第四十九話 坩堝の中
鯖缶詰....恐るべし一行にお腹が回復しません...
ロシアの陰謀かこれわ!
佐世保を出てしばらくした海は薄墨の空で,時折細かな雨を伴う雲という白黒のまだらな世界が果てしなく続いていた
艦尾にある自衛隊旗も雨に湿った緩い揺らめきの中にあった
今日の演習海域は東シナ海域
1月前...そこでは海保の船魂が撃たれるという日本を揺るがす事件が起こったばかりだった
血の赤色は簡単に消し流す事はできなかったのか?
大荒れだったあの日に続き空に笑顔はなく...暗く湿った冬を近づける秋雨の雲も
冬の冷たい風に引きちぎられながらバラバラと足早く流れる中,少ない雨を降らす
今回は東シナよりさらに沖縄に迫った海域でのアメリカ軍との共同訓練
10日ほど前に起こった
未曾有の災害に海自は3隻の護衛艦を出港させ,アメリカも空母エイブラハム.リンカーン,イージス駆逐艦ミリアス,病院船マーシー等を派遣している状態でもありながら
たぶんに含まれた政治的思案を元に日取りをずらすことなく会される事になった
ある種の緊張を纏った海演
海自からは
作戦司令官乗艦の旗艦として『くらま』対潜戦略の要的艦と
防空の先手である『こんごう』それらの艦艇と情報を密にとり作戦行動に参加する『いかづち』『はるさめ』
小雨に叩かれる深緑の水面の下にも
一群から参加の潜水艦1つと佐世保から1つ
かなり規模の大きな艦隊編成である
会するアメリカからは第七艦隊所属のカウペンス,乾ドックからの修復をへて大規模な演習には久しぶりの艦であるが
湾岸戦争ではイラク領内に30発以上のトマホークを撃った強者。
同じく横須賀からカーティス.ウィルバー,2隻とも型は違えどもイージス艦
そして作戦司令乗艦としてドワイト.D.アイゼンハワー...原子力空母
こちらもオーバーホールを終えて久しぶりの大演習
世界的規模で起こった災害という場に協力する一方で,天災とは別の側で対峙する「人災」の構えである演習はココに始まろうとしていた
「何か企んでるかな?」
キャプテンシートから離れた艦橋からデッキに続くドアに寄りかかったまま,窓を打つ小雨の海を眺めた間宮は自分の後ろにとりあえず形だけのチェックボードを持ちFTGの腕章をつけた粉川に小さい声で聞いた
「実験的な戦略訓練をしたいという要請はありました」
手元に持ったボードで顔をあおぐ
いくら秋も深まったこの時期とはいえ男ばかりが詰める艦橋は蒸す
そうでなくても近づくオペレーションに色々と仕事が残っているのかイージス艦『こんごう』でもっとも熱い男,船務士の和田はCICとの連携に余念が無く
手に持ったリストと睨めっこしたり各部に檄を飛ばしたりとしている中で
会話を普通に出来る場所にはなっていなかった
熱い現場の雰囲気から脱するように
間宮は粉川を目で「外に」と誘うと双眼鏡をぶら下げたまま小雨の降る艦橋横の見張りデッキに出た
吹き降りの小雨の下は肌を刺すほどの冷たさはなく
どちらかと言えば気味の悪い生暖かい風を伴っている
顔に落ちる雨の匂いを確かめる仕草,後に従って外に出た粉川に
「『くらま』に乗った石上一佐の事...知ってる?」
間宮のイタズラっぽいしゃべり方で聞いた
いつもそうなのだが細身の顔に歳を感じさせない鍛えた体
腹回りが崩れないあたりに艦長就任までに「別の事」を頑張ってしまった将官クラスとは違う実戦向きな強さが感じられる護る事を仕事に置いた男らしい姿とはうらはらな声
言動までもが軍人様というところはなく,のらりくらりと本音をすぐには言わないアタリに奥深い考え方を感じさせる優男
一群の艦魂達にとって理想の男である間宮は
男盛りのいい顔を決して見合わせる事はせず双眼鏡を当てて遠い海を見回しながら『こんごう』の後ろを走る『くらま』に目を向けて
