第一話 鋼の女神
初めて「艦魂」を扱った小説を書きます。
火星明楽です
「海上自衛艦」を設定に現代風パラレルで書いていこうと思っております。
自衛艦隊の設定において艦艇名など実在するものが多数でますが全てこの小説内での物語としての存在です。
また年号などの特定はしません。
これは物語ですのでそのアタリは平にご容赦ください。
知識においても足りぬ点が多いと思いますが優しい目で見て下さい
助言等々などはありがたく受けたいと思っております
<要注意事項>
原初正しい艦魂設定を愛する方には不快な部分が多々ありますのでご注意下さい
誤って読んでしまったとしても一切の責任はとれません
この小説における「艦魂」は筆者である火星明楽が正しい設定とは別に諸説を織り交ぜて創作したものです。
またこの小説では、これ以降の章で艦魂そのもの「正体」探る部分が出てきます以降書かれる「艦魂」の設定は私火星明楽の個人史家としての研究の元に書かれております。
故にココで書かれるこの設定は私個人の物であるため他所で使うことを厳重に禁止します
(私の著作・権利とします)
理由としましては
個人レベルで調べられた「民俗学」を基本とした仮説で話しを構築しているため本来あるべき民俗学や考古学の発展の妨げとなってはいけない事、不必要な誤訳・誤解を世に広めてはいけないと考えているからであります
またこれから艦魂小説を書こうとされる方に無用な混乱をさせないための処置と理解してたください。
けして占有を目的としての禁止事項でない事をご理解ください
これはあくまでこの「艦魂物語」内での設定としての存在でありますから事実とは一切の関わりはなく、実在の民俗学にも考古学にも一切関わりはありません
あくまでこの小説内における仮説に基づいた設定である事をご理解ください
また
設定の作成に関わった「民俗学」等々の資料に関するご質問にはお答えできません
それらを元に誤解・誤訳を増やすことを望んではいないからです
色々と堅苦しい注意書きとなりましたが
純然に物語として楽しんで頂ける事を心から願います
艦魂物語,魂の軌跡〜こんごう〜
筆者
火星明楽
「なっとらん……」
彼女は不機嫌そうに船の甲板へ上がるラッタルの手すりに置いていた指を見た。
冷たい滴を伴い湿った手すり
少しずつなぞるようにぬぐいとりながら手を払うと上に向かう側に目を向けて小さな溜息を落とした。
年の頃10代後半。
すらりと伸びた美しい手足に栗色の髪の彼女は海上自衛官の制服をしっかりと着込み、澄みきった青い空を思わす目を持つ美しい顔をしかめていた。
機嫌が下降線にあるのは天気の悪のせいではない。
だが曇っているのは同じ、心の心境をよく現す空に目をくれながら何度目かのため息をこぼす
佐世保から出て、硫黄島にての演習を済ませたときに彼女の憂鬱は始まった。
本来なら休息を得るための帰港として横須賀の基地に止まるハズだったのが、長い休暇を続け体をだるくゆるませる程に船は出港の日をすでに何日か送らせていた
横須賀基地Y1バースに付けられたまま曇り空の下に構えた影を見せる艦
日本国の護りの亀として存在する艦艇達の中で
少女は酷く腹を立て
そして呆れていた
彼女が腹を立て、さらにこの基地に居続けになっている理由は
「イージス艦機密情報漏洩」
思いだした事件にモデルのように美しい足がラッタルを蹴飛ばした
音は狭い通路に軽く響き木霊する
苛立ちのまま上を見るのをやめ部屋に戻る道を歩くが、また足を返す
何度も続くこの動作、忙しく動いている隊員達の間を縫うように彼女は何度もこの通路を行き来していた
憂鬱の元である事件は先月発覚した
彼女達が硫黄島で重要な演習にまっすぐ打ち込んでいたさなかに起こった
幸いに海上自衛隊幕僚長の判断は速く、マスコミに蜂の巣を突かれる前に関係者の隔離はできたのだが
隠蔽にはいたらず、結果
「事情聴取」と公安部との「取引」が長引いていた
「士気は下がるばかり、仕官も出来損ないばかり」
口からでる言葉は「硬く」
およそ10代の女の子からでる言葉には遠かったが顔には誰よりも真剣さが伺えた
真面目に「自衛隊」の行く末を考えている少女は頭を振った
憂鬱を振り切るためか、何度も歩いた通路に行き場を無くしたのか彼女は歩を早め甲板に駆け上がった
栗色の髪を揺らして
息を切らすことなく一息に
外は静かな雨
濡れる事もかまわず船首に向かい走る
曳航されて「謹慎の身」になっているとはいえ甲板の上には作業の手を従来通り忙しく動かす「隊員」たちがいる
どの顔を無感情なまま、課された業務に打ち込むが、彼女の言うとおり覇気はない
男達は黙してただ仕事を続けているのだが
不可思議な事に
誰一人として少女に気を止めない、最新鋭のイージス艦にいる美しい少女の姿に目もくれぬほど沈痛なのか?
