第六十二話 闇の叡智
ひさしぶりに本伝です〜〜〜
台場のガンダムを見に行こうか悩んでますw
紅葉の彩りが風に舞い
魂をまつる参道へ続く街道を彩る
空の青さに深さがなくなり澄み高く伸びる季節、日々得た空気の下で
煙にまみれた男は曇った顔のまま防衛庁のグラスエリアから世界を見つめていた
「平和の国か...」
深まる冬へ町はイベントに加速している
恋人達を近づけ、子供を喜ばせ、家族でいる一時を楽しむクリスマスまで後一ヶ月足らず。
煌びやかに買い物奨励の宣伝が町の至る所に張り出され、デコレーションはビルにも及ぶという老人が見るには興ざめな景色を羽村局長は指定席の窓際、シガーダスト.タワーの前でお香を大量に炊いたかのようにタバコの煙と捨てたガラにまみれたまま修験者のように厳めしい表情できつく目を細めてつぶやいていた
「出来ること...」
初老と熟年英知を示す白髪の頭
自衛官としての所作正しき制服姿のままでのオーバースモーカー
「局長、部屋の方に」
響きの薄い声は仮のの背中側
ガラスに写った部下の顔は疲れた目線それでも、のりのきいたスーツ姿で煙を手で払いながら
「石上一佐、到着しました」待ち人来たりを告げた
隔離された禁煙ブースから白色も眩しい庁舎の通路に足を進める
振り返った羽村は
佐々木の手元と右手にぶら下げた黒い大きなかばんに目を落としながら、歪めた口から最後のひと味である煙りを吐くと
吸いすぎでカラリとすっぱくなった口を、への字に歪めて
「それが今回のかね?」
冗談だろうという態度に佐々木はメガネ越しにうっすらと笑みを浮かべ
「たいした事ありませんの電話帳程度です」
黒井カバンがふくれあがる程の束.....
「枕の電話帳か」
「なつかしいですね」
返す言葉に宿る棘
直線の張り出しも美しく決まった背広、なのに疲れた表情に自分たちの仕事の重さが表れている佐々木は嫌味の一つを飛ばしながら局長室に向かって歩く羽村につぶやいた
「日本国民を護るための術が電話帳程度の書類と思えば...やりがいにもつながりましょう」
東シナでの演習を記録したレポート件所見等諸々....
実験演習の件で全ての結果を自分に提出する事を石上に義務付けたのは羽村だった...が
さすがに束となって返ってきたレポートには目が丸くなるを通り越し、夕日の向こう遠くに見えるであろう富士の山を見つけようとする顔をしかめ細い目になってしまっていた
「明日じゃいかんかね」
夕刻といえば緊急事態でも起こらない限り職員も帰る時間
腕時計に目を走らせこった首を鳴らした羽村の後ろ、声に笑いはないのに笑った顔の佐々木は資料が束でつまったかばんを羽村の背中にあてて押した
「本人も来てますから」
逃亡の予知がない返事を返すと同時に羽村の手元に抜粋した資料の要項を手渡した
「目を通しておいてください」
元を正せば羽村が要求した事に、石上が律儀に仕事をし持ち帰った資料
提出された全てに目を通し「勉強」をした佐々木は最後まで付き合う形になっていた。
羽村が石上の要求を聞き入れたときからこの結果はわかっていたのだから覚悟の居残りをしている形だ
ならば
ココで大元を帰すわけにも行かないのは当然
突かれるように後ろを歩く佐々木の圧力の前、言葉は無力と悟った羽村は溜息とともに
「年寄りに優しくない職場だな」
白髪の頭に手を当てながら静かに部屋に戻った
簡素に纏められた部屋
中央に大きめのデスクとパソコン、後ろの書棚には軍事関係防衛庁関係の本ばかりではなく趣味の将棋の本と、囲碁とチェスその他世界地図各種
どこかまとまりのない羽村の部屋、右手にパイポを持ったまま腰掛けた羽村の前
