第六十話 護りの盾
予定通り六十話にて対潜訓練編終了
色々と仕事がつまってま〜〜〜す
今回は外伝の外伝はお休みです〜〜〜すいまてへんwww
代わりに対潜訓練編登場人物評を載せときます
「...これが『こんごう』の目...」
link15の接続によって開けた電子の光景に『いかづち』はただ呆然と、息をのみ声を落とした
座っていた体が急に中空に投げ出されたような錯覚を味わっていた
そう考えるのが自然といえる程に目の前の情景は変わっていた
電子の視界というものはいつも頭の中に映る
近代海軍、軍艦の魂である『いかづち』も例外なく「近代兵器」の象徴である「電子の目」が頭の中に見せる光景を知っている
それは実際の目でみる色合い豊かな自然な世界とは違い、複数の液晶パネルに映し出されるような固定で、無機質な情景ただ戦域の情報をアイコン化した世界で
自分の頭に映る図によって、自分も機械の一部程という卑下した感情を思い起こさせる程ものだったが
今は違った
H.system link15が魅せるものは球体の真ん中に立たされたように広がる360度全天候のパノラマの世界、いつも映る灰色のディスプレーとはあまりに違いすぎる景色に溜息がこぼれ
同時に怖くなった
「こんなに見えるの....どういうことなん?」
見えすぎる視界
これまでのlinkでこんな世界が広がった事はなかったし
見えすぎる目をもつイージス艦の姉妹達が見る電子の情景を見てみたいと考え羨ましく思っていた時もあったが
これは『いかづち』が考えていた世界とはあまりにも違い過ぎた
というかlinkによって情報交換や艦隊行動の統一、迎撃、攻撃、防御などの連携のためのデジタル映像が浮かぶ事があっても、デジタルの情報として具現化される世界がこれほど鮮明な景色で見えるなど思っても見なかった事
作戦行動の先端として見える景色が示すものは
確実に見える脅威と対面すると言う事
今、恐れを成す程に正確に見える世界と「敵」の姿
前方、自分のレーダーではアイコン程度にしか写らなかった相手「敵」が明確に姿を確認する事が出来る。それどころか潜水艦の背中が見えてそこに立つ艦魂の姿までもが見える
「『こんごう』の目だけじゃなくて、頭とつながってんの...わて....」
linkが自分たち魂に及ぼすものがこれほどに大きな衝撃になったのは初めての事だった
懸命に胸を押さえ、挙を胸に抱く自分の鼓動を冷静にしようと小さく叩く
視界だけがつながっても、今までなら「図面」事、自分の頭に映るパネルが増えてが見えただけなのに、今日は何もかもが違う
遠方までを鮮明に移すハイビジョンは『いかづち』を海の上に浮かせ
世界の真ん中に浮かんだ自分に
震える体を支える『いかづち』は自分の頭に金冠が浮かんでいる事に気がついた
二重の輪が天使のリングのように頭の、こめかみ付近を高さに円を成している図
「なに....これ?」
これも今まではなかった現象、初めて具現化するもの、『いかづち』は恐る恐る自分の目の前に震える指先を進めたが、光の輪に触れる瞬間
青白い光の瞬き、輪が大きく開くと同時により深く『こんごう』の目と頭にlinkした
『こんごう』の見る全ての世界へ
魂の頭脳はつながれ「想い」が激流のように流れ込む、『いかづち』の目と頭の中に入る世界はさらに広がり
願いの言葉が大きく響いた
「私の魂、私の心、日本を護って」
荘厳なるかな、なのに幼き声は『いかづち』の頭の中に鳴り響く
「ああ、こないな事....」
中空に浮く体がくの字に折れる
「この海で負けられない」という意志
『いかづち』は頬をつたう涙の中で、ただ祈りの手を合わせた
ダニー達が詰めていた冷凍の司令室は激しい喧噪で白い息が発火するかのような暑苦しい空間と化していた
