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四海覇譚  作者: 世界最古
2/2

四海概説

エタった作品数知れず。

期待は一切するな。

「おーい、そろそろ起きなさい」

どす。

「おーい!」

ごす。

「はぁ、魂が抜ける前に呼び戻したはずだったんだけど……」

少女が足を大きく振りかぶる。

バゴン!

「……かはっ」

相馬は腹部の激痛によってようやく目覚めた。

「痛ってぇ……」

目を開けると目の前には五歳くらいの少女が立っていた。

巫女のような、天女のような、重力を無視した装飾が施された服を着た超然とした雰囲気を持った少女だった。

「やっと起きたわね。相馬相馬」

「君は……」

相馬はそこまで言ってから周りの風景がおかしいことに気付いた。

今、相馬は海の上に寝転がっている。

前後左右どこを向いても見渡す限りの海。

空には太陽も月も無く、それでいて明るい不思議な空間だった。

痛む体を起こし、海に手を付けてみるが掌が濡れるだけで海の中には入れそうになかった。

遠くに島がいくつかあった。

島は宙に浮かんでいてゆっくりと動いているようだった。

少女が相馬の目の前まで歩いてくる。

「ここは四つの海が交わる場所、四交海(しこうかい)。あんたは第二海の人海で殺され、私がこっちに呼び戻した」

相馬の頭の中に死ぬ前の記憶が甦る。

「俺、あのまま死んだのか」

切られたはずの右腕は何の痕もなくちゃんとくっついていた。

「一応はそうね」

相馬は自分の頭に響き続けていた言葉が聞こえなくなっていることに気付いた。

「まずは、お勤めご苦労様。まぁ、任務は失敗だけれど」

「任務?」

「阿頼耶識全─そふぃあ。ちっ、あの女の強制力どんだけ強力なのよ……とりあえず、あの女を殺すことがあんたに与えられた任務だったってわけ。でも、それも一旦死んだことによって私とのリンクが切れてチャラになったんだけどね」

手をひらひらさせながら少女が言った。

その仕草はなんと言うか、少女の仕草ではないような気がした。

「君は一体何者なんだ?」

「あぁ、私の自己紹介がまだだったわね」

少女が待ってましたと言わんばかりに服の袖を肩までまくり上げる。

「私は人海の裏側に存在する第三海、つまり鏡海(きょうかい)の帝、鏡海帝簾微風(すだれそよかぜ)よ!」

バーン!という豪快な音と共に微風の後ろで水しぶきが上がる。

しかし、相馬には微風の言っている意味が全く分からない為、驚くに驚けなかった。

「何が何だかわからないって顔ね。でもそれで大丈夫よ。あんたはただの人間として再び人海に戻るんだから」

話に全くついていけない。

「つまり俺は今抱いている疑問全てに答えを得られないまま、生き返るってことなのか?」

「そうね。そういう決まりだから。任務は他に人海に送り出した子たちが継続してあたってくれてるから、そこのところは心配いらないわよ」

「無理だ」

「え?」

「何も知らないままじゃ帰れない」

「うーん……死んだときに感情のロックが外れたのかしら……四海協定に反することになるけど、ま、良いか」

一人会議を終え、勝手に何かを決めた微風は空中で胡坐をかくと相馬に向かって、

「これを知ってしまうと、もう一度任務にあたって貰うけれど、それでも良い?」

と問いかけた。

「あぁ」

「そう」

微風はにっこりと笑って相馬の頭頂をぽんと叩いた。

「え?」

急に海が足場としての役割を失い相馬は海中に沈みこむ。

顔を海上に出そうとするも、水を必死にかいているはずの腕には何の感触も感じられなかった。

何なんだこれ……

身体はゆっくりと沈んでいき、次第に息が苦しくなる。

ごほっ。

口から大きな泡が……出ていない。

「あれ?」

海の中なのに声が出せる。さらに普通に息も吸う事が出来た。

しかし体が沈み続けていることに変わりは無い。

「っくそ!どうなってんだよ!」

その時、足元で大きな影が動いた。

「なんだ……?」

影に近付くにつれて、その全容が明らかになる。

「なっ!」

化け物がいる。

体中に死体をくっつけた巨大な鯨のような化け物が口を開けて、相馬が落ちてくるのを待っていた。

「あぁあ……ううぅうう」

体についた死体たちが相馬を求めて蠢いている。

「た、助けてくれ!微風!」

海面に向けて叫ぶもその声は届いていないようだった。

助けは一向に来ず、深く冷たい海の底へと相馬の体は沈んでいく。

化け物はもう目と鼻の先。

「や、やめろっ!!!うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

化け物に吸い込まれる直前、相馬は謎の力で急浮上しそのまま海面を突き破った。

勢いそのまま、相馬は遥か上空に飛んで行く。

海上では微風がニコニコしながら相馬に手を振っていた。

彼女が一体何を考えているのか相馬には皆目見当がつかない。

相馬は上昇を続け、今度は霞が立ち込めたように視界が白くなっていく。

微風の姿が見えないほどの高さになった時だった。

ぎぃいいいい!