石上は小脇に抱えたカバンのまま敬礼をした
「座ってくれ」
共に入室した佐々木にもと、手でイスに座ることを促す
局長の部屋には小さく簡素なパイプイスが用意されていた
西日が入る窓ガラス
佐々木は石上の顔を見るなり溜息をつき
羽村は少しばかり目をみひらいたまま聞いた
「結果には満足できたか?」
「H.system 15 J」
防衛庁戦略技術部官石上徳治がアメリカにて考えついたイージスシステムの補助機能とそれをサポートするリンクシステムの実験。現在軍事衛星さえ独自の物として持ち合わせていない日本国海上自衛隊。
それをカバーするための数もまたない
アメリカのように多数のイージス艦の配備も望めない中で石上は自分が作り上げた理論を実験したかったのだ
四方を海に囲まれ、アメリカ以上に隣接する「仮想敵対国家」を持つ日本
これを最低限の艦隊でどう防衛するか...強いて言えばカバーしきれない脅威の部分をどこまで減らすことができるか
それらの弱点を補い強化するためにつくられたのが「Hekatonchires.system」
イージスシステムの持つ防空領域はかなり大きいが
一度の攻撃に対して「イージス艦のみ」で即時にさらに正確な迎撃ができる数は限られている
その問題を解決するために、他の護衛艦の目までをイージス艦にて統括し本艦そのものをシステムの核とする状態になる事で最低数での艦隊行動しかとれないであろう海自艦艇をバラバラに迎撃行動や考えさせるのではなく一括統括し迎撃専属艦に切り替え、多数の迎撃を同時に行う事が出来るようにするシステム
それ故
核となったイージス艦のシステムにかかる負荷はどのくらいのものかを知る必要があった
アメリカの実験室でくみ上げたシステムではあったが米軍では当然のごとく補助的なもの程度にしか扱われず
実戦のデータをとる事ができずにいた
羽村の問いに石上は痩せた頬を微かに舌打ちするかのように動かして
「満足できるものではありませんでした」
不満を眉に走らせ顔を歪めた
続けて尖った目は睨みながら
「システムを実装している艦艇は多いハズなのに日本で一度も実験演習をしなかったという事がよくわかったのは残念な事でした」
実はこういった機械が突然配備されるわけではない
海自がイージス艦の取得を本格化した頃には石上の頭の中にシステムの概要はあり、『こんごう』が就航されて1年と待たずに実装をはじめ、それに準ずるように「link15J」という形で各護衛艦にも配備され続けていた
「各護衛艦群において配備が遅れているのはDD『はつゆき』型の一部と、地方隊の一部、これらにも「link15J」の実装の準備はあるハズ...そう聞いていましたが、何故実戦演習はしなかったのですか?」
自分のシステムの利便性を信じる石上は最大の不満を一番にぶつけた
「機会に恵まれなかっただけだ」
デスクの前で手を組んだ羽村は悪びれる事なく答えた
「そんな悠長な事を言っていられるのですか?」
「悠長かどうかはわからんが、駆け足をしても時間を巻き戻すことも追い抜く事もできん、その時その場に似合った実験を施工し結果を出すことが大切なだけだ」
不満足であるという石上の回答に、羽村もまた容赦のない返事を返した
実戦に登用してみて満足ゆく結果が得られなかったのならば実装の意味を失う。
すでにシステムの大半を「実装備品」として予算に計上している上で
イージス艦一隻、取得価格は1600億、ともすれば莫大な費用を掛けた頭脳であるイージスシステムに甚大な被害を出し、修繕費用を出すことに成りかねない実験を許可した羽村が求めているのは...
