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ありふれた報告書  作者: マンボウ紳士
第五章 不平等な時計
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報告書86枚目 孵化

暫く高笑いをしてようやっと落ち着いたように傍に合ったお茶に手を伸ばす。マーリンやファーナ、付き合いの長いタケシやネコヤなどはさもあり何と言う表情で落ち着いてお茶や茶菓子を食べている。反面発言を行ったフォルナスやメルティア、ほかの嫁などは顔面蒼白で次の挙動を戦々恐々としている。因みにマオ皇帝陛下は余裕で椅子の上で次の行動を楽しそうに待っている。


「あ~笑ったのぉ別に怒っちゃおらん」

「はい」

「よぉもまぁ会議の裏に隠された意図に気付いたもんだ」


我が子の成長に思わず驚いたもののちょうどいいので軽く勉強を教えるとすることにする。ほどほどにねおじちゃんとマオ皇帝陛下は笑顔で続けるように促すと付き人にお茶と茶菓子を持ってくるように命じていた。


「気付いたのは良いが先が見えてなかったのぉ」

「え?」

「この会議の結果は後日市民にも知らされる」

「はい」

「で、やっと仇が打てるかもしれない士気が上がった市民に待てと言って了解するかのぉ」


意地悪そうに扇子を広げると口元を隠す。それを見たマリスとメイファがお手柔らかにと小さく呟くと何時もの立ち位置の背後の左右に戻ってしまう。ほかの諸将も大体気付いたらしくそれぞれがこの対決を見守る姿勢に入った。


「それは・・・ちゃんと説明すれば」

「住民感情で星は滅ぶぞ?」

「滅ぶほど市民は馬鹿じゃないと思います」

「正しい、だがその正しさで国は回っていない、正義という歯車を回すのは何時だって必要悪と事例という潤滑油が居るのじゃよ」

「・・・・潤滑油」


口で反芻するかのように呟くと何かを考えるかのように目線を我が子が泳がす。メルティアも潤滑油という考え方もあるのですねと呟いている、丸聞こえだぞ?周りの諸将も何かを考えるかのように腕を組んだりお茶を飲んだりとせわしなくなった、それを見つめるとまた面白そうに扇子で仰ぐとゆっくりと閉じてもう一つ追い打ちをかける。


「私は別に正義であると胸を張って言えんだが上に立つ人間は正義じゃなきゃいけない」

「・・・・・・・」

「これを発表するマオ陛下が綺麗でなければいけないのだよ、手がな」

「それならば王が発表すればいいかと」

「愚問だな、臣下は泥をかぶる物、陛下は光を受ける物それが国ぞ」


大分追い詰められているのが解る。傍に居るメルティアは一言一句逃さないように必死にメモを取っている。後で恐らくしっかり慰めながらまた学んでくれることであろう、マーリンとタケシは発言を聞いて苦笑しながらお茶を飲んでいる。ファーナとネコヤはアース王らしいとお互いに呟いて此方も苦笑している。その声を受けて背後からマリスとメイファが流石にそろそろと嘆願してくる。


「難しい言い回し、手順の多い会話、議論しましたと言う姿勢をもってマオ陛下に奏上する手順、よぉ考えよ」

「それは無駄が多いのではと・・・・」


さて仕方ない、そろそろ我が子と言えどNGワードを言い過ぎて不味い、示しをつける為に多少重い罪をつけなければ周りが納得しない。上座を見るとマオ陛下もそれは昔私が通った道なのと呟いて懐かしいものを見るかのような目になっている。これ以上時間をかけても不味いのでゆっくりと立ち上がって発言をしようと扇子を閉じる。


「フォルナス・・・・おま」

「この馬鹿が!」


大きな音を立てて扉が開かれると、慌てて扉から走り込んできたローフル大将が叱責しながら周りに見えるようにフォルナスを叩くと音が出るほどにテーブルに叩きつける。後ろを見るとおろおろしたメーニャとアーニャが見えるので慌てて連絡したらしい。


「マオ皇帝陛下、アース王、度重なる部下の無礼このローフル謹んでお詫びいたします」


肩で息を切らせたローフル大将もまた深々と頭を下げる。此方も音が響くほど激しく頭を下げたらしく一瞬だけテーブルが揺れる。恐らく厳罰を言わんとした私の面子とフォルナスの意地の両方を助ける方法を瞬時に考えたのだろう、食えん奴だ。


「・・・・・ローフル大将に感謝する様に」

「王の御恩情しっかりと言い聞かせます」

「ローフル大将、減給な」

「・・・御意に」


フォルナスを引きずるように扉から退出していく、呆然としたメルティアが我に返ると慌ててそれを追いかける、それを見送るとメーニャとアーニャも一礼すると三人を追う為に廊下に出て扉を閉めると、ようやっと騒乱に包まれた会議室に再び会議室に静寂が訪れる。


「・・・何か別口で減った給料の補填を」

「はい、速やかに」

「今日中に口実を見つけます」


ほっとしたような口調に戻っているメイファとマリスが一礼する。恐らくお互いにローフル大将に借りが出来たと思っているのだろう。違う、あいつは私と陛下に凄まじい貸し付けをして帰っていったのだ。言い聞かせると言う部分は教育しますと言う事だ。


「や~ほんと拾い物だったの、皇帝直属で欲しいの」

「あれ軍部にくれ」

「駄目だ、あれは私のだ」


理解しているマオ皇帝陛下とマーリンが即座に粉を掛けてくる。あんな人材が眠っているのだからまだ掘り起こせるなと微妙な期待をしてしまったのは内緒の話だ。


「どちらにせよこれで閉会だな」

「諸将ご苦労なの、今後も粉骨砕身を期待するの」


マオ皇帝陛下が立ち上がり締めの台詞を発言すると一斉に全員が立ち上がり臣下の礼を取る。そのまま付き人を従えてマオ皇帝陛下が会場から立ち去ると気の抜けたように全員が座る。雑談も始まるのだが概ね先ほどのフォルナスの会話となる。


