報告書84枚目 富国強兵は基本作業
激戦と盤外戦と黒幕様大勝利で何とか資源惑星の解放とそこで奴隷にされていた民衆を助け出す事に成功した。これにより防衛網をゆっくりと国境まで上げ、さらに要塞と防衛ラインの構築を行う事になる。列車網の敷設、輸送ラインの構築等次の戦争の為の準備は既に始まっているのである。
「諸々の手柄でローフル少将を二階級特進で大将に命じるおめでとう」
「微塵もめでたくありませんが」
余りの結果に眼鏡がずり落ちたローフル大将に大出世おめでとうございますと背後にいる補佐官のメーニャとアーニャがはっぱを掛ける。今後もローフルの程よい清濁併せ呑む行動は子供たちの良い手本になるであろう。
「次の作戦までに輸送網の構築が急務なので努力する様に、それと捉えられていた人間の中に使える人間が居たらすぐに採用で」
「・・・無茶ぶりすぎますなぁ・・・」
絶句しながらアーニャとメーニャに引き摺られて退出していく、程よくあの二人に尻にひかれているようでまずめでたい。今後も使える人間はどんどん抜擢していかねば戦場の維持も難しい。
「取り合えず大変遺憾だが急務でネコヤ元帥で復帰させる」
「心底嫌そうですねアース様」
「顔がすでに拒絶反応を起こしておられますが」
苦笑しながらマリスとメイファが手続きを始める。当然である、子供が生まれ父親となった人間を何が悲しくて戦場に送り込まねばならん。本人や娘は喜んでと答えるだろうが私が何より気に食わん。
「指揮官不足に内政官不足・・・絶望的ではないかのぉ」
「今までが全部雪辱に燃えて無理してましたから」
「一度ここで体勢を立て直すためにも人材補強が急務かと」
捕虜の中に居ればいいのだが、後は伝手か。ローフルの周りを少し抜擢して無理やり大佐に据えればもう少し内政官は増える・・・・はずだと思うのだが・・・自信が流石に無い。ディアにも探させているがなかなか難しい。
「若年層もメルティア張りの人間がいれば大当たりなのじゃが」
「完全にアース様の血を色濃く引いていますね」
「母親としては誇らしい限りですが将来は心配です」
困ったような口調でメイファが顎に手を当ててため息をつく、マリスはそれを見るとうちのフォルナスもまだ覚悟がねぇとやっぱりため息をつく。君らは一体どこまで子供達に臨んでいるのだと思わず真顔で質問をしようとし、止める事に成功する。きっと聞いても碌な事にはならない。
「まぁいい、これで進言惑星の開発再開と輸送手段の構築だのぉ」
「それに伴う製造ラインの整備と技術発展ですね」
「これからはさらに技術を早回しで進めなければなりませんからね」
マリスとメルティアが書類を纏めて報告書を整備する。それでも目の前の書類の山と報告書の山はちょっとの事では減らない高さに積みあがっている。まぁ仕方あるまいと苦笑すると書類に手をかけ速やかに減らすべく尽力するのであった。
・・・・フォルナスとメルティアの反省会・・・・
目の前に教師兼監視役のアーニャ中佐が座った会議室の中で、今回の戦いと自分達の行動の反省会をしているフォルナス少佐とメルティア大尉がノートを纏めていた。お互いに行動に注釈とダメ出しを行いながらノートを埋めていく。
「今回の兄様は情報管理がダメダメでした」
「反省している、あれは父上からも本来なら銃殺刑もあり得ると言われた」
そうですよ、皇帝陛下に話していたと言う事で大幅な温情がありましたがあれが、友達とか知り合い程度ならさすがに父様でも庇いきれなかったと思いますと突っ込まれる。そんな話をアーニャが聞きながら今回のローフル少将、現大将の不明瞭な部分に頭を働かせる。
「アーニャさんから見てどうでしたか?」
「・・・え・・あ・・・そうですね、まずお二人とも大事な部分が抜けていたと思います、当然私もですが」
「伺ってもよろしいでしょうか?」
「ぜひお教えください」
「急場で取り乱しすぎです、ローフル閣下及びネコヤ元帥、アトリ大将は急場でも落ち着き払っておりました」
上官が慌ててしまってはそれが部下に伝染いたします、そうすると士気と言う物は雪崩を打って崩壊してしまう物です。と丁寧にその場の図を書きながらアーニャが二人に教えていく。その書かれた図を見ながら再び二人は自分が思った事と要点をノートに必死に書き綴ってゆく。
「後は問題としてはどれ程場数を踏むかだと思います」
「場数ですか?」
「戦場に出た経験の多さですね」
「不思議なのがローフル閣下は戦場には余り出てないはずなのですが急場慣れしておりました」
「アトリ姉様とネコヤ義兄様は当然と思いましたが」
「ローフル少将も驚くくらい落ち着いておられましたね」
此ればっかりは本人の適応能力もありますので一概にこうだとは言い切れませんが、取り合えず最初は経験を積まれ、何かあったら今回みたいに独断で行動せずに必ず誰かに相談する、今ならメルティア補佐官に相談なさるのが一番宜しいでしょう。と綺麗に締めくくる。
「やっぱり色々偉くなるのは大変なんだなぁ」
「お兄様一応現在見習いとはいえ宰相が頭についておられるのですが覚えてらっしゃられますか?」