制作者である石上の個人的感想程度のものではないからだ
それに見合う結果を述べろと初老の知将は目を尖らせて沈黙する
石上も羽村がただ者でない事は昔から良く知っていたし、それ故に実験演習の許可を願った時のも不満も漏らさず許可をくれた意味もわかる。
目の前に座る闇の英知は、無駄な問答をして自分に有利な意見だけを素通りさせてくれるような凡将ではない
「今回の実験では良い結果5、悪い結果5と自分は考えておのます」
駆け引きを止めた石上は背筋を改めると資料のファイルを差し出して
「初めての実戦にて全てが成功といえない事は理解して頂きたい」とわかりきった釘を刺した
「柴田准将補にご協力の要請をしていただけたこと、感謝しております」
演習にて相手も味方も欺き実験する事など、一人でできるものではない
佐世保から出港ギリギリの時間に『くらま』に乗った理由、すべての根回しの結果が乗艦最後の人員となった石上、下準備に当てられた時間を良く物語っていた
「柴田君はそれなりに喜んでいた」
自分に対して初めて、当たり前の事ではあるが実験を行うための手段を示してくれた上官に礼を述べた石上に羽村の厳しい視線は解除された
准将補に実験演習の旨を伝えたのは羽村だったのだから結果的に「勝利した」『こんごう』の帰還は喜ばしい事だったと告げ
「それで何が不足し、何が問題になった?」
目の前の資料、佐々木に手渡された抜粋のものと照らし合わせながら忙しくページをめくりながら要点を真っ直ぐに聞いた
成功した部分、良かった部分などはココで討論する事ではなかった
改善を必要とする部分にメスをいれる事、何が処方箋なのかを知ることが重要な任務であると聞く
「システム自体の問題点は私の側で改善できる項目87を処理する術は整っていますが、イージス艦以外に負荷を分担するためには物理的な物が必要となります」
流れるように目を動かす羽村はイージスシステムに掛かった負荷と、それがどの頻度で起きているかの部分を探し出していた
「DDのレーダーの強化か...」
「今回の実験ではご存じの通り、無敵の楯を実行するための目であるフェイズド.アレイ.レーダーに直接レーザーによる攻撃をくわえました。これがWCSに及ぼすもの、信頼度など色々な角度での検証ができましたが、秀でたが脳に他艦の目が一極集中してしまうために最終的には過剰な負荷によるシステムダウンという状況になりました」
現在「ミニイージス」と呼称されるシステムの搭載とその目であるレーダーの実験は続けられている「FCS-3」との連携が計られているが、戦術情報装置との兼ね合いと、毎年削減される防衛費のために進展は牛の歩みの状態
「では開発を加速させるための良い結果ともいえるな」
1つの要項、項目を読み切った羽村は結果として悪くても、方向性を示すという意味では成功と納得した
重大事項である事がアピールできるのならば悪い結果も使いようという事だ
「現状のままでの改善策としてこの...Hekatonchires.systemのみでどのぐらいのカバーができる?」
「ソフト面のカバーでは、現状の稼働限界時間15分を30分ぐらいに伸ばすことが精一杯です。根本的な解決は護衛艦群自体が次の形にシフトとする事とヘリの強化ですが」
実験演習でのシステムの使用はイレギュラーだったという事
あの演習でもし最初からHekatonchires.systemを使っていたら『こんごう』は保たなかったという事になる
間宮が賭に出た行動が良い方向に転じたのは「あの時間」だけに限定してシステムを使ったという事以外何者でもなかったのだ
遠くない将来、『ゆき』型の除籍
5000トン級への布石と現行の『あめ』型『なみ』型へのシステム過重の分担
攻撃ヘリに課せられる多目的な目としてのシステム換装
10の内、5ある問題は、かなり大きな改革が必要な部分である事に羽村は大きな溜息を落とした
「ところでこのシステム名だが...「千手」ではなかったのか?」
羽村は最初に石上がこのシステムの概要を持ってきた時の事をよく覚えていた
その時のシステム名称は「千手」と明記してあった
ファイルに書き直された名前は横文字に変わっていた事を聞いた
「アメリカでの研究がメインですし、イージスシステムに追随するものですから向こうの規格に合わせました」
相手の寛恕にも配慮しながら水面下で研究をつづける石上の姿がよくわかる言い分
「イージスに合わせギリシャ神話に準じたというところか....」
一段落ついた会話の間でパイポを口に運び顔をしかめる羽村に
