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第四話 秋の波濤

一章節,四話転結という体勢で話をサイクルさせてますが

なかなかボリュームが決まりません。難しいものですが駆け出し素人作家としてがんばってまとめていく方向でwww頑張ります〜〜


「聞いたわよ、大騒ぎだったようね」


帽振れの指示の下

横須賀を出る護衛艦達の中

『こんごう』のところにやってきたのは『しまかぜ』だった


短く切りそろえたショートボブの髪、年上の女らしい柔らかい笑みが、厳めしく自分の眉間に亀裂をはしらせたままの妹の肩を叩く


太陽はもう海影に消え

水面にだけ光の輪を残す。美しい景色に目を落とした『こんごう』は姉の優しい気遣いに少しばかり申し訳なさそうに目をゆるませて無言で頷ずいた

気は強い

だけどひたすらに不器用な妹は初めてであった「人」はおろか魂の仲間達ともうまいコミニュケーションがとれていなかった

それでも誕生して十年近くたつ今は、それなりにやってきていたが


「もうちょこっと手加減してあげないと粉川さん顔から壊れちゃうわよ」


やれているというよりも、なんとかやって見せているの『こんごう』

予想外の存在の予想外の行動に血の気がかつてのぶっきらぼう一直線だった彼女に戻ってしまってもしかたのない事と知りつつも『しまかぜ』は注意を促した


返事はなくただ頷く彼女の隣で

黙り込んだの顔を覗き込みながら続けた


「戸惑ってるんでょ?」

「何を?」


『しまかぜ』の不意の質問、意味がわからないと即答しながら顔を姉にむける


「別に、何に戸惑うの?」


「粉川さんに」

『こんごう』は否定と大きく首を振った

見透かされた思い、初めての出来事に自分が動転して、いつも注意される

「すくに手を挙げない」という約束を破り、誤りを隠そうとした行為に、気まずそうな顔がまた膝に向かって伏せられる


「戸惑ってなんかいない、私は…あれが…」

「何かわからないから、つい?そうよね」

後部20ミリ機関砲

近代軍艦のゴールキーパーとして多くの船にみられる汎用兵器の隣は

海に身を沈づめて行く太陽の燐光を見る特等席

『しまかぜ』は『こんごう』の手を引いて二人でそこに座ると、変わらない笑顔で


「良いのよ『こんごう』貴女だけが戸惑ってる訳じゃないから。みんなも戸惑ってるのよ。こんな事存在する記録を見る限り50年はなかったもの、私たちを見る事の出来る人の存在なんて」

『こんごう』は姉の膝の上に置かれた古いファイルを見ると


「日記に関係あるんですか?」と訪ねた


『しまかぜ』は抱えていたファイルを手でなぞりながら、感慨深い目で

潮風の下で使用さたであろうファイルの表紙をなぞった

中身の紙もかなり傷んでいる様子の音が響く中で


「日記ね…『あまつかぜ』姉さんの日記が残っていれば50年じゃ無かったかもしれないけど、「帝国海軍」が死滅してからと考えれば、奇跡に近い出会いなのかもしれない」


遠い瞳が離れてゆく横須賀の景色を見つめながら、慈しむようにファイルを抱きしめる

押し黙ったままの『こんごう』を横に『しまかぜ』は続けた


「50年、この間私たち(護衛艦)と人(海上自衛官)を繋ぐ糸は切れてしまって、お互い近くに、うんう同じ場所にいるのに「空気」のようにただ「居るだけ存在」になってしまってた」

