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もったいない国
とある国はミサイルによる世界制圧を企んでいた。ただし、ミサイルはちらつかせて他国との交渉を効率よく優位に進めるためのものであり、実際に他国に落とす予定などは初めからなかった。
そのため、他国を攻撃するためという仮面を被ってミサイルを開発していた。そしてミサイルは既にできていた。
威嚇のつもりでミサイルを発射する。他国に落としてしまっては戦争となり、交渉どころではなくなるので、ミサイルを落とす場所については慎重だった。
そしてミサイルは海へと着弾。成功だ。
ミサイル発射はこれまで幾度か行われてきたが、現在までミサイルは無事にどこの国のものでもない海に落とせている。
こうして近場の海から徐々に遠くの海へとミサイルを落としていき、そして順調に飛距離を伸ばしていった。
飛距離を伸ばせば伸ばすほど、その射程内にいる国に圧力をかけられる。それで交渉をすると上手くいく。
そうして来る日も来る日も、ミサイルを飛ばしては飛距離を伸ばしていった。
しかし、国の財力と人力を使い果たすほどの実験でもある。いつも膨大な材料費と手数と時間を使い実験を行う。
これらのことから、いつしか『もったいない』という思想が国中を支配していた。『もったいない第一主義』なんて言葉も生まれていた。
ある日。
ついにミサイルが世界一周するまでの技術に達した。
そして今日は、世界一周できる技術を得て初めての発射。早速ミサイルを飛ばす。見事成功。ミサイルはぐんぐんと飛距離を伸ばしていく。あっという間に地球を半周。あと少しで世界一周だ。
「みんないいか。もったいないからミサイルが帰ってきたらしっかりと全部回収するのだぞ」
誰かの号令がかかる。
ミサイルの材料回収による材料費削減、社員による材料回収までの無駄な時間の削減、そして社員のみでの回収、つまり人員コストの削減。
そう、今の全てを効率よく行うため、もったいないの思想で自国のミサイル研究施設へ照準を合わせていたのだ。なんとももったいない国であった。