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ありふれた報告書  作者: マンボウ紳士
第五章 不平等な時計
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報告書85枚目 脱線必死の大会議

ゆっくりと体を起こしてベットから起き上がる。マリスもメイファも子供たちが居るのでそうそう最近は一緒に寝なくなった。それはそれで寂しい気もするが気楽だと思っていたのだが・・・・・・ほかの嫁が最近は順番を決めてくるようになっていて変わって居なかったりはする。


「アース様そろそろ身支度をなされては」


「会議は今日でしたっけねぇ」

「ええ、方針決定会議が重臣全員参加です」

「絶対荒れるよなぁ・・・」


溜息をつくとメリアに着替えるのを手伝ってもらう。一人で出来るのだが前一人でさっさとやったら、一日中暗い顔でため息をつかれ続けてしまったので諦める事にしている。着替え終わると全員で朝食を取りフォルナスも一応宰相なので今日は出るようにと言っておく。緊張した顔でメルティアと話していたので良い経験になるであろう。


「さて、私はそろそろ準備があるので向かうとしようかのぉ」

「フォルナス、ちゃんと頑張るんですよ?」

「メルティア、しっかり補佐してあげるんですからね」


立ち上がると一緒に行くのは当然と言わんばかりにマリスとメイファが準備を終え背後の左右に立つ。フォルナスとメルティアに頑張る様にと頭を撫でると大会議室に向かって足取り重く向かう。会議室に到着すると既に用意で付き人が全力で走り回っていた。


「今日は全員参加じゃからなぁ・・・・」

「もはや無事終わる気がいたしません」

「・・・胃に優しいとよろしいですわねアース様」


諦めるように皇帝陛下の隣の席に座るとマリスとメイファは自分の名前の書いてある名札が置いてある場所の椅子に座る。しばらくすると扉が閉められ報告官が配置につきその時を待つ。ぽつぽつと参加者が集まり始めると次第に会議室も手狭になり始める。


「旦那ぁ本気でやるんですかぃ?」

「流石に厳しいものがあるかと」


それぞれが今日の会議に対しての感想を口に出すがマオ陛下の御命令だと言うと半分諦めたように苦笑する。全員が揃ったのを見計らったようにマオ皇帝陛下が御出席するので全員が立ち上がり儀礼を行なう。マオ陛下が座るとゆっくりと上座から全員が座り始める。


「さて、報告官読み上げを」

「軍部よりマーリン大元帥、タケシ大元帥、ネコヤ元帥。人事補給総合管理よりアルゲイン大将、ローフル大将及びメーニャ補佐官、アーニャ補佐官。惑星管理よりメリア大将、マール大将。遊撃部よりマリー大将。内政よりファーナ内務卿、アトリ情報局長兼大将、ディア技術長官、フェザー参謀長官、フォルナス宰相及びメルティア補佐官。総指揮アースライト王、補佐マリス中将、メイファ中将。以上現状の重臣14名、補佐官5名、合計19名全員揃っております」

「全員大儀なの、楽にするの」


報告官が一息に読み上げたのを見て大したものだと内心褒めていたのだがマオ皇帝陛下の宣言によりいよいよ大会議が始まろうとしていた。この人数で議題が次の侵攻先とその準備となれば確実に会議は大難航するであろう事は予測される結果なのだが・・・・・。


「さて、喜ばしい事に今回は薄氷を踏むような場面が多かったが勝利を得たの」

「ですが復旧及び再軍備には時間が如何してもかかるのですな」

「人材は壊滅的な打撃を受けておりますのぉ」


ディア局長とローフル大将が互いに自分の部署はお手上げでありますとジェスチャーを交えて報告をしてくる。実際この二つの部署は壊滅的なのは解っている。特に人材面に関しては砂浜から色付きの砂を探せと命じているのに等しい。


「軍部はやれと言われればやれる」

「まぁ派手に暴れる事は可能だな」

「ただ勝てるかと言われれば怪しいんだニャ」


マーリンを筆頭に軍部が揃って意見を述べる。もうこれで良いんじゃないかなと思わないでもないが、まだ始まったばっかりなので諦めて他の人間の意見も聞くことにする。


「内政面は新しく入った鉱山惑星の開拓が急務だわぁ」

「参謀としましては現状で戦争は賛成しかねます」

「旦那ぁちょいと無茶が多いねぇ」


内政面に関してもそれらを請け負っている将校から苦情にも似た報告と宣言が会議に飛び出してくる。それらの意見を聞きながらマオ皇帝陛下は目を瞑りどうしたものかと悩んでいる様にも見える。どちらにせよ取れる手段と策は驚くほど此方には少ない。


「資源惑星の開放に伴う交通網の敷設のし直しがまだ終わっておりません」

「捕虜解放の人たちも直ぐには動けないと思う」


惑星管理側も発掘作業とそれに伴う効率アップは現状不可能であるときっぱりと宣言してくる。無い無いだらけではあるが、戦争に勝っている今ならばまだムード的にも何とかなる部分が多い、立ち止まるのは愚策になりかねない。


「今止まったら全て終わってしまう気がするの」

「終わる以前にスタートラインにも立っていない可能性があるのぉ」


マオ皇帝陛下の言に周りが言えないであろう突っ込みを入れる。パイプ煙草を何時もの様に咥えながらいい案がないかを本気で考える。戦えと言われて戦わない人間はこの国には幸いなことに居ない。むしろ隠れて戦いに行きかねないん人間の方が多いくらいである。