そこら中に火をかけられたような怒声と指示が飛び交う
情報を収集するために映し出されるサブディスプレイには文字が洗い流されるように走り
要項の上が飛び交う中、メインの真ん前に座って一番の状況を確認したアイザックがダニーに背中を向けたまま
「ダメです!ルーアハ1、回避出来ません」
「迎撃は!!」
突然逆転した攻守の位置
ダニーは明晰な頭脳で自分たちの立ち位置が相手と同じぐらいに危険な場所にあった事に歯がみして回避不能と判断されたルーアハ1を見た
青白く光っていたモニターの中、アイコンとして現れていたルーアハ1のマークが黄色に点滅する
正常である表記を逸脱した点滅にアイザックの声が続く
「ルーアハ1、1番回避2番....着弾!」
アイコンの点滅がピタリと止まり黄色に固定される図に詰めていたオペレーター達の顔色は、ただ部屋を覆っていた冷静と冷徹を表す青色の光以上に、具合の悪さに青ざめた
実弾が当たるわけではないから人的被害は出ないが、マーカーされた弾は潜水艦後尾に赤くダメージの光が浮かび上がりそれが致命的な部分に当たってしまった事に、愕然とする他無かった
「確認します。こんな事は」
一瞬の沈黙
口ひげを蓄えた初老の男が大きく頭を振りインカムを投げ捨てモニターを確認、自分のデスクトップに目を走らせるがダニーが遮る
「ジョゼフ!それはいい!!ルーアハ2の魚雷は!」
当たったという記録は消せない
その原因を追及する事に意味がない
メインモニターを睨みながら、もう一つの標的として浮かび上がるアイコンルーアハ2と
別のブルーモニターに拡大される図を指差す
『こんごう』の姿
「追撃」という激怒を高熱の炎として表す青白いアイコンに向かって軌跡を描く二つの赤いライン
「ルーアハ2より発射魚雷1,2番Miss diamondに後20秒で....」
「Miss diamond回避!!当たりません」
当たらないという返答
敵艦回避と言えない焦りが部屋の空気を重く支配する
「どうして弾が見える?」
ダニーの焦りは石上を問いただすように聞くがその間にも
「Miss lightningからアスロック2発発射!!」
「マーシアハか!!」
「挟撃されます!!」
図に映る展開はいよいよ旗色が悪い中ダニーは自分の横、食い入るように画面を見つめいつの間にか手元のノートパソコンを開き激動する情報を集めている石上の姿に
「Hekatonchires....完成してた?」
答えろと、声を荒逃げる事はなかったが、冷や汗を張り付かせた顔が答えをと、目が睨む
「H link 15 J....Hはhyperじゃない、そんなanimationのような記号を使うか?」
ダニーを見ようとしない目、食いしばるように結んだ唇が「自分の作ったシステム」の出そうとする結果を一秒も逃さぬ視線のまま答えた
「H...Hekatonchires.systemをlinkさせるもの....」
「百の目を持つ怪物として」
浮かぶ姿
ヘリにある目と同じく『いかづち』の目をも自分のものとして統括し広がった範囲をさらにイージスシステムの範囲とする「疑似aegissystem領域」を1つにするための新プログラムとシステムの開発者「石上徳治」は自分の作り出したシステムに確信を持っていた
「オレ達は負けない」
自分を踏み台に実験をした石上にやっと気がつくという事に
ダニーの歯を食いしばりながら
「ルーアハ2、現状を維持しながら1,3,5,7,番ハープーン発射!!同時にルーアハ1はハープーンを4発発射!マーシアハは迎撃のみにし、ハ・シェムはレベル1の出力最大に移行!!」
「ルーアハ2...コロンバスが魚雷を!」