「でも元々「艦魂」を見られる人は少ないのでしょ」

「そうね」


元来、船の魂は人を見ることが出来てもその生活に関わる事は絶対になかった

同じ世界に存在していても、同じ場所に仕事得ていても

存在の違いから関わる事はなく、ただ同じ場所に共存しているというだけの存在だった


だけど

船の役割は人の歩む時間の流れの中で大きく変わってきていた

大量の荷物を運ぶ者

多くの客を運び、共に喜びを得る者

一対一の関係はすでに無くなり、多くの者、物を乗せる事が普通となり

荒海を越えね未知なる土地を求める人達と共に冒険をする船は今の世には居なくなった


そしてそれらの中でもっとも不必要で、もっとも絶大な力を持つ者達が産まれた


「戦艦」


国家存亡のために海を戦う船の魂達

木造帆船の時代から続く「戦いの血脈」が行き着いた形として


それは生死の切っ先に立ち会う魂と「人」を再開させた


太平洋を巡る戦いの記録

多くの戦船達が人ともに戦った記録を残していたハズだった

だが、全ては敗北により喪失され、五十余の時に流れ忘れ去られた


大切な出来事だった


二人とも顔を見合わすような事はしなかった

ただ、水面の闇に姿を消して行く燐光と代わりに空に現れる星を見ながら会話した



「艦魂を見る事の出来る者は少ない、というよりも「帝国海軍」と共に船の「魂」を見られる人も死滅したのかもしれないと私は思ってたのよ。昨日、粉川さんに会うまで」



今ならの最初に聞かれた「戸惑っている?」という意味が『こんごう』にもわかった

自分が産まれた時

それ以前から「人」との関わりは断絶していた

共に何かをそういう意思の疎通などは一切無く、なのに国家の防人であり、仕事は相手を撃ち殺すという苛烈な世界で

自分は「護衛艦」で、向こうは「人」で「兵器と兵士」という殺伐とした関係に何故自分たちのような船を守る魂が必要なのかと


「きっとね、みんな会いたかったのよ「人」に『むらさめ』も『いかづち』も、『さわぎり』に『しらね』も、『しらね』が貴女のところに来るなんてどのくらいぶり?そのぐらいに、この出会いは奇跡なのよ、きっと」