だが少女もまたそんな事に気を止める様子もない。男達の間を軽やかな足取りですり抜けてゆくとまっしぐらに船首のそれも一番の舳先に立った
見渡す港に手をかざしてみる
桟橋から向こう
雨は勢いはなく、ただゆっくりと町を湿らせて行く程度の中
潮の匂いと雨の甘い香りの中
やはりでるのは溜息ばかりだった
「申し訳ありません、私には……見えないのです」
誰に言うでなく
港にむかって小声であやまる
静かに手を下ろした少女はその場に立ちつくした
「私も、きっと出来損ないだから」
と項垂れて
大東亜戦争終結
あの悪夢の戦争からすでに60年近くの年月が流れていた
戦勝国であるアメリカはこれから「隷属国としての日本」というプランが何案かあり
長期的に服従させるための下準備に入っていたが
そんな気長な立案が通ることはなかった
戦争は戦争を呼ぶ
太平洋を間に賭けた戦争が終わり
日本を焼け野原にした火の全てがやっと下火なった頃にそれは飛び出してしまった
朝鮮戦争
色々な思案と困惑の中
アメリカは日本を「隷属国」の扱いから一時的に「同盟国」という扱いに戻す
もちろん
本当に色々な意味での急増の扱い
すぐ隣の飛び火が返り火になって「日本」がまたも戦争に逆戻りする事を恐れたのだ
そのため
格下とはいえ同盟国として扱う、見返りのように自分たちの最前線基地化を進める隠れ蓑として
海上警備隊を承認した
これが後に「海上自衛隊」になる
とにかく
共に戦え自分の国を守れ。
戦争で勝ったアメリカは矛盾した「平和憲法」を押しつけた後にさらに「追加」の難題である「軍」の設立を認め
現在に至った
いびつなる「軍隊」は、存在の意義をみつけられないまま発足した
自分達の国を護るという責務によって存在した帝国海軍。同じ責務を負う者として存在するハズだった海上自衛隊は、見せかけの平和享受に踊らされた市民に受け入れられるハズもなく
米国の意志だけにより作られた軍団と見下げられたまま日本国民には受け入れられなかった
理由は色々だが
戦争から復興をめざす日本国民にとって栄光輝かしい「帝国海軍」とは違った志から出来てしまった「軍隊」だったからかもしれない
艦の全てを失った日本の再生海軍は
艦船の多くをアメリカ軍から貸し付けられたものだった
極東を赤の侵攻から護るために、今更になって日本の戦争を理解したアメリカだっが、今更日本にあの強靱な軍隊を再設立させるのは恐怖の一つでもあった
だから自分達の手の中に収まる軍隊を作るという事を念頭に置き、自国で船を建造はさせなかった
日本に「海軍」を復活させるための条件の一つの条件として
だが考えるまでもなく
もはや日本製の船はなかった
最後の戦艦だった「長門」は水爆実験に使われ
同じように残された「帝国海軍」の艦船は標的にされたり
他国に賠償として払い下げられたり
そのまま物言えぬ体をバラされたりして死滅していた
日本には最早日本を護る戦船はいなかった
みんな死んだのだ
もはや純血の日本の魂を持つ「艦魂」はいなくなったのだ
「風邪ひくわよ」
どのぐらい船の舳先に立っていたのか
髪を軽い水玉で飾り
なおも雨に濡れ悲しげに横須賀の町を見つめていた少女の背に
少しばかり年上と思われる少女が声をかけた
ショートボブの茶色の髪
年上らしく落ち着いた笑みを浮かべた彼女も「海上自衛隊の制服」をしっかりと着込んでいる
「姉さん」
「部屋にもどりましょ」
優しい声は悲しげな顔の少女に向けて傘を差しだした
「解決したみたいよ、きっと明日には出港できるわ」
「ええ」
一つの傘の中に肩を寄せ合い歩き出した少女達に
やはり船員は誰も気にもとめない
連れられるまま無言であるく彼女に姉とよばれた彼女は伝えた
「もともとマスコミ向けの問題を解決するの時間がかかっていただけだから、ねっ」
「自業自得だ」
責めるように
自分を律する彼女の厳しい声に
姉は苦笑いをした
「そうね」
お互い思うところがあるのだろうが
