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第五十六話 神秘の滴

自分では書く事はけっしてないと想っていた世界は重すぎてなかなか手が進まないものです

『こんごう』が意識の深い闇の中に落ちていった頃、現実の世界では両陣営が頭の戦いで激しい火花を散らしていた


「ソナー感!!」


回避運動を開始していた『こんごう』艦橋に『いかづち』から待望の一報が入ったのはフェイズド.アレイ.レーダーを切って1分も待たない時間だった


「見つけたぞ」


「感」の報告に拳を握った和田をはじめとする艦橋要員と乗艦隊員達

今まで曇った空に流れ続ける雨

不安の下でいやな汗を制服に張り付かせていた緊張が別の感情に体をシフトしてゆく

重かった空気は、空気の中にさえ発火材料を絡ませたかのように否応なく熱を上げる艦内

その中で間宮は相手を見つけた喜びを静かに、冷静につぶやくと


確認を急がせながら


「CIC、空はどうだ?」

「来てます。さすが柴田司令、あれだけの会話でこちらの危機を察してくださっていたとは」

暗く冷えた機械に囲まれた部屋にいる安藤の声は反するように弾んだ回答


隊員に伝わる熱気に冷静に対応してゆく間宮

こういう事に対する艦長の対応は隊員の熱気とは反比例するものだ。間宮も例外なくクレバーさを表し始めている

自分の胸元に軽く手を置いたまま闇の雨の果てに心で笑う


時間と行動全てが冷徹に連結される事が大切である事をよく知っている者ができる事


帽子の鍔を手で触れながら指示をする


「フェイズド.アレイ.レーダー起動準備を開始」


熱を上げても艦長の冷静さに追随する事も怠らない修練

CICの安藤も声は弾めど指示には冷静な返答

「了解」

寸間もあけずにCICに入る報告

「『いかづち』了解」


間宮は自分の持つ時計を見つめる


「後4分」


相手がどう出るかはまだわからない

でも相手が自分たちの行動に警戒心を持っていないなどとは塵程度にも思っていない

実験と称し「神の目線」で自分達を眺め続けてきた連中にはそれなりの「責任」というプライドがあるし


星条旗は「敗北」を許さない


必ず攻撃してくる

そして確信があった


空に映っていた「何」は粉川の言うとおりのダミーだった事によつて

実像なき敵の姿は浮かび上がっていた

嵐の海域に潜む水面下の脅威をごまかすための光はが示す敵である潜水艦

そして文字通り浮かび上がるまでが勝負である事


「どうした?」


自分に問うように

人には見えぬようにしている喜びで間宮は微笑む

これだけ大がかりな設備を介した潜水艦は簡単に攻撃にはうつれない

必ず設備の解除と攻撃に入る時間というものが必要になる。そして敵は1つではないという予想


「敵は複数」


そこから考えるに『こんごう』が相変わらず不利な条件下の中にあって、一矢報いる時間は少ない

最初の一隻が設備を解除し攻撃に転ずる時間と

その敵を確実に仕留めるために掛かる時間......後3分


打ちつける雨の窓

立ち上がらないままの間宮はまとまった自分の考えにけりをつけたようにCICに戦いに向かう指示を飛ばした


「空の目にもつなぐ後何秒かかる?」

「14秒で到達!!」

「到達したらすぐに撃つぞ!ソナーと連携を密に」

「了解」


時間と戦う厳しい目

切り貼りをちりばめたねずみ色の海を睨むと艦橋に詰めた者達に向けて声を挙げた


「国を護るという使命を持つ「ケンカ屋」に手前てめえ勝手な冗談は通用しないって事を教えてやろう」


最後の一踏ん張りをたたき上げるのも艦長の使命

右の拳に自分達の使命と思いを掲げた間宮の姿に隊員達は熱く、さらに燃えるように使命完遂へと心をシフトさせていった







「マーシアハに向かって対潜ヘリが飛んでいます」


システムの変換のために作業のために指がたたき出す打音の世界の中でアイザック少佐はメインモニターを指差した

ざわめきと困惑

一同の口から白い息が漏れる部屋で

急転する事態に、青い部屋の中を照らす白い光のアイコンはめまぐるしく活動し

光に飛び込む羽虫のように画面に姿を現したヘリを指す


「なんで.....ヘリが飛んでる?」

ダニーは右に首を傾げた顔のまま石上に尋ねた


「君の指示なのか?」

「冗談を言うなよ。僕は海自の通常リンクの監視する事さえ君に渡してしまっているんだぞ」


パソコンから手を離した石上は自分が疑われている事に心外とゼスチャー的に肩をすくめてみせた


この実験のため、石上が相手側である『こんごう』からの行動をモニター出来ない変わりにリンク16の回線は常に開いたままになっていた

通常のリンクは元より「会話」までを細かに観察していたのだから石上を責めるのはお門違いとわかっていてもあまりに不測の出来事にダニーの目は冷蔵庫の影になっているリンクをチェックしている技官に聞いた