「奇跡…」


まだ『しまかぜ』が語り求めているものには遠いらしいが、人を恐れたり存在に動揺する理由はなかった

みんな同じように初めて出会う人という存在に驚いている事を聞かされた『こんごう』は「奇跡」という言葉を信じた

五十年ぶりの出来事に護衛艦達には驚きと動揺は当然のように起こったが、悪い事ではないという事実

一人頷く姿の妹に『しまかぜ』手を重ねては頼んだ


「だから、粉川さんの制裁は手を抜いて」

顔には笑み

本気の懇願ではなく楽しく行こうと促している


解らぬ者に対する警戒心

だけど危害を加えようと自分に乗り込んできたわけではない人

目を点にして、困ったと眉を下げる『こんごう』の顔に『しまかぜ』はただ優しくほほえんで返事を待っている


「わかった、了解」

慌てふためい上で犯した失敗劇を許すという姉の心配りに『こんごう』は居心地悪そうに返事した

「責めてるわけじゃないから、ケンカもコミュニケーションだけど本気の貴女の鉄拳じゃ『むらさめ』の言いようじゃないけど鹿児島までもたないわよ、彼」


攻撃艦として攻撃力を特化した者である『こんごう』は魂にもその特性が持たされていた

だが

同時に戦いにおける全てをコントロールする優秀な指揮艦である事も事実

そちらを魂の自分にも実戦すれば、簡単に手を挙げる事などあり得ないこよね、と

前を歩いてきたDDGの姉である『しまかぜ』は言う

優しい忠告に赤面する『こんごう』は


「わっ、わかった」


小首を振りながら顔をふせ

自分の馬鹿力を窘められ耳まで真っ赤になったした『こんごう』は立ち上がって顔を横須賀に、離れて行く町を見た


「まだ、手を振ってる?」

「うん」


立ち上がった妹に並び『しまかぜ』も目を細めて遠ざかり小さな煌めきの粒となってゆく横須賀を見た

「いつも、最後まで送ってくれているね」

「うん」


顔を合わせた二人『しまかぜ』は『こんごう』の肩を叩いた

「大丈夫よ!きっとうまくやっていける」

「うん」

そういうともう一度町にむかって敬礼した

「無事に行って参ります」と






朝の課業が終わった時間に間宮は艦橋にて船務長の「和田」と話しをしていた

他の艦に比べると巨大な艦橋を持っている護衛艦『こんごう』

だが中身は最新鋭の機器の多くに占拠されており、それ程に拾いスペースを有しているわけでもない

操艦を部下に任せた間宮は双眼鏡を片手に、もう片側の手には報告書を見つめていた


「以外と経歴は隠されていませんでしたね」


熱いコーヒーを入れたタンブラーを持ち、間宮との会話のための一口をすすった和田は海原をみわたしながら伝えた

二人の手元には「粉川一等海尉」のいわゆる履歴書がファイルに挟まれる形で置かれていた


「すまんな、パソコンを使うと色々と面倒事になるから」


昨日の朝から出港のギリギリまでの間、和田は間宮の依頼で「粉川」の経歴を調べていた

デリケートな問題だった

「イージス艦機密漏洩事件」から向こう船内のパソコンを使えば「何処で?何が?」というものはすべて基地に筒抜けになる


何もせず

「捜査官」を素通りさせた方が良いに決まってはいるが「えもしれぬ者」である粉川をそのまま乗船させるのは気味が悪い


間宮は切れ者だった


自分の知らぬ事があるのは「落ち度」にしか思えない

だから

昨日、自ら粉川の足止めのため食事に誘った

自らが足止め役をやる代わりに、和田に足で粉川の資料を集めさせていたのだ


「海軍一家だったのは意外でしたが、やはりそういう「コネ」でこの仕事を引き受けたのでしようか?」


双眼鏡を胸に下げ、和田から手渡されたコーヒーに口を付け間宮は集められた資料の中「粉川家」の欄を見ていた

「オレと一緒だな、オレのオヤジも「海上自衛官」オヤジのオヤジも「海上自衛官」…いや帝国海軍の士官で戦艦乗りだった」


手書きでしたためられた資料の中

粉川の父のところで手を止めて

「聞いたことのある名前だとおもったが、粉川准将の息子だったか」


粉川の経歴を調べるにあたり最初に出てきた父親の名前

すでに退官してはいるが、将官までに駆け上がった男の名前に間宮は目を細めた


「こう言ってはなんですが、あまり活躍された方でなかったので息子に「こうい仕事」が回されたのかも?」

和田は嫌味な笑いを浮かべた


親のコネで防衛大学に入る者。そういう者がいないとは言い切れない

ましてや「准将」の息子ならそれなりのパイプもあろうし

だがそういうものは「親の活躍」にも大きく左右される

准将が退官されれば当然「こういう仕事」にお鉢が回される可能性も高い

和田は笑みはそういう事を指摘していた


「そうかな?」


間宮は目の前で皮肉な笑みに太い眉を動かす和田を避けるように


「粉川准将はどちらかと言えば、清廉潔白な方だったと覚えているな僕は」


将官を得て活躍をする者、そういうものが絶対だという考えは間宮にはなかった

大口を叩き、国防談議を国内の企業体などにぶちまけ右よりな国防族と結託し、出世街道を歩む者もいる

この国は大戦以降平和過ぎる時間を過ごしている

それ故に組織には大なり小なりの腐敗があるし

その腐敗さえもを利用する切れ者も存在する


「とてもまじめな方だったと覚えてる」


清廉潔白というのはどこか間違った感じだが、間宮は自分が航海士だった時に、横須賀で海に出る事のなくなった自衛官としての余生を、若い士官達にむけ教鞭をふるっていた粉川准将の姿を何度か目にしていた