石上は間髪を置くことはなかった
「もっとも問題なのは、現状のイージス艦には不足している部分が浮き彫りになったというところです」
少しばかり緩んだ場を物ともせず石上は態度を硬め、声も正した言葉に羽村は頷いた
「ヘリの搭載か....」
「そうです最初からオスカー.オースチンと同じタイプでの建造を要求していれば今更このような事になることはありませんでした」
顔に苛立ちを登らせた石上に羽村は手でストップと
「それは言っても仕方のない事だ、当時はフライト2タイプが最高のイージス艦だった」
アーレイバーク型のイージス艦を海自が求めた時、それは最新鋭の形だった
アメリカ以外でこれほどの能力を有するシステム艦を買い付ける事のできる国は日本しかなく、海自はそれを心から望み大枚を払うために、国防に疎い議員やエセ平和主義者と戦い、手に入れた国防の宝だった
だがアメリカはすでに先行くイージス艦の形を準備をしていた
当然石上もアメリカが演習などで残した膨大なデータからそれが何かという事を見抜いていた
ヘリの活用
アメリカでは沿岸作戦に有用であるという位置づけからヘリの搭載を前提に新たなイージス艦の造船が開始される
これによりフライト2Aという型番からはじまったイージス艦達は2機のヘリを搭載しているが
石上の考えは別のところにあった
現状固定翼の戦闘機を海上輸送する事のできる艦、空母を持ち合わせない海自にとって飛来する敵と海底を這う潜水艦に対処する最初の射手である海の盾に必要な「目」としての活用
目とは文字通り敵を最初に見つける役目もあるが
情報の伝達回線を増やすこと、正確に目標を捕捉する補助として機能する事という重大な役目が必要とされていた
イージス艦の取得
初期の頃、まだ石上の意見を聞き入れる上官はいなかった
それを悔やんだ。凝り固まり数の戦いばかりに走ってしまっている自衛官官僚的な存在達に理解を促すにはあまりにも無位無冠すぎたからだ。そういう失望を持ちながらにも研究に没頭、失われなかった志に手を差し伸べたのがダニーであり
羽村だった
「ヘリの搭載が可能なイージス艦の取得を進言します。日本には必要です」
羽村は机の上に手をほ重ねたまま刺すような眼差しで自分を見る石上に
「...予算の審議、新型護衛艦の受注にイージス艦を組み込むのは難しいが、それが必要である事を報告するのは約束しよう」
「合わせて!海上にて多くのヘリの運営と修理を可能とする母艦が必要です!現状の『はるな』型、『しらね』型では海上にての行動がつづけば、じり貧になる事はわかっているハズです!」
キレの悪い返事に石上は立ち上がって抗議した
いつもは物静かで不気味な程に自分の研究と結果を追求する男が、心の中に燃やし続けている国防への思い
「座れ...」
いきり立ってしまった石上にまたも羽村は手を挙げて落ち着くことを促すと
「出来る限り最優先事項として項目に明記する事も約束しよう」
言葉を連ねはするがそれが難しい事であるのはわかっていた
そうでなくても例の事件以来、新型の護衛艦の建造には難色を示す者が多い、その中で小型なら護衛艦二隻分に匹敵する費用が必要であろう新型イージス艦の取得は難しいという結論は容易考えられたからだ
「ものには順序があるからな」
「国防は国の最優先事項なのでは?」
羽村が同じぐらい国防のために、あの手この手と尽力している事はわかっていても...自分に対する数少ない理解者だとわかっていても石上は黙っている事はできなかった
「船が必要なんです、護りの要となる現代の戦艦が、そしてそれをカバーする母艦が」
「わかっている。だが予算には限りがあり、世論と議員には「話し合い」も必要である」
国を護るという事に戸惑いを持っているおかしな国家と国民
されど必要な盾であり、目に見える防衛の形を見せなくてはならない
「努力をする事しか約束は出来ない」
予算の審議までに首を突っ込む事は、さすがの羽村にも難しい事
多少の根回し程度の約束しかできないが、以前からあったとおりの問題の浮上でだいぶんと国防が遅れを取っている事は、苦い思いに歪んだ眉に現れ
それを石上同様に苦々しく思っている事は理解できた
「では、羽村局長にお任せいたします」
個室での密議では何も決められないし、いきり立っても意味がない事は元来物静かでじっくりと考えて行動をとる石上にはよくわかっていた
騒ぐことなく礼を尽くし立ち上がると敬礼した
「後の事はレポートにあるとおりです」
「ご苦労だった」
