8・砕け散った硝子
未菜を殴り、ストーカーは再び部屋の中へ乗り込もうとした。
「行かせるかっ」
部屋の中へ入るストーカーを見て未菜はすぐさま倒れ込み、自らの脚をストーカーの脚に絡ませた。足を止められて動けなくなったストーカーは「ぐはっ」と前のめりに倒れた。
「畜生、放せ、放せよ!」
地に伏せながらストーカーは未菜に向かって喚いた。そんな彼の前に愛梨が出てきた。
「来てくれたか、愛梨さん! お願いだ。こいつを離してくれ、そして二人でここから逃げ――」
「させるか!」
未菜は絡ませたストーカーの脚の左の太ももに噛みついた。そして噛みつかれたストーカーが悶絶し、じたばたと暴れる。
「俺の脚から離れろ、このデカブツ!」
デカブツ、と聞いた時、未菜は思わず太ももを咥えていた顎の力を緩めてしまった。そしてストーカーは足から未菜の口を引き剥がしたのだった。
相手の脚に引っ張られた未菜の口から血が流れ出した。前歯が一本折れたのだ。
「ははは、野蛮人に相応しい間抜けな面構えじゃないか!」
ストーカーは歯が折れた未菜を見て高笑いした。しかしそれに激怒した愛梨がストーカーの頭に大量の漫画をぶちまけた。
「何をするんだ愛梨さん。僕は君の為に――」
バシッ! と愛梨がストーカーの顔に平手打ちをした。
「わたしの友達を侮辱しないで!」
平手打ちで一瞬よろけたストーカーだったが、すぐさま愛梨の顔を殴ってカウンターをした。殴られた衝撃で愛梨が床に倒れる。
「君はどうもこの家の住人に毒されている。僕の家に一緒に来るんだ! そして真実の愛を育もう!」
「いや!」
「さあ来るんだっ!」
床に倒れている愛梨の腕をストーカーが掴もうとした時、階段から誰かが駆け上がって来た。母さんだった。手には護身用の金属バットが握られている。
「あんた何者だ!」
「さっきあなたと話した義理の母親よ!」
母さんはバットを持ち上げて振り回す構えを取った。
「愛梨ちゃん、未菜ちゃん、その男から離れて!」
そして母さんは構えをとりながら走ってストーカーを部屋の奥まで追い詰め、窓の前で彼の胸にバットを全力で当てた。
「うわああああああああ」
振り回されたバットの衝撃でストーカーは文字通り吹き飛び、部屋の窓硝子を突き破って約四、五メートルある二階から落下し、コンクリート製の家の塀に頭を激突してそのまま庭へと落下した。
流石にここまで大騒ぎになればご近所絡みの大騒動となってしまう。硝子の割れる音とストーカーの叫び声を聞いた近隣住民の通報により我が家にパトカーが駆けつけた。
そのパトカーのサイレンにより、気絶していたおれは漸く目を覚ましたのだった。




