第二十話 姉の希望
佐世保上陸一日目がやっと終わりました
長い!!長いよぉぉぉ!!
なんできっちりまとめられないのよ
泣きそうに成りながらも自分の情熱を信じて書き続けてます。ヘタレなヒボシに応援よろしくですぅ〜〜〜
司令室となりの会議室を出た間宮は軽めの溜息をついたが、自分が考えていたほどのダメージはなかった
むしろ心が躍ってしまいそうな気持ちになっていた
廊下から見る景色は夕日を無くしすっかり暗く、緩やかな風と静かな波の音
軍港を彩る単色の光が波間に揺れる姿を見る事で心を穏やかになる
根っからの海の男である自分達を思い返しながら、息の詰まった調書取りを思い出して和田は肩を鳴らすと
「結局、書類に書くだけ書いてきましたね」
ドアを後ろ手で締めながら背伸びをして見せた
粉川が会議室を後にしてから一時間半程、当初予定していた会議の自国を大幅に過ぎた時間だった
「それが今泉の仕事だからな」
超過した時間の中、調査部の切り込み隊員でもある今泉は、狂われた調子のまま
怒りを万年筆の先に集約させていたのか、台紙の紙を引き裂かんばかりの筆圧でまとめの調書を手短にして最初から変わらぬ質問をしながら書き綴ると足早に帰って行った
あの細い背中が刺々しく、ロボットのようにぎくしゃくした動きを見せながら帰って行く姿は、思わず吹き出しそうにもなる光景だった
一堂に会していた宗像もしかりで、男臭い太い顎をゆるまぬようにさすりながらも「気の毒そう」に見つめ口元を抑えていた
それにしてもと、和田に続き背伸びをした間宮
現場で働く者と,事務方ではいつの時代になっても意見のすりあわせは難しいものだが
今泉の壊れたレコードの様なお手本的「説教」聞く耳も疲れるもんだと苦笑いをして
「まあ、問題があればまた来てくれるんじゃないかな」
結局手落ちの状態で帰った相手を思い、和田と顔を見合わせて笑った
「不審船事件」という現在日本ではもっともホットな事件であり
もっともクールな対応を要される事件の中
当事者である艦長間宮に下る「罰」は何なのか?
目の前から消えた犯人のために
「目に見える責任」をとれという不条理の中
冷たい廊下に立たされるような圧迫感で、もっと顔色を悪くしていてもいいところだが
間宮の口調は軽かった
理由はそれほどに重要視された会議の半分をぶち壊した粉川と今泉のケンカ
「今泉、参ってたな」
司令監部を離れたところで間宮は片方の眉をおもしろおかしく上げて
いつもの余裕をもった静かな笑みで言った
お堅い書類審査のような時間の大半をぶち壊し
現場に責任はないと言い捨てた粉川の姿に、あの冷徹で知られた調査員の今泉がキレたのは思いだしても笑い話にしかならなかった
「良い薬ですよ、現場に出たこともないやつに根掘り葉掘り有ること無いこと「原因」を探されるのはただの嫌がらせにしかおもえませんよ!」
制帽を頭にもどし
「そうだなぁ」
「艦に戻りますか?」
和田も大きく背を伸ばすと街路樹の向こうに停泊した,こんごうの方にむかって歩き出した
「しかし、粉川くんには驚いたね」
グラウンドに近づく細道を通りながら、忘れられない衝撃の問答を思いだした間宮は
今日の出来事は苦痛ではなく楽しい栄華を見たような気持ちになっていた
どうだ?と和田を見る
「あんな暑苦しい男、久しぶりに見ましたよ」
そう言うだろうと期待していた顔はうなずきながら
「和田船務士に言われるんじゃ、たいがいだな」
まったくな返答だった
イージス艦こんごうに置いて一番熱い男を自負していただろう和田をして「暑苦しい」とまで言われた粉川
もともと「イージス艦機密漏洩事件」を期に船に乗船して彼を見る船員、隊員の目は今泉と同じ背広組に対する冷たい視線にも近かった