今回の実験で得たこと、問題点と自分の主張言い切った石上は部屋を後にするために、机に広げたファイルを纏めた
明日にはアメリカに戻る予定という過密なスケジュール
「どうしても通せなかった時は、来年も頑張るよ」
その背中に羽村はリラックスを促す声をかけた
本心では言いたくなくてもこういう風に和みを作るのも大人のジョークと言ったところだったが、石上はそういうふうには受け取らなかった
「今年でお願いします」
束の資料とファイルを抱えた眼差しは強く念を押す
「無理強いは出来ないときもあります」
退室の支度を手伝っていた佐々木は羽村でさえ予算では苦境の状態である事を思いフォローを入れたが、石上の強い思いは...少しのやるせなさに不器用な男の苦笑いで
「予算が通らなかったら、羽村局長。その時は直談判を書き二重橋で共に腹を切りましょう。それで船が手にはいるのなら安いものでしょう」
それは軍事に携わる者でなくても良く知る物語の台詞
いや覚悟を示した実話の言葉だったのかもしれない
「石上くん、防衛庁はそういう猟奇的な取引はしない」
羽村の返した言葉は注意というものだったが
お互いの顔はどこかわかりあった目に変わっていた
「では正攻法で、よろしくお願いします」
今度は敬礼ではなく深く頭を下げた
羽村は敬礼のまま「最善を尽くそう」と石上を見送った
石上をドア外まで送った後を追うように部屋を出ようとした羽村を掴まえたのは佐々木だった
「待ってください」
「もう今日の用件は終わったのだろう?」
すでに内ポケットからタバコを半分出した手で顔をしかめ、まるで子供が母親の手から逃げようとしているかのような姿だが佐々木には慣れた事
そのまま局長室に押し返すと、落ち着きのない顔をしている相手に
「今泉からの報告がありました」
「なんで先に言わないんだ!もう十分に遅くなってしまっているだろうに?」
タバコ吸いたさに迷惑千万と半分いかり、半分困惑とデッサンの狂った目線で佐々木を見上げた羽村に佐々木は机の横に残った資料の山を指差した
「昨日の夜からあれの整理をしてまして...報告が入ったのは石上一佐がココに来たときと同じ時間でしたので...」
怒りたいのはむしろ自分とメガネの後ろで吊り上がった目が言う
「一本吸ってからではダメかね...」
「ダメです、すぐに終わりますから」
羽村のヘビースモーカーぶりは防衛庁でも有名なもの「煙男」の異名は伊達で無い、一本などと目を離してしまえばあっという間に喫煙室を白く曇らせて島に違いない。そういう経験はこの局の次官に就任して以来イヤと言うほど味わっている佐々木は、間を保たせるようなことをしてはいけないと学んでいた
肩を押しそのまま今まで石上の座っていたイスに座らせると、周りを気にするように一度見回し羽村の耳に
「海上保安庁の動きに不穏な点ありとの事です」と小声で告げた
「海保...」
座ったままヤニ切れに膝を揺らしていた羽村の動きが止まる、まるで時間を止めてしまったかのように固まると
「例の事件の事だな?」同じぐらい小声で佐々木に確認した
「そうです、あれ以降は割とスローな展開だったのですが、ココにきて何か纏めたものを作っているようで」
「刑事責任...検証や立ち会いなど今更無意味だろうに」
例に事件
一ヶ月と少し前、東シナ海にて不審な船が日本国領海内を侵しているとこが発見され、おりしも近海で合同演習をしていた海上保安庁ならび海上自衛隊がこれを追跡するという事件が起きていた
これだけでもそれなりに驚きのニュースとなる出来事だったが
事件の結末はさらにショッキングなものとして日本国内に知られた
「不審船、海上保安庁の巡視船に機銃掃射」
死者こそ出なかったが、撃たれた巡視船の機銃跡は目を見張るものだった
船橋を中心に斜め下から撃ち込まれた弾は船の天井をぶち抜き防弾ガラスを一枚も残さず破砕していたからだ
茶の間のテレビの前に映し出された無残な姿は「戦争」から一番遠い場所に鎮座しつづけて60年を過ごした日本国民に恐怖を覚えさせた
そしてココに海上自衛隊の護衛艦艇が居合わせていたことで報道はエスカレートする
「何故、自衛隊、護衛艦は前に出て巡視船を助けなかったのか?」
無責任な報道の中
責任問題の追及と早期解決のため海自でも調査部の今泉が『こんごう』艦長間宮に圧力をかけていたが、結局の所「責無きなすり合い」に決着はついていなかった
というか、この事件直後に起こった芸能人のスキャンダルのニュースや、世界を震撼させた大規模災害によって不審船事件は関わった人間以外の記憶からは手早く消えさった事に機転を利かせた海自は、実地見聞や質問のたぐいを『しまかぜ』の艦長にやらせる形で間宮を保護していた
