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1、清掃はたまに違う人がやった方が視点が違うから綺麗になったりする

──数時間後。


 俺が気を失ってから「なんやかんや」で「色々あった」が、諸事情により全て割愛する。

俺は今、国王と謁見した部屋の中央で大きなテーブルに広げられた城の設計図と向き合っていた。


……ん? 何故割愛するのかって?


 思 い 出 し た く も な い か ら だ よ 。




※割愛された内容について(カロン談)※


 えーっと、マオーさんが倒れそうになったのを先生とエーヒアスが受け止めて、私は先生の指示でお部屋の外(廊下)に折り畳みベッドを広げたんです。

お話も中断になっちゃったし、怒られるかなって思ったんですけど、国王様もドリューさんも優しかったです。

むしろ「倒れるのも無理はない」って同情的でした。

マオーさんが寝ていたのは四十分位でしょうか……


 その間、沢山の兵士さんや使用人さんが廊下を行ったり来たりしていて変な目で見られてましたが、私達は部屋の中で国王様と魚人の話とかして事なきを得ました!

マオーさんはたまにうなされていて、私が一番印象に残った寝言は「深爪ウメボシ」です。


 目覚めたマオーさんは自分の置かれている状況を理解して、かなり落ち込んでいました。

本人曰く「生涯の恥」だそうです。

お仕事中の皆さんに寝顔を見られたのがよほど堪えたんでしょうね。

せめて寝言の事は黙っていようと思います。


 マオーさんが起きたという事で、話が再開となりました。

ある程度心の準備が出来ていたからか、今度のマオーさんは倒れませんでした。

二度も気を失ったら恥の上塗りですもんね。


 さて話の内容ですが、勿体ぶっても仕方ないので簡単に言っちゃいます。


 ズバリ、『魔法薬で巨大化した天才ドブネズミ、巨大ゴキブリを増やし従えお城を占拠!』です。


 言葉だけだと「何それふざけてんの?」と思われるかもしれませんが、具体的に想像してみて下さい。


 黄ばんだ前歯に、汚れて湿った毛並みの人間サイズのドブネズミ。

ツヤツヤと脂ぎった黒褐色の、カサカサと不規則に動いては長い触覚を揺らす大型犬サイズのG。

全くデフォルメされていないリアルなそれらが一致団結して襲いかかってくる光景を──


 結構おぞましいですよね?

マオーさんじゃなくても鳥肌ものです。

国王様とドリューさん親子は虫全般が駄目なようで、研究所の事故が発覚するやいなや本城から逃げたそうです。

一国の王がそれで良いの? とも思いますが、後にこの選択は正しかったと分かります。


 王族の方々の避難が完了した後、兵士さん達が何よりも優先したのが「徹底的なお城の封鎖」でした。

この迅速な対処のおかげで敵はまだ南の塔と本城からは出られてないみたいです。


 その後何度となく討伐隊を送ったようですが、敵が強くて全て敗走。

戦いの中で犠牲があったり、城内に何人か取り残されてしまう悲劇もあったようです。

気持ち悪いだけでなく、強いっていうのが厄介ですよね。


 ネズミ率いるG軍団が城の外に出るのも時間の問題。

でも国民に魔法実験の不祥事を公表するわけにもいかない。

それにもし王都中がパニックにでもなれば二次被害、三次被害が出るかもしれない。


 ドリューさんは早々に「真っ向対決は無理ゲー」と判断し、王都にある王立魔法図書館に赴いて苦手な虫の本を調べ回ったそうです。

そこで見つけたのがジーコローリエの項でした。


『ジーコローリエ:ミチワキ渓谷に群生するローリエの一種。

夏以外に収穫できる、艶のある大きな深緑の葉が特徴。


 葉を一、二週間乾燥させてから粉末にし、別記表の材料と混ぜ合わせて火で燻せば超強力な害虫駆除薬となる。


害虫駆除薬:G-コロリ

燻した煙を室内に充満させると、どんなタフネスな害虫もたちまちコロリとなる。

激臭なので使用する際はガスマスクと防護服が必須である。


材料:ジーコローリエ、ハッカ、ハナモゲ草、サツイ石の粉末、バジル、クッサ草、キングセロリ、etc……』

(参考資料『まじ害虫許すまじ 下巻』より)


 こうしてドリューさんは王都の事は国王様に押し付け(任せ)、家臣にも(止められたくないから)内緒でジーコローリエを求める旅に出たそうです。

決して少しでもGから離れたかった訳でも、逃げ出した訳でもないそうです。

流石皇太子殿下、立派ですよね!


