夢と現実
「ん?今回は随分と豪華だな」
そう言って声を上げたのは父であるウバルド。意識してみると普段の食事を考えるとやたらと今回は豪華なようだ。
「あら?今日はレオの6歳の誕生日ですよ?」
そう言いながら最後の料理を運んできたのは母であるセレナ。
「おっ!そうか、そうか!レオももう6歳か」
確かに今日で僕は6歳だが、それだけが理由じゃないはずだ。日本などでは毎年祝うのが誕生日だが、この世界では基本的には成人である15の時にお祝いするのが基本だ。
「なんで、レオはまだ6歳だよ?」
僕の誕生日が豪華なのが不満なのかフラン兄さんが父に文句?を言う。多分なんで僕が6歳なのに祝うんだ!と言いたいのだろう
「なに、今回のはたまたまだ。別にレオの誕生日だから豪華なわけじゃない。」
その通りである。たまにこうやって豪華な食事になる時があるのだが、それと僕の誕生日が重なっただけだろう。
「にしても、レオももう6歳になったのか!」
「うん、レオは今日で6歳だよ」
ウバルドの質問にフェルが答える。
「じゃあ、明日からレオにも剣術を教えてやろう。特にレオは領地を出ることになるだろうからな」
フェルもフランも父から剣術を教わっていたが、こんな幼い時からとは…多分魔法もだろう
「魔法は?」
ふと思ったら口に出ていた
「魔法か」
父の顔が少し険しくなる。魔法は駄目なのだろうか
「うーん。フェルもフランも魔法はダメダメだからな。領地を出るならアルセンブルク学園にも行かせたいし…」
ん?アルセンブルク学園に通うためには魔力操作が出来ればいいんじゃないのか?
「え?アルセンブルク学園って魔力操作出来ればいいんじゃないの?」
その言葉にさっきまで無反応だった母が反応する。
「それは誰から?」
普段の温厚な母からは想像もできない様な冷たい声が出る
「えっと、フラン兄さんから」
あ、もしかしてこれ言わない方が良かった?
「フラン、どういうことかしら?」
その言葉でフランが固まる。言い訳を考えているのだろうか
「えっと、その、」
「レオ?フランはあなたになんて言ったの?」
ちょ、なんで僕に聞くの!?
「んーと、アルセンブルク学園に入るには魔法の基本である魔力操作が出来ないと試験すら受けさせてもらえないって」
これぐらいでいいか?
「他には?」
あ、見抜かれてら
「魔力操作は大きくわけて3段階に分かれていて魔力操作は大魔力の源である魔力源から溢れ出る魔力を身体中に巡らせるようにするのが第一段階。巡らせた魔力を血液の様に身体中に循環させるのが第二段階。身体中に巡らせ循環させている魔力を一点に集めるのが第三段階。この3つが基本の魔力操作でこの3つは基本中の基本でこれができなければアルセンブルク学園の試験も受けられないって言われた。」
これでいいのか?
「他にも言ってなかった?」
言葉は優しいが目が笑っていない。
「え、えっと、魔法の基本中の基本の3つが出来てやっと魔法の基本が出来る。まず魔法の基礎になる一点に集めた魔力を撃ち出す【魔力弾】、身体強化や付与魔法の基礎の循環させている魔力を纏わせる【魔力纏】、防御魔法の基礎でもある魔力を壁として出す【魔力障壁】の3つが出来たらもしかしたらアルセンブルク学園にも受かるかもな!って言ってた」
これで全部だ。知っている事は吐いた。だから母よ これ以上その目を向けないで!
「フラン?貴方人にそんな態度取れるなら魔力操作出来るわよね?」
ん?出来るから僕に自信満々に自慢してたんじゃないのか?
「い、いいえ出来ません。」
え。できないの?
「でしょうね?基本的にはアルセンブルク学園の試験は誰でも受けられます。しかし、基本知識である四属性や基本魔法であるボール系の魔法が使えなければ受かるのは難しいだけの事。それを踏まえた上でアルセンブルク学園は1からおしえるんですよ?魔力操作は上級生の授業なんかで習うんですから」
そうなの…って
「へ?じゃあ、その四属性とボール系の魔法を覚えれば早く入学できるの?」
「そうですけど、レオは四属性が何か分かりますか?」
四属性ってあれだろ?エレメント何とかってやつ
「母さん。レオはまだ6歳だからそんなの分からないよ。ましてやフランや俺も教えてもらってないんだし」
「ううん。フェル兄さん分かるよ。四属性は火、水、風、土の4つだよね。これは基本属性とも言われているものだよね。この基本属性の他に電や光、木なんかがあるよ。他にもね、基本属性の上位に当たる上位属性は炎・氷・嵐・地と雷・聖・樹になるんだ」
そう説明するとみんなが唖然としていた
「あれ?母さん僕の説明もしかして間違ってた?」
「いいえ。正解です。レオはどこでそれを?」
どこでって…何となく
「どこでって言うか…何となくかなぁ?」
「なんとなくで答えるのかよ…」
「これなら、アルセンブルク学園に入学してもいい?」
「いいえ、お母さんと魔法の勉強をしてからです。」
「ほんと!なら明日から…」
「うんうん!レオは魔法の才能もありそうだな!だが、明日は剣術だ。俺を打ち負かしたら母さんと魔法の勉強をしてもいいぞ」
「よし!頑張るぞー!」
絶対に父さんを打ち負かして魔法を教わってやる!
「何年かかるかな」
「え?」
フランが不意に呟く
「俺やフェル兄ですらまだ父さんに勝ったことがないからな」
ま、マジかよ
「そ、そうなの?」
「れ、レオ?そんな落ち込まなくていいぞ?父さんは6歳のレオにも手加減無しに勝負挑む人だけど俺もフランもあと少しで勝てそうなんだ。レオも頑張れば成人するまでには…」
フェル兄さん、それフォローになってないよ
「大丈夫だよ。フェル兄さん…僕はもう寝るね。疲れちゃった。」
「れ、レオ?本当に大丈夫か。もしかして言い過ぎたか?」
フランが心配そうに聞いてくる。流石にここまで元気がない弟を見たのは始めてなのかすこしパニクっている
「大丈夫だよ。フェル兄さん、フラン兄さん。まさかこの年で夢を語った瞬間に現実を叩きつけられて心の整理ができてないだけだから…そっとしていて」
フェル兄さんもフラン兄さんも魔法に関して言えばイマイチだが、剣術に関して言えば強い部類に入る。その2人ですら一勝も出来てないなら6歳の子供が勝つなんて無理だろう
「あれ?もしかして父さんが悪いのか?」
「大丈夫、父さんが悪いんじゃないよ。現実を見ない僕が悪いだけだから。僕はもう寝るね。おやすみ」
「「「お、おやすみ」」」
パタン