故に今回のアメリカとの合同演習に『しまかぜ』は参加できなかったのだ
なぜそんな事をしたか
間宮は来年のミサイル防衛計画、スタンダードミサイルによる迎撃演習を勤める艦『こんごう』の艦長であり、その実績から今更代わりを探す事ができなかったからである
それほど演習の費用まで削減されている海自
だからこそ優秀な艦長を失えないという危機感が間宮を護る形になり、海上保安庁の彼に対する直接の質疑から逃げ続けるという形をとっていた
「間宮に対して何らかの令状でも用意するつもりなのかな?」
羽村は態度を落ち着けながらも、右手の中でパイポを遊ばせ考える
「そういうレベルならば今泉が報告などしてはくれないと思いますが」
そもそも調査部で犯人捜しをしている今泉が「外からの圧力」に危険を感じているからこその報告
書類に残すことが出来ないからこその口づての警戒事項
「調査部では海保の動きに裏付け調査を開始してはいるようですが」
「やれやれ...右も左も波高しだな」
耳にパイポを挟んで白髪の頭に手を当てる
「四方を海に囲まれた国ですから、宿命といえば宿命というものですね」
前に立ったままの佐々木の顔にも心の疲れが黒く見え始めている
「相互監視官の実施を徹底せざる得ないな」
新年度までは「仲間を見張る」という役職は、世間的にも政府向けにも必要があったのだが実際機能しているのは、活動しているイージス艦に限られている
現状では佐世保の『こんごう』と、舞鶴の『みょうこう』だけで『きりしま』は機密漏洩の事件前からペルシャ湾の仕事に徒事し、今もまた災害派遣で帰ってきていない事から監視員はいない。『ちょうかい』は佐世保にいた時には監視員が張り付いていたが今は改装のための準備で長崎のドックに入っているので必要がない
要は最低でも2人しかいらない状況なのだが
『こんごう』は今回の実験演習にてイージスシステムにダメージが出ている可能性があるため検査のために長崎のドックに入る事になり粉川も東京にも通常業務に戻る時間が出来ていた
だが
政府からの指導、義務づけをおろそかにしていると見られれば痛くもない腹を探られることも起きかねないし
「何らかの形でマスコミや海保からの接触をされても困ります」
それ程に何かを探している相手に対して気を抜けない
「粉川が今回の事で報告書を送りたいと連絡がありましたが、送るだけにて、本人の登庁については必要なしと返事しておきました」
つまり稼働していないイージス艦『こんごう』に検査期間中でも手を抜かないというゼスチャーを込めて留め置きとしたわけだ
「佐世保との情報交換などにも便利ですから」
羽村にならったのか、佐々木も少しは賢しいところが出来てメガネの奥を見せぬ思考が板に付いてきた
「懸命な判断だな」
羽村にしてみれば石上の報告書で時間を取られたばかり
この上、不意の実験演習に対して粉川が性格的に抗議の報告を纏めていることなど分かり切っていたし
そんなものにまたも付き合わされるのは疲れるというもの
「船の上なら土足で上がる者おらんというものだな」
「外の者に対して治外法権ですから」
山積みの問題が残っている今、無駄に心配を増やしたくない羽村達は粉川の報告書は斜め読みすると決めた瞬間だった
相変わらず内も外も波の高い日本にて叡智をふるう防人の苦難はまだ続くのだからと
カセイウラバナダイアル〜〜いせ誕生〜〜
つい先日新たな護衛艦『いせ』の進水式がありました
『ひゅうが』の同型である大きなふねです
これから日本の護りとして働いていただく船の誕生を祝します〜〜〜〜
ところで選挙ですが
当然ヒボシは選挙権を持っているので投票に参加します
ですが
民主に票を投じる事はまずありません
耳に聞きよい事を全面に出した政策(流行ってる言葉で言うのならマニフィスト)が気に入らないのです
しかも根本の部分のブレの修正のできていない
三人党首の体制もまたイヤなのですし、小沢さんが平気な顔で居座っている事も許せないのです
政治家が裏金だの私服を肥やすなどはもってのほかですが
例の「戦艦を買うために裏金を使いましょう」と覚悟を示した西郷従道のように自分のためでなく、国のために
なかなか国民に理解は得られなくても、国民の財産を守るために必要としたものに躊躇なく流用の道を選べるぐらいの人ならば、「嘘」も「金」も武器になるし覚悟が違うから許せるのですが...