「Miss diamondと随伴艦艇との会話に不自然なものはなかったのか?」


秀才の頭は秒間を惜しむようにフル回転で事態のわかる形を探していた


ヘリが囲いの海域に飛んでいるのは偶然ではなく「必然」であると考えて

「おかしな所はありません.....会話の記録にヘリの事はどこにもありません。有ればこちらでチェックしています」

「こっちにくれ!キミはこれ以降にある回線のチェックを続けろ」


紙面にかき出された会話の記録を手元に運ばせ石上の顔に突きつけた

「見てくれ。協力はしてくれるのだろう?」

「もちろん」


差し出された通信記録、暗闇の中では文字を探すのも困難な手元にペンライトを付けた石紙は千切られた薄ぺらなデータ用紙に目を走らせていった

眉間に皺を寄せて読み続ける顔は数行を読んだところで「やられたな」という表情でダニーに記録紙の中程を指差してみせた


「ちゃんとヘリの出動要請をしているし、司令官も受諾していてる」


回線のチェックをしていた若い技官は指示通りに自分のデスクに戻ろうとしていたが

あまりに早く石上が答えを出したのでそのまま踵を戻して


「そんな事はどこにも」

「どこに!」


じっくりと見張った自分の任務に失点があった事におどろく彼を押しのけダニーは聞く

失敗は取り戻せない

時間と一緒だ。見落としたの見落とさなかっただのを今討論しても仕方ない事


「ココだ」


石上は英文で書かれた記録の中

間宮と柴田の会話を指した


「耳は大事ですよ聞こえなくなったら「補聴器」をお願いします」「第一京浜沿いに良いストアがある、ココは24時間営業らしい」


「これがそうなのか?」


良くわからないという顔をするダニーと技官に石上はあまりにオープンな暗号と素っ気ない笑みを浮かべて説明した


「耳」は文字通りレーダーの事

「それはわかる、だが回線は全てこちらが握っていたのにどうして?」

「握られている事は向こうもわかってたんだろう....だからこういう記譜を読めなかった」

石上は「第一京浜」というローマー字表記のように書かれたくだりを指して


「第一京浜はstreetの別名みたいなものだ。本来なら国の幹線道路としての番号がある「国道15号」という名前がね」

「15.....」

ダニーは何かを理解したように顔を上げた


「通常のlinkはこちらが握っている事はわかっていた。実験海域に入ってレーザーの照射が始まれば回線は一度途絶...またはノイズの入った状態になる...開きっぱなしの回線に異常を感知したらヘリは飛ぶことになっていた....」


「しかしそれだけでは状況を理解してヘリを飛ばしているとは言い切れませんしMiss diamondとの連携は?」

まだ年若い技官の説明をする顔をダニーは笑って見返すと


「ココに書いてある第一京浜沿いのストアは24時間開いていると」

そういうと説明してくれと石上に目を向けた


「第一京浜事国道15は現在海上自衛隊が開発している国内護衛艦ならび対潜ヘリの全てをつなぐlinkの番号「H link15J」の事だ。海域に入って最初の異変はリンク16の途絶ないし交信の低下でわかる。海域にヘリが入ればH link15Jが稼働し」