「僕はあまり知らないんでね,教えて貰えると少し助かる」
「防衛庁戦略研究部の方である事もですか?」
間宮にならうよ肉眼で曇った海を見回す粉川は抑揚を抑えた声で聞いた
「技研(防衛庁技術研究部)の人間だと思っていた」
わざとらしい笑みを返す間宮の前,嘘を付かない粉川は知っていながらも語らない相手を責める事はせずに朝の交信時に自分で書き留めた紙を開き考えた
表向き防衛庁は戦略研究に重きを置いていないふりをしている
というか「戦略」という言葉が「侵略」とすげ替えられてしまう国民感情のために
大手を振ってそういう部署がある事は言ってはいない
だが,四方を海に囲まれ,エネルギーを遠い外国に頼る日本がこの先も生き残るためにはあらゆる「有事」に対する戦略が立てられているのは事実
注意を書き込んだ紙のにある石上の経歴に目を落とし
「とりあえず技研部付けではありますよ」
少ない雨であっても遮蔽物のない海の上を走る艦には斜めに注ぐ
粉川はファイルの中にチェックシートと紙をしまい,ボードだけで顔に掛かる雨を払うように,艦橋部の隊員達から顔を隠すと間宮に
「技術屋上がりの戦略家...と言ったところでしょうかね」
間宮は『くらま』と後ろ単縦陣のまま進む他艦を追いながら
ウッドデッキに手をかけたまま砂を噛むような苦々しい物言いで
「先月までアメリカにいたのにな」
自分の中に残る,忌々しい記憶をたぐっていた
本庁から急遽出向してきた男
石上徳治一等海佐は今朝出港ギリギリの時間を見計らったかのように他の将官に挨拶をする事なく『くらま』に乗艦していた
まるで顔を合わすことで自分が関わる実験を邪魔される事を嫌がるように
スーツ姿のまま黒い革張りの大型トランクを痩せた彼が大切そうに抱えて艦内に入るの確認してはいたが
以降の連絡事項に彼の紹介は一言もなく予定演習の何に関わるのかも知らされる事がない現状に間宮はひっかかっていた
「石上一佐とは同期じゃないんですか?」
彼を本来なら自分より知っているハズの間宮の遠撒きな質問に粉川は
今度は背中向けたままで間宮に聞いた
「同期...だね」
背中を向けたままの粉川の姿に
間宮の目は尖っていた
鋭い視線は双眼鏡を降ろし肉眼で今一度『くらま』の艦橋を睨む
「頭は良い人らしいじゃないですか,アメリカ軍の技術研究部でもたいそう活躍したというふれこみですよ」
「だろうね,MIT卒の資格を持っている自衛官はそうそういないからね」
「リンカーン(リンカーン研究所)でも有名だったそうですが,懇談会には顔を出さないなど徹底したところもあり防衛庁ではそれほど評判も悪くありませんが?」
チェックボードで雨を遮ったまま粉川は振り返った
粉川は元々情報局の人間,パソコンを使って情報を得ることは安いもので
乗艦前に佐々木情報局次官との定時連絡ついでに石上一佐についても情報を得ていた
間宮と石上が同期である事は最初から知っていたが,それを隠すというよりも否定するようにしている間宮の真意を探そうとしていた
自分を見る粉川には顔の強張りの一部もみせず
気抜けした声で
「レーダー研究と戦略..日本国防...MD戦略における第一人者...か」
デッキに手をかけたまま方眉を上げると
「いやな目をしてただろ,アイツ」
そういうと艦橋に戻る方へ足を進めた
口元には不愉快が隠せない状態になっている
「天才は危険....と考えていらっしやいますか?」
自分の前を通り過ぎようとする間宮に粉川も横に歩いき肩を揃えた位置でしっかりと顔を見据えて聞いた
「誰の言葉?」
「羽村局長が」
「羽村局長か....局長も天才じゃなかったっけ?」
くるりと顔色を変え
明らかに話題をそらした返答だったが