声にだすには辛いのか
二人とも俯きながらゆっくりと船室に向かった
階段を下りた通りは先ほど彼女が駆け上がった通路
白い清潔感漂う中にも緊張のある作り
角を曲がった先の船室からはすでに集まっている「女の子」の黄色い声が響いていた
「しま姉〜〜明日出港ってホント?」
傘の雨粒を払いたたみながら部屋に入ったショートボブの彼女に年下の
それもおそらく10代前半とも思える少女は鼻にかかる舌足らずな声と共に駆け寄った
髪は一本にまとめたものを三つ編みにしてお団子にアレンジした茶髪、どちらかと言えば「小学生」そんな彼女も大きすぎる「海上自衛隊の制服」を着ている
彼女はまとわりつきながら姉に問う
「『さわぎり』、声が大きいわ」
部屋の中もっとも年下と思われる幼女をイスに座らせる彼女に
「ココにずーといんのも息苦しいからいいじゃん」
そう言ったのは
部屋の壁側にあるイスに座る少女
髪は黒のロングを引っ詰め少し垂れ目で色白の彼女は白の第三種夏服を着ている
「相変わらずねぇ、そのかっこ。寒くないの?『むらさめ』?」
冬の近づく季節に入っている事を思い
夏服の彼女を見る目は笑いながら聞いた
「鍛え方が違うの! それにこれは伝統の「海軍セーラー」なんだぜ!」
だからそれが何?という顔で雨に濡れたままの少女もイスに座る
不機嫌な顔の彼女を無視したまま『むらさめ』は聞いた
「ところで『しまかぜ』出港の情報どこで手に入れたの?」
『しまかぜ』
そう呼ばれたのは雨に濡れていた妹を迎えに行った彼女
「さっきよ、間宮艦長が基地指令に呼び出されたらしくて艦橋で溜息つきながら言ってたわ」
「あくびじゃねーの?」
『むらさめ』は皮肉な合いの手をいれる
女の子とは思えない乱暴なしゃべり方だ
「あたい、雨の海はイヤだなぁ〜〜怖いもん…」
『さわぎり』は、淡いピンクの唇を尖らせてイスに垂らした足をばたつかせた
たしかに雨の続く海は気持ちの良いものじゃないが
隣に座っていた『むらさめ』は『さわぎり』の甘ったるい声に眉をしかめると、彼女の頭を抑えるような態度で
「護衛艦隊の一員が情けねー事言うな!」
「だってぇ……」
『むらさめ』に、上から言い含められふて腐れ気味の『さわぎり』はイスから飛び降りると
壁を背に立ったままの『しまかぜ』の元に走った
昔から『むらさめ』が苦手なのだ
足元にへばりつくと上目遣いに姉に聞く
「ホントに明日出るのぉ?」
「ホントでっせぇぇぇ!!」
『さわぎり』の問いに答えたのは急に部屋に現れた「光」だった
流星の粒を空間から振らせるように飛び散らせ
滝の中から姿を現す
「『いかづち』?」
突然と現れた光に部屋の中の少女達は誰も驚かない
足下にまで転がる光の粒にさえ目もくれぬままだ
眩しく光った光は部屋の白い壁に大きく反射するとすぐに小さくなり
優しい霞のような輝き変わった中から『いかづち』と呼ばれた少女が現れた
場違いにもコックの姿で
「あら、『いかづち』もう出港情報の通達されたの?」
突然の訪問者に驚くことなく『しまかぜ』は優しい微笑みで聞いた
丸眼鏡をかけた茶髪の跳ねっ返りの癖毛は愛嬌良く関西弁というか関西のアチコチの地方が混ざったしゃべりで返事した
「そりゃもう! みなはん知ってますわ!! 明日の夜出港でっせ!!」
「夜か」
濡れた髪をタオルで拭いていた不機嫌顔の少女がつぶやく
「夜の出港」
誰も見送りにこない港
「やる気失せるなー」
『むらさめ』は「夜の出港」という言葉にテーブルにうつ伏せながら愚痴った
「栄えある横須賀鎮守府から、夜のうちに出て行けってかぁ」
「う〜〜雨なのに、さらに夜だなんて。あたい泣いちゃうよぉ」
『しまかぜ』の足元にしがみついたままの『さわぎり』も、しょげた
「アカンアカン!!そんな風にしょげたら!!力つけな!!今日は金曜やで!!『いかづち』特製の海軍カレーで喝いれな!!」
つねに必要以上に明るい事を心がけている『いかづち』はそう言い飛ばして
手元にもった小皿を誇らしげに上げた