この人達は国民を護る気概もなく
将来的な財産を護る政策もない....
なのに
昨今の国民のみなさんは「自民はダメだったから一度ぐらい民主にやらせたらいい」的判断で選挙に進もうとする
ダメですそういうのは
かつて一度、社会党の村山内閣が発足したとき
短期間の在位でしたがとんでもない過ちをいくつもおかし未だに日本を辱めている事がいくつもあります
1つは阪神淡路大地震の時の自衛隊派遣を送らせたこと、あの日村山さんは自身があったのをテレビでみなから「良く燃えてる」と他人事のようにいい、憲法がなにやらと揉めて自衛隊の出動は遅れ災害での被害者をふやした。
どの県だったか忘れたけど国よりも早く自衛隊の出動を要請した県議員がいたぐらいなのに...何も手を施さなかった無責任内閣ができあがっただけ
2つ パラオ建国何年かの記念に日本からの祝辞がくる事を期待していたのに無視した
パラオは歴史の中でいくつもの国に不当に支配され植民地とされた国だが、日本の統治時代がパラオにとって一番良い当地の時代だったと思ってくださる方が多く、今も親日国家だ
1990年代までアメリカの実効支配からの脱却、最初の大統領クニオ.ナカムラ氏の名前からもわかるように日系何世もの方が多い...
天皇陛下が島に訪れてくれることを心待ちし、それを邪魔しようとした韓国の人達に「陛下の行幸を邪魔するなら韓国製品を全部ボイコットする」とまで宣言してくれた国なのに、村山内閣は無視した
3つ これでもかと言うほどに中国に媚びをうり、戦争犯罪はすべて日本の責任と土下座した
このころ中国は江沢民の支配体制だったが前期の頃はそれほど反日教育に力を入れていなかった。むしろ、とう(とうの字が機種依存にひっかかりました)小平目指した国交回復論に近かったのに、村山の卑屈な態度で味を占めさせた...
これが今に続く反日教育の基礎を作ったと言っても過言じゃない
社会党が一等になった事で共産党はもっととんでもない事をした
南京の戦争記念館のような施設をドンドンつくってくれと資金を送った...
民主のHPを見ればどれだけ中国よりなのかは明確で
どれだけ耳に良い甘い汁を全面にだし、後に来る財源確保のために増税が隠されているかがわかる
防衛費を削減...
隣の国は核開発で危険な状態を維持しているのに?
本当に国を護る気概のある政治家はいないのか?
今は国民もルーズで平和だと感じているからそうなのかもしれないけど
必ず今、10代の者達に年取った私達はしっぺ返しをされる事になる
「なんでちゃんと政治に関心をもたなかった」と
その時言いわけが浮かばないのが関の山だ
だからもっと真剣にこの国の将来を考えないとダメです
日本は歴史と伝統を美しくも今にのこす国です
それを護ってゆけるように
護衛艦の誕生を祝すのはこんな時代の私達を護る一つの証明だから
護衛艦も自衛隊の皆さんも戦争がしたいのではないのです
この国を護りたいだけなのですから
隣の国がまだ手放しで話し合えるような時でない今、防衛予算を削減し平和だ安全だなどと勘違いしてはいけませんし、それを推進する政党を支持するのは危険です。
それでも選挙
自分信条にのっとり自分の支持する政党に責任をもって票を投じてください
それではまたウラバナダイアルでお会いしましょ〜〜〜
って
外伝の外伝....書けなくてごめんなさいぃぃぃぃ