鳥のような叫び声が聞こえた。

「今度は何だ?」

白くなった視界がだんだん眩しくなってくる。

ごうっという暴風と共に相馬の目の前を巨大な生き物が通り過ぎた。

「熱っ!」

満足に息を吸うことができないほどの熱波が遅れてやってくる。

まるでサウナの中にいるみたいだ。

ぎぃいいいい!

鳥のような叫び声がまた近づいてくる。

霞が晴れ、視界がひらけてきた。

「鳥……?」

光だった。

光が鳥の形を成して飛び回っていた。

それが通り過ぎた後は空間が蜃気楼のように揺らいでいる。

超高温の鳥が相馬に猛スピードで近づいてきた。

「避けられないっ!」

空中で体は自由に動かず、奇しくも海中でもがいていた時のような格好になる。

しかし、いや案の定というべきか、今回も謎の力によって相馬は危機から脱することが出来た。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

身体が海上に落下していく。

海にぶつかる寸前、ふっと謎の力は解け、相馬は海上に軟着陸した。

海上に足をつけるや否や、相馬は微風に詰め寄った。

「そ、微風!お前いったい何を」

「お口をチャック」

微風がそう言った途端、相馬の口は全く開かなくなった。

「とりあえずお疲れ様、相馬。まずは私がするこの世海についてのざっくりとした説明を聞きなさい。今しがたあんたに見てきてもらったのが第一海と第四海、つまりは天海と冥海なんだけど、あんたたちの言葉で言う天国と地獄の認識で間違いないと思うわ。そしてあんたが暮らしていた人海と今から連れて行く鏡海の四つを合わせて私たちの世海、四海が成り立っているの。海同士は絶妙なバランスをとっていて、それぞれの海に力が偏りすぎないように見張るのが私たち海帝の役目ってわけ。つっても今は私しかロクに働いてないんだけどね」

「ここは読み飛ばしてもいい所か?全くもってちんぷんかんぷんなんだが」

「構わないわ。でも頭の片隅には閉まっといてね。それじゃあ次は……」

微風が空中を指でなぞると、そこがばっくりと開き人が通れるほどの穴が出来た。

「付いてきて」

穴へと消えてった微風を追い、相馬も穴へと入る。


「ここって……」

穴から出た先は相馬が良く知っている学校だった。

しかし、廊下を歩く生徒たちはいきなり穴から出てきた相馬たちに気付く様子が全くない。ここで相馬はある異変に気付く。

「教室の位置が逆?」

「そうね。ここがさっき言ってた私の治める鏡海。あと、正確に言うと全てが逆になるわけじゃないんだけど、こんがらがるから今はそういう事にしておくわ」

微風は廊下をずかずかと歩いていく。

「ここは人海にある物のほぼ全てが鏡写しのように複製されていて、人海とリアルタイムで連動して動いているの。まぁ、簡単に言うならもう一つの人海ってところね。つまるところ人海に存在するものは全て鏡海にも存在すると考えて大体間違いないわ」

そうして微風は大きな姿見の前で止まった。

女子生徒が姿見で身だしなみをチェックしている。

姿見には、相馬や微風の姿は無く女子生徒だけが写っていた。

「今から私の能力を見せるわね」

微風がそう言って女子生徒のスカートの裾を掴んだかと思うと、「はいっ」という掛け声と共にスカートをめくりあげた。

黒。

「学校に穿いてくるような色かしら」

「知らん……」

相馬は図らずも同じ高校の生徒のパンツを見てしまった。

女子生徒はいきなりスカートがめくれたことに驚いて周りを見回している。

「これが私の能力。鏡海から人海に一方的に干渉することが出来るの。今回はわかりやすく鏡の前でやったけど基本どこでも干渉できるわ」

「ちょっと待てよ、それなら……」

「そうね、そうならよかったんだけどね……あんたが気付いた通り、私はこの力を使って人海の人間を殺すことも出来る。だから私が阿頼耶識そふぃあを殺せれば万事解決だったんだけど、でも、そうはならなかった」

「そふぃあは鏡海に存在しないのか?」

「ご名答。理解が早くて助かるわ。そう、全くもって腹立たしいことに()()()()()()()()()()()()()。つまりは私の干渉を受け付けないの。ここで考えられるケースは、彼女が人海出身じゃない場合と、ただのイレギュラーだった場合の二つがあるんだけど……」

「そふぃあはどっちなんだ?」

「前者である可能性が高いわね。()()()()姿()()()()()()()()()のがかなり怪しいのよね……ちなみに後者は唯一存在といって、文字通り人海にしか存在しない存在のことよ」

「ところで、微風」

「何かしら」

相馬は、死ぬ前からずっと疑問に思っていたことを口に出す。

「どうしてそふぃあを殺さないとダメなんだ?」


お疲れ。

文章へたっぴ過ぎて笑っちゃった。

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