指示を飛ばしたダニーに返った返事はまさかの「独自の判断」だった
先に撃たれてしまった潜水艦コロンバスはハープーンを撃つには「不適切」という信号が入っていたのだ
情報は実験をおもとしたココと、実戦の中にいる艦隊とで激しい温度差を表し「出来ることと、出来ないこと」の差は明確に出てしまっていた
被弾という不名誉を頂いたコロンバスがただでは沈まないという意地を表したのも理解出来なくもない事ではあったが、指揮系統からの離脱は痛い結果でしかない
「コロンバス1,2,番魚雷発射!!」
「Miss lightningアスロック2発発射同時に水中チャフ?デコイ?を散布した模様...モニター出来ません!!」
モニター出来ないは正確な意見ではなかった
ココでは見えている...ココ司令室が使う衛星からは相手の行動はアイコン化されているとはいえ見えていたが、作戦行動に従う潜水艦達には見えていないという事
「デコイか....」
吸い寄せられるようにそれに向かって走ってしまう魚雷を見ながらダミーにやられる図に苦みが口に走るダニーにアイザックの声が飛ぶ
「マーシアハ....このままでは着弾確実...避けられません」
モニターの中、メインの潜水艦であるマーシアハに向かう弾の数は4発内2つは迎撃出来ても後を追って飛んだ2発を落とすのは至難の業の域
ルーアハ2、事コロンバスが発射した魚雷が『こんごう』に当たるかは賭けの領域
拳を握りしめ正面のディスプレイを睨むダニー
これ以上の乱打は見苦しい以外ない事はわかっていても、苦悩が喉から唸りの息を漏らし
「マーシアハ、魚雷...」
「魚雷2つ左舷回避!!」
艦橋の熱気を上げる和田船務士の声に『こんごう』にて戦う全ての隊員達の士気は否応なく熱を帯びていた
「CICから続いてさらに2つ『いかづち』は回避、こっちに来ます!」
「艦橋了解」
自分たちの正体を見破られた事に怒り狂ったようにミサイル攻撃を開始した相手と、対峙する側に立つ間宮達は荒れ狂う者とは正反対の冷静で熱い「青い炎」と化していた
すでに継続している回避運動の中で見えていなかったハズの敵は自らの位置を晒していた
「煽れば撃ってくると思っていた」
心理作戦
機械がどれほどに戦争を便利まものにしても「血」は必ず流れる
同じように最終的に戦いの善し悪しを決めるのは「人」の叡智であり心理
間宮は自分の額をさすりながら最初に自分たちに魚雷を発した潜水艦の着弾はあったと確信していた
「『いかづち』のアスロック、1番3番とも敵艦βに着弾!」
「よし!!」
後一踏ん張り、この海に後何隻の潜水艦がいるかまでは把握出来なくても、より多くこの海で葬る事ができるのならば
「さあ!!後一息!!」
間宮が息を上げ、ダニーが最後の攻撃に唸りを上げた時
海域全体に響く大きなブザーが鳴った
「こちらドワイト.D.アイゼンハワー、ボビー.マレス少将である!!領域内での演習を行う各艦艇に通達する!!只今の時間をもって演習は終了する!!」
音無き戦いの海に
大きな音を響かせたのはアメリカの演習司令官だった
link16に緊急の信号を織り交ぜた交信、最大限の音域での宣言に、向かい合っていた2つの勢力の緊張の糸は断ち切られた
各艦艇からの返事を待とうなどという思いはないように野太い声は怒のこもった英語を早口で、まくし立てるように続けた
「現在この海域に中国海軍商級潜水艦が向かっている事が偵察機からの報告で確認された。全艦艇は直ちに演習を中止し現在本艦隊が航行する位置に合流せよ!」
一方的なアナウンスはそれだけ告げるとlink16を介して緊急の情報を演習に参加していた艦艇に流しだしたが、間宮は逆らうように英語で怒鳴った