それもそうだ「相互監視」という名目を持った「情報部」の職員、ともすれば自分達の小さな不手際を誇大広告のように言いつけられるのではと顔に苛立ちも募りそうなもの
良い目で見られるわけ絶対になく
それ故に、艦内での冷遇から今泉と歩調を会わせた意見を出されても不思議ではなかったハズ
なのに
この
粉川というのがあまりにも変わり者過ぎた
乗艦当日から甲板で一人すっころぶという珍事
この程度の事なら内勤務の人間だから仕方ないか?ともおもえるものだが
この後を次から次
調べたところ
元々海自の士官だったようで海での勤務も十分にしているから船酔いなどは一切心配ないのだが
二日に一度の頻度で「船」にぶつかっているのか?と思うような怪我をする
そんなおっちょこちょいな彼だが
「不審船事件」では毅然とした態度で「ミサイル攻撃の許可」を手順通りにと激した
その態度は「防衛庁」の顔を立てろ!!という指示ではなく
堂々と「撃ちましょう」と言っているようにも聞こえた
間宮は
誰に言う事でもなかったが「ミサイル攻撃」の是非については政治的思案を持っていた
あの時間
残ったタイムリミットで相手を確実に沈黙させる方法があるとするなら、それしか手はなかったが
許可なく撃つつもりなどもサラサラなかった
ギリギリの状態で防衛庁がどうでるか?という自己的な賭けと
もう一つ
自分を守るための賭けをしていた
それは「ミサイル攻撃が不許可ならば一切の艦砲はしない」
嵐の波間で艦砲
確実に相手を仕留める事が出来る方法を選べず相手に損傷を与えたという程度の事で「国防という意識」を満足させてしてしまう事がイヤだっというのもある
そして
もう一つに無駄な情報を増やしたくなかったというものがあった
あそこで艦砲して運が良ければ「不審船」を停船させる事ができたかもしれない
だが
止まりながらも領海を越えたところで「自沈」されたのならば
証拠の提示問題で「赤の国」と揉めたうえに,こんどは「弾の無駄遣い」とマスコミに非難され,いよいよ海上自衛隊の立場を悪くするための無駄な情報を増やしていただろう
ミサイルを
撃てないならば
撃たないという意志を貫いた
逃げた船の処遇に関しては
逃げた方角にある領海の国に対しての窓口を開く方が得策なのでは?とまで考えていた
日の落ちた港の空を見上げた
嵐の日には一切見られなかった星
「静かだな」
それでも考えは机上の空論なのかもしれない
星をみながら
自分の思案通りに行く事などないとわかっていても「抵抗」した事を、誤ったとは思いたくなかった
だから今泉に自分の考えを主張する事はなかった
というか今日は粉川にうまく守られた形になったとほくそ笑んだ
「艦長?あれ」
深く考えの中に没頭していた間宮に先を歩いていた和田は、グラウンドを走る人影を指さした
「粉川くん?」
それはスーツ姿のまま黙々と走る姿
「何してるのかな?」
「さあ?」
間宮と和田はお互い顔を見合わせた
粉川が走っているという事は確認できたのだが、何でそんな事になっていかがわからない
だが粉川の姿に少なからず騒ぎが起こっている事にきがついた
佐世保基地のグラウンドは入港した護衛艦達が並ぶバースに近い、そのせいで各艦の隊員達が走る粉川の姿を見ている
当直で上陸しなかった者達も走る粉川の姿を眺めている
間宮は粉川に少しの興味がわいていた
「聞くしかないな」
そう言うと
帽子を脱いで和田に手渡し走っていった
「何してるの?」
横に併走して間宮は彼がかなりの時間を走っていた事と
またも顔に怪我を負っているのを見て吹き出しそうになりながら聞いた
「走ってるんです!」
「見ればわかるよ」
間宮は粉川が意外と鍛えられた呼吸をしている事に気がついた