 さて、今回先生とエーヒアスが頼まれた依頼内容は、端的に言うと「ネズミとゴキ駆除のお手伝い」です。


①先生がお城の地図を頼りに敵が好む場所や潜んでいそうな場所を割り出す。


②そしてゴキ殺隊(兵士)の皆さんと一緒に城内に侵入。


③各所にG-コロリを使用。


④\ハッピーエンド!/


 ただこの作戦には問題があります。


 突入部隊は防護服とガスマスク着用の為、視界が悪いわ動きにくいわで戦闘がベリーハードになるそうです。

しかも防護服やガスマスクの数が少なく、城内の様子や敵の数も分からないという「ないない尽くし」の状態です。


 本来なら城内に設置されている監視用の「魔法石のクリスタル」を通じて内部の様子を覗ける筈なのですが、肝心の監視室が本城にあるから使えないんだとか。

もし遠隔操作でクリスタルの魔力を南の塔(こちら)接続(コネクト)出来れば、城の内部を水晶や鏡に映し出せるみたいですが……

研究者さん曰く「魔法石の微量な魔力を探知して此方に繋ぐとかムリ。監視クリスタルの数も多いし、100%ムリ」との事。


 あーでもない、こーでもない。


……と話が白熱した所で、それまでずーっと黙っていたマオーさんがようやく口を開きました。

それがまた凄いんです!


「監視クリスタルの大まかな位置さえ分かれば、接続出来なくもない」


 その場には国王様やドリューさん、大臣さんの他に、研究者さん達や兵士さんが居たのですが、全員ポカーンってしてました。

そりゃそうです。


 こんな離れた場所から何十個もある魔法石を探知して、石ごとに微妙に違う魔力の波長を合わせて此方に繋ぎ止め、向こうの景色を映し出す──

大魔導師様なら二、三個位は出来るかもしれませんが、一般の冒険者に出来る訳がありません。


 でもマオーさんは脂汗を浮かべながらも、はっきりと言ったんです。


「俺はさっさとこの恐ろしい場所から離れたい。城の地図なり設計図なりがあれば、クリスタルの魔力を此方に繋いでやる」


 要は「協力するから早く解放して」って事なんですが、それにしても断言出来るなんて凄いですよね!

流石ナンダコレ珍百景に登録される程の魔力の持ち主です!


 プルプルしてるマオーさんの(マジ)顔を信じる事にしたのか、ドリューさんはすぐにお城の設計図を用意してくれました。


 ここで冒頭に戻ります。

いい加減マオーさんの寝起きドッキリ羞恥心が癒えてきたようなので、私視点からマオーさんにお返ししますね。

現場からは以上、カロンでしたぁ~。



 いや、俺も現場にいるんだけどね?


 無駄にドヤッてるカロンの帽子を軽く叩き、俺はドリュー氏やパーティーメンバー、そして魔法研究者や兵士達に囲まれながら設計図を見つめる。

人口密度スゲぇ。

「これ何密?」と呟けば、「いいから早くして下さい」と怒られてしまった。

あとで覚えてろよグルオ。


「全く、もっと労ってくれても良いだろうに」


 ブツブツと文句を言いながらも意識を集中させ、微弱な魔力を探知する。

イメージとしては遠~くの砂場に散らばった小銭をしゃがまずに探す感じに近いだろう。

探し当てる対象がクリスタルゆえ、生物と違って動き回らないのが有り難い。


「あ~、はいはい……ん? 設計図に記載されてる監視クリスタルの数っていくつだっけ?」


「北の塔及び地下の魔法研究所が二十五個、本城が三十個、地下通路が二個ですな。全部で五十七個の監視クリスタルが設置されている筈ですな」


 俺の問いに大臣が即答してくれた……のは良いが、答えの内容が問題だ。

数が合わない。

俺は入念に入念を重ねて入念な魔力探知をして監視用クリスタルの数を数えたが、結果は同じだった。


「北の塔と研究所のクリスタルは十七、本城が十九、地下通路はゼロだな」


「え? どういう事ですか? 五十七個と三十八個じゃ、数が全然合ってませんよ?」


「カロン、お前の計算も合ってない。計三十六だ」


 真っ赤になって口を閉ざすカロンと険しい顔で腕を組むグルオを一瞥だけして、俺はドリュー氏に目を向ける。

この結果自体は想定内だったのか、彼の目配せを合図に研究者の一人が一歩前に出た。


「か、数が合わない物は敵に破壊されたと見て間違いないでしょう……」


 なるほど、壊されたんじゃ仕方ない。

とりあえず探知出来なかったクリスタルの位置にバツ印を記入しておこう。

魔法石のクリスタルって結構貴重なのに、御愁傷様である。

勿体ナスビと思いつつ探知を止めると、後ろに控えた研究者達がザワザワと小声でざわめきだした。

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