出世街道などに目もくれず、市ヶ谷の背広族に仲間入りする事もなく

ひたすらに基地にて士官を育成する仕事を続けた


間宮は直接関わった事はなかったが、その姿勢は見習いたいと思うところがあった


それに、息子がいたことを今日知った事にも感心を覚えていた

将官にまでなった男が自分の息子に出世への近道を用意していなかったこと

それどころか、こうやって調べる事でやっと彼の息子だった事を知ったという事実に、粉川が左遷でココにやってきたわけではないと確信できたというものだった


間宮は、そのまま家族構成記載の欄に指を走らせると

「粉川くん、御祖父も帝国海軍で戦艦乗り、本物の海軍一家だな」


「何か思うところがありますか?」


語る言葉の間に思案を巡らせる表情、和田は間宮との付き合いが長い

資料を見る目

紙面に走らせる指の感じから「何か」考えている事を察して耳を近づけた


「まあ、なんて言うか損な仕事だろ、身内の監視なんて」

「はい、あの歳ならこれからが出世街道に入る良い時期ですのに」

粉川は今「一等海尉」

この上である「三等海佐」になれば「護衛艦の艦長」にはなれなくとも「小型艦挺の長」にもなれる

ただ事務付の彼がそこを選ぶとは思えないが、市ヶ谷にしても待遇はだいぶんと向上する

なのに身内の監視という「特別で特殊な任務」についた

もちろんこの仕事が終わればなんらかの「昇級」が約束されているのかもしれないが

それにしても


「なんでそんな「歳」でこんな仕事をえらんだか?気になるんだよね」

和田も首をひねった

「内部捜査」そんな仕事をするのは頭ごなしに艦長を非難できる「年寄り」かまたは悪い意味「海上自衛隊」と縁遠い者であるのが普通だ

粉川の年齢では艦長のやり方に点数をつけるのは難しい


「幕僚長は「苦肉の策」と、捜査官の配置の発表に「年齢」は記載されませんから」

「それかな」


間宮は顔を上げて和田に笑って見せた

イージス艦の中身を「他人」に見せるぐらいならば「相互監視」の下に置く

嫌な役職をする者の年齢は関係ない

手配をしたという事が「政府」に届けばいいし、それで一時的にもマスコミを黙らせる事もできる

「海尉」という尉官「名称」なら世の中は納得しやすそうだった


手元の資料をまとめると和田に礼を言った

「助かったよ」

和田は艦橋から「艦上体育」をしている複数の部下達を見ながら聞いた


「それにしても甲板ですっころぶなんて」

呆れたように

「まったくだ今時珍しい海兵だな」

「それから何やら「独り言」が多いみたいだと部下が言ってました」

「この船じゃ渦中の人だから、みんなよく見てるな」


そういうと艦橋から空を見回した

昨日の雨からうって変わり青天の下を護衛艦隊は優雅に進んでいる

雲のない青い天は透き通りすぎて上空が寒くなっている事に気がつく


「鹿児島は寒いかな?」

「まだまだでしょう」


和田は彼の父親から譲られた双眼鏡で遠い海を見ながら


「粉川一尉どうしますか?」

粉川の扱いをそれとなく背中越しに聞いた


「通常通りでいいよ、悪いヤツじゃあなさそうだしな」

間宮は空を見ていた目線を下におろし微笑み

和田の肩を叩いた

「秋の波濤だな、警戒を怠らず首尾良く巡航してくれ」

「了解しました」


そういうと窓の下、船首のアタリを「何か探して歩く」粉川の姿をただ見つめた





「昨日はごめんなさい」


顔に湿布を貼った粉川は後部CIWS20ミリ機関砲の隣に立ち

海に描かれた船の波跡、引き波を見ていた『こんごう』を見つけるなり急にあやまった


凛とした姿勢

日本人の少女というには白すぎる肌に、栗色の髪と透き通る水色の瞳は

当然のことのように返事をしない

海風に揺れる栗色の髪だけが動き

彼女自身は微動だにしない

長い足、短めのプリーツスカートを揺らす姿はかたくなに背中を向けたままだ


「昨日は、色々と立て込んで」


あれこれし言い訳を並べても振り向いてくれる気配はない

覚悟を決めた粉川は『こんごう』の隣まで歩いていった

一日の内に二回の弾を食らった顔は潮風を受けると口の中まで痛むようで、何度も舌で傷をなめながら

それでも本気の覚悟を決めて

もう一発受けないと彼女の機嫌を直すのは不可能と理解して歩を進めた


横に並び


「反省してます。君の事、可愛くないなんて言ってごめんなさい!!」

直立の姿勢から深く頭を下ろすお辞儀の粉川に

「そんな事言ったか?」


振り向かない『こんごう』の顔

「目」が海の色と相まって深い青に見える

「えっと、それに近い事かな?」

やっとの対応に顔を上げた粉川だったが相手は見向きもしないままに、棘のある声が返る


「気にしていない、さっさっと失せろ」


なんともぶっきらぼうな対応、だがこれで「はいそうですか」と下がらない男は

「気にしてない!!じゃ仲直りはしようよ!!」

素早く握手と手を伸ばした

粉川は深刻な顔はすでに投棄、腫れ上がった頬のまま笑みを浮かべて

「仲直りの握手しようよ」と声をあげるが『こんごう』はやはり顔を向けず、むしろいらだつように


「気にはしてない…だからもうほっといてくれ」


昨日あったほどの苛立ちは無くとも、やはり心の内にのこる響き

粉川は既に耐性が出来上がっていた

何度、どつかれても引き下がらないという

回り込むように前に立つと、しかめっ面の『こんごう』と顔をつきあわせて