「目の前にいる敵がその商級かもしれません!!姿の無き相手を信じる事などできません!!」
怒鳴りながらも間宮にはこのマレスの介入の意味がわかっていた
もし
ココでアメリカの潜水艦が少なくとも、事実でなくても3隻も撃沈されるような事になれば「不名誉」は彼マレスのものになってしまう
それだけはどうしても避けたいという名誉欲がこの「後一発」の戦いを止めようとしている事を
「Major general(少将)(あえて海兵隊読み)この素晴らしい演習の結果をしらぬままに、今まで通りとはいかないでしょう。これが「もし」演習であるのならば...なおさらに」
アイゼンハワーCOTCCは静まりかえっていた
有利な展開を見ているのは楽しくても、不利なものには苦い顔を惜しみなくさらしてしまう民族性の中、相手の言わんとしている事は十分に理解できた
実験をしたから演習とは言えない....それは答えられない事
司令官席に座ったマレスは苛立ちを抑えているが、それがわかる声のトーンのまま
「演習艦艇は浮上....これは演習である。お互いの健闘を讃えるべきである」
溜息を落とすほどの声は潜水艦達に浮上を命令し
「captain間宮、我々は良き演習をし良き経験を得られたと心から感謝する。途中に邪魔が入ったのは残念であるがこれにて演習は終了である」
マレスの言葉に呼応するかのように見えざる海底の射手達は浮上を開始し始めた
通常のレーダーにも姿を写した相手を確認するCICの応答を受けた間宮は制帽を脱ぐと額の汗を拭いながら
「感謝します。艦艇郡を護りこれより艦隊戦列に帰還いたします」
とお互いの真意を隠したまま儀礼に則った挨拶を交わした
「艦長...」
熱気に満ちていた艦橋の中、キャプテンシートから立ち上がった間宮は詰めた隊員達に制帽で自分の顔を仰ぎながら
「勝ったな、良くやってくれた」
間宮の言葉に艦橋には大きな歓声があがり、それがCICそして全ての兵科に伝播して艦を揺らすほどの歓声と変わった
同じように『いかづち』の艦橋にも歓声が鳴り響いていた
マレスは負けは認める事はできなかったが、結局潜水艦を浮上させた。
お互いのためであるという言葉は便利で相手の名誉を汚さぬ方法ではあったが、結果的に停船し姿を現したのだから海自は『こんごう』達は勝ったともいえたし、間宮がそう言うことで隊員達の労をねぎらえた事をよしとした
騒がしくお互いの方をたたき合う隊員の間、間宮は艦橋のガラスに手をついた
「よく頑張ってくれた。『こんごう』...感謝する」
一人感慨深くつぶやいた
「こちらCIC!!システムダウン!!H.systemの負荷にイージスシステムがもちません。解除を進言します!」
歓声に包まれた中でも仕事はきっちりこなす安藤の進言に間宮は即答でOKを返すと
一度だけ艦橋を出る扉の方を見たが
「さあ、システムを切って、海に浮かんだ相手に手でも振ってやろう」
茶化すように笑ったが、自分には言い聞かすように「頼むよ」と胸に手を当てた
「やられたな.......」
中断のブザーと浮上の命令に「敗北」を確信したダニーは気負っていた体を投げ出すようにイスに落ちた
同じようにモニターとディスプレイの前に立ちつくし突然の幕切れに呆然とするメンバー達
「こんな....こんなこと....」
メインのモニターの前、自分のデスクに戻る間もない展開を見続けたベニーは、自分たちが負けた事を受け入れられなかった
年若い彼は若さの象徴でもあるあばた顔を悔しさにしかめて
たった一つの見落としで警戒を怠り実験を失敗に導いてしまった自分が許せない
だがそれ以上に石上を許す事が出来なかった
ダニーの友達としてこの艦に乗り、実験を観察した者が裏切り者だった事に
ベニーは振り返ると足音高く石上のデスクに駆け寄った