かなり走っていると思われるのに乱れない
「何で走っているかを知りたいんだけど」
左頬顎下から赤く腫らした顔が走ることに支障のない程度で間宮に向く
「今回の事件の責任とって…」
間宮は目が点になった
なんでそこまで自己満足的なと瞬時に思ったが顔に出すのは控え
「なんでそこまでするの?」
自己満足でただひたすら走る事などなかなか出来ないし
粉川は先ほど会議室で見たように「熱い男」だ、計算してそんな事をやっているとは思えなかった
「艦艇ばかりがイタイ思いして、自分たちがなんの反省もなく艦にのるなんて事、僕には許せないから」
不器用な言葉の意味
それが間宮に通じる言葉だっかは微妙だが
粉川の頭の中には
人には見ることが出来なくても確かに船に宿る魂の「女の子」達の姿と,その苦しみだけが今は映っていた
『こんごう』『しまかぜ』『むらさめ』『いかづち』『さわぎり』そして
海保の子達『りゅうきゅう』『はやと』『おおすみ』『あかいし』
みんな苦しんでいた事を知った今、自分達だけがのうのうとする事などできなかったし
心に残ったモヤモヤを消したかった
顔を上げ
煉瓦倉庫を見ると「艦魂」達が住む寄宿舎を睨んだ
誰に言うでなく
走るべき自分の道を見て「悲しいハズの思い」を「責務」と「人」は「責任」をとらぬと罵倒した『くらま』の姿を思い浮かべて
「絶対!!走りきってやるからな!!」
そういうと間宮を無視して速度を上げた
会食の終わった後『しまかぜ』は『くらま』の部屋にいた
執務室の隣
煉瓦倉庫の三階は会議室やら資料室やらと「艦魂」の住む領域はないが唯一『くらま』だけが居を構えていた
部屋は執務室と同じようにシンプルに纏められている壁の一方は
クイーンサイズのベッドと(『くらま』は身長182センチなので通常サイズだと足が出てしまって寝られない)間接照明を一つ
ベッドの横には小さな書棚兼ローボード
対する壁側に小さめのテーブルとイスが二つ
「ワインでいいか?」
自室に戻って初めて制服の襟を弛めた『くらま』は部屋の出入り口に並べられた木製のワインーセラーから口当たりの甘そうなものを一本取り出した
「カリフォルニア・エサー・ヴィニヤード、白だ。『リーバ』が良く届けてくれる」
「『リーバ』?」
制服の上着を脱いだ『しまかぜ』は聞き慣れない名前に首を傾げた
「隣に鎮座している強襲揚陸艦の『エセックス』だ。自分の事は『リーバ』と」
日本の艦魂達にも,あだ名のようなものは有れども自分に愛称を付けたりはしないが、アメリカ艦艇の妖精(艦魂)達は割と簡単に自分たちに愛称を付けていて、そう呼んで欲しいというのは多い
「ああ、彼女ココにも来るんだ」
『しまかぜ』は優しい笑みの中に含みを持った返事をした
「回航からココに戻って来るたびに土産を持ってきてくれる。それだけだ」
無愛想な『くらま』の返事に『しまかぜ』は口元をおさえて笑った
「彼女、貴女の事好きなんでしょ。もっと良くしてあげればいいじゃない」
グラスにワインを注ぐ
優雅な仕草の中で
「軍務と基地の関係上よく合いはするが、それ以上の感情はない」
素っ気のない声、港を同じくする同盟国の艦のちょっとの要望は日中蹴ってし叶えない『くらま』は夜の時間の駆け引きに彼女の名前を使ったが、『しまかぜ』相手に無駄な洒落だっと息をつくと
グラスを渡して対面のイスに腰掛けた
「回航ご苦労だった『しまかぜ』」
「ありがと」
グラスを持っ手とは別に『くらま』の指先は『しまかぜ』の頬に近い髪をゆっくりと撫でた
「明るいな、苦労続きだったのに何か良いことでもあったか?」
小さなテーブルを挟んだ二人はお互いの表情を確かめ合えるほど距離をさらに詰めていた