「いいえ局長はただのヘビースモーカーです」
粉川も議題を外した返事を返した
相手の返答に手を振って艦橋に戻る間宮の背中
「時間までまだありますから,艦内回ってきてもいいですか?」と態度を和らげてみたが
間宮はただ手を振るだけだった
それは洒脱な返答の仕草に見えてはいたが,顔には怒りにも近い険が現れていた額をさするように自分の顔に出てしまった過去に間宮はつぶやいた
「戦略に人の心は必要なし....技術を使えるだけの人材を作れば良し....戦争に「義」無し...よって心を必要とする士官必要無し....だと?」
デッキから艦橋につながる壁に軽く手を打ち付ける
「石上....何考えてるかわからんが...思うようにはいかないぞ,実戦は」
自分の胸を叩くように言葉を飲み込んだ顔は
普段の飄々とした姿に戻るのに時間を要するほど強張った頬を叩いた後,目深に帽子を被りなおすと艦橋に戻っていった
艦隊勤務であれば『しまかぜ』を筆頭に仲間が集まるであろう部屋に1人『こんごう』は窓から見える水平線を見つめていた
通り過ぎる雨の海に少し前.....取り逃がした狂気が潜んでいた
何とか自分の肩を流れる紙に手を触れて...気持ちを紛らわせる
テーブルに置かれたマグカップはとっくにカラになっていた
あの日を思い出すことで喉が渇く
『こんごう』は立ち上がって照らすの側から見える海に手をかざしてみた
冬服のダブル,下はフレアスカート細い指先が結露で曇った露に指を滑らす
思い出したくない日の事こそ鮮明に覚えているものである
ましてやイージス艦の魂である彼女には相手の輪郭から顔色まで焼き付くように残っているのかもしれない
激しく揺れ動く波の海を水色の瞳はただ見つめ続けていた
「『こんごう』ちゃん!!」
物憂げに外の景色に立ちつくしていた背中に粉川の声が掛かった
部屋に入り,周りをみまわし
「今日は一人なんだね?」
明るい声
「演習まで後数時間しかない...誰もこない」
相変わらずの冷たい返事に
スーツ姿以外の士官青服を着た粉川は
「そう?でもすぐには始まらないよ,新しい戦略実験もしたいという申請も入っててね」
手提げに入れていた自分のタンブラーのキャップを開くと
「まだ口つけてないからね」と言い
『こんごう』のカップに半分を注いだ
「緊張している?」
「誰が?」
突き放した返答は海をむいたままではあったが
ガラスに映る粉川の姿をしっかりと見ていた
「僕は久しぶりの演習だから,ちょっと緊張しているよ」
「だらしないな」
キツイ返答に苦笑いしながら
用意されたイスにカバンを置く
事実,久しぶりの海の演習に半分は心を躍らせている自分を抑えたように答えた男に
「私達は....何時だって海の上にいるんだ...緊張などしないし何も変わらない」
まるで自分に言い聞かすような返事
産まれてきた世界は手狭で陸地をあまり知る事のない『こんごう』の答えは
どこか寂しさがあった
粉川の苦手とするしんみりした場を和ますように素早く話題を切り替える
「誰もいないと寂しいね!!呼ばないの!『いかづち』ちゃんに,『はるさめ』ちゃん?」
茶化すように手振りする粉川は立ち上がると海を見つめる『こんごう』の隣に立った
もちろん彼女のマグカップを持って
「紹介して欲しいなぁ」
「『はるさめ』をか?」
あきれたような声は粉川の手からマグカップを奪い取ると
「オマエって....ただのスケベヤロウなんだな」
二の句を断ち切る棘の言葉
実際粉川に着替えを覗かれた事のある『こんごう』は顔に険を浮かべながら冷たい視線を流しながら言うが
通常のならかなりの勢いで男心を抉る台詞,だが....そこは粉川むしろ無言やそっけない態度をいつもとる『こんごう』に相手された事を喜ぶように続けた