「王と陛下に進言いたしますスタートラインどころか会場の準備も出来ておりません」「戦艦、空母、艦載機、全て鉱山が稼働してこそ可能ですわぁ」


珍しくマールとファーナが同時に手を組んで発言する、慎重派と発展促進派が裏でつながっていると言う事であろう。想像はつくがしっかり根回ししてて宜しい。


「急がないと相手も軍備を整えるの」

「でしたら嫌がらせをすれば宜しいのですのぉ」

「その準備でしたらすぐできるのですな」

「情報局としても賛成しております」


陛下が考えこむ前にローフル、ディア、アトリの情報重視派閥が間髪入れずに別の提案を持ってくる、このあたりやはり裏で動き回っているのが解るがこれは褒めるべき行動力と言う事であろう。よくやったと言わんばかりに目線を送るとディアが小さくガッツポーズをしていた。


「嫌がらせ・・・?」

「相手の資源採掘量を調べたところほぼ採掘を行った形跡がないのですな」

「まぁ相手の採掘作業はよく言えば資源調査、悪く言えば人的資源消費の為の行動かねぇ」

「相手の資源輸送は何処で行われているか把握済みなのでそこを叩くべきと思います」


後にご採択を願いますとローフルが三人を代表して資料を提出する。成程よく出来ている資料だ、時間稼ぎの着眼点としては及第点を出せる物だ。満足げに頷くと賛同しておく。マオ陛下が一瞬迷った表情をするがローフルが総責任者でこれを進めるのと決定を下す。


「「「御意に、我ら三人準備のために下がらせていただきます」」」

「許すの、速やかに成果を期待するの」


ローフル、ディア、アトリが立ち上がると補佐官二人にはしっかり会議の資料を纏めておいて欲しいと命じて退出する。


「さて続けるの」

「内政発展案はぁアルゲインとぉまとめたわぁ」

「目を通したの全面的に許可するの」

「感謝しますねぇ」


フィーナを筆頭にアルゲイン、メリア両大将が頭を下げる。さらに慎重派も同時に下げるところを見ると何かの取引があったのであろう。アルゲインとマールは自分の意見を取り下げるとそのままファーナ内務卿の意見を支持いたしますと手札を下げた。


「軍部に関してはどうするの」

「私はまだ再編成と後方指揮を行う」

「俺はさっさと遊撃だなぁ」

「訓練で来るべき日に備えます」

「新兵器の実装を狙うニャ」

「それがベストなの、許可します」


マーリンを筆頭にタケシ、マリー、ネコヤが一斉に頭を下げる、周りを見回すとフェザーも頭を下げているところを見ると軍部系は相変わらず一枚岩の様である。これからも国の為にそのままでいて欲しいものだ。


「さて、おおよそまとまったと言うかまとめられた感が強いの」

「陛下の恩徳でございましょうなぁ」

「おじちゃん後で説教なの」


話題を逸らそうとしたら露骨にロックオンされた、面倒な事である。別に会議が紛糾しても困るのでなるべく早く終わらせようなと書面で回した程度だのだが、当然陛下には回していない。今は攻めるのも大事だが領地発展を行わなければ進軍も危うい状況なのだから仕方ない。


「さて、最後なの何か意見は無いの?」


マオ皇帝陛下が最後の確認のように全員に目線を配る、どの派閥の人間も自分達の意見は言いました、後は御存分にという態度で目線を返す。皇帝陛下がつまらなそうに目線を戻した時におずおずと手を上げているフォルナス宰相が目につき嬉しそうに微笑むと発言を許可した。


「・・・あ・・えっと、質問なのかな、発言いたします」

「大丈夫なの、その為の会議なの」

「その・・・この会議は国の行く末を考えている会議なのですよね」

「概ねそうなの」

「陛下、概ねではなくその通りですなぁ」


取り合えず突っ込んでおく。そうだったのと気を取り直して発言を続けて欲しいのとマオ皇帝陛下が促す。周りの諸将の目は何を言うのかを期待する目とまたアース王が企んだなという謂れのない物の二つが混じった要は好奇心に輝いた目になっていた。


「なんで全員で意見統一を行っているのでしょうか」

「なっ・・・・・・」


思わず手に持っていたパイプ煙草が落ちる、落ちたパイプ煙草はそのままマリスの傍に転がっていく。慌てたようにマリスが拾って持ってくるがその間も周りの諸将はえ?シナリオじゃないのとざわつきが起こっている。


「えっと会議の内容は一見凄く富国強兵を目指したものだと思います」

「つづけるの」

「でも実際は富国に全振りですよね」

「そうなるの」

「なら最初から富国を進めるでいいんじゃないかと思います、恐らく軍部の方々も出陣を躊躇ってはいないのは解ります」

「うむ、我等に臆病者はいない」

「ですが恐らく王からの圧力・・・ありますよね」

「・・・・否定はしない」


マーリンが仕方なしと言わんばかりに苦笑し答える。此処で我が子が化けたか。思わず立ち眩みに近い眩暈を起こすと机の上に突っ伏しかける。慌てたマリスとメイファが駆け寄り支える。その結果が雄弁に手を回していましたと言うのを裏付ける事になる。


「・・・・・続けるの」

「王は常に最善を探しておられます」

「うむ」

「小細工せずに言うべきです、今は戦争は出来ない、下地を作るべきだと」


フォルナスが此方をしっかりと見据えて発言をする、メルティアはニッコリ微笑みながらお兄様についていきますと意思表示のように見ている。流石はというか何と言うかローフルの下に付けたのは間違いではなかったようだ。


「おじちゃん反論は」

「・・・フフ・・・・クク・・・・ア~ッハッハッハッハ」


思わず高笑いをし周りが一瞬にしてざわめきに包まれる。我が子の成長がうれしいのもあるがとうとう私も表舞台から出て行ける準備が揃いつつある。其れもまた寂しくもあるが嬉しい事でもある。ざわめく会場と心配する皇帝陛下をよそにしばらくさも可笑しいように笑い続けるのであった。

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