「わてが『いかづち』が誇る海軍伝統のカレーは艦隊一ィィィィィィィ!!」
伏せていた『むらさめ』が瞬間的に達あがると景気よく小皿を挙げている『いかづち』の前に走った
「馬鹿野郎!!!カレーは私!!『むらさめ』のが一番にきまってんだろ!!」
コックの襟首を絞り上げる
「なに言うてはりますか!!うちが一番です!!」
顔を歪めながらも小皿は上に
そんな二人の間に負けじと走った小さな『さわぎり』も大きな声で
「ちがうのぉぉ!!『さわぎり』のが一番おいいしんだよぉ!!」
突然カレー騒動勃発
落ち込み始めていた場は金曜カレー自慢で一気にうるさくなった
それはもう
女の子特有の黄色い声の喧噪、本人達の本気具合とは別に部屋は一気に華やいだものに変わった
そんな騒がしさに釣られた「蛾」が飛び込む
部屋に突然「男」の声が掛かった
「やあ!!こんにちわ!!」
少女達は目を丸くしたままピタリと止まってしまった
まるで時間がとまったように
そんな様子にかまうことなく男は部屋に入った
「雨が酷くなっちゃったね」
それは聞かなくてもわかるほどだ
背丈は180ちょっとぐらいで,黒の短髪の彼はバケツの水でもかぶったのかと言わんばかりのずぶ濡れた姿
唯一ビニールを被せていた黒いアタッシュケースだけが無事な様子で
濡れた上着を引きはがすように脱ぎながら
静まりかえってしまった少女たちに話しかけた
「いやぁ〜〜まいった。金曜カレー食べたさに急いで乗船したんだけど、やられたよ」
雨水滴る上着を部屋の片隅にある観葉植物にかけ
未だ凍り付いたままの少女たちに屈託無く続ける
「嵐になってるの、気がつかなかった?」
手で外を指して
「誰だ貴様?」
カレー騒動の中も我感ぜずで座っていた無愛想な少女は立ち上がると
目の前、掴み合ったまま固まっている『いかづち』と『むらさめ』を押しのけて男に近寄った
睨む視線に取り出したタオルを頭に被せながら彼は答えた
「こりゃ失礼! 僕は今日からこの艦にのる「粉川」っていいまして……」
「オマエなど見たことも聞いたこともないないぞ!内部調査官だな」
不機嫌と苛立ちの目は相手の目的を見透かし睨みながら詰め寄った
「例の事件」
あれで「相互監視」が行われるのではという噂話しを彼女は聞いていた
はっきりとした口調で断じられた彼は気まずそうな顔で
「いやいや視察官だよ……」
「聞いたこともない」
睨まれたままの彼は怯んだ
目の前に迫った女の子は自分とそれほど変わらない身長に澄み切った青い目
タオルで目線から逃れようとしたくもなる
「誰この人……」
そんな二人の攻防の後ろで蝋人形のように固まっていた『さわぎり』が後ずさりして『しまかぜ』の後ろに隠れた
逆に『むらさめ』と『いかづち』は気押されないように仁王立ちをした
震える指先、『さわぎり』は彼を指さしてもう一度言った
「見えてるの? あたいたちが…」
怪異な質問
この部屋、この空間には彼と彼女達しかいないのに
その問いに
彼は首を傾げたが
少女の我に返って目は大きく見開いた
「見えるのか? 私が?」
詰め寄った少女が慎重に聞く
「ああっ、もちろん見えてるよ」
彼の対応はどこかぎこちなかったが
少女から距離をとるとタオルで濡れた髪を拭きながら笑って言った
「やっぱりそうなんだ。君たちは「艦魂」なんだね」
顔には余裕が蘇っている
逆に少女たちは、鉄心を打ち込まれたように固まっている
「驚いた、20年近くは生きてきたけど「艦魂」が見える人に会うのは初めてだわ」
静まった場に声をかけたのは『しまかぜ』
足下に隠れるようにしがみつく『さわぎり』の頭を撫でながら
「あはっそう、でも考えてもみなよ「最新鋭のイージス艦」の中で馬鹿騒ぎができる。それも「女の子」達なんて「艦魂」しかいないでしょ」
愉快そうに少女達を見回す
「そんなに硬くならないでよ。僕も緊張したけど「美人」が多くてたすかったよ!! これから仲良くやってこうね!とりあえずカレーで固めの杯ってのはどう?」