「いやいや艦魂の皆さんと親密になる事でね...色々知り合いたいでしょ」
「それで覗くのか?」
次の合いの手に凍る
「まだ...怒ってるの?」
「常習犯」
簡潔な罵倒,言われても仕方ない
ましてや最初は全裸,次は下着姿という覗きの順番さえ逆算したような出来事に思わず姿勢がピンと正される
「....わざとじゃなかったんだよ....ホントに...でも怒ってるよね?」
顔を覗き込んで謝ろうとした粉川を避けるように
「しらん!!」
自分で言いだしたのに『こんごう』は思い出して顔を赤くしていた
「どちらにしても演習前には誰も来ないし!!紹介して欲しい艦魂がいるのなら姉さんに頼めばいいだろう!!」
「姉さん?」
気抜けした声は『こんごう』の顔を反対側に回って聞き直した
「....『しまかぜ』に....」
「『しまかぜ』さん!ああっやっぱりお姉さんって呼ぶんだ」
誰の目から見ても年長の姉である彼女の事を『こんごう』もきちんと姉と認めていた事実を知って粉川は納得しながら手を打った
「『しまかぜ』さんはホントいいお姉さんだよね!!『こんごう』ちゃんもそうだけど」
慣れない会話が続く空間に困った顔のまま粉川に背を向ける姿
「オマエ....私にちゃん付けするな....」
「え?」
「子供扱いするなって言ってるんだ!!!私はこれでも国を護る仕事に籍を置く魂だ!!...子供扱いはされたくない!!」
振り返った抗議
それでも目だけ合わさないようにしている,どこかぎこちない『こんごう』に
「でもさ」
無理をしているように見える姿を押しとどめようとするが
「『こんごう』って言えばいいんだ!!」
自分の顔に向かって「ちゃん」と呼ばれる事を本気で恥ずかしいと思っているらしい彼女は少し頬をふくらませている
そういう仕草にまだ少女らしさがしっかり残っているのに,両手で抗議を押さえた粉川は
それでも『こんごう』の意見を尊重する大人な切り返しをした
「だったら僕の事も「オマエ」じゃなくって「粉川」って呼んで...軍務において「オマエ」じゃ指示はとおらないでしょ,これでお互い様って事で」
頭一つ自分より大きな男の余裕のある態度に少し悔しそうに項垂れた顔は期せずして上目遣いなまま
「じゃあ....粉川,これでいい?」
自分で自分を呼び捨てろといったくせに滑稽すぎる
「はい,『こんごう』...これでいい?」
一歩近づいた
粉川は満面の笑みでタンブラーを前に出した
「演習頑張ろうね,乾杯しょ!!」
「変だろ?」
マグカップとタンブラーを会わせようとする粉川に,すっかり主導権を奪われている『こんごう』はおずおずと手を伸ばして最初にあった棘はなく,柔らかい否定をするが
「基地にもどっら,今度こそお酒!がっつり飲み明かそうね!!」
陽気な声で背中をポンと押して
「早く基地に戻りたいね」と朗らかに告げたが
『こんごう』は急に顔色を曇らせた
「オマエ.....」
「やっほぉぉぉぉぉ」
粉川の背中に柔らかい衝撃
そのまま重量物の接触で押し倒される
「えっ!!」
タンブラーを落とさないように両腕を上に上げたまま店になった目はそのまま『こんごう』を巻き込んで倒れた
肉感的なニブイ音の雪崩の上で緩い声が
「あれ〜〜〜失敗しちゃったぁ〜〜〜」
「姉はん!!めっちゃ無理なハイラインやで!!」
倒れた粉川の上,背中に豊かすぎる胸を押し付けたままトロンとした目で笑う『はるさめ』の横,手を引かれて飛んできた様子の『いかづち』が顔をしかめて
「大丈夫,粉川はん!!」と両手でタンブラーを護った形のまま倒れている顔を覗いた
必死の顎揚げ
どちらかというと背筋運動のエビ剃りの姿勢になった粉川の下
2人分の重量に潰された『こんごう』が涙目になりながら怒鳴った
「何やってんだよ!!!」
