよ!


 項垂れる俺の両肩をカロンとエーヒアスが左右からポンと叩いてくれた。

あぁもう、倒れるわ恥かくわ真面目に働くわ褒められないわ……

俺はもう疲れたよ……癒して大天使コエダエル……


 とにもかくにも俺に出来る事はここまでだろう。

俺は映像が途切れないよう全ての魔法鏡と水晶に魔力を注入し続けながら、一歩引いて事の運びを見守る事にする。

なんだかんだで感激してくれたのか、ドリュー氏の表情は今までになく明るい。


「マオー殿のおかげで駆除作業の成功率は飛躍的に上がっただろう。では改めて、現状の確認と今後について話し合おうか。……ファースィオン!」


「はっ!」


 ガシャリと音を立てて前に出たのは、三十代前半の快活そうな顔をした兵士だった。

甲冑がその他大勢の兵と違ってかなり目立っており、それなりに立場が上の人物だという事が一目で分かる。


「ご挨拶が遅れました。(わたくし)、ジワンエンドリー王家直属、第二部隊隊長のファースィオンと申します。此度の任務では皆様の御協力のもと、前線部隊隊長として働かせて頂きます!」


 ペコリとお辞儀をする機敏な動きからして、真面目な優等生がそのまま大人になったような印象だ。

その若さで隊長とは……このファースィオンという男、中々腕が立つのだろう。

そんな事をぼんやり考えていると、ドリュー氏はスッと扉の方へと歩き始めた。


「彼はとても優秀な男だ。どうか上手く使ってやってくれ。それでは諸君、健闘を祈っているよ」


 にこぉ~……じゃないわ!

何一人逃げようとしてんだこの皇太子。

俺だって役目は終えたから離れた場所でゆったりまったりのーんびりしたいのに!

でもこの場から離れたら魔力コントロールがより面倒臭くなる! ガッデム!


 俺の恨めしげな視線など物ともせず、ドリュー氏はあっさりと退室してしまった。

無情すぎぃ。


「えっと、マオー様。どうか殿下の事をお許し下さい。あぁ見えてずっとゴ……敵に対する恐怖を押し隠し、気を張っておられたのです」


「ぐぬぬ……わかりみのかたまり」


 それ言われちゃうと無理に引き留めるのも憚られるというものだ。

ファースィオンは申し訳無さげに眉尻を下げながらも、時間が惜しい様子でグルオに向き直った。


「早速ですが本題に入りましょう。私は剣術と、ほんの少しですが火の魔法が扱えます。失礼ですが、グルオ殿とエーヒアス殿の得意な戦術をお伺いしても?」


 嫌みのない丁寧な口調だが、少し引っ掛かるな。

グルオは気にするまでもないと判断したのか、至って真面目に受け答えている。


「私は斥候(スカウト)なので素早さと身を隠す事に長けています。戦闘は主に近接で乱戦はやや不得手です。掃除が得意なので敵の好みそうな場所を見付けるお役に立てるかと」


「私は鍛冶職人よ。ハンマーで敵を殴り飛ばすのが得意なの。素早さにもそこそこ自信があるわ」


「おぉ、見かけによらずなんと豪気な……しかしエーヒアス殿の冒険者登録証(カード)職業(ジョブ)欄には確か治癒術師(ヒーラー)とあった筈ですが……?」


 感心しながらも小首を傾げるファースィオンに、パーティー全員が一斉に忘れていた初期設定(記憶)を思い出した。


「ハッ! そういえばエーヒアスは冒険者としての職業(ジョブ)治癒術師(ヒーラー)であったか!」


「ハッ! そうですよ! エーヒアスには回復魔法(ヒーリング)があるじゃないですかぁ!」


「ハッ! そういえば一度も見たことないが状態回復魔法(アンチドート)もあったかと」


「ハッ! 皆殆んどケガしないから自分でも完全に忘れてたわ!」


 何この茶番。

この調子で今月の目標は労災ゼロを目指そうぜ。


 俺達のやり取りを見ていたファースィオンは目を丸くしたかと思えば、口許を隠してプルプルと肩を震わせだした。

愉快な仲間達でどうもサーセン。


「フッ、クク……失礼。皆様、大変仲が宜しいのですね。私達は敵の生態に疎いですし、武闘派の治癒術師(ヒーラー)も貴重な人材です。マオー様の監視とナビも含めて頼りにしていますよ」


「おいこらサラッと俺の仕事増やすなし」


 え、もしかして俺三十六ヵ所のGライブ中継しながらGナビゲートしなきゃなんないの?

休む暇無くない?


「あ……すみません。流石に魔力を注ぎ続けながら他の事をするのは無理そうですか?」


「いやまぁ出来るけどもさぁ」


 突入部隊に「十メートル先、右折」みたいな声かけすれば良いんでしょ?

実況解説くらいなら楽勝である。

ただし相手がGでさえなければ、の話であるが。

いくらクリスタルごしとはいえGの姿なんて一秒だって見たくないし、気が進まないったらない。


「あ、あのぅ……」


 おずおずと挙手をするカロンに視線が集まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ああ、やっぱりこのノリ好き……。 魔王様の喋り方とか好きです。 ありがたいありがたい……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