「見習い宰相フォルナス少佐となっておりますが一応アース王の御命令で一少佐として扱えと厳命されておりますので無礼の程お許しを」
丁寧に頭を下げるがそれは気に為さらなくて結構ですよとフォルナスが笑顔で答える。自分はやっぱりまだまだ覚えそして学ぶことが多いと改めて痛感するのであった。もっともアーニャからすれば自分よりも8歳も下の子供が決める覚悟ではないと言う複雑な思いもあったのである。
「では申し訳ありませんもう少しお付き合いください」
「退屈かも知れませんが是非お付き合いをお願いいたします」
「閣下より命ぜられておりますので御存分に」
子供を戦場に送る時点でローフル閣下は露骨に嫌がっていた、それでも責務と重責を理解しているからこそ学ぶように促していた。結局全部人手不足が悪いんだろうなぁと複雑そうな表情でノートを纏めながらお互いに色々突っ込んだり補ったりしている二人を見つめるのであった。
・・・・???(特秘建造ドック)・・・・
巨大な船が秘密裏に建造されている特秘ドックに再び白衣の女性と眼鏡の太った将官が話し合っている。白衣の女性が設計図を将官に渡し、その性能と特徴を説明し始める、見回してすぐ気づくのだが特筆すべきはこのドックで働いている人間が少ない事であろうか、ほぼ全自動で行っているのである。
「機械化もここまで来るとなかなか壮観だなぁ」
「かかわる人間が少なければ少ない程ばれない物ですな」
もっともこの特秘ドックにたどり着くまでには強権を発動してもどうやっても通れない場所が数か所ある、さらに許可証のたぐいになれば皇帝陛下でなければだめな場所もある。権力という物にがっちり守られた場所で建造されているのである。
「ここまで大きい空母は王の旗艦よりも大きいと思わなかったのぉ」
「その新しい王の旗艦を建造せよとの御命令なのですな」
「黒幕様は人使いが御荒いのぉ」
「・・・ミラージュもまた作れと御命令でしたしな」
お互いに顔を見合わせると可笑しそうに小刻みに笑う。ひとしきり笑い終わるとお互いに真顔に戻り困ったものだと溜息をついた。黒幕仮面陛下は王をどの様な手段をもってしても守り切って欲しいと仰せだ。かかる費用と権力は青天井なの!と今日も断言しておられた。
「しかしうちの秘書にばれないように動くのも疲れるのだがのぉ」
「愛されてるからね、君は」
「無いだろ?」
「少なくとも私に情報提出を即断で断るぐらいには愛されてると思うのですな」
まて、18歳と私ではほぼ犯罪であろうがと口をとがらせると、個人恋愛は知らないのですなと再び大爆笑する。ただお互いに気付いてはいるのだ、勝ったからこその軽口で次の戦争だって恐らく今回よりももっときつくなるのだと言う事を。因みに眼鏡の男が年齢的には貴方と同じなんですがねと言うと忠誠対象が同じですし付き合いますかな?と言われて苦笑している。
「グングニルの増産、新型艦の竣工、技術の前倒し、戦争特需と言えるであろうが針は進め過ぎておるなぁ」
「責任は我等がとればいいのですな」
「陛下と王には責任はいかぬ・・・がベストであるのぉ」
「その点はお互いに協力できる部分ですな」
かも知れんなぁと将官が手を差し出すと白衣の女性は素直にその手を取って握手をする。少なくともこの場においての二人は利害が一致しており、お互いの秘密を墓場まで持って行く気があるのであろう。少しだけ薄暗い笑みをお互いに浮かべるとそれぞれ某所に通じる出口に消えていくのであった。
「どうなの?建造は進んでいるの?」
黒いシルクハットにタキシード、ステッキを片手にした黒幕仮面陛下が二人を出迎える。いつ見ても何かおかしい格好だがもう突っ込むことは二人とも諦めているので普通に対応する事にする。
「左様ですな、資源の運び込みなどはばれておりませんな」
「我等も細心の注意を払っているのですな」
「それは素晴らしい事なの、ばれたら困るの」
その恰好をまず止めた方がばれる確率が減りますよと眼鏡の男が直言すると、これは浪漫なの、ロマンは全てにおいて優先するのとぐっとガッツポーズを決めて宣言する。そのまま眼鏡の男は眉間を押さえると任せたと白衣の女性にバトンを全力でブン投げた。
「とにかくこの計画自体がアース王にばれないようにしなければならないとの御命令なのですな、よって全てシャットアウトするにはもう少しおとなしい方が宜しいと愚考するのですな」
「う~ん・・・父様にばれるのは困るの・・・何とかするの」
ですから格好をともう一度だけ頑張って眼鏡の男が窘めるが見事に無視される。諦めたように今後の計画と諜報を怠らなければもう少し誤魔化せるでしょうと報告すると、白衣の女性に任せたと完全に投げ捨ててそのまま扉の外に消えていった。
「もっと気楽にやらないと禿るの」
「・・・・いや・・・・何でもないですな」
何かを言おうとした白衣の女性はしばらく考えた後言葉を飲み込むことに成功した。恐らく黒幕仮面陛下は本気でやっていると思える節がある、となるともう何を言っても止めないだろう。後で胃薬を差し入れるとしようと苦笑するとそれでは私も失礼いたしますと一礼すると自分の職場に向かうのであった。大乱の前の静けさであっても一部はやっぱり平常運航である。