「そんな、ほっとけって言い投げ?やっぱり「可愛いくない」って言葉気にしてるんでしょ」

「気にしてない!!」

素早い反抗に、素早い切り返し


「じゃ殴っていいよ」

怒鳴った『こんごう』の前、粉川はストンと座ると続けた


「1失礼、1パンチ、すっきりして許してよ」


真面目な目線が、まるで武士が責任をとるための介錯を待つように語るが

『こんごう』の方は引きつった顔のまま固まっていた


どこで混線した?と


目をぱちくりさせている彼女の前、粉川は覚悟を決めた目で大きく手を開くと


「さあ!!かかってこーーい!!トマホーク!!」

「馬鹿!!!私はトマホークなんて搭載していない!!」


手を広げた「バチコーイ」のポーズを取っている粉川についに『こんごう』は乗せられ顔を向けてしまった

「あれ?そうだったっけ?」

「貴様!!それでも一尉たる者か!!」

座ったままの粉川の首を締め上げた


「了解!!了解!!!理解しました!!!」

首を絞める手にタップしながら、雪崩のように崩れた堅い態度に和んだ事を確認した粉川は笑いながら答えた

手を離した『こんごう』は疲れていた

今までこんな事で疲れた事はなかった


まず人との関わりがなかったから、つねに縦横つながる姉妹達としか会話がなく

それも海自に必要な任務の話しぐらいしかなかったのに

突然現れた人は自分達魂の女におどろくどころか、無理矢理にでも仲間になろうと押し込んでくるという始末に


「貴様、いっい何がしたいんだ?」

長い栗色の髪を振り乱した『こんごう』は額を抑えながら聞いた


「仲直り」


襟首の乱れを直しながら「当然」とばかりの返事


「なんで?」

うんざりと顔を背けながら


「なんで?いやあ、当然でしょ可愛い女の子と仲良くしたいのは「男」としての義務みたいなものだし」

「わけがわからん」

「わかんないかな〜〜〜そうだ!笑ってごらんよ!!きっと可愛いよ!」


やっと弾んだ会話に事に気をよくした粉川は立ち上がると一歩近づいた

「笑って!!ねっ!!」

「だから!!オマエ!!いったい何しに来たんだ?!」


『こんごう』はかなりびっくりして近づく粉川から距離をとった


空気の存在として

お互い触れる事もなく同じ空間にいるだけの者だったのに

粉川はあっけなく当たり前の事とその壁をやぶって来ている


「仲直りだよ!!しかしそれはもう終わったから今度はもっと「親密」になろうと」

「違う!!オマエ仕事は!!」


粉川は持ち歩いていた手提げカバンに手を突っ込み何か捜しながら

「前にも言ったしょ!君達と仲良くなる事!」

「違うわ!!馬鹿!!」

きょとんとした表情でとんでもなく場外れ的な返答をした粉川の顔を指さして『こんごう』は怒鳴った


「海上自衛官としての仕事だ!!」

デジタルカメラを取り出した粉川は同じ事を言った


「君たちと仲良くなるのが仕事なの」


絶句

言葉をなくし、硬直したままの『こんごう』をよそに粉川は肩を並べて彼女の腰に手を回すと自分体に引き寄せて

「ほら!!ココ見て写すよ」

右手に持ったカメラのレンズ指さした

「何?」

まったく対応のきかない『こんごう』は粉川にされるまま写真に収まってしまった

「何…」

呆然としてしまった


「仲良くやってこうね!!」


取った写真を見せながら粉川は笑顔で言う

そこには

初めて男とのツーショットに戸惑いの顔のまま写っている自分

「もう一枚いっとこう!!今度こそ笑ってね!!」

「かえせ!!!」

あまりの早さに呆けたが

取られた写真の自分に顔を真っ赤にした『こんごう』はカメラを取り上げようとした

その時


複数の光は集まり姿を変えて舞い降りた

「ひゃっほ〜〜い!!ええもんもっとりますなぁ!粉川はん!!」

常備服のコック姿は『いかづち』

「私たちも撮って欲しいわ」

waveの正装に見を包んだ『しまかぜ』

「あたいも撮って!!」

その足もとに青の作業服の手足をたくさん折って着ている『さわぎり』

「集合でいこうぜ!!」

海からの肌寒い風にもなんのその海軍セーラーの『むらさめ』


護衛艦隊の面子


「もちろん!!みんなで撮ろう!!」


有無を言わさぬ流れの中、すでに自分の反抗は何処吹く風と化し呆然としている『こんごう』の手を『しまかぜ』が引く

「一緒に」

どうしたらと悩んだ顔の『こんごう』はデジカメに大興奮の他の者達を見ながら小声で聞いた

「これも奇跡?」

「そう、ささやか奇跡」

ショートボブの髪を揺らし彼女は微笑む



「みんな笑って!!!」


これから始まる試練の波を共に渡って行くメンバー達

だけど

今日はうららかな日

粉川の撮った集合写真は「艦魂」達にとって新しい絆となる

ひとり恥ずかしそうにそっぽ向いた『こんごう』も配られた写真は大切に部屋に飾った

火星カセイウラバナダイアル


コンバンワヒボシです

「艦魂同盟」ではウラチャンネルが流行しているようですが

こちら「艦魂物語」ではまだネタがありません

こまったものです


ネタよりも

日々の少しの事とか

小説にまつわるet ceteraなどを中心にやって行きたいなぁと、考えているヒボシでした


ウラバナダイアル第一話(混迷の夜明け編)

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