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13、ゴミの分別、処理は自治体のルールに従って

 座ったままのエーヒアスは試すような眼差しで俺を見上げる。

おぉぅ。ナイスアングルに少しばかり怯んでしまう。

ビバ、上目遣い。


「フフ……話が突飛ね。どうしてそう考えたのかしら?」


 ここで引いたら少しカッコ悪いな。

だが本気の口車でなら俺は負けない。

城に居た頃、『減らず口の馬鹿息子』と皆から誉め称えられた実力を見せてやろう。


「なに、大した理由ではない。単に互いの利が一致するのでは、と思っただけだ」


「あら、私にどんな利があると?」


「長旅をしながら名を上げる事が出来る、という所か」


「……名前を?」


 手を止めて訝しむ彼女に、しめたと内心でガッツポーズする。

何事も最初の食い付きが肝心である。


「そうだ。旅をしながら……例えば『修理屋』とか『鋳掛屋』として名を知らしめよ。携帯用の鍛冶設備があるなら道中仕事も出来るしな。武器職人でなくとも食っていける匠を目指せ」


「でも、それってあなた達と一緒じゃなくても出来る事よね?」


「ふむ……」


 ですよねー。

だが、俺のターンはまだ終わっていない。


「普通の旅ならそうだろうな。だが俺はその辺の騎士や冒険者より強い。より安全に、より確実に広範囲を進む事が出来よう」


「マオーさんのレベルは?」


 グルオに止められる前に、俺は素早く冒険者登録証(カード)チラ見せ(ドロー)した。

俺のレベルを知った彼女の目が大きく見開かれる。


「あらま、強い筈ね。レベル82だなんて初めて見たわ」


 まぁそうだろうな。

登録証作った時もギルドの人に「ゴリラの覇者かよ!」って騒がれた位だし。


「でも、そんな強いマオーさんは私を仲間にしてどんな得があるのかしら?」


「我々は回復魔法を使える者が居ない上、華が無くむさ苦しい。後はそうだな……カロン(うちの子)と仲良くしてくれている、というのもあるが……」


「マオーさぁん!? (ヒロイン)ならここにいますよー!」


 いやカロン。

お前の場合自称ヒロインのマスコットだから。

ピーコラ騒ぐ子供の頭を押さえつけ、チラッと本音を混ぜてみる。


「我々が目的地に着いて家を建てる頃には、エーヒアスも有名人かもしれん。その時は家の装飾依頼をしてみるというのも良いかもな。もしそうなった場合は改めてお前に依頼をしよう」


「あらあら、結局それが目的なのね」


 バレテーラ。

流石にあからさま過ぎたか。

しかし彼女は楽し気にハンマーを振って考える仕草をしている。

これは好感触だろう。


 俺のターンエンドを察したカロンがソワソワとし始める。


「えっと、あの! 私もエーヒアスが一緒だったら嬉しいです! 私、いつも落ちこぼれで、同世代の女の子のお友達が居なかったから……!」


 グルオが小さく「同世代……?」と突っ込んでいるが、そこは触れてやるな。


 エーヒアスは暫く瞠目した後、小さく首を振った。


「とても魅力的な誘いだけど……ごめんなさい。私は、私と師匠のせいで破壊されたこの町の復興が終わるまで、ここを離れる訳にはいかないの」


 ありゃま。

それを理由に持って来られるとどうしようもない。

そんなぁ~と肩を落とすカロンを見て、彼女は眩しそうに目を細めた。


「……復興が終わったら、すぐにあなた達の後を追うわ。それで、いつか必ずマオーさんのお家の装飾を手掛けてあげる」


「そうか。それは頼もしいな」


 ウフフ、アハハと笑いが起こる。

あ、これ良い。

凄く久しぶりに感じるほのぼの感。

これが……勝利後の友情と青春!