圧力に寸前のところでブレーキをかけた粉川の体の下
ギリギリでふれあってしまう事を恐れ両膝,両肘で無理からぬ形で防御した『こんごう』は
自分の膝が見事に粉川の鳩尾に決まっている事に気を使える余裕はなかった
間近にある脂汗の顔の男の顎に
「どけよ!!粉川!!」
ひっくり返った声を上げた
そのあられもない
まるで女を押し倒したような姿になった粉川の手を『いかづち』が急いで引いた
「ちょっと!!粉川はん!!」
「どおして...普通に来ないの?」
つい
いつも思っていた言葉が飛び出してしまう
三笠も光による移動で自分を何度も海に落とした事を思い出し
艦魂が持つ力での移動は結構当てずっぽうなところがあるのではと本気で思うほどのダメージから起きあがった粉川は
「だいじょうぶ?『こんごう』?」と声をかけた
寝っ転がったままの目が吊り上がった顔で『あめ』姉妹を睨み
「普通にこればいいだろう!!」と怒鳴るが
同じぐらいメガネの下で『いかづち』の目は尖っていた
粉川の背中に手を乗っけたままの『はるさめ』は反省のない声で
「ちょっとまちがっちゃっただけよぉ〜〜〜許してぇ〜〜〜」
体を起こして『いかづち』の耳に小さな声で
「ほら〜〜ちょっと目離すと『こんごう』って〜〜〜呼び捨ての仲だよぉ〜〜」
イタズラな垂れ目は挑戦的な光で,拳を振るわす妹を嗾ける
「ほら!!粉川はん!!どっかいたないか?」
まるで『こんごう』を無視の状態のまま
飛びつくように粉川の横に座った『いかづち』は手を握って
「ごめんな!!時間が余ったから....会いにきたんやけど...焦ってしまって」
鳩尾直撃で一度止まった呼吸を取り戻すように咳き込む粉川の背中をさすった
「びっくりさせないでよ『いかづち』ちゃん」
無事に護ったタンブラーからコーヒーを口に含み
困難になって乾いてしまった気道を潤しながら手を振って無事とゼスチャーした
そんな粉川の前に青服のボタンを胸の谷間ギリギリを見せつけるように外した『はるさめ』は
体を起こしながらも自分に対しての謝罪もない『あめ』姉妹を不愉快そうに見ていた『こんごう』と咳き込んでいる粉川を交互に見て
「あれ〜〜〜ひょっとして2人で良い雰囲気だったところ邪魔しちゃったぁ〜〜〜」
首を揺らし
嬉しそうな目でもう一度交互に見ると
「はずかちぃ〜〜〜ごめんねぇ〜〜『こんごう』ちゃ〜〜ん」と舌を出して見せた
「何もしてない!!」
体育座りに自分を立てた『こんごう』は赤くした顔のまま立ち上がると
「時間はあって無い見たいなものだ!!演習に備える!!」
そこまで怒鳴ると大股で走るように部屋から出ようとした
「『こんごう』?どうしたのまだ時間あるよ!!」
粉川の呼びかけに止まることなく足音も荒く出て行く
嵐のように訪れた『あめ』姉妹と入れ替わるように消え姿に,息を吹き返した粉川は眉を顰めたまま自分の隣にチョコンと座った『いかづち』に首を傾げてみせた
「また怒らせちゃったかな?せっかく仲直り出来たと思ったのになぁ....」
やるせない思いが困った表情で頭を掻いて参ったと手を挙げたが
「なんで...呼び捨てなの?」
通路に顔を向けたままの粉川の袖を引いた『いかづち』は俯いたままいつもとは違う小さな声で聞いた
「えっ?」
震える声色の『いかづち』に粉川は
「どうしたの?ひょっとしてどっかぶつけたの?『いかづち』ちゃん?」と顔を覗き込んだが鼻先スレスレで顔を上げて
「なんで!!『こんごう』って呼び捨てにしてるの!!わても呼び捨ててもらってええで!!...って事」
頬を赤く染めた顔は話し続けていないと爆発してしまいそうな胸を押さえたまま
「わても『いかづち』って呼んでぇな」
状況が良く飲み込めてないのか粉川は自分の前で赤くなっている『いかづち』の頭に手を置くと