「あったわ。「人」に会えた」
『しまかぜ』の頬に降りていた『くらま』の手が止まった
顔には厳めしさを残したまま
「そんなことが良い事なのか?」
「おおよそ五十年ぶりの事なのよ」
「それだけの事だ」
「人」の存在に『くらま』は真新しい反応は示さなかった
五十年ぶりと言われれば確かにスゴイ事なのだが,彼女はそれが自分たちにとって「良い事」とは思えていなかった
そんな態度の『くらま』の手を『しまかぜ』が握る
「「希望」を見つけたのよ」
頬に寄せた『くらま』の手を自分に強く引く
「『しまかぜ』いまさら「人」に出会えたぐらいで何も変わる事などない。今回の事件もそうだ」
『くらま』はこの手の事件がけして少ない事ではなく
そして「人」が事件を解決出来ずに終わっている事を日常的に見ていた
ココ何年かの間
佐世保の近海から舞鶴に至る「日本海」では立て続けに事件は起こっていた
去年は例の「赤の眷属国」である独裁国家から「弾道ミサイル」を撃たれた
いち早くそれを察知したイージス艦『みょうこう』は軌道を捉えていたが
捉えただけだった
何が出来た訳でもない
「海に落ちて終わり」
お笑い草のような回答
『みょうこう』は見えすぎる目で愛する日本に向かって飛ぶミサイルを見続ける事しか出来なかった
その日、悔しくて『みょうこう』は泣き崩れた。最新鋭艦の自分の存在の意味を見失う程に
なのに「人」は
何も出来なくても「被害」がなければ「国防」は成功という理論を振りかざした
だから、自分達と対面できる「人」が居たとしても何か助けになるなど塵ほどにも思っていなかった
「人」に何かを変える事は出来ないだけれど自分達が産まれてきた意味が変わる事もない以上、そんな状況にも心を強くして生きねばならないと
それが護衛艦に宿った艦魂の宿命だと『くらま』は結論づけていた
「確かに「人」と「艦魂」を分けて考えていた今までのままなら何も変わらないかも知れない」
ワインで蒸気した頬に『くらま』の手を押し付けたまま真剣な眼差しは続けた
「魂の引き継ぎは私達だけでは出来なかった。どうしてだと思う?」
それは『こんごう』誕生以前からの問題だった
戦艦の名前ほどではないが「海上自衛隊」は発足以来,艦艇名に「帝国海軍」からの古の名を使ってきている艦は多い
なのに誰も魂を引き継げない
「魂の引き継ぎ?まだそんな事があると考えていたのか?」
『くらま』にとって余迷い子とのような台詞に聞こえたのだろう
いぶかしく顔を伏せ自嘲気味に歯を見せると
「よせよ『しまかぜ』まさか、それには「人」が必要だっとか言うのか?」
下からのぞき込み睨む目、『しまかぜ』はグラス片手にひるむことなく
「そうよ。きっとそうなのよ『あまつかぜ』姉さんが言っていた事は正しかったのよ」
掴まれていた手を引き、ワインを一気に飲み干した『くらま』は態度を変えることはなかった
「『しまかぜ』今更『あまつかぜ』の残した言葉に惑わされるな」
立ち上がった『くらま』は自分のグラスにワインを注ぎながら背中で言った
「魂の受け継ぎに引き継ぎなどありわしない。そんな事はもう忘れろ!私達は私達でいいじゃないか」
言い捨てた言葉ではあったが決して強い否定をしているようには見えなかった
背中を向けたままの『くらま』だったが、自分達の前に立っていた姉が探していたもの
それが心を大きく支配していた時代を知っているからこその、無理をしてをの拒否反応
自分たちが断絶の向こうに出来上がった「強き帝国海軍」の末裔ではなく別物の存在である事をまだ認めたくもないという虚勢は
悲しい反抗のようにも見えた
背中の相方に『しまかぜ』は聞くも苦痛を現されているにも関わらず続けた