「裏切り者!!!よくもやってくれたな!!」
若い彼の拳は大きく振り上げられたが、それを止めたのはダニーだった
勢いのある拳に少しよろけながらも、腕を押さえそのままベニーを抱えるように宥めた
「落ち着くんだ。ベニー」
肩を支えながら石上を見て悔しそうに小首をふりながら
「相手を踏み台に使えと教えたのは僕だったな」
冷静な顔はベニーを自分の横に座らせると石上にやっと作戦以外の事として詰めるように聞いた
「これを試したかったんだな...石上」と相手のパソコン内に示されるH.systemの文字を指差した
裏切り者と呼ばれた石上の回り
やはり自分たちを踏み台にされたという思いを渦巻かせたダニーの仲間達の視線の中
石上は消して怯まぬ態度で話した
「アメリカのように50隻以上ものイージス艦を日本は揃えられない、それでも敵は直ぐ近くにいる。目と鼻の先に対する敵を抑止する力、無敵の楯に百の目を持たせる事が今の日本に出来る最大の防御。それを現実のものとするためにはこのシステムの実働データが必要だった」
退かぬ目がダニーの目を見つめて答える
日本に必要な技術を実戦する使命をおびた男は消して回りに渦巻く怨嗟に惑わされる事はなく
自分が思う「護りの盾」としての使命を告げた
視線をそらすことなく自分の国を護るための実験を...なりふり構わず行った男、石上と祖国の弾丸である男、ダニーは静かに頷いた
機械の音だけが支配する静寂の部屋の中、二人の男は同じ目的を持って戦っていた
「そうか......」
「そうだ。......ダニー....すま」
それでも石上に罪悪感がなかったわけではない
すまぬという言葉をはき出しそうになった口を押さえるように
「わかってた事だったのにな」
ダニーは顔に手を当て自分の目を覆うと
「君が僕と同じぐらい祖国を思って戦ったている者だという事は....わかっていたのにな、見事にしてやられた」
笑い声とも自虐ともとれる言葉
石上は気まずそうに顔を下げてしまいそうになったがダニーはそれを許さなかった
石上の肩を叩き彼を起立させると
自分より前の席で実験を実行し続けた仲間達に向かって
「諸君、神の王国を望みつつ、科学の使徒として日々を戦う同志達よ。傲慢たる僕たちの実験は鉄槌によって砕かれた」
実験に携わった全ての者
teamDannyの兵士達は皆立ち上がり自分たちの主たる男の言葉に沈黙している
「「人」の手によって」
実験は失敗ではなかった
だが結果的に潜水艦を失うという数の記録を出してしまったという事実と向きあう事が大切
何度もの試練をくぐってきた男はそれを告げた
「よろこべ!!僕らに栄えある失敗をくれた石上に感謝しよう。これで僕たちはまた眠る事を惜しむ程に祖国を守るために戦う先兵である事を胸に刻む事が出来た」
石上の肩をもう一度叩く
「拍手を送ろう!!」
そういうと自ら石上に向かって手を叩き拍手をうながすと
手を伸ばした。変わらぬ友情を示す握手の手を
「君が国を思い戦う、そういう男で良かった。僕は明日をまた戦う事ができる」
「ダニー.....ありがとう」
握手を交わす二人に惜しみ無く拍手の雨が注いだのは寸間をおかぬ時だった
メインのディスプレイと格闘を続けた男、アイザック少佐も
一番の古参兵であるジョゼフも
全てが石上とダニーの握手に賞賛とお互いの健闘をたたえる拍手を送っていた
その隣、涙にくれる新兵のベニー
「すいません...僕は」
その肩をダニーは抱きしめて
「ベニー....ベニヤミン(末の子)よ。今日は負けた、だがこの日を忘れない...そして明日は勝つそういうものだ」
優しい父親代わりともいえるダニーの言葉に背筋を正し
「次は絶対に勝ちます!!」と敬礼した