今までカレー自慢で騒いでいたのに誰も動けない
「ほら、えっとそうだなぁ、そっちお子様はあれだけど」
場を和まそうと彼はキョロキョロしながら続ける
「ああっこっちの美人さん! 他の艦艇のお嬢さんも呼んで僕の歓迎会なんてどう?」
美人と言われたのにもかかわらず目の前で睨みを効かせ続けていた碧眼の少女は怒鳴った
「馬鹿者!!! 官姓名もわからん不審者のくせにヘラヘラと!!」
強い勢い
襟首を掴むとさらに
「死にたくなければさっさっと降りろ!!」
女の子の力とはいえ「艦魂」という一つのエネルギーはすさまじいらしく
首根っこを万力で掴まれたぐらい締め上げる
その中で彼は苦しそうに返事した
「そうは言ってもねぇ、今日からこの艦に乗るって決まってるから」
「私はオマエなど乗せない!!!」
そのまま床に叩きつけた
怒りに相乗された力はそうとう強かったのか
彼は息をつまらせてもんどりうち
目を白くしろさせたまま彼女を見上げた
「じゃあ、君がこの艦の?」
見下す目線は忌々しそうに
「汚らわしい」
そういうと怒のこもった足音をたてながら部屋を出て行ってしまった
「まいったな……」
静まりかえった部屋の中
叩きつけられた顎先をさすりながら彼は部屋の中に目をむけた
「あ〜〜嫌われちゃったかな?」
助け船を求めて
みっともなく頭を掻きながら
声を殺した笑いを見せている『しまかぜ』に目を向けた
両手をおどけてあげて
それに了解したように
「初めまして、そしてようこそ「海上自衛隊第一護衛艦群」へ」
年上の余裕をきかせた『しまかぜ』は自己紹介を始めた
他の二人は警戒して沈黙を守っている
「私は『しまかぜ』護衛艦しまかぜの艦魂よ」
そのまま足元にしがみついたままの少女に代わり
「この子は『さわぎり』護衛艦さわぎりの艦魂」
年長者の落ち着いた自己紹介に後の様子を見ていた二人も続いた
「私は『むらさめ』だ。護衛艦むらさめの艦魂だ」
斜に構えた態度を崩さず初めて自分たちを見た男に警戒しながらも
強気に、ちょっと怒った風に名乗った
「わては『いかづち』……護衛艦いかづちの艦魂でさ。おおきによろしゅうたのんます」
一応「官」とつく役職に遠慮したのかはコックの帽子を脱いで挨拶した
「やあ、どうも!どうも!」
やっと立ち上がった彼に
「粉川さんね、よろしく」
一巡した自己紹介の後。お姉さん各の『しまかぜ』が微笑みを返した
「ははっおどかしちやったみたいで、挨拶しときますね」
立ち上がりながら
通路の向こうに消えていった彼女を探そうとした
「今日はやめとけ、「鋼の女神」は気が立ってるぜ」
そんな粉川の態度に『むらさめ』が釘をさした
「そうね、今日はやめておいてほしいわ」
『しまかぜ』も首を振って
粉川に注意を促した
「彼女は?」
締められた首もとをさすりながら粉川は聞いた
「あの子はこの艦の艦魂」
「彼女がこのイージス艦の艦魂?」
「そっ」
簡潔な返事と会話は
普段と変わることのない日常に見える
だが今まで見ることの出来なかった艦魂を見られる男と
それを冷静に見る艦魂たちの間で止まっていた時は動き出した
『しまかぜ』は続けた
「彼女は国の楯。日本初のイージス護衛艦、その艦魂『こんごう』」
それが粉川と『こんごう』そして多くの艦魂たちの物語の始まりだった
「艦魂」
火星は同じ「小説家になろう」掲載の黒鉄先生の作品で初めて知りました
昭和の戦争を書くことは歴史ジャンルを選択してきた私には辛い事ばかりで
目を向ける事から避けてきたジャンルでしたが
新しい発想で
新しい物語
そこにある悲喜こもごもに心が動かされこうして筆をとるに至りました
右も左もわかない火星に「艦魂同盟」へのお誘いまでいただき
快くココに新たな連載作品として「艦魂物語,魂の軌跡〜こんごう〜」を始められたことに感謝します
初めてのジャンルへの挑戦です
至らぬ事も多々あると思いますがよろしくお願いします
火星明楽