「『くらま』貴女だって「帝国海軍」の栄光を忘れたくないからこそココで「修練」を怠らぬ魂を育てているのでしょ!だったら聞いて、そして信じてよ」
恋人の懇願
弛めていた自分の制服。詰め襟に触れた
帝国海軍司令官の黒の詰め襟
栄えある艦魂たちの姿を、今背負わなければならない自分達
「間違えるなよ。かつての栄光の元、志高き国防の魂としてありたい。心意気を残したいと思っているだけだ」
「残せるわ、きっと。繋ぐ事だってきっとできると思うのよ!!」
立ち上がってしまっていた『くらま』の腕をとり『しまかぜ』はイスに導いた
「今回の事件でね私「不審船」の艦魂を見たわ」
「不審船の?」
カラになったグラスをお互い注ぎ足す
不審船の艦魂、この場合は「船魂」というのが正しいが『しまかぜ』はとりあえず話しを進めた
「自分をあんな風に扱う者たちの中にいて、それでも「自殺」はしなかった」
『しまかぜ』は耳に残っていた言葉を思いだしていた
「私を殺して」
それは『あまつかぜ』の最後に似ていた
「『あまつかぜ』姉さんは、ミサイル攻撃の実験標的になったのに「自殺」はしなかった。それは「自殺」すると魂は引き継げなくなるからと『メイコム』から聞いていたからよ。その証拠を見たわ、あの船の魂もどんな非道な働きに徒事させられていても自殺はせず、自然の流れの中で殺される事を願ったのだから」
硬い態度を崩さず『くらま』は煽るようにワインを飲む前
『しまかぜ』胸の前に手を合わせ、まるで祈るように言葉を紡ぐ
「そして『あまつかぜ』ねえさんも探せなかった最後の引っかかりである物が解ったの、私達だけでは届かなかったもう一つの壁を打ち破るためには「人」と手を繋ぐことが必要だと気がついたの、今度こそ魂を引き継ぐことが出来るかもしれない」
懸命に説明をする瞳に『くらま』は申し訳ない事と思いながらも切り返した
「『しまかぜ』、『あまつかぜ』を撃った事は今でも重荷になっているのか?」
『くらま』の静かに自分を見る目。言葉に『しまかぜ』は息を呑んだ
ミサイル護衛艦として姉を撃った
「ち、違うわ」
『しまかぜ』は目を閉じた
胸が締め付けられる思いが蘇る
姉を撃った日の事を思いだしたから、凪いだ静かな海に全ての武装をはずした姉は囚人のように白のラインで線引きされた船体の上に立っていた
風は生ぬるく冷たくもない
気味の悪い日と覚えているのは、自分の心にかかった複雑な思いを反映していたからだろう
第三次BM計画のミサイル護衛艦であった『しまかぜ』は新しい兵装の試験も兼ねて姉を撃つという悲劇に立たされていた
だが、それをどうして回避ができるか?
艦魂は只の艦の魂だ、ミサイルを撃つことも止める事は出来ないのに
「撃たないで!!!!!」
「人」の決めるスケジュール通り時はやってきて
泣き叫ぶ『しまかぜ』の前
自分の目の前、手を広げ最後の時を迎え入れた姉の姿を忘れた事などなかった
「『しまかぜ』…」
『くらま』はイスから立ち、悲しい思い出に身を震わす彼女を抱きしめると髪を撫でて額に口づけた
「『あまつかぜ』の事も『メイコム』の言葉も忘れろ。私達にもその「死」は来る。受け入れるしかない、もし希望があるのなら『あまつかぜ』は何故私達にそれらを記録した「日記」を残さなかった?それが現実なんだ」
息がつまる思い、堪える事で言葉を絞り出せなくなった『しまかぜ』に『くらま』は優しい抱擁をした
「魂の受け継ぎなど、ただの寓話なんだ」
抱きしめられた胸の中で『しまかぜ』は首を振った
「ちがう、ねえさんには時間が足らなかった。確定できない漠然とした記録である「日記」は後を継ぐ私達に混乱しか与えないと思って残さなかった」
「『あまつかぜ』の探し当てた物が希望だったと、どうして言える?」