「アース様・・・フォルナスがその・・」

「構わん、何事も経験だ」

「しかしローフル大将も思い切りましたね、瞬時に自分の手をフォルナスと机の間に挟む当たり芸が細かいかと」


マリスが申し訳なさそうに詫びてくるのに対してメイファは瞬時にローフル大将が行った行動に対して興味津々であった。マーリンとネコヤはどうやってスカウトしたら軍部に来るかを相談しているしこうしてみるとローフル大将は大当たりだったと言える。


「・・・いや・・・・まさかのぉ」

「どうかしたのぉ?あーちゃん」

「別に・・・」


多分だけどあーちゃんが考えてることがあたりだと思うよぉとくすくすと笑うとファーナは立ちあがり其のまま退出してしまう。考えている事が当たりと言う事はそれなりに準備をしていた可能性がある・・・となるとディアも関与していると言う事になる。


「・・・用意された手札のぉ」

「その札がエースなのかジョーカーなのかどっちだ?」

「解らん、が恐らく切り札クラスだと思うのぉ」


マーリンが呟きに反応して声を返してくるが裏切ったり何かをなすには既に遅くなりすぎている、宇宙を制圧した時点でそして少将になった時点でいくらでも動けたはずだ、それが無いと言う事は手札が化けてゼロになると言う事は現状考えられない。最悪は・・・とマリスとメイファを見ると静かに頷いた。



・・・ローフルお説教部屋・・・


フォルナスとメルティアが正座させ、その前にため息をついてゆっくりと椅子に腰を下ろす。額から血が流れているらしくメーニャとアーニャが慌てたように止血と治療を行っているがそれはもう別にどうでもいい事だ。


「さて・・・やり過ぎ」

「はい」

「申し訳ございません」


ディア局長がお茶を飲みながら隣で爆笑している。意見が出来たのは結構だが面子をとちゃんと釘を刺してくれているのに突っ走ったら、行く先に待っているのは極刑しかないでしょうがともう一度説教をする。


「頭に血が上りました」

「制止出来ずに申し訳ありません」

「閣下血が止まりませんが」


アーニャが少し慌てたようにタオルを交換する、ディア局長がそっと確認してああこれヒビ入ってるわとあっけらかんと発言すると二人そろって何故かフォルナスを睨む、怯えてるから止めればいいのにのぉ。まぁすぐ直すけどね~と笑いながらディア局長が手当てを行っている、まぁ流石というか何と言うか手際は良いな。


「今回は周りも初回と言う事で終わりましたが本当に次はありませんからのぉ?」

「はい・・・でもその・・・どうしても」

「要はですな、国民に知らせるためには陛下にも面倒であるが会議の結果をお見せするこれは解りますな?」

「はい」

「良く解りました」


凹んでいる二人が同時に頷く、自分達は良かれと思って発言したのであろうがその道はみんな最初に通るのですよと治療されながら二人に諭す。


「結局我等も市民が居ないと何もできませんだからこそ市民に分かりにくい手順を踏まえてでも、此方の意図をはっきりと言えないのが悩みと言う事ですのぉ」

「・・・・・」

「納得いかないでしょうのぉまぁ、そうなると思ってディア局長に用意してもらっていますのぉ」


ディア局長が今治療で忙しいんですがなと笑いながら合図をすると報告書を三つ持った部下が現れフォルナスとメルティアの前に置いていく。どうぞそちらを見て考えて欲しいのですなと言うと、またせっせと治療に戻る。メーニャとアーニャに一応お茶くらい出してやれと言うと凄まじく嫌そうな顔でしぶしぶ二人にお茶を出していた、少し感情隠そうな?


「こんなこともあろうかと用意していた報告書なのですな」

「・・・・これは市民に」

「言えますか?暴動起きるのですな」


何の資料だと資料を手に取るとそのまま椅子から倒れるようにコケる。資料にはフロンティア計画と書いてある計画の本当の内容が書いてあった。こんなの発表したら暴動どころか内乱確定じゃないか、一体何を考えてこんな計画・・・・・を・・・ああ・・・成程。


「・・・・・これを発表出来たらまぁ・・・良くて内乱じゃなぁ」

「滅びますね・・・」

「流石にこれは表に出せないと思います」


なので馬鹿正直に発表と言うのは難しいのですなとあっけらかんと笑うと治療終ったのですなと包帯を巻く。一応現状手を組んでいるとはいえアース王の信頼を受けているのだからまぁ闇くらいは覗いているのだろう。羨ましいやら恐ろしいやらだな。


「もし自分がそれを成し遂げたいと言うなら星を貰え」

「星ですか・・・・・」

「自分で一度統治して見せろと言う事ですね」


やるだけやってみるのだなと言い放つとそのままアーニャにアース王あての嘆願書を持たせ、メーニャにはマーリン大元帥あての嘆願書を持たせる。荒治療になるかそれともそれを凌駕するのか、お手並み拝見と言うところであるなともう一度だけ溜息をつくと傍に合ったお茶を静かに飲み干した。


「・・・・統治」

「お兄様、やってみましょう」


二人とも決意を固めているが無理であろうなぁ、どちらにせよ碌な死に方をしないなと自分でも思う。十歳の子供に背負わせる荷物の大きさでは絶対的にあり得ないのであるから。それを察したのか静かに背中を叩くディア局長の存在が今だけありがたかった。

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