「あ、先に言っておくけど、私の仕事は高いわよ。頑張ってお金を貯めてね」


「……友人割り引きオネシャース……」


……これはもう、明日届くという謝礼に期待するしかないな。




 まだ仕事があるというエーヒアスと一旦別れ、俺達はモチット町へ戻る。

破壊された道の瓦礫はあらかた撤去されていたものの、まだボッコボコだった。

レンガを失った部分の土が剥き出しのままである。


 建物は土台や大きな瓦礫が残っており、何人もの男がツルハシで砕いて解体している。

家は建てるのも大変そうだが、壊すのも大変なのだな……

もっとこう、文明が進んでガーッと壊せる技術があれば良いのに。


 グルオに気付いた数人が作業の手を止めてやって来る。


「あ、グル先生、ちょっと良いですかい? ゴミの焼却についてお聞きしたいんですがね」


「グル先生! 廃材置き場の事でご相談が……」


 相変わらず先生ポジションなのか。

どれだけウンチク披露したのやら……

グルオは少し迷うように俺の顔色を窺ってきた。


「……魔王様」


「いーよいーよ。行ってどーぞ」


 俺が止めるわけなかろう。

何もする事無い俺にくっ付いて歩くよりよっぽど良い。

一礼だけしてスタコラ離れるグルオを見送り、俺とカロンは行くあてもなく町を散策する。


「それにしても先生は人気者ですねぇ~」


「俺だって人気者ですぅ~」


「えっ……?」


※ただし相手は魔物(♂)


 いやぁしかし良い天気だなぁ~。

青空の下、商店に並ぶ彩り豊かな野菜が映える映える。

商店街一帯は呼び込みも多く、見た目も音も実に賑やかだ。


「……万事解決だな」


「そうですね! ……でも、捕まってた魔物はちょっと可哀想でした」


「ほう?」


 意外な事を言う。

カロンはあの地下室を見ていない筈だ。

とすると、あの母親トレントの事を言っているのだろうか。


「マオーさんは気付かなかったかもしれませんが、実はあの地下室の奥にはまだ魔物がいたみたいなんですよ。凄く凶暴で、そのまま殺処分されたって聞きました」


「……そうか」


 あぁ~、やっぱそうなるわな。

彼等を解放しなかった俺の判断は本当に正しかったのだろうか……


「ギャンザクって人に捕まりさえしなければ、酷い目にあって殺される事もなかったのになぁって思っちゃいました」


「……そうか」


「……マオーさん、真面目に聞いてます?」


 これ以上無い位真面目に聞いてるのになんて言いぐさだ。

こんなに真面目なターンが続く事なんて四年に一度あるかないかである。


 ぷぅと膨れるカロンの頬をプスリと押してみるとプスゥ~と空気が抜けていった。

脱力感凄ぇ。


「……人殺しを裁く法があっても、魔物殺しを裁く法は無いのだな……」


「? 今、何て言ったんですか?」


「いやー、別に。ギャンザクを暗殺した者は誰かなーと思っただけだ」


 つつかれた頬を押さえていたカロンは首を傾げ、神妙な面持ちで「確かに気になりますよねぇ」と考え込んだ。


「もしかしたらその犯人の存在、今後の重要なフラグになるかもしれませんよ! 例えばこの先の旅の途中で新たな敵として登場するとか、暗殺の仕事を持ちかけられて知り合いになるとか、何やかんやで最終的にパーティーメンバーになったりするかもしれません!」


「今の発言のせいでフラグへし折れた確率90パーセント」


 暗殺者が仲間入りとか普通に怖いんだけど。

俺、友人は選ぶ派なんで。


 そんなくだらない話をしている間に時は流れ、あっと言う間に夜になってしまった。




 で、問題発生。


「眠 れ な い」


「魔王様は丸二日寝っぱなしでしたからね」


 皆はベッドに横たわって完全におやすみモードになってるけど、俺! おめめぱっちり!


 ちなみに部屋は四人部屋である。

エーヒアスの師匠は借りている鍛冶工房で寝泊まりしているらしい。


「あ、そうだ。トランプする? クイズ大会する? クラスの好きな子暴露する?」


「魔王様、うるさいです」


「フフ、まるで修学旅行ね」


 だって眠くない。

既にカロンはコエダと共にすやぁ……と寝息を立てている。

ぐぬぬぬぬぬ……


 結局クールコンビにも相手にされず、先に寝られてしまった。

……すんっ。


「#眠れない夜 #孤独……はぁ……」


 あまりにも暇すぎた俺は眠くなるまでブラブラと夜の散歩に出かける事にしたのだった。

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