自分を諭そうとする言葉を否定する
「違うわ、姉さんは私達に「希望」を託したの」
『くらま』は、きつく自分の意志を継げた彼女の顔を右手ですくい上げると口づけた
ゆくっりと躊躇う口の奥に甘美なワインを流し込むように唇を塞ぎ舌を絡めて,逆らう言葉を絶ちきった
離される口に光る露
「忘れるんだ昔の事を探す事に意味などない。今を共に生きる事の方が大切だ、だから自分を傷つけるような事を探すのに没頭するのは止めろ」
『くらま』の手は『しまかぜ』の胸のボタンを解き
白い胸元に手を滑らせた
「やめて…」
服の中に入った手を、宝を護るように引きはがすと『しまかぜ』は体を離した
抵抗に『くらま』は逆らわなかった
静かな足取りで窓辺に向かいながら自分の手を離れた彼女は、外されたボタンの奥、自分の胸の飢えで輝くネックレスにかけられた指輪を見つめた
「三十年。限られた時間の中をお互いを慰め合いながら生きる事だけが救いだなんて思いたくないの」
三十年。それは護衛艦の寿命
これ以上に長いものは希だが、いずれもそこがリミットであり終焉の時間だ
『くらま』は何も言わずワインを注ぐと窓辺に立った『しまかぜ』の元に歩を進めた
「私は少しずつでも、必ず希望を探すと決めたの」
姉の託した、姉の希望
月の光が差し込む窓の前
『しまかぜ』はとびきりの微笑みで『くらま』を見た
「希望か…」
軍務の元、忠実に歩む『くらま』には雲を掴むような話しだったが最愛の彼女の言葉をこれ以上否定したくはなかったのか口を閉ざしグラスを渡した
「『くらま』見て」
窓際により『しまかぜ』の腰に手を回した『くらま』に細い指先は外をさした
「何してんの?アレ?」
寄宿舎の前から背伸びしてグラウンドの方を伺っていた『むらさめ』はスポブラ、スパッツという秋の夜長には寒すぎる姿で、となりで様子をうかがっている『いかづち』に聞いた
「走ってますな…」
目線の先
粉川を中心に間宮と和田,その他護衛艦隊の船員達が声をあげて走っている
「アホやなぁ」
『いかづち』は眼鏡をそっと触わると
「共に責任を取りたい」粉川の言葉を思い出して目頭を押さえて唇を噛んだ
本気だった彼の力走に景色が少しだけ滲む
「ほんまに、アホや…」
その隣『さわぎり』は姉の『あまぎり』にもたれかかったまま
「粉川さん…」
就寝近い時間なのに未だ制服姿の『こんごう』のとなり、ラウンジドレス風の寝間着を着た『ちょうかい』は首を傾げて姉に聞いた
「何してるのかな?」
走っている事はわかったが「何で今時分」という意味で
だがその問いに答えない姉は静かに手で胸を押さえた姿でグラウンドを見る
『こんごう』は粉川が言った言葉を思い出ていた
「自衛官はみんな悔しい思いをしている」
「何もできなかった事が悔しい、まだ心からあの船が消えない」
粉川の真剣な眼差しを思い出した
その想いで自分の肩に痛みを残すほどの本気をぶつけてきた彼の姿を見つめた
「間違わないで」
汗だくになり「公約」を果たそうとする粉川の姿
「バカ…」
『こんごう』は小さくつぶやいた
「後十周!!!!」
両手をガッツポーズのように挙げて気合いを入れる粉川の後ろ
護衛艦隊の隊員達の意気を上げ夜の空に気を響かせる
みな心に残った悔しさを吹き飛ばしたくて自主的に粉川の後を追っていた
窓辺からグラウンドを見つめる『しまかぜ』は自分の体を抱いたまま外を無言で見つめる『くらま』に言った
「「人」も変わってくれようとしてると思うの、だからこそ信じたいの」と
この夜
多くの艦魂は初めて自分たちを罰する「人」を見た
それは大きな変化となる、夜の小さな事件だった
カセイウラバナダイアル〜〜Vo20(結婚と恋愛とet cetera編)