「そうだ、その心意気だ」
愛情深く励ます言葉はいつものダニーに戻ってベニーの手に自分の手元にあった銃を預けた
「さて、それはともかく「言い訳」の手伝いはしてくれるんだろうね」
悪戯な目がマレス少将への言い訳を共にと懇願する
石上は自分のパソコンをたたむと
「ああっ勿論同行しよう」と立ち上がった
迅速な結果の発表
ダラダラと失敗を隠蔽するよりも早く効果的な謝罪が大切
何度もの荒波を乗り切ってきたダニーの処世術の一つだが石上もそれの大切さはわかっていた
ダニーはアイザックにデータの保存と今後のために必要な資料作りを任せると
石上を伴ってマレスが待つCOTCCに向かって歩きだした
「そういえば聞き損なった事が1つあった」
「何?」
部屋を後にした通路で各々資料を抱えた姿で顔を見合わせると
「君はMiss diamondの艦長の事「あいつは...」アレの続きはなんだったんだい」
立ち止まった石上は自分とは対照的で肉付きの良い体格のダニーの質問に
少しの間をおいてフンと軽く鼻で息を流すと
「あいつは世界一キライな男なんだ」と、やせた顔の眉間に皺を寄せてしかめっ面をみせた
少しの間固まった表情を見せたダニーは小さく何回か頷くと、確認するように石上の顔を見て声を出して笑った
「なるほどなるほど...道理でムキになって突っかかってきた訳だ」
そういいながら
「まったくもって完敗だ。相手の感情まで利用しきるとは...参った」
普段は戦場に感情など不必要を唄う石上の心底にある策に完敗と笑うダニーに
「デビッド....ダビデがゴリアテにぶつけた礫は「ただの石」だっというが、オレはイスラエル国民の「意志」だったと思っている。君もいつかそれを手にするんだろう」
「意志か」
お互いの祖国のために盾持つ者としての意志
ダニーは深くそうだなと頷くとまた笑って
「デビッド(ダビデ)か、よしてくれまだダニー(犬)でいいよ、軍属でいるうちは」
そういうと二人はまた深くお互いの友情を確かめるように握手した
「『こんごう』!!!」
彼女の口から吹き出した血は粉川の顔に降り注いでいた
口だけではなく
耳も目の端にも血を表す赤い雫は溢れそのまま粉川の体の上に崩れた
同時に粉川耳に入ったのは
「演習終了の合図」
「『こんごう』!!『こんごう』!!しっかりしろ!!」
自分にかぶさるように膝を落とした『こんごう』の目は開いてはいるが虚ろで光っていた八角の輝きは失われていた
粉川はこれによってシステムがダウン、または解除された事に気がついた
「返事してくれ、もう戦わなくてよくなったのか?」
粉川は自分に体を預けたまま崩れて行く『こんごう』を支えながらポケットに入れていた通信機を探した
演習が終わったことでイージスシステムが本当に解除されたのかを確かめたかった
そうしないとこんな今まで映画でしか見たことがないほどの血にまみれた彼女が、自分の腕の中で死んでゆくようにしか感じられなかった
粉川は必死の思いで通信機を握ったがその瞬間に『こんごう』の手が粉川の顔を自分に向かせるように掴んだ
「『こんごう』....大丈夫なのか?」
脱力し体をつぶれるように崩していた姿から考えられない力で樋川の顔を両の手がつかむ
驚きながらも顔を見合わせる粉川は三笠の言葉を思い出していた
艦魂は艦に与えられたダメージをその身に受ける
前の戦争の時はそれはひどい死に様だった者が多くいたという話し
だけど今日は違う
演習で実弾を使わない戦いの中で与えられたダメージは「電子の戦い」によるもので外傷を通り越した内部破壊の結果は見えなくとも
彼女の顔に「壊された」という傷はぞんぶんに表れていた
乱れた髪に華奢な肩は感電したように揺れ震える