「マーシアハを狙う目の変わりをするという事か」


お互いを見合わせる二人

年若い技官は呆然とした顔で自分の落ち度に肩を落としたが


「ダニー、こういうのを見る役は相手の言葉や文化に堪能であるべき者がすべきだと僕は思うよ。古文にもあるだろ」


ダニーは若い技官の肩を叩きながらモニターに目を向けて背中で答えた

「敵を知り己を知る.....か」

時間を睨みながら一言の苦言を零す


「H link15Jの事は知っていたが、実用できる事は知らなかったよ」


石上は背中に向かって

「軍事機密の中身を全ては公表できない。君のいう企業秘密みたいなものだ」

「そりゃそうだ」

両手を挙げる仕草


「実験を停止しましょう!!」


実験に不利な結果が出てしまえば今までしてきた事は全て無駄になにってしまう

そんな事は誰にだってわかる

焦った若い技官はダニーの前に立つと敬礼をし


「自分のミスについては罰を受ける用意がありますが、実験の全てを無駄にする事はできません!」


敬礼する手は震えている

まだ大学を出たばかりの技官は自分たちの国を護るためにどんな屈辱も飲み込み前に進むダニーに憧れてこの部署に入ったばかりだった

若さ故に技術職としてココに入ったのに回線の監視という仕事しか貰えなかった事に対する不満はは少なからずあった。その事が今重大な見落としと失点につながってしまい


ダニーの研究に汚点を残そうとしている事は耐え難いものに違いなく

唇を噛み、喉を締める苦しみで見つめる目にダニーは笑った


「ベンジ−、ココの全てを指示しているのは僕だ。名誉も不名誉も全て僕のものだ。君のものじゃない」


父親と変わらない年上の上官ダニーの前で悔しさに顔を落とす彼の肩を優しく叩く


「まだ終わってないぞ!最後までやりきらなきゃ、投げ出す事なく結果を見なきゃ善し悪しなんかわからんさ!」

励ましの言葉で大きく背中を押すと

「アイザック少佐!マーシアハの解除に後何分か!」

「82秒!」

「急げ!!敵は僕たちを見つけたら直ちに撃ち込んでくるぞ!」


『こんごう』の間宮達とteamDannyは今、対峙する互いの持ち時間3分を切ったところにあった







「外はだいぶん騒がしい「時」をすごしていますがココはそんな流れの中にありませんから、ご心配なく」


細かな煌めきが漂う水面下の世界の中

自分が置かれていた状況を思い出した『こんごう』は忙しく四方を見回し出口を探していた。

その姿にマリアは目を細めて微笑みながら


「ココは外の世界とは時間の流れが違う場所ですから、貴女がココについて過ごした時間は外では数秒の出来事にしかなりません」

目元優しい顔立ちに青の瞳に...どこか赤みを帯びた目の玉、色白というよりは白すぎて透き通って見える肌に赤のスータンの姿はまるで死者を目の前にしているようにも見える


「なんでそんな事がわかるの?」


相手が同じ艦魂である事を名乗っていても、自分の今まで味わった事のない世界観の中にいる事までをも見通しているのは気味の悪い事だ

『こんごう』は足場さえ見えないこの空間に戸惑いながらマリアに


「私となんの話しがしたいの?」と最初に彼女がした申し出を思いだし、ついでに曖昧過ぎる状況の確認をした

「まずはココがどこでどういう場所かをはっきりさせてくれ!」

得も知れぬ割り切れない世界は落ち着かない


立ってはいるが足場があるわけでもない空間

おそらく下、床に相当する足下の景色はマリアナ海峡のように深く見える

青い海をさらに濃く塗りつぶしたようなカラーで心を不安定にさせるものでしかない


自分の立ち位置に不安を募らせている『こんごう』にゆっくりと歩くではなく飛ぶように浮遊して近づくマリアは赤のスータンの裾とブルネットというよりは緑の光を忍ばせた長い黒髪を揺らしながら