いかづち 「ぎゃあああああああああ」
むらさめ 「うおおおおおおおおおお」
ヒボシ 「きゃあああああああ」
ヒボシ 「ってなんですか?いったいいきなり絶叫コーナー?」
いかづち 「いやいやいやいや、あんた恐ろしい事を」
むらさめ 「おいおいおい、百合疑惑肯定か?」
ヒボシ 「何が?」
むらさめ 「おいっ!しらばっくれるなよ上の!!司令と『しまかぜ』の描写はなんだ?」
いかづち 「本気で百合やったんやぁぁぁぁ」
ヒボシ 「いやいや、別にそんな事書いてないよwww」
むらさめ 「いや!!書いてる!!めっさ書いてる!!キスとかしてんぞ!!」
ヒボシ 「やれやれキスは挨拶ですよ」
いかづち 「うそや!!ベロ(舌)絡ますような濃厚な挨拶なんか見たことないわ!!」
むらさめ 「濃い、あの後はどうなったんだよ!!」
いかづち 「『むらさめ』それは考えたらイカン領域やで…」
ヒボシ 「おや〜〜『さわぎり』たんがいないな〜〜www」
いかづち 「アホぉぉ!!こんな過激なシーンに『さわぎり』はん連れてこれるかい!!」
むらさめ 「前回の粉川が結婚してた話しといい、何か凄くねーか?」
ヒボシ 「いやぁ普通でしょ、五十年も女しかいない生活してたら付き合いなんてそんなもんでしょ」
むらさめ 「おい…」
いかづち 「ふ〜〜そう言われればそうなんだけど、あの『しまかぜ』はんが、司令と付き合ってたなんて」
むらさめ 「『しらね』は知ってるのかな?」
ヒボシ 「知らないでしょ、これだって小説に書いたから発覚して後書きで君たちが知ったぐらいなんだから」
いかづち 「しかし、アイアン草薙wも言ってましたが艦魂小説の主人公は艦魂と結ばれるために独身である事が基本らしいやない?」
むらさめ 「粉川はあれか只の添え物か(爆)」
ヒボシ 「いやいや結ばれるのに既婚者はダメって事はないでしょ、むしろ経験豊富で」(ゴス!!殴られました)
むらさめ 「だまっとけ!!」
いかづち 「いいのかそれで…」
ヒボシ 「しかしだいぶん初期艦魂の設定を逸脱したからねぇ、そろそろ組合から首切りにあいそうで怖いですよ」
むらさめ 「元帥にあやまっとけ!!」
ヒボシ 「すいません、これからもチョコチョコ逸脱すると思いますが許してやってください」
いかづち 「しかしあれですな、艦魂物語はアダルトな部分が結構ありますね」
ヒボシ 「そりゃ、艦魂小説を書く先生の中で唯一女で。。。年寄りですから(悲)」
むらさめ 「ちっ!司令が私をお望みならなぁ!!私だって脱ぐわ!!」
いかづち 「アホ!!変なところで対抗するな!!」
ヒボシ 「でもさ女所帯の艦魂に恋愛はともかく「結婚」って概念は絶対にないでしょ」
むらさめ 「男と一緒になるってのは考えた事もねーな」
いかづち 「そもそも一緒になってどうするの?」
ヒボシ 「子孫作る」
いかづち 「…なんやそれ…」
ヒボシ 「結婚ってのは自分の人生を寄り添う者を決める事、恋愛とは違いその証明である「子」を作る事も含まれる。という事」
むらさめ 「わからん!!!」
ヒボシ 「うんヒボシも経験ないから、もういいや(投げやり)」
いかづち 「ところでお客様を呼ぼうはどーなった?」
ヒボシ 「決まりましたよ!!!大和様三姉妹でどうと!!」
むらさめ 「大物だな」
ヒボシ 「後は正式に打診するだけなのですが、今日はもう疲れたので明日にでもいたします」
むらさめ 「ちゃんと挨拶はしろよ!」
ヒボシ 「オーゲー。コッソリ「長門様」も来て頂けないかとも思ってますがとりあえず明日には打診します〜〜〜」
そんなこんなでウラバナダイヤル
ホント今週は辛かった〜〜〜〜
マジ死に至りそうでした…
それではまたココでお会いしましょ〜〜〜