普通なら、普通の人であるならば死んでいても可笑しくない破壊を受けた中で彼女の細い指先は辿るように粉川の顔をさわると
光のない目が誰かに乗りの移られたように開く
「一緒に死ぬなんて言わないで...貴方が好きで、貴方の愛する国が好きで、私は....私達は産まれてきたのだから」
「『こんごう』?」
滴る血を唇に飾った姿はズイと顔を近づけると粉川を押し倒した
急な出来事と不可解な言葉に呆然としていた粉川は突き倒されるままに床に体を転ばせてただ驚きの目で『こんごう』を見つめ返した
熱い息
あがっている鼓動を感じた
紅潮した頬
まるで真綿に触れるように震える指先は粉川の唇に探り出したと確認するように指を置くと
「私達の魂を見つけて」
無くなった目の光りの中
黒く光る涙の目が重なる同時に顔は重力に素直に従ったまま落ち
「『こん』....」
落ちた顔は、唇は自分を気遣っていた粉川の唇を塞ぎ
熱い息と鉄分の多い生ぬるい舌を絡ませると、きつく抱きついたまま気を失った
粉川の大きな体に預けられた彼女の体
目を閉じ、柔らかな唇と自分の口の中に入った舌に目を点にしていたがそのまま『こんごう』がそのまま気を失ったのではと顔に手で触れて確かめた
何もかもが柔らかな作りの体は力を無くし、触れられる手の中に動く事はなかった
唇をつないでいた顔をゆっくりと起こす
静かで少し不規則な呼吸がただ聞こえる中、閉じられた目の端に浮かぶ涙
腰をおこした粉川の体の中に倒れたままの彼女
口に残る血の味と....女の柔らかい体
「粉川はん!!」
茫然自失の状態でいた粉川の背中に『いかづち』の声がかかった
どのくらい自分が
自分の手の中に倒れた彼女を見つめていたのか?急なかけ声に背筋に電撃が走ったように
「『いかづち』ちゃん!!あのね!!『こんごう』を部屋に!!」
口に付いた血を作業青服の袖で即座に拭いながら慌てた粉川だったが『いかづち』は冷静に見ていた
『こんごう』程ではないが、どこか虚ろで寂しげな目線は倒れた相方を見ながら
「部屋、つれてくわ」
ただそれだけを言うと光の輪をつくり『こんごう』の手を握って消えていった
消えて行く光のこぼれる破片を見ながら粉川は口の回りを自分の指でさすってみた
柔らかかった『こんごう』の唇...それとは別の鉄の味
「どうなってんのか....」
崩れると、同時に自分に口づけた『こんごう』の予測不能だった行動と
「みられて...ないよね」
背中越しに飛び込んできた『いかづち』の態度に
「慌ててなかったから大丈夫って事かな....見られてない」
『こんごう』は心配だったが艦がこうして動いている以上は回復は見込めるものだろうし
艦魂の怪我は艦魂同士でなんとかしている部分もあるという事は『しまかぜ』からも『りゅうきゅう』の一見で聞き及んでいた
緊迫の時間から放たれた自分をほぐすように粉川は大の字に転がった
「つかれた」と
『いかづち』は『こんごう』の汚れた顔を丁寧にぬらしたタオルで拭うと汚れた服を脱がせて
部屋の真ん中にあるベッドに横たえた
無機質で艦体色と一緒のねずみ色の鉄板張りの部屋はどの護衛艦の部屋より色気も趣味もない部屋
まるで『こんごう』の心模様を表すような場所から足早く立ち去ろうとした『いかづち』は何もない部屋の片隅に張られた写真に気がついた
佐世保に向かう時に「人」、粉川によって初めて写真を撮った。みんなで集まって撮った写真。
「粉川はん.......」
そこから今日まできた
『いかづち』は自分の唇に指をそっと触れさせた
「わても感じたんよ....」
そう言うと今一度ベッドに横たわる『こんごう』の姿を見つめた
「わてにも、見えたで....せやけどな.....」