「私はたくさんの妖精の心を救うためにこの空間に入る事を学んだ。貴女が今いるココは活動する脳の意識下の世界です」

「意識下....」


と何理に並んだマリアは『こんごう』より少し背の低い姿、絶やさぬ笑みの中で

「貴女の国に近い言葉選ぶのならば「未那識」とか「無我」とでも言うのかしら?こころの奥底という事かな」

「そんな古い言葉は知らない....つまりは精神感応の世界って事か?」


艦魂達にはそういう世界がある事は割と知られていた事だった

ただ『こんごう』はそういうものの中に入った事は初めてで聞くだけの話の世界に相変わらずあちこちと目だけを走らせらせていた


一面に続く波の下煌めきが星のように揺れる果てしなく続く世界


「割り切りは早いのね」


意外と取り乱さない落ち着いた様子の相手にマリアは柔らかい笑みの顔のままで


「『はるな』さんはこの世界の事をよくご存じのようだけど、貴女も彼女にならったのかしら」

「違うが、話しは聞いた事があるだけだ」


マリアに心を覗かれるような恐怖か『こんごう』は距離を取るように先を歩きながら

「ところで私と何の話しがしたいの?私はすぐにでも任務に戻りたいのだけど」

『こんごう』は自分が置いてきてしまった職務の事が心配だった

『いかづち』が一人であの海域にいると思うと自然と拳はに力が入ってしまうというもの


あの尋常ではない事態から自分だけが逃げ出して、このまま精神の世界に飛び込んでしまったことに苛立ちさえもっていた


「早く仲間の所に」


急かす言葉にマリアはあくまでゆっくりとした動作

手を挙げて


「時間は十分にあります...貴女が向こうに戻ったとしても演習が終わっているなんて事はありません」

そう言うと手のひらの中に水の固まりを集めた

マリアの細い繊細な指と白い手のひらの中で渦巻くエメラルドの水


「水は重い、人が思うような形以上に水には多くの記憶が宿っている」

神秘の滴とも言える手の中の水

話しの中身になかなか近づけない『こんごう』の前で


「同じように水に流れる時間は「人」が過ごす時間とは違う。悠久の時を閉じこめ遙か彼方の時代ときからこの地を見つめ、空を下り川を流れ海に至り天に帰る」

閉じた目は自分の手のひらの上を行き来する水に向けられたまま


「私達はその水の元に命を宿した魂であり妖精です。より水に近づく事によって時の流れは私達の原則によって動く....「人」の持つ1日86400の寸間は私達にとっては31536000以上の価値となりましょう」


「つまりはさっき言ってた時間の流れが違うから慌てる必要はないという事?」


立ち止まった足

どこまでも変わらない深海景色を十分に確認した『こんごう』は相手の目を見ることなく突き放すように声を荒げて


「それで何が聞きたいの?早く戻りたいの、用件は短めにして」


そうだと言われても落ち着く場所ではない事に急かす『こんごう』

相手の気持ちに頷いて魅せるマリアはそれでも慌てる事も無ければ自分の言いたい事を後回しにする気さえもないように


「私は日本海軍(海上自衛隊)の妖精(艦魂)とココで話しをするのは2人目だけど、『はるな』さんはどうしてか決して昔の日本海軍の姿を私には見せてくれなかった。私達妖精にとっての行く末それを導き出した結果として日本海軍は生き死んだと言われいるの....私はそれを知りたいと思っている」


手元で水を鞠のように遊ばせながら

「それが私達の救いにつながるものだと信じているからです」


マリアの知りたい事

それは『こんごう』達だって知りたい事だった

かつて帝国海軍の魂達は「死さえも恐れず戦いの中」に自分たちを繰り「人」と共に海に出て行った

それには「絆」というものが大きく関係していたらしい

その「絆」と称されたもの一つ



「魂の引き継ぎ」



死してもまた新たな自分がこの海に戻る

愛した皇国の海に必ず生まれ変わる艦として....


『こんごう』は眉をしかめた、苛立ちや嫌悪、触られたくない傷の事に苦痛を覚えた訳ではなかった

何も継ぐことのできなかった自分.....かつての金剛とは

自分たちが栄光の帝国海軍の末裔なのか、しっかりとした絆を持っている魂なのか?


曇った声は苦しそうに返事した


「それは....私だって知りたい、だけど私は何も覚えてないし知らない....マリアの方がよく知っているよきっと、『はるな』司令がそういう事を知っている人である事を私は今知ったぐらいだ」


そういうとやっとマリアの顔をじっくりみながら悲しそうに首をふって

「教えられる事なんて何もない」とはっきりと答えた


対するように立つマリアはやはり絶やさぬ笑みのまま


「ええ、そうでしょうねでも正確には貴女と話しがしたいわけじゃないのだけど」

あっさりとした否定、深刻な話しの腰を折られ呆れたように一歩下がる『こんごう』は


「はあ?じゃなんで私を」


悪態こそつかなかったがマリアの会話が....

会話としてはあまりにも自分本位である事に顔に怒りを表したが


そんな事も気にならないのか

「貴女がココに来れたのは予想外の事に現実の艦の頭脳が機能停止に近い判断をし止まってしまったから...でもそれは私にとって神のお導き、日本の妖精はなかなか心の中身と過去へつながる「糸」をみせてはくれなっかったけど.....」