「『いかづち』ちゃんはそのままの方が可愛いよ」
粉川的には相手を思った発言だったが
『いかずち』は思わず乗り出しそうになったが,けたたましいアラームが鳴った
「これより演習海域に入る!!総員!!」
艦内を響き渡る激しい金物を作り会わせた人口音の響きの中,口を形だけ動かし懸命に話しを続けようとする『いかづち』だが,声は届きようがない
大きなベルの発令に粉川は腕時計を見直すと
「意外と早かったな....」と立ち上がった
「演習終わったら飲もうね!!」
動く口を読心する事はできたが声は聞こえない中で粉川はカバンを抱えて走って行ってしまった
「ざんねぇん〜〜〜だから早く来ないとぉって言ったのに〜〜」
わざと息の届く程の位置に口を寄せ耳に語りかける『はるさめ』は,出遅れたという思いと撫でられた頭の感触に言えない感情を大きくさせた『いかづち』に
「『こんごう』ちゃん一歩リ〜〜ド,がんばろぉ〜〜はるちゃんがついてるからぁ〜〜」
どこまで本気かワカラナイ怪しい光の瞳は
優しさを全面に出して微笑みながらもどこまでも妹を本気へと駆り立てていた
エンタシスを感じさせる黒の銅管が溢れる湿った部屋の中で
彼女は祈っていた
黒い髪,波間にうねる海藻のような動きのあるロングヘアは狭く細い通路の端にある部屋で目をつぶったまま海の音を聞いている
大きな水の固まりは何度も艦体を揺らし
そのたびにニブイ圧力が低音のハーモニーを奏でる
その音に不似合いな広東語が断続的に...音感に添わない音を並べている
「エィメンなる者よ」
真っ白な肌
薄墨の唇からはおよそ思いつかない嗄れた声
瞳の中に赤と青の輝き,それだけが無彩色で落ち沈んだこの部屋に彩りを与えていえ
うっすらと誰にみせるでもない微笑みの中で手を重ねて跪く
「古より力やどし魂達の元に祝福あらんことを,今日この日の試練のために働く水面の魂に平安がありますように」
小さく纏められた祭壇の中,何も飾られない空白にむかい薄く開いた目は続ける
「我ら魂の下,暗き足もとを照らしたまえ...迷いの子らに導きを与えたまえ,恩優しき貴方の御もとに導かれる事を願う」
重ねていた手を解き
光る指先で中空に四文字語を書く
「おお...貴方の御子,主の名において祈りの全てが行われますように,エィメン(そうなりますように)」
小さな声の祈りは深くニブイ水の坩堝の中に沈むように消されていった
カセイウラバナダイアル〜〜ひゅうがを見よう編〜〜
とはいえ
現在日本をとりまく状況はかなりヤバイです....
ヒボシの家き朝霞駐屯地に近いので実はパック3の搬送を深夜に見に行きました
列を成して警戒警備の中で運び込まれた迎撃ミサイル
大きなものである事にびっくりしながらも
これが私達を護ってくれるのか?どうなのか?
今はただ祈るしかありません
今日も駐屯地の近くを通ったのですが
演習場の中程にすでにupの状態で配備された姿
その周りを24時間体勢で警備している自衛隊のみなさん
桜の季節になり
あのアタリは多くの桜で花見もできる場所なのですが...
今はそんな事にうつつを向かしている場合ではないようです
ご苦労様ですが,どうかお願いしますとしか言いようがありません
そんな中にあった横須賀基地が来る11日にひゅうがの一般公開をするそうです
実際はこんな状況の日本ですから
それこそ取り消しになってしまうかも知れませんが
予定通りであるのならヒボシは新しいヘリ空母を見てこようとおもいます
いっぱい写真もとってこれたらとも
何事もなく...できるだけ平和的な解決がなされることをいのりつつ
国防が今,岐路に立たされている事を実感して参ります
それでは...また
またココで会えることを信じて....