唇を噛むように目をつむった『いかづち』はそれだけ言うと光の輪の中に消えていった
実戦はなかった
だけどまるで実戦という世界を存分に表した演習はココに幕を下ろした
カセイウラバナダイアル〜〜対潜訓練編〜〜
登場人物
石上徳治一等海佐 40歳
技研の生え抜き的存在で普段はほとんど日本にいない
アメリカ合衆国海軍に半分足を突っ込んだような技術屋さんでHekatonchires.systemを作った張本人
現在日本はかつての帝国海軍のように新鋭の艦艇を自国の力のみで造りそろえる事に100%というのは無理な話
それをカバーし絶大な抑止力を持つ事を前提にしてつくった自分のシステムを全護衛艦に搭載。新たなイージス艦の取得に使命感を持っている
間宮とは同期の桜なのだが本人曰く
「世界一キライな男」らしい
おそらく間宮もそう思っているハズwww
今回はダニーを足台に自分のシステムの実用性を試した
今後も色々と実験するんでしょうねwww
デビッド.タボル大佐 52歳
階級からすると石上と一緒というのは。彼がユダヤ人であり研究と実験という家業に手を染めているからという部分と、純血アメリカ同盟のねたみからくるものかもしれない
見えない力=神の領域の分野が彼の兵器開発の分野であり得意とするものであると同時に信条である
現在もMIRACLE(実在するレーザー兵器開発部門)の主席開発者であり技術部の帝王的存在である
後に彼はイスラエルの国防大臣になるwww
本当の名前はタボル山のダビデ、イスラエル12部族の王の名前を冠しキリストが神により変化を表した山を名を名字とする彼はそれに見合う仕事、国防の盾とならんと今日も戦う
ボビー.マレス少将 56歳
合衆国海軍空母打撃群の演習指揮官
実はこの演習のみに参加というちょっと不自然な人なんですよ
アイゼンハワー事態はココの演習にくる前に「炎の七日間」という猛演習をしている(事実)この時の司令官とは違いある種観光ついでにきたような人で、口であれほど威張ってはいるものの実力は未知数
最後に間宮との会話で結局妥協してしまうあたりにそれがあらわれていると思う
この先出てくるかは不明
ベニヤミン.ミギー 25歳
大学卒業前からダニーを師事しリンカーン(大学)での交友からそのままteamDannyに入った彼
今回は日本語の隠れ符牒を読むことが出来ず実験を失敗に加速させてしまう
とはいえ実験事態が失敗したわけではないので彼が責任を病む事はないハズ
でも若さ故のものは色々とあったであろう
名前の由来
ベニヤミンはヤコブの12人の息子の末の子
後にこの12人の兄弟によってイスラエル王国12部族というものが作られる事になる
神聖語訳において「私の右手」と呼ばれた事から名字がミギーwww
後に彼はダニーのMIRACLEを継ぎSW2計画の主幹となる
その時には世界各国かぞえられるだけで12以上の語学に堪能となり、日本とも多くの技術提携をする事になる
これ以外にもダニーの部下の名前は聖書からとったものが多い
アイザック少佐はユダヤ読みでイサク
神の使いをもてなし部族の繁栄を約束された男エイブラハムの息子で最近のアニメではイザークなどとも訳されている
アイザック.ニュートンもイサクって事さw
ジョゼフはヨセフでイスラエル12部族のベニヤミンの一つ上の兄にあたる名前
聖書のヨセフは上の兄達にねたまれ一度はエジプトに売られてしまうが後に父達を救う事になるという流れから「私は救い」という意味がある
BANANA FISH吉田秋生著
の登場人物ユーシス(月龍)もこれにあたる
そんなこんなでやっと決着、対潜訓練編楽しんでいただけたのならば幸いです〜〜
それではまたウラバナダイアルでお会いしましょ〜〜〜