肩透かしのようにヒラリと会話を断ち切るマリアは細い指を伸ばし空間の中に集め手の中で遊ばせていた水の固まりをみせた


「貴女の心にある残念と「この海」が答えを導き出してくれる」


「私がお話ししたいのは貴女の心の中にあるもの....きっとそれが貴女が抱える問題の解決の糸口になり、私に新たな知識を与える事になる」

「だから....私は何も知らないんだ」


「知ることに成ります。貴女という日の本の魂を媒体に「この海」に眠る魂の記憶を紡ぎ出せるハズだから」

そういうと手にもった水を顔の前に浮かび上がらせた

水はまるで無重力の空間に浮くアメーバのようにユラユラと揺れる


「この海.....東シナの記憶が貴女と私に妖精の進むべく道を示してくれます」


弾け出す動き活性化した水の端をマリアは指で押した


「この海の記憶.....」


エメラルドの水はそのまま『こんごう』の顔に目がけ飛び出した

雫は煌めきとともに額にぶつかり

世界が変わった






次の瞬間『こんごう』は海の上に立っていた

それも今日この日の演習と同じ曇った空の下に

いっしゅんで水面下の空間は消え荒々しい波の立つ世界に立たされていた


「ここは....」


艦魂であっても海野上を立つことが出来るのは自分の艦の周りだけであり、めったな事でそんな事をしたりもしない

水面を打つ雨の情景は果てしなく続いていて

最初は自分が元の自分の艦に戻ったのかと考えていたが


そんな安直な気持ちを切り裂くように音が走った

周りを眺め呆然としていた『こんごう』の頭の上に耳の奥を切るような音が響いた


しかしそれはジェット機の持つ甲高い音ではなく

羽根を動かす濁音の群れ...まるで蜂が群れをなして飛ぶような音は頭上をかすめ

水面を蹴散らすように響く音の中に声がつながる


「jab!!」


侮蔑の雄叫びは『こんごう』の頭上をかすめ恐ろしい程の数で群れをなして真っ直ぐに向かう

夢なのか幻なのか

戸惑いの『こんごう』に現実の風が髪を乱す

目の前を覆った前髪をかき上げた『こんごう』はジェットではないレシプロの戦闘機の姿群青の色にネイビーを混ぜた寸胴の戦闘機の目指す先は


手で分けた髪の向こう見えるものに『こんごう』は



「大和....姉さん....」


目を見張る光景

そこにあるものは視界を雨で遮られる中に浮かぶ黒鉄の城

灰色の空にそびえる灰鉄の城郭は誰もがすぐにわかるシルエット

見まごうことなかった


帝国海軍の象徴として皇国の旗艦として産まれた姉

戦艦大和は、今まさに海の上を走る性悪女である戦闘機に啄まれようとしているところだった


「どうして....ココは」


『こんごう』の体は自然と前に向かって走っていた

今この現状に置かれた自分がどうなっているかという疑問よりも何よりも足が動く

力を感じながら海の上を懸命に走った


「姉さん!!」


空には弾幕の黒い花火が無数の華を咲かせている

轟音に伴う不気味な火花の中


戦艦大和は数隻の仲間を伴って走っていた

連合艦隊最後の使命

日の本の人の住む大地である沖縄を護るために


「ココは......坊ノ岬」


額に触れた水の記憶

『こんごう』は争いの海のどの真ん中にいた

カセイウラバナダイアル〜〜プラモの友〜〜


本編は重苦しいところにさしかかってますが

ヒボシは相変わらず木彫り厳島タンを作ってます

(そういえば外伝が進んでません...本伝のこの称が終わったら書こうと思ってますので...スイマセン」



さて厳島なのですが

後は12.15のアームストロング速射砲をつけ

艦橋部のフライングデッキを作ったら8割方完成といったところでしようか

同型艦の橋立は....つくらないとおもうけど

三景艦としては全部作って見たい気もしてます

しかし三景艦は資料が極端に少ない事が問題でヒボシは必死に集めているのですが造形するという段階になれば足りない事ばかりです


それですばらしい模型を作っている人にご尽力を頂く事にしました


HIGH-GEARed's HOBBY WORKS!!

このサイトの管理人HIGH-GEARedさんにメッセしたんです

彼は700/1の三景艦をとてもキレイに作っていて

それ意外にも陸奥や金剛なども凄いですよ!!


素人の木工工作なので返事をいただけるとは思ってませんでしたが

大変親切に

松島と鎮遠の2面図を添付してくださいました


厳島タンが完成したら松島さんを作って見ようと思ってるヒボシにとってこんなに嬉しい事はありません


三景艦と鎮遠

日露の戦いには全てが同じ部隊に所属した艦

それを並べるのがヒボシの希望ですよ〜〜〜


それではまたウラバナダイアルでお会いしましょ〜〜〜

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